幻水の作家な気分 |
カウンター設置:2009.11.24
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帝都を舞台とした先の戦いから3年の月日が過ぎていた。 皇帝ベネラルも即位3年を経て、帝国は徐々に平和を取り戻しつつあった。また、ベネラル・アルスタークと王妃フェーナに第一子に男子、第二子に女子が生まれた。 その一方で昨年聖王が崩御し、あらたな聖王としてスティール・ヴィズレートが即位し、聖王国と帝国の間に同盟が結ばれるとともに聖王の妹君がベネラルの第二王妃として迎えられた。 帝国宮廷魔術師であり、学院最高導師であるエラナ・フレアは、宮廷内でも学院でもその存在の大きさをあらわにしていた。 帝国の不利になることは徹底的に追及し、役人の不正に対しては特に厳しかった。多くの役人や貴族には嫌われる存在だったが、民からの支持があった。 「アラム伯爵家の着服、爵位剥奪はやりすぎではありませんか」 15歳となりすでに学院では正導師として学院ナンバー3、エラナの筆頭書記官となったフィーラ・ミレニアがそう言う。 「貴族間どうしならともかく、帝国を復刻させようとしている今、民からの不法摂取だけは許すわけにはいけません」 エラナはそう毅然と答える。 「だが、アラム伯爵家は帝国200年の歴史を持つ家柄だ。ほかの貴族からも嘆願を願う声があるぞ」 皇帝ベネラルがそう言い、嘆願書をエラナに手渡す。 「妥協しては国の改革はなりたちませんよ」 厳しい口調でそう言う。 「しかし、これ以上宮殿内に敵を作ってどうする」 「陛下の言われるとおりです。私の苦労も少しは考えてくださいよ」 宰相のサンバス・アルトがそう言う。 「それほど言われるのでしたら、陛下がレーテ第二王妃の結婚されてから恩赦は一度もだされておりませんからそれを使われるといいでしょう」 「恩赦か」 「ただ伯爵家の爵位を取り上げは決定したこと、子爵家を与えるがいいでしょう」 「これだけのために恩赦を使われるのもどうかとは思いますが」 サンバスがそう述べる。 「私が情報をつかんで裁く予定の貴族があと2つはありますけど」 「容疑はなんだ」 ベネラルが尋ねる。 「税の不法摂取、先の戦いでは中立だった一族です。あの時代に比べれば税収はかなり減りますから耐えられなかったのでしょうが。あとは賄賂ですね。こちらは我が方に味方した貴族ではありますが、こちらに味方したとはいえ特別扱いをするわけにはいきません」 「捜査していけばほとんどの貴族がなんらかの不正があるのではないのですか」 サンバスが言う。 「あるでしょうね。ただ法改正を行ってからの内容で判断しています。そのために新しい法では貴族が行う事業に関しての収益に対して開業から10年間の課税を行わないとしたのではないですか」 「エラナはそれで随分と手広く事業を拡大しているようだな」 ベネラルがそう言う。 エラナは各種事業を展開し、たった3年で戦後帝国に提供した資産の数十倍の資産を手にしていた。 各事業で儲けた金をエラナは戦争孤児の育成費として使うことにより国家が負うべき負担を半減させている。 「それでも私の手元に残るお金は少ないですけどね」 「現状の帝国としての借金を減らすかを考えねばなりませんね」 アルウスは現在の帝国に莫大な借金を残した。それも数十年分の国家予算に匹敵する金額をだ。借金の一部はアルウスに味方した貴族から押収した財産で補填されたがそれで足りるものではなかった。 エラナが不正貴族を取り締まるのもそれら貴族が溜め込んできた財産が目当てだった。これまで取り締まった貴族だけでも数十を数え国家予算の数年分の借金を減らしてきた。 「失礼します」 このとき近衛騎士団長となったクリスが入ってきた。 「どうした」 ベネラルが尋ねる。 「国境警備隊から連絡が入り、守護一族となのる一族が立国を宣言し、ブレイドと名乗る者が自ら天帝と名乗ったとのことです」 「守護一族ですって」 フィーラが驚きを隠せない様子で尋ねる。 「知っているのか」 ベネラルが尋ねる。 「守護一族はもともとは各精霊一族を守護してきた一族です。エラナ様から聞かれているでしょうが私は風の一族です」 「だけど守護一族はあくまで精霊一族の下でそれを守護する存在のはず」 エラナが答える。 「私が聞き及ぶ限り私の風一族、炎の一族は先の魔神獣の戦いで滅んだといってもいい状況、おそらくその影響だと思います」 「もう少し詳しく教えてもらえますか」 フィーラはクリスにさらに尋ねる。 「はい、先ほど申したとおり天帝がブレイド、東方将軍アリッサ、南方将軍ファラ、西方将軍リュース、北方将軍フォルスが私が聞いている報告です。潜在兵力はおよそ50万、どこからこれだけの数の兵を集めたかはわかりませんがこれが報告された内容です」 「精霊一族を無視した行為、許されるものではないはず」 「あのあたりの一部は我が帝国の領土、帝国として立国を認めることはできん。エラナ、10万の兵を率いて国境へ向かってくれ。兵の選別は任せる。俺もあとから10万の兵を率いて向かう」 「陛下自ら御出陣されますか」 サンバスが尋ねる。 「留守はサンバス、そなたに任せる」 エラナはすぐに軍の編成に入った。 まずは正規に帝国軍騎士団となった自らの魔法騎士団、ラルク・ハーパリン神官騎士団長率いる神官騎士団、イグニス騎士団長率いる騎士団、フォーゲル騎士団長率いる騎士団と4騎士団を率いて翌朝には出立した。 その一方でベネラルは自らの黒騎士団、グランテール重騎士団長率いる重騎士団、ボルス・レフォーク率いる騎馬一族を率いて出立した。 帝国軍が誇る精鋭部隊の出撃、3年前の帝都決戦以来の出撃でもあった。 第三部 メニュー |
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