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第三部  第一章 天帝軍

帝国と公国との国境はここ数年は争いもなく静かだったが天帝ブレイドが現れたことにより戦乱の地になろうとしていた。
東から帝国軍、西から公国軍がそれぞれ進軍していた。
帝国軍はエラナ率いる10万の兵力を筆頭に皇帝ベネラルが率いる10万、合計20万の兵力、一方公国軍はロンド・ラフォート率いるサフィース国軍20万だった。
天帝軍は東の帝国軍にたいしては東方将軍アリッサ率いる10万、西の公国軍には西方将軍リュース率いる10万が出撃してきた。
国境に到着するとエラナは国境の砦にはいると兵の休息を取らせるとともに戦の準備を進めた。
「申し上げます。天帝軍・東方軍がこちらに向かっているとのことです。ですが兵ではなく巨大な城がこちらに向かっているとのこと」
「城が動いているのですか」
エラナが尋ねる。
「まさか浮遊城、空の守護一族」
フィーラが驚き答える。
「知っているの」
「もともとは私の風一族の守護一族です」
「どの程度の力をもっているの」
エラナが尋ねる。
「重に空中戦を得意とする一族です。普通の戦い方が通用する相手ではありません。対抗できるとすれば天馬騎士団ぐらいのものでしょう」
「厄介な相手ね」
「私が知る限りは一族自体はそれほどの数は多くはありません。多くても100名程度です」
「失礼します」
そう言い一人の魔法騎士が入ってきた。
「サイバー、どうしたのです」
「天帝軍の一軍がすでにこちらに進行してきているとのことです」
「数はどの程度ですか」
フィーラが尋ねた。
「2万程度です」
「こちらの様子を伺っているようですね。おそらく先鋒隊、天帝軍の実力拝見させてもらうとしますか」
そう言いエラナは立ち上がる。
「エラナ様が行かれるのですか」
「天帝軍の戦い方を直接見るにはそのほうがいいでしょう。ラルク、こちらは任せますよ。私が魔法騎士団1万を率いて出ます」
「畏まりました」
エラナはすぐに魔法騎士団を集めると出撃した。これだけの魔法騎士団が正式な軍勢として出撃するのは始めてのことだった。先の帝都決戦の時には2500騎しかなかった。

魔法騎士団はさきの魔神獣の戦いの時にエラナが再生させた騎士団で、魔道師としての実力と騎士としての両方の実力を備えたエリート集団である。
かって存在した初代皇帝王妃の魔法騎士団は帝国最強と呼ばれる黒騎士団よりも強かった。
魔法騎士団と天帝軍が遭遇したのは日も暮れ始めた夕刻だった。
この時代、先鋒戦ではしばし大将どうしの一騎打ちが行われることが多かった。
エラナもその戦い方をしばし行い、今回もエラナは自ら前に出た。通例、大将が文官な場合は代理のものが行うか、最初から代理同士で行わせるのが通例だが、エラナは常に自ら前に立った。
「我はガラバード帝国宮廷魔術師がエラナ・フレア、私と一騎打ちで勝負するものはおりますか」
エラナは槍を手に前に進む。
「我らがお相手いたそう」
そう言い4人が前に出てくる。
「天帝軍部軍将東天がトール」
「天帝軍部軍将南天がナフィス」
「天帝軍部軍将西天がセフィス」
「天帝軍部軍将北天がスノーズ」
「エラナ様、我らもでます」
そう声が聞こえたかと思うとエラナの前に仮面を付けた3人が姿をあらわす。
「我ら帝国魔道学院魔軍将!」
彼らこそ常にエラナの影として情報収集をはじめ帝国貴族摘発の役目をはたし、単身敵の中に突入し任務を遂行する特殊部隊、正導師であるフィーラも彼らが誰であるかは知らされていない。
彼らの素顔を知るのは彼らとエラナだけである。
「あれが魔軍将」
フィーラがそう呟く。
「ふっ、行きますよ」
エラナがそう言うと、エラナと魔軍将は同時に動く、対して天帝軍の4人も動いた。
勝負は一瞬だった、エラナ、魔軍将の4人同時に天帝軍4人の首を落としたのだ。
そのまま4人は敵軍に突撃する。だがここでエラナは魔法騎士団達に突撃の合図は送らなかった。
この4人に他の魔法騎士団は必要なかった。それぞれが数万の騎士の働きをするほどの実力者なのだ。
天帝軍が敗走するまでに30分もかからなかった。4人で2万もの天帝軍を敗走させたのだ。
「ご苦労様です」
戻ってきたエラナをフィーラが出迎える。
エラナは一人戻ってきた魔軍将の姿はない。
「陣に戻りますよ」
「はい」

「フィーラ、今の貴女が考えることではないですよ。いずれ時が来れば教えてあげますよ」
エラナはフィーラにそう呟いた。
「すいません」
フィーラは魔軍将の正体を考えていた。魔法騎士団の1人として来ていることは間違いないだろうが、あれだけの働きをできるとなると将軍クラスであるが、フィーラにそのこころあたりは無い。
「1時間後に軍議を行います。各将に伝えなさい」
「畏まりました」
そして1時間後、各将が集められた。
「明日には敵の本体が来るでしょう。おそらく全軍でね」
「先鋒隊を4人で戦ったのはそのためですか」
魔法騎士団副官アクア・セイレールが尋ねる。導師級の実力と騎士との実力で若くして副官となったが、彼女にとっては今回が初陣となる。
「そなたの初陣、戦えず不満だったのか」
魔法騎士団副官サイバー・ブラウスが言う。先の帝都決戦では魔法騎士の1人として戦ったがそのときの功績で副官となった。魔道ではエラナの兄弟弟子にあたる。
「二人とも戦えなかった不満はわかりますが、次は戦わせてあげますよ」
エラナは二人にそう言う。
「戦いが無いほうが本当はいいのですけれどね。戦いを望む相手がいるならしかたありませんね」
神官騎士団長ラルク・ハーパリンがそう言う。神官騎士団は神殿を守る騎士団、彼らの神を守るためならば全力を持って戦う。七英雄にこそなっていないが、ラルクには同等かそれ以上の実力を持っている。
「そう言うけど貴方も戦いに飢えているんではなくて」
「そうかもしれませんね」
ラルクは素直に認めた。ラルク自信、先の戦いではまだ若かったこともありあまり前線では戦わせてもらっていない。
「問題は、空の守護一族ですね。数こそ少ないそうですが、どの程度の実力を持っているかが定かではありません」
「エラナ様、私を使者として行かせてください」
フィーラが名乗りでる。
「どうするつもりです」
「私の風一族の村は滅びましたが私が残ってる以上、風一族が完全に滅んだわけではありません。先の族長であった私の父が死んだ以上、私が風一族の族長です。説得してこちらに味方するように伝えます」
「失敗すれば、生きて帰れる保障はないのですよ。認めるわけにはいきませんよ」
「これは精霊一族と守護一族の問題、私が黙って見ているわけにはいきません」
真剣な目つきでエラナに言う。
「いいでしょう。ただし、これを持って行きなさい」
そう言い、ネックレスを手渡す。
「これは?」
「もし命に危険がおよぶことがあるならその魔力を開放させなさい。いつでも私の元に戻ってくることができます」
「ありがとうございます」
そう言うとフィーラは部屋を出て行った。
「よろしかったのですか」
これまで黙って話を聞いていたサリナ・フローリアが尋ねた。
「フィーラが言うとおり精霊一族と守護一族の問題に私達が口を挟むことはできないでしょう」

砦を後にしたフィーラは一人浮遊城に向かった。
風一族であるフィーラは容易に浮遊城に到着した。浮遊城はもともと結界を張っているが風一族であるフィーラにはまったく意味をなさない。
「我は風一族が族長フィーラ・ミレニア、貴殿らの主東方将軍アリッサに会いに参った」
城内に立つとそう大声で叫ぶ。
多くの兵がフィーラを取り囲む。
「守護一族の者が我が精霊一族に刃を向けるか」
「風の一族は滅びた一族、貴様が風一族であるはずがない」
「信じないのなら、汝らの命をもってそれを知るがいいでしょう」
同時にフィーラを風が包み込む。
「我が呼びかけに応じよ風精霊王シルフィード!!」
風は刃に変わりフィーラを取り囲んでた何人かが瞬時に切り裂かれる。
「貴様、よくも」
隊長らしき男が剣を抜いた。
「私は忠告しましたよ」
フィーラがそういった瞬間、その隊長の首は宙を舞っていた。
それを見ていた一人の女性があわてて飛んできてフィーラに膝を折る。
「部下の者が失礼をいたしました。空の守護一族が王アリッサと申します」
アリッサは膝をつき臣下の礼をとる。
「単刀直入に申します。直ちに兵を引き私に従いなさい」
フィーラはこれまで王として振舞ったことはないが、血筋かその威厳は十分にあった。
「恐れ多くもこちらに兵を向けたのは帝国かと」
「帝国軍エラナ・フレア軍副官、それが今の私の立場です。私の一族は魔神獣によって私以外はたしかに滅びました。ですがその魔神獣を滅ぼしたのはエラナ様、私は義に従っているまでです」
「わかりました。風の巫女様に従うが我が一族の勤め、巫女が御戻りになられたならそれに従うが我が勤めです」
アリッサはフィーラに対する忠誠を示した。
「アリッサ、貴様天帝ブレイド様に忠義を誓ったのではないのか」
先ほどフィーラに殺された隊長より各上だと思われる男がそう言い放つ。城内にいるすべての兵がアリッサの直属の配下ではない。
「私が本来誓うべき忠義はこちらのフィーラ様、この忠義はすべてに優先する」
城内にいる兵でアリッサ直属の部下は一族である数百人のみである。殆どの兵がアリッサとフィーラ目掛けて弓を引く。
「弓で風の守護一族の王を倒せるとでも思っているのですか」
風の力に守られているフィーラに弓矢を命中させることはできない。フィーラが念じれば弓矢を打ち込んだ相手に打ち返すことすらできる。
「フィーラ様のお手を煩わせることもありません。ここは私の浮遊城、こんな力もあるのですから」
その瞬間兵士達があたりから消える。
「強制排除ですか」
消えた兵士達は城の下に移動していた。
「城内で戦えば私の民にも被害がでますからね。フィーラ様、御協力願えますか。貴方が私が仕えるかにあたいするかどうか見せてもらいますよ」
「いいでしょう」
アリッサとフィーラは城の下の兵の下へ降りていった。

「2人で10万の兵を相手にしようというのか」
将軍らしき男がそう言う。
「先の戦いで帝国軍4人に全滅した軍相手に遅れをとるつもりはありませんが」
フィーラがそう言う。エラナと魔軍将、帝国軍の中でも突出した実力者だが、フィーラも正導師の位を持つもの、エラナほどの魔力はないが、魔軍将3人と互角に戦うだけの魔力は有している。
「私一人でお相手しても構いませんよ」
アリッサはそう言い放つ。
「なんだと」
「ブレイドが私に他の者に与えなかった権限をなぜ与えてと思うのですか」
アリッサは他の四方将軍と違いブレイドの許可なく兵を徴収することもできたし、有事以外の報告の義務もなかった。
「なに」
「怖いんですよ。私の存在がね。私だけですからねブレイドと対等にわたりあえるのは」
アリッサはこれまで隠していた気配を一気に開放した。
『陛下と同等に近い力はあるかもしれませんね』
そうフィーラは感じとった。もっともフィーラが本気のベネラルを見たのは先の戦いの時のころで現在の実力まではわからない。
「多勢に無勢のご様子、よろしければ加勢いたしましょうか」
声は空から聞こえた。
「ラクレーナさん」
先の戦いで活躍したラクレーナは、戦後アラール共和国に女王として迎えられたラクレーナ・アルシードであった。エラナの客将であるころから彼女のことはよく知っていた。ラクレーナがエラナと対等以上の力を持っていることも知っていた。
「あの七英雄のラクレーナか」
先の魔神獣との戦いで生き残った七人はいつしかそう呼ばれ、それは帝国・聖王国だけではなく全土に伝わっていた。
「やれやれ、様子を見に来て正解でしたか」
「エラナ様」
「引け!」
エラナの名を聞いて、天帝軍はあわてて逃げ出した。
七英雄の話は大げさに伝わっているのか、このあたりでは七英雄は兵数十万に匹敵する力を有しているとまで言われている。その七英雄が2人同時となればそのこの兵をもってしても恐怖を感じさせた。
「まったく、まるで人をばけもの扱いですね」
エラナはため息まじりにそう言う。
「その名前だけで兵が引くのですからね」
ラクレーナがそう言うと、エラナの姿をしていた者が姿を変える。
「アクアさん」
魔法騎士団副官のアクア・セイレールだった。
「エラナ様の姿で様子を伺い、必要ならその姿を見せよとのことでしたので」
「立派な魔法騎士になったようね」
ラクレーナはアクアにそう声をかける。
「お久しぶりです。ラクレーナさん」
アクアは修行時代はフレア公爵領の学院にいたため、ラクレーナとは何度か話をしたこともあったし、剣の手ほどきを受けたこともあった。
「エラナは近くまで来ているのですか」
「陣におられるとは思いますが」
「私も合わせてもらいましょう。フィーラ様がお仕えするに相応しい方か」
アリッサが真剣な表情でそう言う。
「御案内いたします」
アクアが申し出る。

アクアはフィーラとともに、ラクレーナとアリッサをつれて陣に戻った。
「レーナ、来ていたの」
エラナは久しぶりに会う旧友を迎えた。
「空の守護一族が王、アリッサとと申します」
アリッサはそう挨拶をする。
「貴方がアリッサ殿ですか、話はある程度フィーラから聞いています」
「私がここへ参ったのは、貴方がフィーラ様がお仕えするのに相応しいか否かを見定めるため、一手お相手願いたい」
「構わないわよ、本気で戦ったのはヴェルナス以来ですから手加減できるかわかりませんよ」
エラナは魔軍将ヴェルナスの戦い以降、学院の運営や帝国の政務、事業の展開をメインとしており本気で戦ったことはない。細かい戦いはあるものの彼女より圧倒的に実力を持たない相手だけであった。
「本気の貴女が見たいですから」
「お待ちください。私がお相手いたします」
アクアが名乗りでる。
「私はエラナ殿、貴方と戦いたいと」
「アクアと戦えばわかりますよ。魔道においても剣技においても私の弟子なのですからね」
「いいでしょう、もし私が勝てばお相手願いますよ」
「いいですよ」
そう言うと同時にエラナは結界を展開した。ラクレーナ、アリッサ、フィーラ、アクアと自らを含めた5人だけがいる空間を作り上げた。
「時空空間魔法ですか」
「派手な戦いになって陣に被害が出ては困りますからね。アクア、力を解放しても構いませんよ。ここにいるものなら知っても問題ないでしょう」
「ありがとうございます」
同時にアクアはこれまで隠していた気配を開放させ、仮面を付けた。
「えっ、まさかアクアさんが」
フィーラが驚く。
「魔軍将が一人、そして時には私の影を勤める役目を与えています」
エラナはフィーラにそう告げる。
「アクア、今の貴方なら使いこなすことができるでしょう」
エラナはそう言うと、一振りの剣を投げて渡す。
「はい」
そう言いアクアは渡された剣を抜く。同時に剣は大きさを変え姿すらも変化し始める。
「魔神獣西方軍王ラスティールが持っていた霊木剣、ラスティールはその剣の真の使い方には気がついていなかったようでしたけどね」
その剣はエラナがラスティールを倒したときに手に入れたものだったが、エラナも剣の使い方こそわかったが、力の波動の違いゆえに使いこなせなかったものだ。
だがアクアはその剣を完全に開放できているようだった。
「その剣、森の守護一族、エルフ族のものですね」
アリッサはその剣の正体を見抜いた。
「我がセイレール家は古くはエルフの血を引く一族、この剣は懐かしい故郷を思い出すようです」
「ならば私も本気でお相手しなければならないようですね」
そう言いアリッサは剣でなく、巨大なハープを呼び出すが、アリッサはそれを片手で支えていた。
「吟遊詩人アリッサ、彼女のもう一つの名前です」
フィーラはそうエラナに告げる。
同時にアリッサはハープから剣を引き抜く。
「参ります」
そう言い動いたのはアクアだった。
「速い」
ラクレーナが感嘆する。
アクアは力の限り剣を振り下ろした。だがアリッサはそれを軽く受け流した。だが同時にアクアの剣から触手が伸びアリッサの剣とアクアの剣が結び付けられる。
同時にアクアはアリッサのわき腹目かげて蹴りを繰り出すが、それを左手で受け止める。
「なるほど、自ら名乗りでるだけはありますね」
触手から開放されるとアリッサは間合いを取った。
「アクアでは荷が重いですよ」
ラクレーナはそうエラナに呟く。
「わかっていますよ。アクアもかなりの実践は積ましてきましたが、アリッサはそれ以上の経験を持っているようですからね」
アクアがけして弱いわけではない。だがそれ以上にアリッサの実力があるそれだけだ。
「アクア、私が代わりましょう」
そう言い名乗り出たのはラクレーナだった。
「わかりました」
アクアは素直に下がった。
「今度は貴方がお相手ですか」
「はい」
同時にラクレーナが動いた、鋭い突きを繰り出すがアリッサはこれを受け止めた。
「レーナの突きを受け止めるとは」
「この突きをとめられるのも久しぶりですね」
「本気できたらいかがですか」
アリッサはそうラクレーナに言う。
「あまりにも手加減するのも失礼ですね」
そう言い間合いを取るとラクレーナはマントと肩当をはずし、地におとすとそれは地面が悲鳴を上げたような音をたてた。
「えっ」
先ほどの突き、ラクレーナがある程度手加減していたことはわかったがそこまで動きを制限していたとは思えなかった。
「ウェイトム金製の肩当とマントに隠したバネ、その状態で3年前と同等の戦いができる程度にはなりましたが、その枷をはずしたら私もどうなるかはわかりません」
ラクレーナが3年前から変わった様子は見受けられない。だが、ウェイトム金は鉄の100倍の重さを持つ金属、彫刻まで施され飾りのようにしか見えないがそれが100キロ近い重量があることは確かだった。
「行きますよ」
その瞬間、アリッサの剣が宙を舞うと同時にラクレーナの槍先はアリッサの首筋にあった。
「この私が動きを捕らえきれなかった・・・」
エラナは動体視力にはかなりの自信があった。先の戦いでも完全に力を解放したラクレーナの動きはかろうじて追えていた。それが、力を解放していない彼女の動きを捉えきれなかったのだ。
「参った」
アリッサは負けを認めた。
「枷をつけて3年前と同等のスピード、2倍のスピードは出せているでしょうね。ただそんなエラナも随分と力をあげていますね」
「貴方には隠せませんか」
そう言ってエラナはローブを脱ぐと同時に隠していた力を解放した。そのローブの裏には無数の呪符が貼り付けられていた。
「すごい」
アリッサが呟く。
「せっかくですエラナ、久しぶりに手合わせをしてみますか」
「いいでしょう」
エラナはそう言い、法皇の杖を呼び出す。
対してラクレーナが手にしたのはエラナがラクレーナの為だけに作り上げた天魔剣だった。
『フォルク流剣術風技奥義・回転剣舞!』
先に技を繰り出したのはラクレーナだった。
「魔力剣(マジック・ブレード)!」
それをエラナは左手に出した剣で受け止める。
「魔炎弾(カオス・フレイム)!」
防御と同時に撃ち放つ。
だがラクレーナは近距離のその状態からそれを避け間合いを取ると同時にまっすぐエラナに切り込む。
「聖十字漸!」
『フォルク流槍術風技・閃光裂破!』
エラナの杖は剣へと姿を変えラクレーナの一撃を受け止める。
「あれが七英雄と呼ばれるものの戦い・・・次元が違いすぎる」
アリッサがそう呟く。
「あれでも半分程度の力しか使っていませんよ」
フィーラがそう告げる。2人は本来の力の源である法皇の力は一切使用していない。
「えっ」
「すべての力を出し尽くしたら結界ごと消し飛ばしてしまいますからね」
エラナはそう言うが、結界を維持しながらエラナはあれだけの戦いをしていたのだ。
「ある程度は追いつけたかと思っていましたが、また貴方は私の届かないところまで言ってしまった」
ラクレーナはそう言い、マントを拾い上げ身に着ける。
「私にはいかなる相手にも勝ちうる力が必要、以前も言ったことです」
「エラナ、戦ってみてわかったけどヴェルナスを喰ったわね」
いつの間にか槍を拾い上げたラクレーナは槍を突きつけそう言った。
「レーナに隠し事はできませんか」
同時にエラナの額に目が現れる。
「人として侵してはならない最大の禁忌を侵した印・・・」
アリッサが呟く。
「私の最大の罪は星見として歴史を知りながら星の流れを断ち切る罪」
そう言いエラナは脱いだローブに袖を通し、額の目も隠す。

エラナの結界の中から戻った5人はアリッサから天帝軍の陣容を聞いていた。
「ある程度の実力を持ったものは守護一族ぐらいです。数も全部で数千もおりません」
「精霊一族と守護一族の基本的な関係はどうなっています」
エラナが尋ねる。
「それは私が説明します」
そうフィーラが切り出す。
「まず精霊一族は、地水風火の4種族のみです。守護一族は各精霊一族に対して普通は2つの一族を持っています。私の風一族の場合だけはアリッサの空の一族しかおりません」
「何か理由でもあったのですか」
エラナが再び尋ねる。
「創世の時代、風一族は2つの一族を生み出せるところを1つの一族にそれだけの力を与えただけです。アリッサの強さの秘密でもありますけれどね。ただ他の精霊一族は1つの一族だけに力を与えれば自らと同等の力を得ることを恐れた為に2つの一族を作りました」
フィーラはそう説明した。
「そうするとアリッサの力はおよそ精霊一族の王と同等ということですね」
「そうなりますが、精霊一族には精霊王になる力がありますゆえ、必ずしも同等とはいえません」
アリッサが答える。
「天帝ブレイドはアリッサと同等の力があるといいましたが、ブレイドはどこの一族なのですか」
「ブレイドはどこの精霊一族にも仕えない影の一族ですが、守護一族の1つであることには違いありません」
「あと、ブレイドが天帝を名乗ったわけは」
「もともとは人との交わりを禁じてきた私達ですが、精霊一族の滅亡が彼の野心を動かしたものだと思いますが、これだけの兵力を集めるのに必要な資金等を考えると誰かが手を貸しているものと思います」
「アクア、他の魔軍将とともに資金源を探ってください」
「畏まりました」
アクアはそう言うと姿を消した。
「どちらにせよ数日中には天帝軍と一戦交えることになるでしょう。そのための準備はすすめておいたほうがいいでしょう」
エラナはそう言い、ラクレーナに視線を向ける。
「レーナ、貴方はどうします」
「私は様子を伺いに来ただけですから、私の国に影響が無いようなら引き上げます。たとえ私一人が参加したとしてもアラール国が参戦してくると考えられるかもしれませんから」
アラール国は1万人程度の国だが、防衛の為の軍は持っているが、侵略戦争をしないことを国家の信念としている。ラクレーナがたとえ個人でエラナを手伝ったとしても、女王である彼女の行動は国家の行動とみなされる。
「わかりました」
エラナ達は天幕の外までラクレーナを見送るために出てきた。
「では、私はこれで失礼させてもらいます」
ラクレーナは天馬にまたがりそう言う。
「おりを見てまた遊びに行くことにするわ」
「待ってます。そうエラナ、未来はかわりませんか」
「星の流れのままに」
「そうですか、では」
そう言うとラクレーナは天高く舞い上がり、夜空に消えていった。

天帝軍10万が進軍してくる。その情報がエラナの元に伝えられたのは2日後のことだった。前日には皇帝ベネラルも合流し帝国軍は20万までに膨らんでいた、
「天帝軍10万、こちらに向かって進軍してきているそうです」
エラナが各将を集めた軍議で語り始める。
「兵力としてはこちらが有利、正面からあたりますか」
ラルクが尋ねる。
「こちらは我が帝国軍の主力、小細工などなしに実力を見せ付けるのもいいでしょうね」
魔法騎士団、神官騎士団、黒騎士団、帝国軍の精鋭部隊といえる。
「小細工が必要ないなら正面からぶつかってもよかろう」
ベネラルがそう言う。
「陛下がよろしければ、そういたしますが」
「俺も久しぶりに戦わせてもらうぞ」
「陛下自ら戦う必要などありませんよ」
「俺が不覚を取るとでも思っているのか。それにそなたも帝国軍ではナンバー1であることを忘れてはおるまいな」
ベネラルは帝国のナンバー1、エラナは帝国軍のナンバー1、先の戦いで自ら先頭に立って戦ったエラナにはそれ以上言えなかった。それにベネラルの実力はわかっているつもりだった。ベネラルに勝てるほどのものがいるとは思えない。
「わかりました。ただし私もお供させてもらいます」
「よかろう」
翌日、帝国軍と天帝軍は荒野にて相対した。
帝国軍の先陣は皇帝ベネラル率いる黒騎士団とエラナの魔法騎士団、アリッサも客将として同席している。
対して天帝軍は、西方将軍リュースの軍勢だった。リュースの姿は無いようだが副将の4将軍の姿があった。
この日は大将どうしの一騎打ちは行われず戦は開始された。
すぐに乱戦となりベネラルも何人かの天帝軍を相手するが、ベネラルの1撃に絶えられるほどの実力者はいない。
エラナ、アリッサの実力もありベネラルが直接相手することは殆どない。また黒騎士のサーディン、ブラッサムと帝国軍には実力者が数多くいた。
だが、そこへベネラルへ突進してくる敵将がいた。
「ほう、相手になってやろう」
そう言い、ベネラルが槍を繰り出すが、この戦で初めてその一撃を受け止めた。
「七英雄と呼ばれるだけはありますな。たいした一撃だ」
「ベネラルの一撃を受け止めるほどの相手がいたとはね」
観戦していたエラナがそう呟く。
「見覚えがないわね。どこの守護一族・・・」
アリッサがそう呟く。
「えっ、まさか」
同時にエラナはベネラルのもとへ馬を向ける。
「はぁぁぁっ!」
エラナは魔力を込めた剣戟を放つ。だが、それは敵将の馬を切り捨てただけだった。
「なるほど2人がやられたわけだ」
少し離れた場所に立ち敵将はそう言う。
「また地上に姿を現してきましたか」
「そう言うことか」
言われベネラルは納得する。
「私の名はビシュール、北方軍王ビシュールと覚えておいてもらいましょうか」
「やはり魔神獣でしたか。ならば全力で相手しなければならないようですね」
エラナは隠していた魔力を一気に開放する。
「なるほど、ベリザード達がやられたわけだ」
その声はいずこからともなく聞こえた。
「陛下」
ビシュールがそう呼ぶとそれは姿を現した。
「フィーラ、全軍を撤退させなさい」
フィーラにそう命令した。
「我が鎧、ここへ」
ベネラルがそう叫ぶと目の前に槍と鎧が姿を現し、ベネラルの体に装着される。
先の魔神獣の戦い後に製作者であるエラスティーナがいつでも呼び出せるように改良を行い。いかなる場所からもベネラルの呼びかけに応じるようになっている。
「最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
エラナのその一撃が戦いの開始の合図となった。
「ぬるいわ」
気合だけでエラナの術をかき消す。
「うぉぉぉぉっ!」
ベネラルは闘気を槍の先端に集中させた一撃を繰り出す。
「ふっ」
ベネラルの一撃を左手で受け止める。
「法皇審判(ジャスティス)!」
「かぁぁぁぁっ!」
気合だけでエラナの術を打ち消す。
「所詮人間の力などその程度、魔神獣王である我が前では赤子に等しいわ」
「ベネラル、今の私達だけではこいつに勝ち目はないわ。私が時間を稼ぎます。貴方はいったん全軍を引き上げてください」
「どうするつもりだ・・・」
ベネラルがそう言い、エラナに言おうとした瞬間、エラナは強制転移の魔法でベネラルを送った。
「2人がかりで相手にならぬものを一人でどうにかするつもりか」
「さきほど貴方は人間の力ではといった。ならばそれ以上の力ならば」
「ほう」
「人として戦うのはあきらめることにします」
同時にエラナの額に駄天の印が現れ、同時にエラナの体に変化が始まる。
「魔獣化、ヴェルナスの力か」
ビシュールが前に出ようとすると魔神獣王はそれを静止した。
「お前の勝てる相手ではないわ。面白い相手になってやろう」
「魔皇狼獣破(クライシスト・ヴォルド)!」
魔獣化、そして魔皇クライシストの力、人間として放ったときの数十倍の威力はある。
「超熱魔閃砲(フレア・キャノン)!」
魔神獣王ははじめてエラナの攻撃を魔法で防御した。
「なっ・・・」
エラナの術は完全に圧倒され、打ち消され魔神獣王の術がエラナを直撃する。
「所詮、その程度か」
「・・・くっ」
エラナの体の半分が消し飛び、元の人間の姿に戻っていた。
「ほう、その体で生きているとはな」
「・・・必ず倒してみせる」
そう言い残しエラナはその場から姿を消した。
「逃げたか、人間の中にも恐ろしい奴がいたものだ。この私に傷を負わせたのだからな」
そう言い、魔神獣王は焼け焦げた右手を見せ、それを再生させた。
「まさか、陛下に傷を」
「よい、ビシュール、引き上げるぞ」
そう言いながら、エラナが消え去ったその場所を見ていた。
『危険すぎるなあの娘、余が一瞬感じ取った本来の力ならば高位魔族でも王族級の力、完全にコントロールできないようだが軍王レベルで勝てる相手ではないな』

戦場から消えたエラナが姿を現したのはベネラルが戻っていた陣の天幕の中だった。
「エラナ」
ベネラルが叫ぶ。
「エラナ様」
サリナがあわてて駆け寄り回復の魔法を唱え始めるが、エラナはそれを静止させる。
同時にエラナの体はありえない速度で再生を始めた。
完全に元に戻るまで数分の時間がかかったが、衣類まで再生していく。
「あれほどの力を持っているとは油断しました。様子見のところであやうく完全に消されてしまうところでした」
息を乱しながらベネラルにそう語る。
「大丈夫なのか」
「なんとかね、ただ魔神獣が復活した以上、何か対策を考える必要がありますね」
「エラナ様、まさか魔力の封印をしたまま相手をなさったのですか」
フィーラはエラナの姿を見てそう言う。
「相手が本気でない以上、こちらの手の内をすべて見せる必要もないでしょう」
「天帝軍はすなわち魔神獣と考えたほうがいいようだな」
「それはありません」
部屋に入ってきたのは魔軍将の3人だった。
「どういうことだ」
「天帝軍と魔神獣とは関係ありません。天帝軍の背後は確認できませんでしたが、こちらの力を図るために潜伏していたようです」
「どちらにせよ、天帝軍と魔神獣のどちらのことも考えねばならないということね」
「一度、帝都に戻り考えなおしたほうがよさそうだな」
「そうですね。ラルク」
「はっ」
呼ばれ返事をする。
「国境は貴方にお任せします。国境を守ることだけ考えてください。それからフィーラを参軍として残していきますので困ったことがあれば聞くといいでしょう。アリッサにもここへ残ってもらえますか」
「フィーラ様を守るが私の使命ゆえ」
「お願いします。ベネラル、すぐにでも戻りましょう」
「わかった」
エラナはベネラルとサリナをつれ帝都へ転移した。

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