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第三部  第二章 新たなる戦乱

国境付近で起きたできことは帝都におるものは知らず、民はいまだ天帝軍の存在すらも知る由もなかった。
帝都に戻ったエラナ達は皇帝ベネラルの私室に何人かを呼び出した。一人は皇帝王妃であるフェーナ・アルスターク、妹のセレナ・フレア、それにベネラルとエラナの4人で集まった。
「再び魔神獣が姿を現した」
ベネラルはそう話始めた。
「ついに恐れていた相手が現れたのですね」
フェーナが静かにそう言う。フェーナもエラナ同様に星見の力を持っておりある程度の予測はできていた。
「まずはこのことを聖王国のスティールには知らせる必要はあるな」
ベネラルがそう言う。
「あとアラール国のレーナにもね」
エラナはラクレーナの名を出す。
「魔神獣のこととなれば知らせないわけにはいきませんね」
セレナは賛同しそう言う。セレナも先代皇帝フォーラルが病死しなければ皇帝王妃の位は約束されていたが、婚姻を発表する前だったため話は無かったことになっているが、フォーラルとの間に子供がいることは、ここにいる4人以外に知るものはいない。生まれた子供セティアもまだ2歳であることもあり自身の出生は知らない。
「失礼します」
そう言い一人の少女が入ってきた。
「来ましたかエレナ」
彼女はエラナの娘で父はベネラル、知っているのはここのメンバーとスティール、昨年亡くなったサリナの母親でエレナの育ての親であったミレーラ・フローリアだけである。
「エレナを呼んでどうするつもりだ」
ベネラルが尋ねる。
「貴女には聖王国とアラール国への使者を勤めてもらいます」
エラナはそう命じる。
「どこに魔神獣が潜んでいるかわからない今、危険ではないか」
「エレナは剣技なら並みの騎士以上の実力はありますし、すでに魔術も導師級の実力はあります。それに私同様に回復系の魔法もある程度は使えますよ」
エラナは自慢するようにそう言う。
「しかしな」
「ベネラル、私が貴方と最初に旅をしたとき、私はまだ7歳にもなっていなかったのですよ」
ベネラルとエラナが最初に旅をしたのがベネラル7歳、エラナ6歳のときだった。そのときは他にも剣王フォルクが同行していたが、初陣もその時に経験した。
「確かにそうではあるが」
「エレナ」エラナはエレナに剣を投げる。「ベネラル、彼女の実力は自らで試してみるといいでしょう」
「よかろう」
ベネラルも剣を手にする。
「お願いします」
エレナは剣を構えると同時に動いた。
「はやい」
フェーナがそう呟く。
ベネラルは難なく攻撃を受け止めるが、エレナが繰り出す攻撃が並みの騎士以上であることは認めざるを得なかった。
「お前の魔道剣術を教えたのか」
「フォンにも教えましたよ。太刀筋はフォンの方が優れてそうですけれどね」
フォンはエレナの妹で、彼女もベネラルとエラナの娘になる。
彼女達の育ての親のミレーラ・フローリアが亡くなってからは二人とも学院で生活しているが、学院内では師弟関係をとっているため学院内でも行動をそれほど制限されることもない。
「まぁいいだろう、エレナよいのだな」
「はい」
「手紙の内容はエラナに任せる」
「わかりました」

翌日エレナはエラナの元を訪れた。
「この手紙を聖王スティールに、こちらをラクレーナに渡しなさい」
「わかりました」
「それからフォンも連れて行くなら連れて行きなさい。誰か余分につけてもいいけど、足手まといはいらないでしょうし、フォンのほうが都合がいいでしょう」
「では2人で行ってまいります」
「それがいいでしょう」
エレナやフォンの実力があれば、騎士クラスをつけても足手まといでしかない。もし彼女達を上回る実力者となると、帝国の中でも重要な役職にあるため簡単に出歩くことも難しい。
「では、行ってまいります」
エレナの言葉にエラナは頷いた。
エレナが出て行った部屋で一人考えごとをはじめた。
「魔神獣王か、軍王程度なら私一人でも容易に倒せる相手だけど、さすがに魔神獣王となるとレベルが違いすぎる」
そう考えていると扉を開け入ってくるものがいた。
「久しぶりねエラナ」
「メリアさん」
彼女は、エラナの師であるラスティークの弟子で、エラナ姉弟子にあたる。実力はエラナ以上のものを持つが完全に魔力回復することができなくなりエラナが最高導師となると同時に学院を去っていた。彼女が病気で魔力を回復できなくならなければ彼女が最高導師となっていたといっても過言ではない。
「どうやら厄介な相手が出てきたようですね」
「まだ一部のものだけにしか公開していない情報ですよ」
「魔力が回復できなくなったといっても魔法が使えないわけではありませんからね。それにあれだけの力、帝都にいても感じることはできますよ」
「今度ばかりは手も足もでませんよ。力のレベルが違いすぎます」
「そうでもありませんよ。私が全盛期の力さえあれば相手にできないレベルではありませんからね。もっとも今のこの体ではなんともなりませんが、あなたがそれにより近づくための手段ならあります」
「私自身のレベルアップということですか?」
「そういうことです。それに魔神獣王、高位魔族クラスは簡単に魔界からこちらへ出てくることができないはずなんですけどね」
「法皇セレネイドが作った結界、高位魔族を生命界に介入させないために作ったものですが、魔神獣王とは本来結界を越えられないほどの実力者なのですか」
「法皇の知識を得ている貴女なら神々が使った脅威力という数値は知っているわね」
「物理戦闘能力と魔道戦闘能力から計算された数値ですね」
「そう、結界はおおよそその数値で1000が超えられる超えられないの基準になっています」
「1000ですか」
「その数値からすると魔神獣の軍王クラスで約500、もっとも魔軍将ヴェルナスは3000を超えていましたけどね」
「それではヴェルナスが出てこれたのは」
「ヴェルナスまでならこちらから強力な魔法陣を使って召還すれば呼び出せなくもないです。ただそれなりの犠牲は必要になったでしょうけど。だけど、魔神獣王は脅威力8627、儀式程度で呼び出せるものではありません、結界そのものに大きな穴を開ければ可能ですが、法皇の結界を破れるだけのものがいるかどうかです」
「もし人間でそれができるとしたら一人だけいます。魔皇クライシストの血を受け継いで私と同等の魔力を持つもの、彼女なら十分に呼び出すことはできるわ」
「知っているのですか」
「直接の面識はないわ、といっても私が生まれてしばらくは一緒だったみたいですけどね」
「どういうことです」
「私にはもう一人双子の妹がいます。名前はミレナ、ミレナ・フレア、アルウスの背後に見え隠れしていた闇組織、その組織の総帥が彼女です」
「そのことはセレナは」
「知りませんよ、ミレナと私達の両親は私の手で倒します。セレナを巻き込むつもりはないわ」
「人騒がせな親子喧嘩というわけですか、この世界を巻き込んだ」
「神話時代の予言に法皇の血を引くものから破壊神が生まれると予言されたものがあります。その予言はちょうどおよそ20年ぐらいあとのことなんですよ。だからこそその破壊神となると私の両親はミレナを選んだみたいだすが、実際のところは私を選ぶべきだったんですよ。私の産む子が破壊神となる運命なんですよ」
「貴女が結婚しなかったのはそういう理由ですか」
「予言で生まれる子は私とベネラル皇帝の間に生まれる子供です」
「ベネラル皇帝がフェーナさんと結婚された今、生まれる心配はないのですか」
「すでに生を受けていますよ。私が望んで産んだ子供です」
「知っていてなぜ」
メリアは厳しい口調で問う。
「生まれ来る子供に罪はないでしょう。それが運命の輪ならば遅かれ早かれ生まれてきます。もしその子が破壊神とならず生きてくれればそれもいいですし、もし破壊神となるならそのときは私の手で決着をつけます」
「それで貴女は力を手に入れることに固着していたのですね」
「運命の輪は私の手で断ち切る。たとえ人間として犯してはならない禁忌を犯してもね」
そういい、エラナは額の駄天の印をメリアに見せる。
「貴女の覚悟はわかりました。私の秘術は貴女では使いこなせないでしょうけど、何かのきっかけはあるでしょう」
「貴女の秘術ですか」
「そう、私がこんな体でなければ一緒に戦うこともできるでしょうけど、これだけ魔力の衰えた私ではどうすることもできませんからね。ただ、まだこれでも貴女には勝つ自身はありますからね」
メリアにはまだ魔法を使うだけの力は残っている。一度使えば回復しないだけで、エラナ以上の力を持っていることに変わりはない。ただ、魔法を使うことが彼女の命をすり減らす行為であるだけだ。
「わかっております」
エラナではメリアには勝てない。メリアはごく少量の魔力だけで相手の魔術に対抗するすべを持っている。魔力の受け流し、受け返し、吸収といった力がある。すなわち魔法での攻撃は彼女に攻撃手段を与えるだけなのである。
実際、メリアには魔神獣王相手に魔法勝負でなら勝てる自身はあった。だがそれは魔法だけでの勝負、肉体的な戦いでは太刀打ちすることすらできない。
「ここまでくると戦えないのが悔しいですね」
「まったく治癒する見込みがないわけではないでしょう。まぁ、どちらにせよ魔神獣をこのまま放置するわけにはいきません。ただその前にやっておきたいこともあります」
「いいでしょう、気が向いたら私のところへ来なさい」
「わかりました」
メリアはエラナの返事を聞くと部屋を出て行った。そして入れ替わるようにセレナが部屋に入ってくる。
「セレナ、私はしばらく学院を留守にします。しばらく任せるけど」
「かまいませんが、学院は私が守りますが、宮廷魔術師としての役目はどうされますか」
「フィーラを呼びもどしてもいいけど、今前線からフィーラを引き上げさせるのも得策ではないわね」
「呼び戻すのも一つの手だと思いますが」
「前線を任せられる参謀役がいないわ」
「副官のサイバーさんなら役目は果たせるかと、あと第二重騎士団のサンライズ騎士団長もおられるのではありませんか」
「サンライズか、防衛戦なら彼ほどの適任はいないかもしれませんね。では、フィーラを呼び戻しますか。ほかにラルクもいることだし、前線は国境を守る程度ならできるでしょう。おそらく魔神獣王もよほどのことがない限り出てくることもないでしょう」
「それがよろしいかと」
「できれば私の影武者となってくれるものがいてくれると助かりますが」
「それは私が勤めます。私の影にはバーラになってもらい公爵領の学院に滞在してもらいます」
バーラは、フレア公爵領にある学院分院の導師でフレア公爵領最高導師であるセレナの側近で魔術師としてもかなり優秀な人物、セレナも高く評価し重く徴用している。
「バーラがいましたね。いいでしょう、任せます」
バーラはエラナの直接の弟子ではないが、教壇で行った授業で教えたことはある。
「それから、イザベル、クリスティーナ、カールの3人を正式に公爵領の学院導師に任命しようと思いますが構いませんか」
「3人の話はおおよそ聞いているわ。昇格に異論はないわ」
「では、私は準備することもありますので」
セレナが退出するとエラナは次に学院近衛魔法騎士団長のアレン・ブランドとその副官マリア・ゼッタを呼び出した。学院近衛魔法騎士団長は本来は学園内部の警備と最高導師の警護を担当するが、現在の最高導師であるエラナには魔軍将があり、彼女の実力が歴代最高導師の中でも突出しているため、直接の警備は必要ないが、魔軍将の存在を隠すにはうってつけな為には十分な存在理由だった。
「お呼びでしょうか」
しばらくしてアレンとマリアが入室してくる。
「私はしばらく留守にしますから、しばらく私の代わりを務めるセレナに従ってください」
「セレナ導師がエラナ様の影ということですか」
アレンはエラナの言葉からそこまで推測してみせた。
「貴方達には必要に応じて魔軍将の招集を許可します。必要に応じて使って構いません」
もともとフィーラにも知らされていなかった魔軍将だが、二人とも魔軍将候補のだったこともありその秘密を知っており、魔軍将に匹敵する実力の持ち主でもある。
「できることなら私達が直接戦うことは無いに限ったほうがよろしいんですけどね」
マリアがそう言う。
2人が近衛魔法騎士の中でも突出していることは知られているが、セレナやフィーラに次ぐ実力者であることはほとんど知られていない。
「そう願いたいわね。もし私に連絡をとりたいならばフィーラに言いなさい。彼女なら私が異なる世界にいようと連絡する手段を知っていますから」
「わかりました」
同時に扉を叩く音とともにフィーラが入ってきた。
「思ったより早かったわね」
「戦場は膠着状態でしたので、サンライズ将軍にある程度指示をだしておきましたので問題はないかと思います。必要に応じてはサーソス城を最終防衛ラインとするようには伝えてあります」
「サーソス城ですか、あそこなら帝国領でリスタール城に次ぐ堅固さがありますし、あそこなら国境防衛魔法騎士団がいますからね。問題ないでしょう」
「ただ問題となるのは、魔神獣王は攻めてこないとしても、軍王クラスが出てくる可能性はありますが、ラルク以外にそれだけの実力者はおりませんが」
「先の戦いで4人の軍王のうち2人までは倒していますから、残るは2人、ラルクは一人で軍王を相手にする実力はありますが、グランテール、サイバー、ジェネル、アクア、サーディン、ブラッサムあたりならラルクと組んで戦えば、軍王2人ぐらいなら追い返すことはできるでしょう。それにアクアには、西方軍王ラスティールが持っていた武器を与えてありますから十分に戦うことはできるはずです」
「ところで、サーソス城の学院分院にある転移装置は使えますか」
「完全には修理してないけど、1時間で3人程度なら使っても問題ありませんよ。もしいざとなったらセレナに頼みなさい。1騎士団までなら転移させるだけの力はあるはずです」
「セレナ様にそれだけのことが」
マリアが驚き尋ねる。
「攻撃系の魔法はそれほど得意ではないみたいだけど、防御系は私と同等、召還系なら私以上の力はありますよ。もっとも得意とするのは封印系で魔神獣王を封印することも可能でしょうね。もっとも封印したところで何百年かのことでいずれ復活する可能性はありますからね」
「この時代に倒さなければ、次に復活したときに倒せるだけの実力者がいるとは限らないですか」
フィーラがそう言う。
「そうした場合、普通に考えて数百年後まで生きてはおれませんからね」
「エラナ様はその時まで生きておられるつもりなのですか」
「転生の秘術だろうが、不老の王だろうと、手段が無いわけではありませんからね」
エラナが最高位の魔導師であると同時に最高位の司祭でもあることは、意外と知られており神聖魔法の秘術である転生が使えると想像できなくもないが、実際のところすでに輪廻転生の輪を抜け出せないエラナにとっては何百年だろうが何千年だろうが、この世界が存在し続ける限り生きることはできる。だが、目の前の問題を先送りすることは彼女のプライドが許さなかった。
「私はまだ目的は果たしておりませんから、それまではご一緒させてもらいたいですね」
そうフィーラは言う。彼女にとっての目的は、彼女の一族、家族を滅ぼした魔神獣を見つけ出し倒すこと、そのために彼女は冥界から戻ってきたのだ。最後の風一族の王としてそれが彼女の使命なのだ。
「そろそろ互角程度に戦える力はあるでしょう。ちょうどいい機会ですから、貴方に面白い物をあげましょう。地下の私の研究室まで来なさい」
「ご一緒させて頂いてもよろしいですか」
アレンが尋ねる。
「アレンとマリアにも渡したいものがあるから、いいでしょう」
そういい、エラナは部屋の転移装置へ入っていく。フィーラ達3人もそれに続いた。

学院は、地上30階以上の塔が3本、35階まである学院でもっとも高いエラナの執務室もある光魔の塔、次にそれぞれ30階までの賢者の塔と導師の塔がある。また、地上には3階から5階程度の学院の生徒が学ぶ建物や魔導師の位を持つものが研究を行う研究所などが立ち並ぶが、それと同時に学院には地下まで存在する。地下1階は魔道の実験から模擬試験まで行えるような巨大な空間があり、地下2階・3階には禁断の書や一部導師の研究所がおかれている。そして4階にエラナの研究室はあり、エラナ専用の階となっており学院の塔にあるエラナの執務室以外から入ることはできない。
ただ、学院の地下はそこでは終わらず5階以降は禁断の領域となっており何階まで続くのか知られていない。また学院の歴史上、最下層までに到達できたものはいない。ここ数年、チャレンジしたものもいたが途中で引き返している。
フィーラは、チャレンジした一人ではあるが30階で引き返した。次にセレナが50階、そしてエラナ自身もチャレンジしたが80階まであるが、3人がその地下で見たことは一切語らないため事実を知るものは少ない。
「この部屋よ」
そういいエラナは扉を開ける。
「何ですこれは」
そこには巨大な人型のゴーレムのようなものが立っていた。
「何年か前に公国を旅したときに、巨大な機械じかけのゴーレムのようなものを見かけたんだけど、それを魔力で制御できないかと思って作ってみたの。まだ試作段階だけど使えないことはないわ。問題は多々あるけどね」
「人型魔道兵器ですか」
「魔道騎兵、私はそう呼ぶつもりよ」
「魔道騎兵ですか、まさに動く砦ですね」
アレンがそう感想を言う。
「動く砦、そう言えなくもないわね。一応武器は魔道砲を搭載しているけど、操縦者が使える魔法ならある程度増幅して打ち出すことができます。ただ魔道騎兵そのものを動かすエネルギーは操縦者の魔力だから一歩前進するだけでもかなりの魔力を必要とします。そこがこれの問題ね。起動がもっとも魔力を使うけど、私が操縦すればかなりの時間は動かすことはできるけど、私以外でどの程度動かせるかはわからないわ」
「これを私にですか」
フィーラが尋ねる。
「起動の魔力消費はかなり必要だけど、歩く程度なら問題ないと思うけど戦闘を行おうと思うとそれなりの魔力は消費するわ、それと気をつけて欲しいのは魔道騎兵が持っている自動修復装置、修復が完了するまで操縦者の魔力を消費し続けるから、場合によっては魔力を完全に吸い尽くされる可能性があるから。これを言い忘れるところだったわ、魔道騎兵が追ったダメージは操縦者の脳にそのままフィードバックされるから、痛みなんかもすべて感じることになるわ」
「場合によっては痛みによって死ぬ可能性もあるのではないですか」
マリアがそう言う。
「当然それもあるわね。そのときは痛みが完全に伝わる前に魔道騎兵から逃げだすことね」
「逆にその痛みを克服したとしたら、魔道騎兵はいかなるダメージからも回復できるのですか」
「魔道騎兵のコアが破壊されないかぎりはね。もっとも、操縦者が乗る場所がそのコアにあたるから操縦者が生きている限りということね。コアは操縦者の魔力で防御されていますからね」
「しかし、これは何の金属でできているのです。自己修復できる金属となる私の知る限りオリハルコンか伝説の金属とよばれるルヴァインだけではないですか」
アレンが尋ねる。
「基本的には普通の鉄とミスリル銀、あと関節と人間で筋肉に当たる部分にソフトラヴァ、骨となる部分にメタル銀を使ってるわ。あとしいて使っているといえば、魔力を伝達させるのに魔界の植物の1つを使っているわ。その上で、あとはゴーレム作成の魔法に私なりのアレンジを行って再生能力を与えたものです。その分、操縦者の魔力頼みになってしまいましたけどね」
「少し乗ってみてよろしいですか」
「貴方にあげるつもりのものだからすきに使ってくれて構わないわよ。それとこれを」
そう言いエラナはブレスレットを渡す。
「これはなんです?」
「ある意味そいつをつけていない限り動かないように設計してありますからね。誰でも動かせるようでは困りますからね」
「エラナ様、あちらにもう一台作られているのですか」
「あっちが試作2号機だけど、まだ製作段階でまったく動かないわよ」
エラナがそう解説している間にフィーラは魔道騎兵に乗り込んでいた。
「この球体に手を合わせればいいのですね」
「そいつがコントロールユニットだから、起動させたらそいつに手を当てて念じれば動くわ。あとは搭乗者しだいだから」
「わかりました」
同時にフィーラは魔道騎兵を起動させた。
「まだ最終安全装置は解除してないから、イメージ伝達しても実際には動かないからすこし動くイメージをしてみて」
「はい」
エラナは近くにある魔道装置のモニターを見る。
「イメージ伝達率70%、初めてにしては上出来ですね。あとはなれるしかないわね。フィーラ、最終安全装置を解除します。以後はイメージと同時に魔道騎兵が動くから気をつけてね」
「わかりました」
エラナは魔道装置を操作し、モニターに最終安全装置が解除されたことが表示される。
「これでいつでも使えるわ。フィーラ、停止させて降りてらっしゃい」
言われ、フィーラは魔道騎兵から降りてくる。
「起動時につかう魔力はかなりのものですね」
「外部からの魔力バッテリーも考えてみたけど、重量が魔道騎兵と同等になってしまうから、機動性から考えて難しいというのが結論ね。あとそれから、そのブレスレットだけど、これをどれだけ離れた距離からでも召還する力を持っているから常に一緒に行動をする必要はないわ。こいつはこのままここにおいておくから必要になったら呼び出すといいでしょう」
「わかりました」
「さて、次はアレンとマリアの番ね」
そういい、エラナはこの研究室を出て別の部屋へ3人を連れて行った。
その部屋は鍛冶屋が武器を作るための設備が整った場所だった。その設備も街の鍛冶屋よりもより高度な武器が作れるような場所になっていた。エラナは数少ない魔力付与者でもあるが、同時に鍛冶屋でもある。
一般的に鍛冶屋が作った武器に魔導師が魔力付与を行うが、エラナの魔力に耐えられる武器を作ろうと思うと自身で作るしかないと考え彼女はその道を選んだ。
また、魔力を帯びた金属となると鍛冶屋であると同時に魔導師である必要があった。かってそれができたのは、500年前のレスティア帝国時代となるが、当時でも加工できるものは少なかった。その時代最後の魔道鍛冶屋が、初代皇帝王妃でもあったエラスティーナである。エラナはその技術をエラスティーナから学んでいた。
「まず、こいつがアレン、それからこれがマリアね」
そういい、アレンには短剣をマリアには筒のようなものを渡した。
「かなり小ぶりな短剣ですね。柄も少し細いように思えますが」
「そいつは、持ち主が思ったように大きさを変えるわ。しかも重さはそのままでね。ただ、刃と柄との大きさ比率は変わらないから大きくして扱うにも限界はありますけどね」
そう言いアレンの手から短剣を取ると、変化させて見せた。
「こんな感じでね。それから手を離したらすぐに元に戻るわけではなくて、10秒で元の大きさに戻るわ。だからこの軽さだから大きくしたとしても投げることも可能よ」
「なるほど」
「それから、マリアのは魔力を吸い取って刃に変えるものだったものをある程度アレンジできるように改良を加えたものです」
そう言い、マリアに渡したものと同じものをエラナは手にしまずは剣にして見せた。次にそれは、垂直に伸びていたそれは力なく垂れた。
「こうやって鞭としても使えるわ」
次にエラナは弓に変えて見せた。
「矢は自分の魔力で作り出せばいい、あとはもち手の想像力しだいね。一つ注意しておくのは意外と魔力を使うということね。アレンのも多少なりとも使うけど、魔法の使えないものや、見習い程度だと数秒で全魔力を吸い取られてしまうわ」
「かなり危険なものですね」
フィーラがそう言う。
「貴方達の実力ならそれを使いこなすことができるでしょう
「エラナ様の留守は私達が守ります。ご武運を」
フィーラはそうエラナに言うとエラナは頷いた。

その日、寝床つにいたエラナに話しかけてくるものがいた。
『また厄介なものが現れたようですね』
『久しぶりですね。セレネイド様』
『まったく貴女は困った問題を抱え込む癖がありますね』
『好きでやってるつもりはないんですけれどね』
『まぁ、私の巫女である以上、あの程度の相手を倒せないようでは困りますからね。言っておきますが3年前に私と融合して倒したクライシストよりも実力は下なのですよ。それに貴女、先の戦いで魔獣としての力は解放しましたが、それに駄天としての力を上乗せしませんでしたね。どうしてです。解放すれば魔力では魔神獣王を上回ることはできたでしょう。それに私を降臨させれば済むだけの話でしょう』
『まだどれだけの魔神獣がこちらに来ているかわからない以上、魔神獣王を倒せばその統率は失われそれぞれの魔神獣がいかなる行動を起こすかわからない以上、倒すのが賢明ではないでしょう』
『なるほど、確かにそれは正論ですね。それで何を企んでいますか。あのメリアという魔導師の秘術を学びとろうというのですか』
『確かにメリア殿の秘術には興味ありますけど、術の系統が違いすぎて私には習得は難しいでしょうね』
『でしょうね。私自身もできないことはありませんが、あれを行うにはあらゆる魔術の原点に精通し、すべての魔道を知り尽くしたもののみが使いこなすことができるだけで、中途半端な知識では難しいでしょうね。魔道を極めしもの、その名で呼ぶべきでしょうね』
『それだけを言いに来ただけではないのでしょう』
『そうですね。魔神獣王が出てきて気がついているでしょうけど、魔界との結界の修復をしておいてください。魔神獣王1匹程度なら対処できるでしょうが、高位魔族が出てきては困りますからね』
『結界ですか、それを先に急いだ方がよさそうですね』
『1・2週間もあれば修復できるでしょう』
『そんなところでしょうね。最も邪魔が入らなければですけれどね』
『必要と思うなら2人で行くがいいでしょう』
『レーナにそこまで負担をかけるわけにはいかないわ。念の為に聞くけどレーナと魔神獣王との実力差はどう見てます』
『純粋な力そのものなら魔神獣王でしょうが、彼女の動きを捉えきれるとは思いません。それに天馬降臨という奥の手がありますゆえ、ほぼ貴女と互角といってもいいでしょうね』
『レーナの動きは私でもまったくとらえきれませんが、神々の中でどのレベルなのですか』
『そうですね。瞬間的なスピードだけでしたら、私が肉体を持っていた当時と互角でしょうね。持続したスピードでしたら、成長すればあなたの元にいる風族のフィーラに勝てるものはおりませんよ』
『フィーラですか』
『彼女は風精霊王になる運命を持っています』
『まったく面白い時代に誕生できたものです。すこし楽しませてもらいますよ』
『遊びすぎて本来の目的はわすれないようにね』
『わかっていますよ』
『でわ、私はまたしばらく観戦させてもらうことにします』
セレネイドはそれだけ言うとエラナの意識の中から消えた。

翌日朝早く、すでにエラナの姿は学院にはなかった。
闇の世界、人間が住む生命界と魔界との間に存在する空間に彼女は立っていた。
「ここが次元の狭間というところですか。なるほど、結界は生命界だけを包みこむようになっているのですね」
生命界を覆うように光の壁があった。そして、その一部に綻びを見つけた。同時にそこにいる人影にも気がついた。
「遅かったですね」
その人影はエラナを見つけるとそう話しかけてきた。
「何者です」
法皇の杖を手に呼び出しそう言う。
「私ですか、魔界の最高権力者魔界の闘神フォークの皇女マース」
「魔族、それも高位魔族ですか」
「ええ、最も私を超える魔族はおりませんけどね」
マースはそう自らが魔界最高位の力の持ち主であると宣言した。
「どうやら純粋な魔族とは違うようですね」
エラナは感じ取っていた。彼女との間にある圧倒的な力の差を・・・
「どうしてそう思います」
「純粋な魔族ならばその結果に触れることすらかなわないはずですからね。ならば何らかの神の血を引いているということです」
「なるほど、祖母から聞いたとおりその冷静な判断力ですね」
「祖母?」
「そうです。貴女が言ったとおり私は純粋な魔族ではありません。貴女と同じ血を持つものですよ」
「まさか」
「そのまさかですよ。私の母は法皇セレネイドの娘なのですからね。だからこの結果も私にとっては何の意味もなさないし、結界を修復することはできないけど、解除しようと思えばできないこともないのですよ。私も法皇セレネイドの巫女であることにはかわりありませんからね。残念ながらたいした力も持っていない奴ですが数匹は逃してしまいましたけどね」
「もしかして、貴女がここにいるのは」
「ご名答、私がこの綻びから生命界を守っていたのは法皇セレネイドから聞いた貴女の血でしょうね。神皇・魔皇・法皇すべての血を引いている、双子神としての貴女の星」
「それが貴女の条件ですか。いいでしょう、魔界においてはあなたを主としあなたに尽くしましょう」
「話が早くて助かります。ですが、貴女の実力は認めたわけではありませんよ」
「ならば全魔力を持ってそれを示しましょう」
そう言い、魔力を抑えていたローブを脱ぎ捨てる。
「かなり魔力を押さえ込んでいるとは思ったけど、脅威力が3倍以上に跳ね上がるとは思わなかったわ」
「これだけの魔力を常時維持するには生命界の大気魔力は少なすぎますからね」
「確かに人間としての限界は既に超えているようですね。ですが、それも人間でのこと私の50分の1程度にすぎませんよ」
「たとえどれだけの力の差があろうと、全力を尽くすのみです」
そう言い、エラナは右手に神皇の力、左手に魔皇の力を呼びだす。
「器用ですね、同時に相反する力を呼び出すとは」
「これが私の切り札です」
そう言うと、二つの力を組み合わせる。
光と闇、交わったそれは消滅するかと思われたが、別の何かがうまれた。
「無!」
「いかなる絶大な力を持とうといかなる防御魔法であろうと絶対防御不能、交わすか同等の術をもって相殺する以外に防ぐことはできません。いきます、光闇消滅(メガル・クラスト)!」
エラナの手からは放たれたそれはマースめがけて解き放たれる。
「一つ欠点はありますよ、防ぐことはできなくてもこうすることはできるんですよ。魔力反射鏡(マジック・リフレクト)!」
「魔力反射鏡(マジック・リフレクト)されることは計算の上です。法皇審判(ジャスティス)!」
エラナは法皇審判(ジャスティス)で、光闇消滅(メガル・クラスト)を消滅させて見せる。
「法皇審判(ジャスティス)ですか」
「法皇は光でも闇でもない力、中立な力、よっていかなる状況においても裁けない対象はありません。無と最も近い力でもありますからね」
「たいしたものです。いいでしょう、気に入りました。ただ一つ忠告しておきます。その光闇消滅(メガル・クラスト)は、多様は避けることです。あんたにかかる負担も半端なものではないでしょう」
「ここまでもってくるまでに10年かかりましたからね。合成する力が均等でなければ自分の腕が消滅してしまいましたからね。一度なんか体の半分が完全に消滅してしまいましたからね」
「そう簡単に手に入れられる力であっては困りますよ。魔族だろうと、神だろうと完全に極められたらどうすることもできませんからね」
そう言い、マースは指先が消えた右手を見せた。
「完全にはじき返したと思ったのですけれどね。私の魔力反射鏡(マジック・リフレクト)を貫いていたとはね」
「どちらにせよさっきのが私の限界です。たった2発で私の魔力はほとんど使ってしまいましたからね」
そう言いながら、先ほど脱ぎ捨てたローブを拾い上げ袖を通す。
「ここの穴は私が一時的ではありますが、防いでおきましょう。力が回復するまで、私の城へ来るといいでしょう」
「ありがとうございます」

魔界皇女マースに連れられエラナは魔界の最下層にあるマースの城へ来ていた。
「さすがね、大気中の魔力濃度が最も高い最下層で平然といられているとは、普通の人間なら数秒で息絶えてますよ」
「気持ちいいぐらいですね」
「お戻りでしでしたか、マース様」
一人の女性の魔族が出迎える。服装からしてもかなりの高位の魔族には思えた。
「レヴィナ、ご苦労です。紹介しておきましょう。生命界の魔導師エラナです」
「エラナ・フレアと申します」
「レヴィナ、彼女に部屋を用意してあげなさい」
『人間を客として迎えれる意味がどうなるかを・・・』
魔界の言葉でレヴィナが話す。
『私の言われたとおりにしなさい。明日にでも彼女が力を回復したらその理由がわかります』
『私に聞かれたくなく、魔界の言葉で話しても私にはわかりますよ』
エラナはそう魔界の言葉で話す。
『魔界の言葉まで知っていましたか』
『これを見れば理解してもらえますか』
そう言い、額の駄天の印を見せた。
『なるほど、人のみでありながら魔界の住人を喰らったわね』
「ある程度なら回復してきていますから、今からでも構いませんよ」
「貴様、魔族を愚弄するか」
「エラナがそう言うなら、構いませんが、レヴィナは私の配下の中でもトップクラスですよ」
「わかっていますよ」
「いいでしょう、中庭に場所を移動しましょうか」
そう言い、マースは二人を中庭に連れてくる。

「エラナ、先に言っておきますが先ほど私に使った術はここでは遠慮してくださいよ。城ごと消滅しては困りますからね」
マースが忠告する。
「使いたくてもそこまで魔力は回復していませんからね」
そう言い、エラナは中庭の中央に立つ。
「あのエラナと申されたもの、この戦闘能力測定機で計ったところ2M、人間としては驚異的な力があるようですが、レヴィナ様は13M、赤子と大人ほどの差のあるものを戦わせるのですかな」
老齢の魔族がそう尋ねる。
「そんなもので図れるものではありませんよ。特に彼女の場合はね」
「手加減はしませんよ」
レヴィナが確認するようにたずねる。
「構いませんよ。負けて全力でなかったといわれても困りますからね」
挑発するようにそう言う。
「そのままで戦うつもりですか」
マースが尋ねる。
「このままで十分ですよ。回復したといっても高位魔術を使えるほど回復してませんから」
「自信があるならいいでしょう。始め!」
「消滅してから後悔するがいい、超熱魔閃砲(フレア・キャノン)!」
レヴィナはいきなり最高の術を打ち込んでくる。魔神獣王が使ってきたものとは比べ物にならないほど強力なものだった。
「これが答えです」
そう言い、それをエラナは受け止めるとそれはエラナの体に吸い込まれるように消滅する。
「なっ!」
「何のための挑発だと思ったのですか。私には攻撃するだけの魔力もありませんよ。魔力鏡反衝!」
先ほど受け止めたものをそのまま打ち返す。
「ちっ、魔法消去(マジック・イレイズ)!」
レヴィナはあわててそれを打ち消す。
「生命界の魔力濃度が低いところでは使えませんでしたが、ここ魔界では私でも使えないことはありませんでしたね。ついでに魔力もほぼ回復できましたが、まだ続けられますか」
そう言い、エラナはローブを脱ぎ捨てる。
「戦闘能力値、7Mですと」
「おそらくまだあがりますよ。ここ魔界なら」
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
エラナは一気に魔力を解放する。
「なっ、13Mですと、レヴィナ様とほぼ互角の力というのですか」
「やはりね、連れてきたかいがありましたね」
満足そうにマースが言う。
「参りました」
そう言ったのはレヴィナだった。
同等の力を持ちエラナには魔力鏡反衝がある以上、レヴィナに勝ち目は皆無といっていい。
「レヴィナ、負けを認めた以上、貴女はエラナの指揮下に入ってもらいます。いいですね」
「畏まりました」
「ここ魔界は実力主義、従わせるのものの数もここ魔界では重要になります。あなたの最初の部下、どうするかは貴女しだいです」
「さしあたっては少し休ませて頂けるとよいのですが」
「畏まりました」
レヴィナはそう、エラナに頭をさげ部屋へ案内する。
「あのもの本当に人間ですか」
老齢の魔族がマースに尋ねる。
「人間といえば人間ね。既に人間としての領域は超えていますけれどね。最も法皇セレネイドの血を引いている以上は神族ともいえますけれどね」
「神族ですか」
「私の一族といえば一族になりますけどね。エラナは気がつかなかったようですが、我が軍のナンバー3になったのですからね。どちらにせよ面白くなりますね」

部屋に案内されたエラナはレヴィナを退出させた。
「さすがに、魔力鏡反衝は簡単に使えるほど甘い技ではないわね。これがメリアが言っていた魔力酔いですか。あそこで解放しなければ危険だったわね」
さきほどエラナが魔力解放して測定機が示した値は、吸収して反射できなかったレヴィナの魔力で、エラナ自身の魔力ではない。実際の彼女の実力は放出する前の7M前後でしかない。
「とにかく今日は休まないと体がもたないわね」
そう言い、エラナはベットに横になるとそのまま眠りについた。
翌日エラナが目を覚ますと魔力のほとんどは回復していたが、朝からレヴィナの配下であったものが彼女の元を訪れていた。
「レヴィナ様は我々に貴女に従うように言われたが、だからといってそれに素直に従うことはできぬ」
レヴィナの配下でナンバー1だったその魔族はそう言った。
「わかりました。午前中はマースさんの元へ行かねばなりませんから、午後からお相手しましょう」
「わかった」
そう言い、その魔族は出て行き、しばらくしてレヴィナが入ってきた。
「申し訳ありません。私の配下が失礼なことを」
「人間である私に素直に従えないのもしょうがないでしょう。午後には従わせて見せますよ」
そう言ってみたものの今のエラナ以上の力を持った魔族であることは確かだった。
(光闇消滅(メガル・クラスト)は、使うには危険すぎる大技だからマースさんは許可してくれないでしょうね。といって、光闇術以外では手も足もでないでしょうね。ならば、実験段階とはいえあの技しかないでしょうね)
「エラナ様」
「ん?」
レヴィナに呼ばれ鸚鵡返しに返事をする。
「マース様の元へ行かれるお時間です」
「そんな時間ですか、レヴィナ、貴女も昼からは同席するといいでしょう。面白いものを見せてあげますよ」
「わかりました」
エラナはすばやく着替えるとレヴィナに案内されマースの待つ部屋へ向かった。
「完全ではないようですが、ほぼ魔力は回復したみたいね」
「9割程度は回復できてます。昼ぐらいには完全に回復できると思います」
「ならばいいでしょう、貴女のことだからレヴィナの配下達からの挑戦はすでに受けたのでしょう」
「断ることもできないでしょう。昼から中庭を使わせてもらってもよろしいですか」
「構わないけど、昨日禁じたあの技を使わない限りはね」
「使いませんよ。あれは未完成技ですから。ただ実験段階の技があるのでそれは使わせていただけると助かります」
「興味があるわね。いいでしょう。ただし城に被害を出さないようにしてくださいよ」
「できる限りの努力はします」

昼過ぎ、エラナは中庭に現れた。すでに観戦しようと多くの魔族が集まっていた。
「ほとんど私の部下ですが、あちらに見えるのがマース様の最高司令官のオリベ様です」
レヴィナはそうエラナに囁く。
「彼の力はどの程度です?」
「戦闘能力測定機での数値でしたら19Mです。ちなみにマース様が380Mです。しかし、確かにそのローブで力を抑えているようですが、2M程度の力しかないようですが、それで戦われるつもりですか」
「魔力があっても制御できなければ意味がありませんからね。それにこれからやることは制御できる範囲の魔力でないと厳しいですからね」
「貴女がそれで戦われるなら何も申し上げることはありまえんが、あまり相手を甘くみないことですよ」
「人間として私が人間を超える力を手に入れられた理由をみせてあげますよ」
そう言い、中庭の中心に立つ。
「結果はすでに見えているとは思うが、逃げずにきたか」
「そう思うならかかってきなさい」
そう言い、杖でなく武の構えをする。
「はじめ!」
レヴィナが合図すると同時にエラナが動いた。
「はぁぁぁぁっ!」
瞬間的に間合いをつめると同時に拳の連檄を打ち込む。
「がぁっ!、なんだと」
そのまま膝をつく。
『魔道武術・聖拳煉獄衝!』
「エラナ殿の戦闘能力数値は2Mを示したまま、ただの拳の連檄であれほどの攻撃を」
「面白い技を使いますね。殴る瞬間だけ最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)の力を拳に送り込む技ですか。あまりにも瞬間すぎて測定機では計測はできないでしょが、一撃一撃が最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)と同等の威力がありますよ。それにあれならば放出系の技でないので、余計な魔力は一切使う必要はない」
マースは見ただけでそこまでエラナの技の正体を見破っていた。
「うまく隠したつもりだったのですが、マースさんには隠しきれませんでしたか」
「たかが2M程度と油断したわ。本気でいかせてもらおう」
「どうぞ、本気であろうと私のこの力の前ではどうすることもできないでしょうから」
同時にエラナは空間を作り出し、中庭から切り離した。
「空間形成ですか」
「被害がでると困りますからね」
そう言い、エラナは右手に神皇の力、左手に魔皇の力を呼びだしていた。
「エラナ、それは」
「マースさん、見ていてください。光闇消滅(メガル・クラスト)と同時に私が生み出したもう一つの技を」
そう言うと、二つの力を組み合わせ無を生み出す。
「なんだあれは」
『無滅斬(ラグナロク)!』
無の刃がエラナの右手に生み出される。
「無の物質化能力」
「さぁ、これに向かってくる勇気があるならば向かってくるがいいでしょう。ただし、その場合、貴方の滅びは約束されるでしょう」
「人間ごときのそんなこけおどしの技に負けはせぬわ」
「そうですか」
同時に無の刃を二つに分け二刀流に持ち替え、攻撃がエラナにあたる瞬間それは発動した。
『魔道武術最終奥義・無滅幻影剣舞!』
「おろかな、相手の技の本質も見抜けぬとは、あれは絶対防御不可能な技、回避すること以外に防ぎようがない。エラナが強いのは戦闘能力が高いだけじゃない。魔導師としてはずば抜けたあの敏捷性こそが彼女の強さの秘密です。この中では私ぐらいでしょうね見えていたのは。おそらく斬られたことも気がついていないでしょうね」
そこにはエラナ一人だけたっており魔族の姿はなかった。
「さて、他に相手をしたいものがいるなら相手しますよ」
現在この場で、エラナが位が上なのはマースとオリベの2人、マースはともかくオリベはエラナの無の力に恐怖を感じ動けずにいた。
申し出がないのを確認するとエラナは展開していた空間を解除した。
「貴女の力が人間として超えてるのは確かですが、魔力だけなら他に存在しないわけではない。ただ空間形成、無の制御を同時にこなす魔力キャパシティーは高位魔族をはるかにしのぐ。同時に制御できる魔法は私に匹敵できるかもしれませんね」
マースが前に進み出る。
「さすがですね」
そう言い、両手で弧を描くと同時に七色の光球が現れる。
「すべてが別々の魔力波長を持った光球、しかも一つ一つが超熱魔閃砲(フレア・キャノン)級の威力を持っているとは」
超熱魔閃砲(フレア・キャノン)級の魔法となれば、高位魔族でも同時に放つのも難しいそれをエラナは7つの波長で生み出し制御してみせたのだ。
「波長が違うゆえ、魔法消去(マジック・イレイズ)では同時に処理できない。魔力鏡反衝でも違う波長の魔力は同時には吸収できない。よほど魔力差がないかぎり魔力防御壁すら貫くことは可能です」
「ためしに撃ってみませんか」
「防げるとわかっている相手に使っても意味がないでしょう」
そう言うと同時にエラナの周りに展開していた光球が消える。
「マース様、北王ディクラスが生命界への侵略の為に出撃されたとのことです」
伝令の魔族がそう伝える。
「生命界への道は私の結界で防いでいますが、ディクラスならばそれを破ることはわけがないでしょうからね。エラナ、どこへ行くつもりです」
「貴女にお仕えするとはいいましたが、私が最も最優先させるのは結界の修復とこれ以上の生命界への魔族の侵入を防ぐのが私の務めです」
「貴女一人でどうにかできる相手ではありませんよ。ディクラスは我が父、闘神フォークが4人の腹心の1人、普通の魔族とは格が違いますよ」
エラナはマースの言葉を聴き終わらぬうちに飛び出していく。
「エラナ様」
レヴィナがあわてて追いかける。
「先にエラナがこちらに来ていると聞いて来てみればまったく忙しい人ですね」
「メリア、来ていたのですか」
生命界にいるはずのエラナの姉弟子のメリア・ルキシードである。
「先ほどですが」
「体のほうは大丈夫なのですか」
「生命界では回復できない魔力もこちらでは無尽蔵に使えますから心配はいりませんよ。私はエラナを追いかけます」
そう言うとメリアもエラナが飛び去った方向へ飛んでいく。
「今のも人間のようでしたが、エラナ殿より戦闘数値は高そうですが」
「純粋な魔導師としては人間としてはトップクラスですよ。魔道だけならばエラナ以上、ただ武器を持っての戦闘能力がまったくありませんから総合戦闘値だけで見れば4M程度ですが、魔道だけの戦いなら私でも戦いたくない相手ですよ」
「マース様がですか」
「オリベ、物理攻撃で彼女達をサポートしてあげなさい」
「畏まりました」
オリベはそう言うと後を追った。
「いざとなれば私も出てかねばならないかもしれませんね」
エラナ達が飛びさった後を見てそう言う。

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