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第二部  第六章 聖王動く


魔神獣の襲撃から数日間、フォーラル帝国軍は事後の処理に追われていた。
「死亡した者達の埋葬はなんとか終わったようね」
エラナは新たな資金調達、兵の補給を主に担当していた。
「なんとかな、だがかなり優秀な者を失った代償はある。すぐに行動にはでれんだろう」
失った兵力は主に主力である騎士が多かった。
「主要な回廊はこちらが封鎖しているのですから、持久線にもちこむのもいいでしょう」
「それではアルウスから民を解放することはできません。時間をかければ民に負担がかかります」
皇帝フォーラルが言う。
「私達が敗れれば民は救われません。一時のことより先を見るべきです」
エラナが提案する。
「エラナのいう通り、負けるわけにはいかない。慎重にいくしかあるまい」
ベネラルが指示する。
「どれだけの時間が必要になるとおもう」
フォーラルが尋ねる。
「確実に勝利を収めれるまで待つなら半年は必要でしょう」
エラナが答える。
「そんなにも待たせる事はできない」
「無難に聖王国と同盟を結ぶしかないでしょう」
「聖王国か」
「現状ではラクーンは包囲していますが、我々の背後にはまだ従わない太守もおります。背後を固めるのを優先すべきでしょう。国境の公国軍も気になりますし」
「たしかに、聖王国の使者は誰がよいと思う」
フォーラルが尋ねる。
「私が参りましょう。聖王都には行った事がありますし、宮廷魔術師である私なら交渉に応じるでしょう」
「時間が惜しい、ここはエラナに任せたい」
「エラナ殿、いやエラナに任せる」
フォーラルはまだ皇帝としての立場になれない部分がある。
「スティーナ、貴女も来ますか」
「私まで行っては何か会った時に応じられないでしょう。留守は守りますよ」
「助かります」

翌日、フォーラルより親書を受け取るとそのままエラナは聖王都へ転移した。
聖王都に到着するとすぐに、エラナは謁見を申し込んだ。1時間ほど待たされはしたがすぐに聖王の謁見を許された。
「ガラバード帝国宮廷魔術師エラナ・フレア殿です」
聖王国はエラナを正式なガラバード帝国の使者として向かいいれた。
謁見の間には、聖王オルード・ヴィズレート、次期聖王で剣王フォルクの弟子でありベネラルとは義兄弟の契りを結ぶ聖騎士団長スティール・ヴィズレート、もう一人ベネラルと義兄弟の契りを結ぶ竜騎士団長フェルド・アルシード、エラナも良く知り、エラナの義姉妹である天空騎士団長となったラクレーナ・アルシードと聖王国軍が誇る三騎士団長がそろっていた。またほとんどといえる大司教もそろっていた。
「フォーラル皇帝より親書をお預かりして参りました」
そういい、文官の一人に手渡すと、文官はそれを聖王の元に届ける。
「なるほど、フォーラル皇帝は正統皇家と認め軍事同盟をということか」
「御意に」
「それによって我が国に何をもたらす」
聖王国と言えども不用意に軍を動かすことはできない。
「アルウスは魔界の住人を呼び出しその力を持って全土を支配しようとたくらんでおります。貴国が聖戦を宣言することもできましょう」
「魔界の住人とな」
「魔界の住人、魔神獣と言います。低レベルの魔神獣でも村の一つぐらいは簡単に滅ぼせる程度の実力は持っています。高位のものになれば一軍に匹敵する力を有します」
「現時点で我が民に被害が出ていない以上は聖戦は発動できん。だが貴国におるベネラルは我が嫡子スティールとは義兄弟の契りを結んでおる。義に順ずることをとめることはない。スティール、フェルド、ラクレーナ」
『はっ』
「その方たちは義を果たすがよい。ただし、それ以上の軍は出せぬ。軍事同盟は結べぬが不可侵条約でよければ調停しよう」
「ありがとうございます」
謁見が終わり、エラナは聖王とスティール、フェルド、ラクレーナを含めた五人で別室にて話を始めた。
「すまんなエラナ、わが国ではこれ以上の条件はだせん」
スティールが謝る。
「国家の信念を曲げることを民は納得はしないでしょう。民があっての国家です」
「その通りだ。民を無視して国家は成り立たぬ」
「ところでエラナ、ラフォーレはそちらにいるのか」
スティールが尋ねる。ラフォーレはもともとはスティール付きの司祭である。
「私の屋敷に来てましたが、客将としてリクイド城にいますよ」
「そうか、ラフォーレはどうもそなたがお気に入りのようだが、受け入れてやる気にはならんか」
「それはわかっていますよ。だからと言って私といれば彼を不幸にさせることになる。それがわかっていてそれはできません」
「貴女の運命の輪を断ち切る可能性があるわけでもないですか」
ラクレーナが尋ねるが、おおよその真実はすべて聞いている。
「真実は常に一つとは限らない。だけどそれも想定された未来、断ち切るだけのものにはならない」
「そうですか」
「聖王、個人的にお願いしたいことがありますがよろしいですか」
「なんだ」
聖王がそう答えると、エラナの腕の中に赤子が姿を現す。
「この子をこの大聖堂にお預けしたい。名はランティス」
「そなたの子か」
聖王はすぐにそれを見抜く。
「破滅を導く皇帝か」
スティールが言う。
スティールもある程度真実を見抜く力を持っている。
「ここならば浄化できるかもしれない。必要なら対価を支払っても構いません」
「よかろう、わが国であずかろう。それと対価はいらぬ」
「それでは私の気がすみません」
「そうだなスティール、次期聖王としてそなたが決めよ」
「我々がベネラルのもとに到着するまで参軍を勤めてもらおう。無事にベネラルの元に連れて行ってもらいたい」
スティールが答える。
「貴行の武勲はこの聖王都まで届いておる。スティールに同行してもらえるのなら我が軍も無駄な犠牲を出さずにすもう」
「お言葉のままに」

スティールはすぐに出陣の用意を整えると次の日の午後には全軍の出立の準備を終えた。
「私が来る事を見計らったような速さね」
エラナは整列された軍を見てそう言う。
「ある程度の準備はな。それとすまぬがそなたも出立時には我が軍の聖衣に着替えてもらいたい」
「高司祭か、司教の格好で構いませんか」
「ふりだけで構わんぞ」
「これでも一応、私は聖職者でもあることは知っているでしょう」
「そうだったな」
「で、出立はこれからすぐですか」
「1時間後に出る、それまでに準備しておいてくれ」
「わかったわ」
時間までの間エラナは神殿の大司教の一人を尋ねた。
「そなたがエラナ殿か、お会いできて恐縮です」
「少しお話があるのですけれどよろしいですか」
「構わんよ」
「一つだけお聞きしたい事があります。本当の大司教にお会いしたいのですけど」
先ほどの謁見の間で彼が人間でないことを見抜いていた。
「本当のとはどういうことだね」
「そのままですよ。高位の魔神獣ほど人間に化けるのがうまいと書には書いてありましたゆえ」
「なるほどな」
大司教はそれを納得する。
「やはり貴様は危険すぎる。なぜ人間ごときと思ったがな」
「人間である私を評価してもらえるのですか」
「我らと力まで互角だとでも思っているのか」
「試してみますか」
そう言ったエラナが動いた瞬間、彼女の右腕は大司祭の胸を貫いていた。
「がっ」
エラナはすばやく右腕を引き抜くが、右手には人間で言う心臓、彼らの核があった。
「まだ生きていれるとは生命力はすさまじいですね」
「き、貴様・・・」
そういいながら、大司祭の姿を維持しきれなくなった魔神獣は本来の姿を現しエラナから核を取り戻そうと襲いかかってくる。
「ふっ」
魔神獣の攻撃をかわしつつ、手にしたそれを握りつぶす。
鈍い音がし、エラナの手の中でそれはつぶれた。
「魔皇傀儡掌(クライシスト・スナップ)!」
「なっ」
魔神獣はその場で動きを止める。
「どんな生態をしているのか興味がでてきたわ。しばらくの間付き合ってもらいましょうか」
そう言いつつ、先ほどの傷口に両手を入れるとそのまま内臓を傷つけないように肋骨ごと胸を引き裂く。
「ぎゃぁぁぁぁっ」
悲鳴を気にすることなくエラナは観察する。
「人間とさほど変わったと所はないわね」
実際エラナは人間も解剖した経験もありその時の記憶と照らし合わせている。公にされてはいないが、時に死罪となる罪人の一部は学院が買い取り実験材料に使われることがある。
「何事ですか」
一人の騎士がさきほどの悲鳴を聞きつけ駆けつける。
「結界を張るのを忘れてましたか」
「うっ・・・」
凄惨たる光景を見て騎士が口を押さえる。
「スティールを呼んできて」
「はっ」
口を押さえながら騎士はその場を立ち去って行く。
「スティールが来る前にもう少し調べさせてもらおうかしら」
そう言い、体内へ手を差し伸べると腸をそのまま引き出す。
「人よりは短いようね。あと肺のつくりがかなりしっかりとしていますか」
さすがに核を失ってから時間が経っているのか魔神獣はおとなしくなってきていたが、まだ息はあった。
「エラナ」
その時だったスティールが数人の騎士とラクレーナを引き連れて駆けつけたのは。
「思ったより早かったわね」
「何があった」
スティールが尋ねる。
「これが魔神獣よ、いい機会だからちょっとバラさせてもらってるけどね」
エラナの人体実験は過去に男女問わず10数件行われている。一部実験の中には公にできないほどの残虐なものもある。
そんな過去の事例からすればここでエラナが行っているのはかわいいレベルである。
「この神殿にも潜んでいたというのか」
「こいつ一体だけですけどね」
「ん、まだ生きているのか」
「これだけされて生きているのよ、この生命力には驚かされるわ。もっともこれ以上やったら死んでしまうでしょうけどね」
「だが感心できることではないな」
「感心してもらうつもりはないわ。これが私のやり方なのですからね」
スティールはそれ以上はなにも言えなかった。エラナが言ってきくような相手で無い事はわかっている。同時にエラナの圧倒的な実力を前に自らが遠く及ばないこともあった。以前とは違いさらにその実力差があることは明白でもある。
潜り抜けてきた修羅場の数、エラナは常に自分より同等かそれ以上の相手と戦ってきている。その差は大きい。
「とりあえず、こいつはこの辺りで処分しておきますよ。これ以上時間を無駄にはできませんからね」
そういい、魔神獣の頭を潰し完全に息の根をとめる。
「最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
これで魔神獣は完全に跡形もなく消え去った。
「これでよみがえってくる心配は無いでしょう。さて、いきましょうかスティール」
エラナは最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)をいとも簡単に使うが、聖王国でも使えるものは極わずかしかいない。魔道師としても突出しているが、神聖魔法使いとしてもその実力は秀でたものがある。
「エラナ、血を帯びたローブでいくつもりですか」
ラクレーナはエラナに手にしていたローブを投げ渡す。
「準備がいいのね」
言われるままエラナはローブをすばやく着替える。
「何年一緒にいたと思ってるのですか」
ラクレーナはエラナの屋敷で過ごした時間が長いため、おおよそエラナの行動は予測できる。

スティール、エラナ達が広場に姿を現すとすぐに出立した。
民に対する発表は聖騎士団、竜騎士団、天馬騎士団連合による訓練とされた。
まだ国民に魔神獣や帝国の内乱を知られるわけにはいかなかった。余計な情報は混乱を産みかねない。
「白き騎士の行軍か」
エラナはそう呟く。
「ベネラルが率いるは黒の騎士団、ベネラルには悪いが引けをとるつもりはないぞ」
「帝国領に到着しだい、私の魔法騎士団も見せてあげますよ」
「かって帝国が全土を統一しえたといわれる伝説の騎士団か」
「私が直接集めた精鋭、かっての魔法騎士団以上のものはみせれると思いますよ」
「楽しみにしておこう」
聖王都を出立して2週間で、帝国との国境まで到着した。
「国境都市ベルムの軍ですか」
国境に陣を張る陣を確認できた。
「アルウスの手のものか」
「こちらまでは私達の手がまだ届いていない地域ですからね。ある程度の抵抗はあるでしょうね」
「準備運動ぐらいにはなるだろう。エラナ、敵軍の詳細は」
「2騎士団、騎兵隊・歩兵隊を含めて50万前後でしょう」
「簡単に言ってくれたな。十分に我が軍の25倍ちかいんだがな」
「ベネラルならこの程度の差は気にはしないでしょうけど」
「負けるつもりはないさ、聖騎士団、竜騎士団、天馬騎士団と我が軍の精鋭だからな」
「フェルド、貴方は全竜騎士を率いて敵上空を旋回してください。弓の届かない上空で構いません」
「わかった」
「ラクレーナ、貴女はしばらくは左右の山に潜伏、合図があるまで待機してください」
「了解」
「スティールは、私とともに正面から当たります。フェルドはこちらの敵との接触を確認できたら上空より急降下し竜の炎を、ラクレーナは、ある程度戦況が進むと後方から退去しはじめるでしょうから、そこを襲撃、深追いはしないこと、以上です」
エラナはすばやく、それぞれに指示を伝えていく。
「何か質問はありますか」
「問題なかろう」
スティールが賛同する。だが、スティールはエラナの指揮の元で戦うのは初めてだがエラナのすばやい作戦指示を聞きそれぞれの騎士団の使い方を熟知していることを確認した。
エラナはいつのまにか自らの乗馬を呼び出すと、馬上に槍を手にする。
「そなたも出るのか」
「最初の戦いで私が後ろで見ているだけということもできないでしょう。敵将の一人ぐらい討ち取って見せますよ」
「わかった、聖騎士団の中から数名を付かせよう」
「好きにするといいわ」
「では、これより作戦を開始する、フェルド頼んだぞ」
フェルドは竜騎士全軍に指示を出すと一気に上空へ舞い上がったかと思うと、敵の陣の上空を旋回し始める。
「では私達もいきますよ」
このとき、すでにラクレーナは天馬騎士団を率いて姿を消している。
「わかった、全軍出撃、目標前方帝国軍」
聖王国軍が突撃してくると、相手が少数と見たか半数が陣から出撃してきた。その時だった、竜騎士団が急降下し竜の炎を浴びせたのは、だが同時に敵陣へ突入する一軍があった。黒の騎士団、黒騎士団2000騎だった。
「黒騎士団副騎士団長サーディンここに!!」
帝国軍である彼らには数が少ないとはいえ、目の前の聖騎士団より背後の黒騎士団に恐れを抱く。
「フォーラルの仕業ね」
エラナはそのまま目の前の騎士の一人を斬り捨てる。
「名のある将と見た、我は帝国軍ベルム国境騎士団副長がレイド・フォーク」
エラナに向かってくる騎士がいた。
「副長ですか、いいでしょう。帝国軍宮廷魔術師がエラナ・フレア、お相手いたしましょう」
「なに」
エラナの名は彼も知っていたが実際に見るのは初めてだったが、選んだ相手が悪かった一撃で彼の首は宙を舞った。
「敵将レイド・フォーク、エラナ・フレアが撃ちとった」
エラナの宣言に敵軍は同様した、一撃のもとに切り捨てられただけではないエラナ・フレアが相手にいることだった。無敗の将が相手にいることだった。
これまでエラナが参戦した戦では常に大勝を収めており、エラナの実力は帝国全土に知れ渡っている。
「そこに見えるは、ベルム城太守ドラム・リプイラと見受けた」
エラナは敵陣の中にある太守を見つけるとそのまま敵をなぎ倒しながらまっすぐと向かう。その後を聖騎士団が追う形になっていた。
「俺の出るまくはないな」
スティールはそうぼやきながら後を追う。
「ひぃぃぃっ」
太守ドラムはあわてて逃げ出す。彼はエラナを知っていた。そしてエラナが古竜を退治したとき彼は帝都にいたのだ。
「ドラム、その首おいてゆくがいい」
『フォルク流槍術風技・閃光裂破!』
エラナが槍を振るった瞬間、彼女の目の前にいた数十人が一気に吹き飛ぶ。
「あれはラクレーナが得意としている技だな」
観戦していたスティールがそう言う。
「はぁぁぁぁぁぁっ」
エラナはそのまま槍を太守めがけて投げる。それは寸分の狂いなく太守の脳天を貫く。
太守を失った帝国軍はもろかった。後方はすでにラクレーナ率いる天馬騎士団の襲撃を受けており完全に混乱し、ほとんどが武器を捨てて降伏しはじめた。
だがその中に2人だけエラナに襲ってくる相手がいた。すぐに相手が魔神獣であると感じ取るとすぐに詠唱をはじめる。
『闇夜を照らし出す光よ、我が声を聞き届け裁きを与えよ』
「最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
一瞬だった。そのまま2人は消えさった。

すべてが終焉するのはそれから1時間、日も暮れかかるころだった。
「スティール、今日はここで野営にしますか」
「夜に無理に行軍する理由はないからな」
「エラナ殿、フォーラル皇帝陛下の命によりお迎えに参上いたしました」
サーディンがエラナの元に来るとそう告げる。
「あのタイミングで突撃をしたのはフォーラルの指示ですか」
「はい、陛下よりエラナ殿ならそのような指揮をされると言われました」
「まぁいいでしょう、後、何か言われたことはありますか」
「後の指示はエラナ殿に従うようにとのことです」
「わかりました、ここへ来る途中スラーはどうしました」
「リモール城軍に指示を出してありますゆえ、完全に包囲できているかと。カスタール城、レベル城へはブラネス様が兵を動かされていますゆえそちらも時間の問題かと思われます」
「ブラネス卿にはだれが参軍して」
「エラナ殿のご友人、スティーナ様です」
「それなら間違いなく2城は落ちているでしょうね」
「ブラネス様はかなりご信用なさっていたようですが」
「正統派戦術では私以上ですよ」
現存する戦術書は初代皇帝王妃であるエラナが残したもの、その彼女自身が指揮をしているのだ負ける心配はない。それに出立する前、現代戦術を記した書も残して来ている。それを理解していないはずもない。
「あと、スラーの方にラフォーレ殿が、貴女の弟子であるフィーラとサリナを同行させてきております」
「ラフォーレがですか、余計な事を、まぁフィーラを連れてきたのはほめておきましょう」
「皇帝陛下もフィーラを高く評価していたようでしたが」
「すでにフィーラは現存する戦術・戦略書をすべてそらんじることができますよ」
「なんと」
「スティール、ここは任せます。私は一足先にスラーで待っています」
「わかった」
聞き届けるとその場から書き消える。

次の瞬間、エラナはスラー城を攻略するためにリモール城から出撃した軍の中にいた。
「ラフォーレ」
そう呼ぶと同時にエラナはいきなり拳で殴りつける。
ラフォーレもそれは予想していたのか何も言わなかった。
「余計な事を、フィーラ」
「はい」
「状況は」
エラナは椅子に腰を下ろすとそう尋ねる。
「スラー城抜け道出口、陣内から3本の突入口、合計4本を準備してあります。また、投石機等、攻城用兵器を前面に配備しています」
「いいでしょう。これまでの攻城回数は」
「3日前より昼に数回、夜に6回投石と火矢を打ち込んでいます。一度夜に一部隊が撃って出てきましたが、伏兵をもって撃退しました」
「今日のこれからの予定は」
「まず1度、銅鑼を鳴らし投石と火矢の襲撃を行います。次に合図の銅鑼のみで襲撃を行いません。3度目にもういちど投石と火矢、4度目に銅鑼のみと夜半まで繰り返し、途中から銅鑼のみで一切の襲撃を行いません。その上で日が昇る直前に投石と火矢を仕掛けます。再度、銅鑼のみの合図を行い突入口に兵を配備、次の銅鑼の合図で一気に攻撃を仕掛けます」
「合格ですね。いいでしょう、思う通りにやりなさい。責任はラフォーレがとってくれるそうですから」
睨み付けるようにラフォーレを見る。

「理由を聞かせてもらいますよ」
エラナはラフォーレを連れ出すとそう尋ねる。
「まず、スティーナ殿よりの伝言だ。次元軸の歪みが大きくなって来ているとのことだ。私には何の事だかわからんが」
「次元軸・・・やっかいね」
「各城の攻略を提案されたのはスティーナ殿だ、ただスラーまでは自身では手が届かぬゆえ別同隊をとのことだったが、最初フォーラル皇帝が行くと言いはじめてな。それをフィーラがいさめた。それを陛下が偉く気に入り私が随行することで応じてもらった」
「フォーラルが出てくることを考えればよしとしましょう。だけど、何のために私が単身で聖王都に向かったと思ってるの、ランフォートやレイネートもいたでしょうに」
「確かに、二人も優秀な戦術家としての資質はあるが、これだけの結果を出せるとは思えなかった。といって、スィーティアならそれだけの知識を持っているかとも思ったがフィーラ以上に彼女は若すぎる。そう考えるなら君の唯一の直弟子である彼女を選ばせてもらった。君の弟子であるだけで軍の士気は格段に違う」
そう言いながら、ラフォーレはエラナを腕に抱き寄せる。
「なにを」
そういいつつも抵抗はしなかった。
「少しぐらいいいだろう」
そういい、唇だけを奪う。
「楽しみは凱旋してからにしよう」
そういい、ラフォーレは天幕の方へ戻っていく。
「調子が狂うな」

翌日エラナは、その場にはいたがフィーラの作戦指揮を見ているだけだった。
作戦はフィーラが昨日示した通り順調にすすんだが、エラナ同様に正統な策略よりは奇策を好むような感じを受けたが、エラナの奇策からの順当ではなく、順当からの奇策という感じだった。
朝から開始した作戦は夕方には終わりが見えていた。
「貴女はどちらかと言うと、戦術家よりは戦略家に適しているようね」
城を攻略したフィーラにエラナはそう言った。
「有難う御座います」
戦略的勝利は戦術的勝利に勝る。戦略的に勝っていれば戦術で敗北する事は少ないが、戦術で戦略的優位な相手に勝つのは至難である。人は戦術的な勝利を高く評価するが、すべては戦略があってこその戦術である。
スティールら聖王国軍がスラーに到着したのは翌日の昼過ぎだった。
「軍を再編成させたいので、しばらくここで駐留となりますが構わないかしら」
「こちらも行軍で疲れている、まだ先は長い。少し休むのもよかろう」
エラナは、すぐに軍を再編成にかかった。
必要な資料はフィーラが準備してくる。
ベルム城の残軍、スラー城の残軍を編成しなおし、黒騎士団の中から仮の太守を選任した。その一方で、それぞれから2騎士団を本陣に加えた。
またその一方で、義勇兵を募り3万近い兵を集めた。
「民兵を採用するのか」
ラフォーレが尋ねる。
「強制はしてないわ、もっとも国内で稼ぎがいい仕事といって軍人であることは間違いないですけどね」
帝国には徴兵制度がないため民兵は存在しない。
「なるほど」
「かなり退役していたものが多くいるみたいですけど」
「3人に1人が元軍人ですね」
フィーラが答える。
「3人一組で班を作らせて、経験者を必ず含むように編成してちょうだい。それから中隊長には騎士団から、部隊長は黒騎士団から選任してちょうだい」
サーディンに命じる。
「畏まりました」
軍を再編を開始し、簡単な訓練を施すなか3日したころ、スティーナが率いる別部隊が到着した。
彼女の軍が到着すると、聖王国軍と1騎士団だけを率いると、あとをサーディンに任せてフォーラル皇帝のいるリクイド城にむけて出立した。

「エラナ、決着がつくまでどの程度と考えている」
ある夜の軍議でスティールが尋ねた。
「帝都ラクーンに入りフォーラルを玉座に座らせるまでなら3ヶ月程度でしょう。魔神獣まで考えるのなら1年は必要になるでしょうね」
「だが我々が帝都決戦に参加してもかまわんのか」
「帝都制圧後は、聖王国とは正式に同盟を結びたいと思っていますし、他国である貴方が参戦してくれればこちらが他国が認める正式な帝国であると示すことになりますからね。もっとも前線はこちらで受け持ちますけどね」
「戦う以上は、こちらも聖騎士団、竜騎士団、天馬騎士団の強さを示さねばならんのでな」
「最強の騎士団を決めるつもりですか」
「そうなるかもしれぬな」
「ならば、私もそれに参加しなくてはなりませんね」
「魔法騎士団か」
「数こそまだ一騎士団とするだけの数はおりませんけどね」
「どの程度の数をもつのだ」
「魔法騎士として500騎、魔法兵として2000の2,500騎だけですよ」
「その数があれば、十分に1騎士団に匹敵するのが魔法騎士団ですよ」
二人の会話を聞いていたスティーナがそう言う。
「当時とは戦闘方法も異なりますから必ずしもうまくはいかないでしょう」
「それはあるでしょうけど、貴女が開発した魔道装置は当時なかったものです。攻撃力においては当時をすでに上回ってますよ」
「魔道装置はあくまで防衛にはすぐれてますけど、行軍して戦闘するには素早く動くとういう戦略には応じれませんから」
「速度においては、俺の聖騎士団も天馬騎士団だけには勝てないからな」
「それが天馬騎士団の売りでもありますし、それを率いるのがレーナでは当然でしょう」
「そういえば、ラクレーナはお前の元で兵略を学んだんだったな」
「何度か指揮を取ってもらいましたけど、かなりのものですよ。それに彼女は政治家としてもやっていけると思いますよ」
「聖王国では基本的には教会関係者以外は政治に参加はできんからな」
聖王国で軍事職にあって参加できるのは教会騎士団長、神官騎士団長、聖騎士団で部隊長以上だけである。天馬騎士団長であるラクレーナが最高位の位につけたとしても聖王国軍空軍総司令官だが、これにはすでに兄であるフェルドがその位置にある。あとは、各都市の太守として都市の政治を取り仕切るまでである。
「もったいないわね」
「お前の元で使いたいのか」
「私はレーナとは、主従の関係になるつもりはないわ。羽ばたいてこそ彼女は生きてきます」
「どうするかは彼女が決めることだ、私はとがめるつもりもなにもない。純潔の天馬騎士をしばりつけることなどはできんよ」
ラクレーナのように野生の天馬に認められたものはここ数百年いなかった。純潔の天馬騎士は神の使いとまでいわれるほどで、これを縛り付けるは神を冒涜する事と同じと考えられている。かってそれによって滅びた王国もあった。
「で、貴方はレーナがどうすると思っているのです」
「おそらくアラール自治国が迎えようとするだろう、自らの王としてな。あそこは天馬騎士の聖地だからな」
「なるほど、おそらくそうなるでしょね。今はまだしも、いずれレーナが名声をあげたときにそうなるでしょう。それにレーナの性格上、断れ無いでしょうね」
「だろうな、だが聖王国としても長年保護下にしていただけで、国交というものは特になかったからいい機会かもしれんな」
「次期聖王としてならいい判断ですね」
「俺は国のことを考えねばならんからな。そなたとしてはそれでいいのか」
「確かにレーナは私のよき理解者ですけど、いらぬ危険にまきこませたくもないですし、そばに置いて失う思いだけはしたくないですから」
「ならば遠く距離を置いて彼女の幸せを願うか」
「神にあがなおうかと考えてる私が神の使いといわれる彼女と一緒にいるわけにはいかないでしょう」
「そうでもなかろう。自らの運命は自ら切り開くものだ。それをあがなうというべきでもなかろう」
「聖王家は神皇の血筋を次ぐ、帝国王家は法皇の血筋を次ぐことは知っているわね」
「それは知っている」
「私が法皇の血筋を次いでることは」
「ベネラルがお前のフレア家が帝国一族であるとはいっていたな」
「すでに私は法皇の巫女を自称することはできます」
この場合、巫女は神に直接仕え、神の意思を代行する者を意味する。そういい、エラナは杖を手元に召還してみせる。
「それは」
「法皇の杖、法皇がかって手にしていた杖です」
「神器か」
「そうなりますね。その上で聞きますが、魔皇クライシスト、聞いた事はあるでしょう」
「我が聖王国が主神と崇める神皇と退治した闇の神か」
「半年前になりますが、あなたはその時に一時的に闇の力があふれたことを感じませんでしたか」
「半年前か、たしかになにやら感じはしたが」
「それが魔皇クライシストのカケラの一つです」
「復活したというのか」
「もっとも、すでに滅びましたよ。私の手でね」
「回りくどくなってきたな」
「私は法皇セレネイドと取引をしました。法皇の意思を代行してクライシストを倒すことの見返りとして魔皇クライシストの力がほしいとね」
「なっ」
「これまで誰かが手にしたような力ではどうすることもできないこと、私が望む未来はその先にあります。たとえどれほどの犠牲を出しても構わないと思っています。その先にある千億の絶望を回避できるならね。そのためなら私が闇に落ちようとね」
「聖王国の教義からは外れるな」
「私は偽って貴方を巻き込むつもりもないし、恐怖で支配するつもりもない。ただこれで貴方が私と敵対するならそれも仕方のないことだとは思っています」
「何を見た」
「この地の滅亡、生きし者すべてのね。滅亡の原因となる者の名はランティス、聖王都で預けたあの子です」
「確かに危険な感じはしたがそこまでの」
「あの子に生を与えないと考えもしましたが、必ずどこかで生まれてくる。ならば目の届く範囲に置いておいたほうがいいですからね」
「それに打ち勝つだけの力がほしいと」
「そう言うことです。破壊は法皇では裁くことはできないこと、大地の意思なればそれは聖母の意思でもあります。神・魔・法はすべて聖母から産まれたものならばその力すべてをもてばと、私の浅はかな考えかもしれませんけどね」
「ならば神皇の力も手にすると」
「その必要はないわね。極わずかだけど力がないわけではありませんからね」
「そうか、我が聖王国の王家は独立する前は、帝国王家と縁戚にあったな」
「法皇の血が濃いゆえに私も気がつきませんでしたけど、極わずか神皇の血も私の中に流れています」
「降臨がつかえるということか」
「同時に3神を降臨させる。その力こそが聖母の力というわけです」
「とんでもない事を考えるな」
「人間の力で神を相手にはできませんからね」
「どちらにせよ、俺にはお前を止めるつもりもないし、それだけの力もないからな。協力できることがあるなら協力だけはしよう」
「ありがとう」
「ところでエラナ、こちらの仲間は途中で出迎える予定はあるのか」
「聞いてませんね」
「ではこの先に陣を引く軍は敵軍か」
「あの旗は帝国軍第三騎士団と第四騎士団のものですね。ともにアルウスについた騎士団です」
「2騎士団ということは約5万はいるのか」
「陣の大きさから考えてまだいるかも知れませんね。10万近いと考えた方がいいわね。たしか第三騎士団のフォルテ団長は小細工を好みますからね」
「どうする」
「そうですね、時間も時間ですからこちらもここで陣を張りましょう」
「わかった」
スティールはそう言うと陣を張るように指示する。エラナも同じように指示した。

「こちらが陣を張るのを見ているだけか」
「時間稼ぎが目的でしょう。近く援軍が来る予定があるといった所でしょうね。それから今晩は夜襲があるでしょうからそのように伝えてください」
「わかった」
スティールはそう言うと自らの聖騎士団のいる方へ向かった。
「エラナ」
そう声をかけてきたのはラクレーナだった。
「スティールさんに話したのですね」
「一通りはね」
「聞けばその場で聖王国軍が全軍撤退する可能性があったでしょうに」
「スティールがそんなことをしないのはわかってますよ。それに後から知ればスティールは手を引かないでしょう。だけど今の段階なら協力はしてくれるとしても戦いに巻き込むことはなくなりますからね」
「なるほどね」
「貴女も同じよ」
「私にただ見ていろというのですか」
「貴女はすでに聖王国軍天馬騎士団長なのでしょう」
「私はこんな戦場に立ちたくているのではないわ、戦争はなければそれでいい。たとえ軍人が職を失うとしてもね」
「否定はするつもりはないけど、歴史は繰り返されるものでしかないわ。結局は10年か20年、長くて百年程度の平和の為に戦うだけですからね」
「わかっていますけど、それでも自分の知っている誰かが戦場に消えていくことはなくなると思いますよ」
「そう言う意味では私も同じね。結局私が次の破壊を防いだとしてもそのあとの破壊を防ぐことはできませんからね。正直、私がみた滅亡は2つある。一つは近い将来の滅亡、もう一つは少し遠い未来の滅亡、先の滅亡があれば次の滅亡はないけど、先の滅亡があれば次の滅亡は訪れる。私ができるのはその滅亡を先延ばしにすることだけ」
「それが貴女の本意ならよいのではないのですか」
「本意ですか、どちらにせよ私は未来永劫に本当の滅亡が来るまで見続けなくてはなりませんけどね。それが法皇セレネイドとの約束ですからね」
「約束ですか、その約束私にもつき合わせてもらっていいですか」
「人間である以上、永遠には生きる事はできないでしょう」
「そういえば、エラナには詳しくは話してませんでしたね。私の天馬セイレールのことを」
「普通の天馬とは違うとは思ってましたけど」
「貴女なら直接セイレールと話ができるでしょうから話をしてみるといいですよ。彼女に」
ラクレーナはエラナを自らの天馬のもとへ連れてきた。
『やっと話にきてくれましたかエラナ』
天馬はそうエラナの脳裏に語りかけたきた。
『古代神聖語・・・、まさか』
『私の七秘宝の1つですよ』
次に語りかけてきたのはセレネイドだった。
『七秘宝ですか』
『貴女に与えた杖、ローブ・剣・サークレット・アミュレット・ハープ、そしてそこにいる天馬セレネイドが法皇七秘宝、すべて私が生み出したものです』
『それではレーナに天馬を与えたのも』
『私ですよ、もっとも時が来るまで話さぬようにはいっておきましたけれどね』
『ではレーナも』
『貴女のような契約は結んでおりませんよ、ただ無限の転生の中で彼女はいかなる時代であろうとセイレールを所有できますけれどね。もともとアルシード家も私の血を引く血族ですからね』
『法皇の血族なのですか』
『間違いなくね。もっとも貴女ほど濃くはありませんよ。ただ彼女が望むなら貴女と同じ時代を生きることも可能ですよ。記憶は継承しますから永遠の時間でさらなる力を得る可能性は否定しませんけれどね』
『エラナ、勘違いしないでね。私は永遠に天をかけ続けたいだけですから』
『ならばラクレーナ、貴女にはこれも渡しておきましょう』
次の瞬間、ラクレーナの手の中にハープが姿を現す。
『これは』
『さきほど話した七秘宝の1つです。本来、人である貴女に2つをさすげることはしないのですが、エラナの杖が秘宝の中でももっとも強力なものですからね。そのハープは私の力を強めることもできればそれを押さえ込むこともできます。詳しい使い方は自ら見つけ出しなさい』
『わかりました』
『他の秘宝はすべて持っておられるのですか』
『すべて取り寄せることはできますよ。ただし望まぬものが蘇りますけれどね』
『魔皇クライシストの封印ですか』
『それだけではありませんけどね。剣は貴女が言う学院の地下です。ローブはその魔力で魔界との結界を作っいます。サークレットは次元の狭間にありますが、特に封印をしているわけではありません。ただ私が持っていた知識の全てはそこにあります。それからアミュレットはかってある人物に渡したのでその者が所持しているはずです。そしてその者は未来に私が示した人物にそれを手渡す時まで生き続けます』
『未来の人物ですか』
『遠い未来、貴女がその人物に会えばなぜ私がそうしたかが理解できると思います。そしてサークレットもそのものの手に渡ることでしょう』
『私が会う人物ですか』
『そのもの天界において全ての魔を制し、天界の四方の1つを収め四王を束ねるものです』
『天界四天王長ですか』
『誰かはその時にわかるでしょう。さてそろそろ私もここにいるわけには行きません。これにて失礼しますよ』
そう言い残すとセレネイドの気配は完全に消えた。
「黙っていた事怒っています」
ラクレーナは尋ねる。
「貴女が選んだ道ですからね。それを私が止めることはできないでしょう」
「有難う」
「さてと、すこし忙しくなるわよ。レーナ、天馬騎士団はある程度夜目は利くかしら」
「夜間でも飛行する訓練は行っています。ただ竜騎士団には勝てませんけどね」
「竜の目か、ここはフェルドに任せるとしますか。そろそろ軍議にしますか。スティール達に天幕に集まるように伝えてください」
「わかりました」

10分後、帝国軍・聖王国軍両軍の将が集まった。
帝国軍から宮廷魔術師エラナ・フレア、客将スティーナ、黒騎士団副騎士団長サーディンとエラナ付きでフィーラとサリナの5名であった。
聖王国軍からは聖騎士団長スティール・ヴィズレート、竜騎士団長フェルド・アルシード、天馬騎士団長ラクレーナ・アルシード、天馬騎士団副団長ミェーラ、高司祭ラフォーレ、巫女ウルドの6名と聖騎士団から部隊長クラスの騎士が5名を加えた11名が参加した。
「召集したのは私ですから、まず私から議題を提示していきます」
「まかせよう」
スティールが応じる。
「まず、ここまでは同時に進軍してきましたが戦を行う以上は指揮系統を統一する必要があると思います」
「ここは帝国領内だ、貴殿が総指揮をとればいい。帝国側でそなたが席順では1位であろう」
スティールはそう提案する。
「では私が総指揮をとらせてもらいます」
そういい、エラナは現状を報告する。
「すでにスティール殿にはお伝えしましたが敵軍は夜襲をして来るでしょう。我が軍はこれを向かい撃たなければなりませんが、ただ単に夜襲を待っていてもしかたがありませんから、こちらからも夜襲を仕掛けます」
そういい地図を広げ、その上に細かい積み木を並べて陣容を示す。
「フェルド殿」
「はっ」
「竜騎士団は敵陣の北の山に布陣してください」
「御意に」
「ラクレーナ殿」
「はい」
「天馬騎士団はこの陣の南の山に布陣してください」
「了解しました」
「サーディン」
「はっ」
「黒騎士団は、この森で潜んでください」
「御意」
「それ以外の部隊はこの陣で敵の夜襲を迎え撃ちます。まず、ラクレーナ殿は敵の夜襲を素早く発見しこの陣に伝えることが第一の任務になります。次にサーディンは敵の夜襲部隊が通過したらこれを背後から襲撃してもらいます。フェルド殿は敵の夜襲部隊がこちらの陣に攻撃を仕掛けたら上空より敵陣を襲撃してください。ただこれは一飛来して竜の炎を浴びせかける程度で十分です。できれば敵の兵糧を焼いていただけると効果は大きくなります」
「こちらの奇襲はその程度で十分なのですか」
サーディンが尋ねる。
「敵の夜襲はおそらく半数近くを使った大規模なものでしょう。これに壊滅的な打撃を与えるのを良策とします」
「魔神獣が混ざっていた場合はどうします」
スティーナが尋ねる。
「この中で倒せる可能性があるのは、私・スティーナ・スティール・フェルド・ラクレーナ・ラフォーレの6人だけでしょうね。ただ可能性として高レベルの魔神獣ですと私かスティーナだけでしょうね」
「俺が聖王都で見たものでどの程度だ」
スティールが尋ねる。
「あれで下級のAクラスです。中級のBまでならさきほどの6人ならいけるはずです。中級のA以上になると極端に強くなります」
「私は上級のCランクまでならなんとかしましょう」
スティーナが言う。以前エラナが直接した相手で唯一決着がつかなかった相手、軍王が上級のAランクになる。ただラクレーナが中級のAランクまでなら倒せるとはいえなかった。
「あとフェルドは竜と行動している場合なら中級のAランクでも相手はできると思います」
フェルドが騎乗する竜は古代種の竜で他の竜騎士が乗る竜とはランクが違う。
「俺が本陣というのはそれが理由か」
「念には念を入れてスティーナ、同行してもらえますか」
「構いませんよ」
「尋ねるが、こちらに魔神獣と戦えるものがこれだけ集まっていて居城の方は大丈夫なのか」
スティールが尋ねた。
「あちらにはベネラルと、妖精族のフェーナ、妹のセレナ、重騎士団長グランテール、神官騎士団長ラルクがいます」
「5人か、こちらとあわせても11人、数が足らぬな」
「ただ心当たりがあるのはあと1人ですが、たぶん協力はしてくれないでしょう」
「師か」
「火のこは振り払うけど、それ以上はするつもりがないといわれましたから」
「いいそうなことだな」
「どちらにせよこれだけで魔神獣を相手にしなくてはならないと思っておいて下さい」
「わかった」
「軍議は以上です。それぞれ配備は日が落ちて暗くなってから敵に気づかれないようにしておこなってください」
エラナは軍議の終了を告げる。

「スティーナ、貴女の実力は明かしてしまってもいいのですか」
天幕を出て話かける。
「身元だけはできるだけ黙ってもらえるならね」
「わかりました。ですが、正直上級のCランクまでしか倒せないのですか」
「倒すと言う意味ならそこまでね。封印しろというなら高位の最下級までなら封印する自信はありますよ」
当時彼女は絶大な魔力を持っていたとは言われるが、彼女が封印師であることはあまり知られていない。彼女が実際には封印した相手も現在には倒したと伝えられている。
「できるなら封印はしたくないですね。後世に押し付けるみたいですからね」
「悪かったわね。もっとも封印が破られる可能性があるからこそ今ここに私がいるのですよ。この長い時間を私も無駄に過ごしてきたつもりはありませんからね」
「何か秘策でも」
「その時になったら見せてあげるわ。同席してたらだけど」
「楽しみにしてますよ」
スティーナはそのままフェルド達竜騎士団が待機している場所へ向かっていった。

真夜中を過ぎたころエラナが予測した通り敵軍の襲撃をラクレーナが伝えてきた。
「弓隊構えよ」
スティールが指揮する。
「打て!」
じっくりとひきつけ合図を送る。ある程度は予想されていたのか、盾をもっているものがいた為、それほどの効果はなかった。
「よし、討って出るぞ」
騎乗している者たちにそう命じる。
ただ完全に襲撃に備え、反撃できるまでは予想してなかったのかスティールが撃って出ると混乱している様子を見せた。
「火矢を」
エラナは自らの隣に控える騎士に命じる。
命じられた騎士は1本の火矢を上空に向けて打ち上げる。
これと同時にサーディンが後方より突入、ラクレーナも上空から襲撃を仕掛けた。
「あっけなさすぎるかと」
控えていたフィーラがそう言う。
「手ごたえがなさすぎるわね」
その時、天馬騎士の一人がエラナの元に舞い降りてくる。
「黒騎士団サーディンの後方から敵陣本陣から一軍が出ております」
「全軍を投入してきましたか。黒騎士団に撤退を、私も出ます。帝国騎士団に出撃命令を」
エラナは素早く馬に乗ると、騎士団を出撃させた。
「正面は聖騎士団が防いでいます。側面を攻めます。第一隊は私に、第二隊はフィーラ・サリナが率いなさい」
「わかりました」
連れてきた帝国騎士団は騎士団の中でも熟練したものだけを率いてきた。また過去にエラナの指揮下で戦ってことがあるもを限定している。不敗の名将エラナ、いやおうなしに士気は高かった。
エラナは自ら軍の先頭に立つと槍を手に敵の騎士を相手にしていく。
「そこに見えるは第四騎士団長レイスティール」
エラナはレイスティールめがけて馬を走らせる。
「反乱軍エラナ・フレアか」
エラナが大魔道師であることは承知しているが、彼女が槍を手に向かってきている事から武器での勝負ならと思った彼におごりがあった。
1合も交えずにエラナの槍が彼の脳天を一突きにした。
「レイスティール閣下!」
彼付きの騎士もまさか一撃でやられるとは思わず自らの目を疑った。が、彼らはそのまま突撃してくるエラナの次の餌食になるだけだった。
「風よ我が道を切り開け!」
第一部隊が進む先に一陣の風が吹きぬけ敵をなぎ倒していく。
フィーラ率いる第二部隊だった。
「このような戦場で魔法はあまり多様しないように」
合流するとエラナはそれだけフィーラに言うと後方に向けて軍を進ませる。
その先でエラナが目にしたのは、ラクレーナが敵の一武将と交えてる姿だった。
「魔神獣か」
ラクレーナと互角に渡りあえる相手と考えるならそれしかなかった。
そこへ軍を引いていたサーディンが合流してくる。
「ラクレーナ殿に救われました。100名ほどの騎士を失ってしまいました」
「貴方に責はありません。私があまかったようです」
戦場は、両軍が2人の一騎撃ちを見守る形になっていた。
それほどすさまじい一騎撃ちだった。
しばらくすると後方の敵を片付けたスティールも合流してきた。
「あのラクレーナと互角に渡りあっているのか」
「スティールそちらの被害は」
「そなたが敵将を打ち取ってくれたおかげでそれほどの犠牲は無い」
「わかりました」
その時だった。敵陣の方向からすさまじい爆発音が響き渡った。
「スティーナ」
「あちらにも魔神獣がいたのか」
スティールが尋ねる。
「おそらくは」
だがその時だった。皆が爆発音に気を取られている瞬間ラクレーナの一撃が魔神獣の体を貫いたのは。
それに気がついたのはエラナだけであった。ラクレーナは一瞬のその時に、法皇の力を槍に宿らせたのだ。
「聖十字漸!」
法皇の力さえ使えばラクレーナには十分倒せる相手であったができるならば見せたくない力でもある為、温存しておいたのだ。
「全軍、突撃!」
将を失った軍はもろかった。1時間も経つ頃には残っていたものも降伏してきた。
「夜が明けるな」
全てに決着がついたのは夜明けのことだった。
「今日は一日、休み明日の出立にしましょう」
「それがよかろう」

翌日になり出立した一軍はフォーラルが待つリクイド城へまでは何事もなく順調で、10日で到着した。
「ヴィズダム聖王国軍スティール聖騎士団長殿です」
謁見の間ではなくフォーラルの私室での面会となり、エラナが紹介する。
「遠路はるばるありがとう御座います。ガラバード帝国皇帝フォーラル・アルスタークです」
「久しぶりだなスティール」
ベネラルが声をかける。
「3年ぶりぐらいか」
「そうだな」
「再会はその辺りにして今後の話を進めましょうか」
エラナが切り出す。
「おおよそ帝都内のほとんどはこちらの勢力で制圧できている。残るがラクーンといったところだろう」
ベネラルが説明する。
「ラクーンの兵力はどの程度です」
エラナが尋ねる。
「残った全軍を集めているようですから50万近くにはなっているでしょう」
フォーラルが答える。
「それに対してこちらは全軍を集めれば200万以上にはなっているが、公国もあるし、完全に支配してはおらんからこちらで動かせるのはリクイド城とリスタール城にいる兵力だと思ってもらったほうがいい」
ベネラルが付け加える。
「そうすると30万前後といった所ですか」
「実際にはもう少しいますが戦力とみなすならその程度でしょう。できるなら騎士クラスだけで行くほうがいいでしょう」
フォーラルが述べる。
「そうですね、相手に魔神獣という切り札がある以上それがいいでしょう。ただ最悪、ラクーンの住民100万を人質とされる可能性があります」
「そうなるとある程度の数を事前にラクーンに潜入させたほうがいいですね」
フォーラルが提案する。
「それが上策でしょう」
エラナが賛同する。
「問題はラクーンは完全に城門を閉じており、出入りできませよ。それと潜入させるメンバーですね」
「潜入方法は学院までなら転移装置を使えます。それと学院の地下から下水に繋がっていますから潜入は可能です」
「学院と下水が繋がっているか。それを知っているものはどれぐらいいるんだ」
ベネラルが尋ねる。
「極一部だけですよ。ラスティーク師も私が見つけるまで知りませんでしたからね」
「ほう」
「もともとは何代か前の宮廷魔術師が有事の際にすばやく城内と学院を行き来できるようにと作ったものです」
「宮廷魔術師がか」
「常に歴代の魔術師が転移魔法を使えたわけではありませんからね。その宮廷魔術師も学院賢者部門の出身でしたからね」
「なるほど」
「それでどのようなメンバーで行う」
フォーラルが尋ねる。
「魔法騎士、黒騎士、神官騎士で3人一組みとします。それを50部隊、合計150名を潜入させます」
「戦士、魔法使い、神官と冒険者の基本パターンか」
ベネラルのそれにエラナは頷く。
「最悪の場合、その3人で魔神獣を相手にする可能性がありますから最低でも3人で1体を相手にする覚悟は必要でしょう」
「魔神獣か」
「それで、その150名の指揮ですかが問題です」
「主力はこちら側の城攻めになる。こちらの指揮官から行かせることはできんな」
「何人か候補はいます」
「ふむ」
「まずはフィーラとサリナに任せようかと思いましたが、実力はあるけど幼すぎます。黒騎士団の中からサーディンかブラッサムをとも思いましたが、私から連絡するにも魔法的な通信手段が使えません。あとは妹のセレナ、一番適任といえば適任ですが、主力の魔神獣がこちらに向く以上は封印術を得意とするセレナにはこちらにいてもらいたい。次にスティーナですが、これは本人にすでに断られました」
「人選か」
「他にいるとすれば、メリア・ルキシード導師ですが、魔力の弱まってる彼女には無理はさせたくはありません。あとはティアラぐらいですね」
「ティアラ、たしかお前の妹弟子だったな」
ベネラルが言う。
「問題はティアラが昨年、馬族の王ボルス・レフォークと結婚して学院を出ていますから協力してくれるかどうか」
「まずはその馬族を説得しなければならぬな」
フォーラルが答える。
「それは私が行ってきますよ」
エラナは申し出る。
「いや、私が行こう。相手は馬族の王だ。むげに手紙だけとはいかないだろう。それに今後を考えてもうまく付き合っていきたい」
「わかりました。ただし共に妹のセレナを連れて言ってください。それとレーナ、同行できますか」
言われラクレーナはスティールを見る。
「それが最善だろう」
エラナがあえてレーナを指名した理由をさっしたのかスティールは承諾する。
「では明朝に出立するぞ」

話が終わり部屋をでるとスティールはエラナに話かけてきた。
「あえてラクレーナを指名したのは魔神獣の危険を考えてか」
「可能性がある以上は対処しておくべきでしょう」
「だがそれだけではないだろう。普通なら皇帝自ら出向くなど臣下の進めることではなかろう」
「フォーラルはあまりにも真面目すぎます。馬族がいる集落までは3日ほどかかります。それに向こうでなんらか馬族の儀式とかありますから1週間ぐらいはそれだけに専念できるでしょう」
「気分転換になると」
「魔神獣が出たとしてもレーナとセレナだけで十分相手が務まりますから危険はありませんからね」
「しかし、ラクレーナを高く評価しておるな」
「義姉妹の契りを結んでいますし、それに私の考えを理解してくれる数少ない1人ですからね」
「なるほど」
「あと一番敵に回したくない相手でもありますね」
「ほう」
「私も師フォルクの弟子の中では神速と呼ばれる風技を学びましたが、レーナは私以上にそれを極めていますからね」
「私やベネラルは眼中になしか」
「私の魔道武術はそれを上回らなければならない。それが私が生きていく意味でもありますからね」
「まぁいい、話が出たついでだ魔神獣についてもう少し詳しく聞きたい」
「知ってることなら答えますが、聞かなかったほうがよかったと思うかもしれませんよ」
「かまわん」
「では、まず魔神獣の指揮系統ですが、トップに魔神獣王、その下に軍王長がいてその下に4人の軍王がおります。その下に各将軍クラスがいますが、基本的に統率の取れているのはそこまでですね。そこから下は強いものに従う傾向がありますが、王の命令には絶対服従ではあります。ただ儀式によって召還された魔神獣はこれからは外れます」
「わかりやすいと言えばわかりやすいな」
「ただ言えるのは現時点でアルウス側に軍王がいることは確認していますから、軍王以上のものと契約がなされているのは間違いないでしょう」
「それぞれの実力はどの程度だ」
「そうですねわかり易く私の実力を100と想定した場合、軍王が私と同等か少し劣るぐらいで95ぐらいです。魔神獣王で250から300です。貴方やベネラルで30から40、レーナで50程度ですね。ただあくまで魔道と武の両方からの数値から導きだしたものですから、必ずしも数値どおりの差があるわけではありませんけどね」
ラクレーナがベネラル達を上回るのは彼女が魔導師としての実力も持っているからである。
「魔道に対する手段を持つかどうかか」
「そういうことです。貴方やベネラルに魔道の対抗手段を含めれば数値は60程度まで上がります。レーナは魔法を使えることもありますが、魔道すら回避するその敏捷性がありますから80程度にはなるでしょう。それと普通に考えるなら妹のセレナは60程度ですが、魔真獣から見れば魔神獣王クラスでも封印する実力を持つセレナは200にも300にもなりえます」
「なるほど」
「ただ、もし軍王長や魔神獣王が出てきた場合はこちらは少数のメンバーを決めておいたほうがいいですね」
「エラナ、ベネラル、私、フェルド、ラクレーナ、ラフォーレぐらいか」
「あと、協力を得られるなら師とベネラルの元にいるフェーナですね。スティーナもいますが干渉しないでしょうね」
「先ほどから何度かでてくるが、そのスティーナとは何者だ」
「エラスティーナ・アルスターク、500年前に帝国統一を果たした初代皇帝王妃です」
エラナは初めてスティーナの正体を話した。おそらくスティールならいずれ気がつくであろうと考えてのことだった。
「ほう」
「500年前に魔神獣が姿を現したときに封印したのが彼女です。伝説の魔道師とまでいわれた彼女で封印するのがやっとだったそうです」
「それでは倒すのは無理ということか」
「そうは言いません、彼女の時代で対抗でききたのは彼女だけですから、今は私や貴方方と実力者はいますからね。彼女がいうには私達が敗れたなら封印を担当するそうですから」
「どちらにせよ先ほどのメンバーでやるしかないか」
「私はこれから、師の所へ行ってきます」
「説得する自信があるのか」
「私が聖王国へ行く前に魔神獣とやりあって負傷したらしいですからね。そろそろ回復してるころでしょう」
「師が手傷を負うほどの相手だったのか」
「軍王直属の将軍クラスですからね剣だけで挑むなんて無謀もいいところですよ」

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