幻水の作家な気分

ホーム

〜神々の戦い〜
世界説明
歴史的な流れ

〜ルアージュ〜
世界説明
登場人物
第一部(完)
第二部(完)
第三部(3/?)
第四部(0/∞)
第五部(0/0)
第六部(0/0)
外伝(1)

〜PM〜
登場人物
外伝

自己紹介

掲示板

カウンター設置:2009.11.24
合計:027348
本日:0009 昨日:0016

sei_gensuiをフォローしましょう


Googleボットチェッカー
Yahoo!ボットチェッカー
MSNボットチェッカー

 
第一部  第八章 決着

翌朝、砦の中庭に一同は集まった。
黒騎士ベネラル、ブラッサム、サーディン、従者クリス、学院導師エラナ・フレア、ティアラ、学院準導師サイバー、アレン、天馬騎士ラクレーナ、重騎士グランテールの10人だった。
エラナ隠密部隊の2人の姿はなかったが、気配から2人がここにいることはわかった。
「ティアラ、イメージを」
「はい」
『我らを我らが望む地へいざなわん!』
エラナとティアラが同時に詠唱する。エラナもティアラも単独でこれだけの人数を転移させることは可能だが、力の消耗を抑えた。
2人の詠唱が完了すると同時に10人と2人の姿が消えた。
「行ってしまいましたね」
様子を見ていたセレナはラルクにそう言う。
「できればご一緒したかったですね」
「観戦するぐらいはできますよ」
そう言い呪符を取り出すと、それを鳥に姿を変え、エラナ達が向かったほうへ飛び立つ。
「便利なものですね」
「私にはこれぐらいしかできませんからね」
そう言い目の前に映し出された映像を見つめる。
エラナ達が転移したのは屋敷から少し離れた場所だった。
「基本的に正面から行きますが、2人は状況を見て結界を張ってください。最初は魔道生物だけでしょうが魔道師達が出てきた時点で私とティアラでそちらは相手します。もしエラグラスがいた場合は、ベネラルに任せます」
「わかった」
一行は屋敷まではできるだけ隠れてすすんだが、近くまで到着すると屋敷の周りに張られた柵をエラナが吹き飛ばすと同時に、全員が切り込んだ。
「うじゃうじゃいるな」
そう言いベネラルが剣を振り下ろすと、数十メートル離れた魔道生物が数匹斬り捨てられる。
「投当ですか、これだけの数がいると有効ですね」
そう言いラクレーナも同じように数匹を貫く。彼女は剣でなく槍を手にしている。彼女は検圧でなく槍を突き刺すスピードだけで投当をしている。
「いつ見てもすごいですね。私にはまねできませんね」
クリスはそう言いながらも、弓を手に同時に4本の矢を矢筒から抜くと連続して4本を撃ち込む。ベネラル達が突出していることもあるが、クリスも十分に突出した実力の持ち主である。
「あちらは任せても大丈夫そうね、魔風斬(ウィンディー・クロー)!」
そう言いエラナは直線的に数匹を吹き飛ばす。
「エラナ、下がって」
ティアラがそう叫ぶと同時にエラナはティアラの前から姿を消す。
「氷河烈陣(カオスティック・イレイザー)!」
ティアラはいきなり大技で数十匹を消し飛ばすと同時に屋敷の壁まで穴を開ける。
「生き残れる相手以外興味なしといったところですね」
上空からエラナは見ていたが、ティアラは実力の1割程度の力しかだしていない。
「あんなのまでいたのですか。ですが、私相手には無意味ですね」
ティアラは地面から出てくる死霊を見てそう言い、死霊の群れに突っ込む。
「やれやれ」
エラナもそう言いティアラに続く。
「死霊浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
瞬時に出現してきた死霊のすべてが消滅するが、次から次へと死霊は出てきた。
「最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
次の群れはエラナが消し飛ばすが、さらに死霊は出てくる。
「うっとうしいわね、死霊制御陣(アンデット・コントロール・フィールド)!」
ティアラは一気に死霊のコントロールを奪い取る。
同時に何人かの魔道師が姿を現す。
「やっと出てきましたか」
「魔炎弾(カオス・フレイム)!」
魔道師の一人がエラナめがけて打ち込んでくる。
「やはり腐ってもレスティア帝国の魔道師ですね」
エラナは片手で術を受け止めると同時に打ち消す。
「なんだと」
「せめて、このぐらいの力で打っていただかないと、魔炎弾(カオス・フレイム)!」
エラナに打ち込んできた魔道師と2人の魔道師が対抗するまでなく燃え尽きる。
「もう少し楽しませて頂けると思っていましたが、期待はずれですね」
ティアラもエラナのように術を受け止めるが、それを消滅させようとはしない。そして、数十発を受け止める。
「あまり派手にしないでくださいよ」
そう言いながらエラナは飛んできた術を魔力をこめた拳で正確に打ち返す。
「そう言うことはやる前に言ってください。魔力鏡反衝!」
数十発の集めたエネルギーに自らの魔力を加えティアラは打ち返すが、魔炎弾(カオス・フレイム)数十発分のエネルギー、エラナやティアラが普通に打ち出す力をはるかに超える力、屋敷ごと吹き飛ばす程度の力はある。
「魔法消去(マジック・イレイズ)!」
屋敷の屋根に立つ魔道師がティアラのそれを打ち消した。
「レイアームじゃないわね」
「あれを消滅させることのできる魔道師ですか、エラナ」
「構いませんよ」
「少しはまともな相手がいたようですね。名前ぐらい聞いておいてあげましょうか」
ティアラはその魔道師の前に飛ぶとそう言う。
「魔法を吸収して跳ね返すとは面白い技を使うな。レイアーム様が近衛長グリミアが相手になろう」
「なるほど、少しは楽しめそうね。ガラバード帝国魔道学院導師がティアラ参る」
同時に両者が詠唱に入るが、二人が唱えた術は同じものだった。
『魔閃砲(キャノン)!』
二人が放った術の威力は完全に互角、それぞれはじきかなりの数の魔道生物と魔道師がそれに巻き込まれる。
「ティアラ、遊んでいるわね」
エラナはその様子を見てそう呟く。
「魔閃砲(キャノン)!」
グリミアはさらに打ち込むが、ティアラはそれを受け止める。さらに、他の魔道師の術もすべて受け止める。
「ティアラ、魔閃砲(キャノン)!」
そこへエラナも本気で術を打ち込む。
「助かります、超熱魔閃砲(フレア・キャノン)!」
自身単独では魔力が足らずに発動できない術も、力を集めることで発動させることができる。それこそが魔力鏡反衝の本来の使い方である。
「魔力沈静(イレイザー)!」
ティアラの術は別のほうから打ち消された。
「でてきたわね。レイアーム」
「これほどの魔道師がまだいたのか」
「すぐに絶望を見せてあげますよ。ティアラ」
エラナとティアラは隠していた魔力を一気に開放した。2人はこの日は最初から封閑はすべてはずしていた。ただ、封閑をつけている状態と同じ程度の力しか引き出していなかったのだ。
エラナとティアラの魔力の開放と同時に大気が大きく振動し、その振動が屋敷を崩壊させる。
「なんだと・・・」
レイアームが驚きの声をあげる。
一方、地上ではティアラがコントロールを奪った死霊の力が高まり魔道生物を打ち倒していく。
ベネラル達もそれに呼応し一気に倒していく。ベネラル、ラクレーナはそれでも全力を出している様子はない。
同時にあたりいったいに結界が展開された。セレナが渡した転移封じの結界である。
結界を展開し終えると、エラナ隠密部隊の2人も一気に前線に出てくる。その実力はベネラル、ラクレーナが感嘆するほどの実力だった。
「これが極めし者の力です」
同時にエラナから放出する魔力が形を作りロープ上になりレイアームを縛り付ける。
「ある程度格の違いがあってこそできることですが、それだけの違いがあるということです」
そう言いティアラもグリミアを縛り付ける。
「この北国が王である俺が・・・」
レイアームの腹にエラナの魔力のロープの先が突き刺さる。
「これで終わりです。魔散弾(マジック・ブリット)!」
レイアームの体内で術を発動させる。
「術を使うまでもないでしょうに」
そう言いティアラはグリミアの首を締め付け窒息死させる。
さらにエラナはレイアームとグリミアが殺され、動きがとまる魔道師達をにらみつけるとかなりの数の魔道師の頭がはじけ飛ぶ。エラナは相手の脳が受け入れられないほどの強力な魔力を叩き込み、破裂させたのだ。
「惨いことを、魔力針(マジック・ニードル)!」
ティアラは無数の針を呼び出し、数十人の魔道師にそれぞれ何百もの魔力の針を突き刺して倒す。
残る魔道師達にラクレーナが突進した。同時に彼らの首が飛ぶと同時に彼女はそれを手にした槍で5つほどの首を串刺しにし、エラナに放り投げる。
「レーナ、食べれない団子はいらないわよ」
「いりません」
ラクレーナの槍を受け止め、それをこんがりと焼くとティアラに放り投げるが、ティアラはそれを回避した。
「ん、面白い力を持った者がいるようですね」
そう言いながらエラナは一人の魔道師を魔力のロープで縛りつけ動けなくする。さらに2人ほど捕らえた。

それから2時間ほどしたころにはレスティア帝国側で生きている者はいなかった。例外的にエラナが捕らえた10名だけが生きていた。
「捕らえてどうするつもりだ」
ベネラルが尋ねる。
「彼らには私の研究材料ですよ」
そう言い隠密部隊の2人を呼ぶ。
「魔力牢に入れておけばよろしいですか」
「死んでしまっては価値がありませんからね」
「わかりました」
そう言うと2人は10名の魔道師を連れて姿を消した。
「彼らにはここで殺されていたほうが幸せだったでしょうね」
ティアラがそう呟く。ティアラはすでにいつものように封閑を身につけていた。
「で、あの死霊はどうするのですか」
クリスが尋ねる。彼もあれだけの数を相手にした戦いで疲れた様子を見せない。
「浄化したほうがいいでしょうね」
エラナがそう言う。
「その死霊達、もらっていくわよ」
そう声だけが響いた。
「その声は、レティア」
声の主に気がついたのはエラナだった。そして彼女は姿を現した。
「死霊を手に入れてどうするつもりですか」
ティアラが構える。
「やめておきなさい、勝てる相手ではないわ。今ならわかるはずです。彼女は魔力だけで肉体を具現化しているにすぎません」
「その通りですよ。あの時は半分眠っていましたからね。ですが、私のこの姿が魔力の一部であると気がついたのでしたら、私と対等の領域に到達できたようですね」
「言ってくれるわね、私とてあの時は万全の状態ではありませんでしたからね」
そう言いエラナは再び魔力を開放する。先ほどまで開放していた力の数倍といっても良い。
「なるほど、そう言うことですか」
ティアラはそう呟く。
「何かわかったのか」
ベネラルが尋ねる。
「絶対的な魔力は私とエラナにそれほどの違いはありませんが、エラナには本来人が持つべきリミットが無いのです」
「リミット?」
「本来人が自らの肉体を守るために必要以上の力が出ないようになっていますが、エラナはすべての力を引き出せるということです」
「ではそんな力を使い続ければ肉体を破壊してしまうのではないか」
「エラナの場合、その心配は無いようです。彼女の驚異的な回復力がそれを可能としているのでしょう。そして不死の女王レティアは不死の肉体を持っていますから肉体的な損傷とは無縁ですからね」
「さて、行きますよ」
そう言うエラナが先ほどまで放出していた魔力は消えているが、エラナから感じ取れる威圧は変わらない。
「いいでしょう」
両者はそれぞれ右手から魔力を放出しぶつけ合う。レティアが完全な魔力だけの存在である以上、エラナが対抗する手段は自らの魔力をぶつけるしかない。
「ティアラ、悪いけど借りるわよ」
エラナがそういった瞬間、ティアラは体中の力が抜け座り込んだ。
「大丈夫か」
「エラナ、私の封閑を通して私の魔力を」
ティアラの封閑はエラナが作ったものである。エラナはそれを媒介として魔力を引き出したのだ。
「エラナ様」
隠密部隊の2人は、魔力を解放するとエラナに魔力を送り込みつつ、ティアラにも魔力を送る。
「まさか、この2人・・・」
ティアラが呟く。
「これで終わりです」
右手だけで放出していた魔力を、両手からの放出に切り替える。
「やれやれ、4対1ではどうすることもできませんか」
そう言うとレティアの姿とすべての死霊が消え去った。
「やれやれ、持っていかれましたか」
そう言いエラナは魔力の開放をやめた。
「ご無事ですか」
「助かったわ、貴方達を連れてきて正解でしたね」
「どうやらあの二人もエラナ同様に限界をしらないようですね。魔力そのものは私ほどではありませんが、開放できる力は私を上回りますね」
ティアラは、二人に魔力を分けてもらいなんとか立ち上がれる程度には回復できていたが、それでもかなり消耗している。
「大丈夫か」
ベネラルが尋ねる。
「エラナ、私の魔力を使ってまでレティアと戦って死霊まで奪われてどうするつもりですか」
「いずれ決着はつけます。ですが、今はエラグラスを倒すことが先です」
さきほどまでつけていた皇帝の印である指輪がエラナの指から消えていた。
「だが、総大司教のことで戻るタイミングを逃している。リスタール城に戻るには帝都に使者を送って指示を仰がねばならん」
「必要なら、もう一戦やっておきますか。ただ叛乱軍の領内に進軍することになりますけど」
「それも帝都に伺いを立てなければならんが、国境警備を命じられる可能性がある」
「ならば黙って戻るしかないでしょう。任務は果たしているのですからね。それに距離からすれば、来る時にインチキしていますから、時間を浪費したとはいえまだ時間的には余裕があるはずです。どちらにせよ、あと2週間以内にここを離れなければ、雪の時期ですよ。それに春までここですごすための食料もありません」
「よし、全軍撤退させよう」
ベネラルはそう結論を出した。
一行はそのまま砦に戻ると、その日のうちに帝都へ向かって進軍を開始した。

黒騎士段、傭兵部隊、エラナ私設軍勢は先行してリスタール城に戻った。残りはサンバスが軍を率いて戻ってきているが、ベネラルらの主力部隊は1週間ほど先行して戻った。
「エラグラスの封印を解くには1週間ほどの準備が必要ですから、休養してもらって構いませんよ」
「3日もあればやれないことありませんよ」
セレナがそう言う。
「できれば、私達の体調も万全にしておきたいですし、ラルクにもいてもらわないと回復系の術が使える者が足りません。基本的に私はベネラルのバックアップとなると他までサポートできないでしょう。基本的にエラグラスに致命的なダメージを与えることができるのはベネラルが持っているエラグラスの剣だけです。ベネラルに対するエラグラスの魔法は私が防御します。あとの者の防御はティアラに任せます。セレナはいざという場合を考えて待機はしてもらいます。戦いに参加するのはベネラル、私、ティアラ、セレナ、ラルクの5人だけです。一応、いざとなれば私にもエラグラスを倒す術はありますが、正直言うと完全に制御する自信はありません。失敗すれば、私を含めてリスタール城ごと消し飛ぶでしょう」
「基本的にはベネラル卿にかかっていると考えていいのですね」
ティアラが尋ねる。
「そう言うことです。剣をもう一本作ることはできませんからね。材料だけなら集められるでしょうが、剣を加工するために必要な魔力を引き出す魔力炉が使えませんからね」
剣を1本作るだけで魔力炉を一時的にしろ枯渇させたのだ、エラナが最高導師にでもならないかぎり使うことは無理だといえる。
「エラナ、私も参加させてもらいますよ」
ラクレーナがそう言ってくる。
「貴女の武器ではエラグラスに致命傷を与えることはできないわよ」
「貴女を守ることはできます」
「貴女の思うままに」
ラクレーナはいくらエラナが拒否したところでいかなる方法を持っても来ることは間違いない。

打ち合わせを終えるとエラナはラクレーナとともにリスタール城に与えられた部屋に入った。
「レーナ、わざわざ参加すると言った以上、何か考えがあるのですか」
「肉体的なダメージは通用しないと言われましたが、精神的な攻撃は効果があるのですよね」
「ある程度はね、ですが魂にダメージは与えることはできないでしょう」
「できませんね、ですが肉体的なダメージだけの場合と精神的なダメージだけの場合とエラグラスの回復速度はどちらが遅いですか」
「そう言った意味なら精神的なダメージですね」
「では、肉体的なダメージと精神的なダメージを同時に与えたとしたらどうですか」
ラクレーナにそう言われ、エラナは少し考えて答えた。
「なるほど、確かに回復を大きく遅らせることはできますね。ですが、そんな芸当ができますか」
「そこで魔法の発動体となる槍を作って頂きたいのです」
「精神攻撃系の魔法、簡単な魔法ではないはずですが、使えるのですか」
「発動体があれば何とか使うことができます」
「そう言うことなら、私が貴女に渡した剣を使いなさい。私が魔力を与えたものですから発動体にもなります。攻撃が命中した瞬間に相手の体内で発動させれば、効果は大きいでしょう」
そう言いながら、エラナは紙に古代魔法語を記してラクレーナに手渡す。
「これは?」
「学院でもほとんど知る人はいませんが、それが精神飛礫(マインド・ブラスト)の正式な詠唱です。通常知られているのは比較的簡単に発動できるように簡易化されていますから威力が半分以下の効果しか出ません。それでも普通の人の精神を破壊して廃人にすることはできますけどね。ただ今回は相手が相手です。正式な術を知らなければまったく通用しません」
そう言われラクレーナは詠唱し発動してみせる。
「なるほど、確かに今まで発動させていたものとはレベルが違いますね」
「私やティアラは自身の魔力だけでも戦えますが、普通の魔法は何らかの力を借りて発動させるものです。それを理解した上で正しい意味で発動させなければ威力を発揮することはできませんからね。それから、精神飛礫(マインド・ブラスト)は一応、精霊系魔法の一種です。ただし複合精霊ですから純粋な精霊魔法ではありませんけどね」
「難しいものですね」
「まぁ、貴女はあくまで剣士ですからそこまで理解できなくても問題ないですよ。それでも並みの導師クラス以上ですけどね」
「魔道師の魔力と剣客が使う闘気には近い部分がありますからね」
「フォルク流でいう闘気系の技は魔力を力として使っていますから魔力と言っても過言ではありませんね。ただ通常の魔道師が使う魔法はその魔力を利用して他のものの力を借りるものを魔法と読んでいます。自身の魔力だけで魔法が使える人はほとんどいませんよ。貴女はどちらも使えるようですけど」
「わかるのですか」
「貴女は城内の移動で魔法が使えるでしょう」
「はい」
「基本的に城内は魔道師対策で魔法が使えないようになっていますからね。ただある一定上の力を持っている者には意味がありませんけどね」
「エラナ、そういえば捕らえたレスティア帝国の魔道師はどうするつもりですか」
「あれですか、コールドスリープが人体にどれほどの影響を与えているのかを調べたいだけですよ。500年以上のコールドスリープから目覚めた検体ですからね」
「やはり魔道師にとって不老、永遠の命というのは今も変わらない研究のテーマなのですか」
「表立って研究している人は少ないですよ。レスティア帝国時代は魔道が使えない者に人権はありませんでしたから、人体実験されていたこともあって表立って研究できませんからね。その為に研究しようとすると特別に研究室を準備してなど莫大な研究費が必要になりますから、よほど大きな商会・財閥のバックアップがないかぎり無理でしょうね」
「エラナ、今回の件もそうですがフレア家にはそれほどの財産があるのですか」
「フレア家そのものに受け継いでいる財産はありませんよ、基本的には私一人で稼いだものです。普通の武器に魔力を施すだけでかなり稼げますからね。それにルキシード商会が販売している魔法の武器は私が刀匠としてつくったものですからね」
魔力を持った武器は普通の武器の数十倍から数百倍の値段で取引される。さらに刀匠によっては数千倍以上の値段がつくこともある。エラナの刀匠として剣はかなりの良質なもので魔力を持たないものでも数十倍の値段でも買い手がつくほどであるが、数本だけエラナが気まぐれで作っただけのこともあり数が少ないこともあるが、それだけの一品でもある。
何人か通常の数千倍の値段で、エラナに剣を頼んだものもいるが、エラナが認めるだけの剣舞を演じられた者にしか作らないため、これまでにつくったのはわずか1本だけである。
そう言った意味で計算するなら、今回エラナが作ったエラグラスの剣は、エラナが全身全霊、全魔力を注ぎ込んだもの数万から数千倍の価値はあるともいえる。
「それだけでつくった財産ではないのではないですか」
「導師という位だけでも普通の人とは比べ物にならない援助が受けられますからね。多くの導師は国の役職も兼任することで得ているものもいますけどね。そういえば、私の場合でしたね、山賊・盗賊退治もいい収入になるということです。あとは遺跡調査ね」
「なるほど、貴女が一対多数を得意とする理由がわかった気がします」
「さて、私も少し力を回復させないといけませんから、早めに休むことにします」
「おやすみなさい」
そう言いラクレーナは部屋を出て行った。

それから1週間、それぞれは比較的のんびりと時間を過ごした。時間に追われ動いていた一行にとっては久しぶりにのんびりとできた時間でもあった。
「どうだ万全なのか」
ベネラルはそう尋ねる。
「万全といえば万全ですが、100%かというと微妙なところですね。それほど影響があるとは思いませんが」
「魔力の強さは環境や場所、精神的な影響を大きく受けますからね」
そうティアラが言う。
「お姉さま、結界の準備は整いましたよ。ですが、お姉さま達が本気で力を使った場合は結界が耐えられるかどうかはわかりませんよ。それから私は転移防止用の結界との同時ですから戦いでの戦力にはなれませんよ」
強力な結界を同時に2つも制御するだけでも膨大な魔力を消費する。それだけの芸当はセレナ以外には不可能、エラナやティアラでは変わりは勤まらない。
「私のほうも準備は万全です」
そう言うラルクは神官騎士の姿ではなく司祭としての法衣に身を包んでいた。
「私はいつでも構いませんよ」
ラクレーナはいつもの通りの軽装な鎧姿だった。
「全員そろったようだな」
ベネラルは他の5人を見てそう言う。
「セレナ、はじめましょうか」
「はい、封印の解除はお教えしたとおりです。私は先に結界を展開させますから、解除はお願いします」
さすがのセレナも2つの結界を展開した状態で封印を解く術を使うことはできない。封印はできないが解除だけならエラナでも可能である。
「いきますよ」
エラナがそう言ったと同時にセレナが結界を展開させる。
「法皇セレネイドの名代エラナ・フレアが命ずる、かの封印を解き放て!」
詠唱と同時にエラナが杖を振るうとエラグラスの封印が解ける。
「ぬぅ、貴様らか」
「私達を倒さぬ限りここからは脱出できませんよ」
エラナがそういい放つ。
「いいだろう、貴様らを倒さぬかぎり我の時代はこぬ」
「うぉぉぉぉっ」
ベネラルがまず切り込む。
「ふっ」
そう言いエラグラスはベネラルの攻撃を受け止める。
「なに」
「なるほど、俺の弱点をついた武器のようだが、当たらねば意味がない」
「そうですか」
同時に動いていたラクレーナの一撃がエラグラスの肩に傷を与える。このときラクレーナは命中と同時に術を発動させていた。
「なるほど、剣と魔法の同時攻撃か。多少は痛いがそれでは我は倒せぬぞ」
「そのような戯言は私の攻撃を見切れてから言ってください」
同時にラクレーナは5箇所に傷を入れており、すべての攻撃に術を発動させていた。
「さすがはレーナね、私にも見えなかったわ」
エラナはそう呟く。
「小ざかしい」
エラグラスはラクレーナに攻撃対象を定めるが、その隙を見逃すベネラルではなかった。
「俺も甘く見られたものだな」
「ぐぅっ」
ベネラルの攻撃は確実にエラグラスを捕らえた。1対1ならエラグラスはベネラルと互角に戦う力はあるが、それにラクレーナが加わっている。
『最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!』
その隙を見逃すほど甘くない、エラナとラルクが同時に放つ。
「おのれい、魔閃砲(キャノン)!」
エラグラスは怒りに任せ放つ。
「魔力反射鏡(マジック・リフレクト)!」
ティアラは冷静にエラグラスに術を跳ね返す。
「コケにしおって」
この隙にベネラルは攻撃を仕掛けるが、その一撃はエラグラスの皮膚に防がれる。
「斬れないだと」
『フォルク流拳術炎技・煉獄昇!』
エラナの拳がエラグラスを捉え吹き飛ばすと同時に発動させる。
「法皇審判(ジャスティス)!」
「こざかしい!」
かなりのダメージを受けてはいるが、見ているその場から回復している。
「ベネラル、剣に闘気をこめなければ通用しませんよ。それからエラグラス、いくら貴方がいかに無限に近い再生力をもっていたとしても、真に無限に再生できるわけではないでしょう」
どれだけの時間がかかるかはわからないが、エラナ、ラルク、ティアラ、ラクレーナの4人の攻撃だけでも積み重ねれば、エラグラスの再生の限界を上回ることはできる。ベネラルの剣であれば、それよりもかなり時間を短縮することはできる。
エラグラスはベネラルの攻撃にだけ対抗できればいいわけではない。ここにいる全員をエラグラスは無視することはできない。
「ならば貴様らまとめて消し去ってくれるわ」
「それは好都合ね、再生に必要な魔力を消費してくれるとはね」
「エラナ、遊びすぎですよ」
そう言うティアラはすでに封閑をはずし魔力を開放している。
「なるほど、中途半端な力は意味がないか」
同時にエラグラスも完全に魔力を開放した。
「やれやれ」
そう言いエラナも魔力を開放する。それに呼応するようにベネラルとラクレーナも隠していた闘気を開放した。
「結界を維持する私の苦労も考えてほしいですけど」
セレナはそう呟きつつも圧倒された様子はない。圧倒されているのはどちらかといえばラルクであった。
「最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
エラナが放つと同時にベネラルが切り込み、剣でエラナの術を受け止めると同時にエラグラスの叩きつける。
「ブレイク!」
「破精裂陣(マインド・イレイズ)!」
精神系の術で最高位と呼ばれ並の人間なら一生廃人に変えるほどの術、放ったのはラクレーナだった。あまりに危険な術で学院でも禁呪とされ、エラナも彼女に教えてはいない。
「小ざかしい、超熱魔閃砲(フレア・キャノン)!」
エラグラスももはや手加減なしでもてる高位呪文を打ち込んでくる。
「これを待っていました。魔力鏡・吸引!」
ティアラがそれを受け止め同時に詠唱に入った。
『闇を照らし出す光光を覆い隠す闇すべての力の源よ我が力となりて裁きを与えん!』
「セレナ」
エラナはティアラの術の威力を察するとそう叫んだ。
「光闇審判(ホーリー・ジャッジ)!」
ティアラが発動させると同時にセレナが発動点を中心に結界を展開しエラグラスのみがダメージを覆うように覆い尽くす。
「エラナ!」
ベネラルがさらに切り込む。
「法皇審判(ジャスティス)!」
エラナはベネラルの持つ剣に向け解き放つ。
「これで終わりだ」
ベネラルの攻撃が入る瞬間、セレナが結界を解除しベネラルの一撃がエラグラスを真っ二つに断ち割ると同時に剣が粉々に砕け散る。
「破精裂陣(マインド・イレイズ)!」
エラナが発動させると同時に砕け散った剣の無数の破片から同時に発動した。
「ぐぁぁぁぁぁーーーっ!」
エラグラスの断末魔が響き渡る。
「殺ったのか・・・」
エラグラスの姿が消えたのを確認してベネラルが尋ねる。
「そう思いたいですが」
「まだいます」
闇の力を一番感知できるラルクがそう叫ぶ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・さすがに今のは肝を冷やしたぞ」
「どうする剣はもうないぞ」
ベネラルがそうエラナに呟く。
「これで貴様らの頼みの綱であった剣はないぞ」
「ふっ」
エラナはそう笑うとベネラルに剣を投げてよこす。
「エラグラスの剣、もう1本あったのか」
「なんだと」
「ベネラル、それがオリジナルのエラグラスの剣です」
『フォルク流剣技火技奥義・爆砕天昇裂破!』
剣を受け取ると同時にベネラルは斬りこんでいた。
「ぐぁぁぁぁぁーーーっ!」
それがエラグラスの最後の断末魔だった。

短い時間であったが、6人にはかなりの時間を戦い抜いたほどの疲労があった。
「エラナ、お前は最初からエラグラスの剣を持っていたのか」
ベネラルがそう尋ねた。
「数年前に手に入れたものですが、今回の件があるまでまったく知りませんでした。剣の製造法を見て気がついたのですからね。ただ、同時にその剣に欠陥があることにも気がつきました。その剣は確かにエラグラスを倒す剣ですが、エラグラスの防御力を打ち破るだけの力は持っていません。だから、ある程度エラグラスを弱らせる必要があったので、あのような細工をしたのです」
「そうお姉さまを攻めないでください。考えたのは私ですから」
セレナがそう言う。
「もっとも最後の瞬間まで黙っているように指示したのは私です。エラグラスに感づかれては意味がありませんからね」
「まぁいい、結果的にエラグラスを倒しこうして全員無事に生き残ったのだからな」
「どちらにせよこれで任務完了ですね」
ティアラがそう言う。
「あとはこれをどう報告するかですね」
「どちらにせよ、国境での戦の報告で帝都に戻らねばならん。難しいことは父上にでも任せることにするさ」
「私のことは報告には居なかったことにしておいてください。余計な権力争いに巻き込まれたくありませんから」
ティアラはそれだけ言うと姿を消した。
今回の件が公になれば、ティアラがエラナに匹敵する魔道師であることを証明することになる。すでにエラナに譲った次期最高導師、巻き込まれたくはなかった。
「さて、今日は早めに休んで明日には帝都に向けて出立せねばならん」
「そうですね、私も予定以上に消耗してしまいましたからね」
「お姉さま、私は先にリクイド城の家に戻っています。のんびりする予定が少し忙しかったですから」
「そうでしたね、私が帝都に戻って事後処理をして学院に戻るまでに10日ぐらいはあるでしょうからゆっくり休むといいでしょう」
「では、私はこれで」
そう言いセレナも姿を消した。
「レーナ、貴方はどうします?」
「私は一度フォルク師の元に戻ろうかと思います。まだ卒業したわけではありませんから」
「それだけの実力があればほぼ卒業したも同然だろうが、偏屈な師だからな。何を言い出すかわからんがな」

翌日、ベネラル達一行は軍を率いてリスタール城を出立した。ラクレーナも途中までは一緒であったが、途中でわかれフォルク師がいる森へと姿を消した。
兵の数もあるが、行軍を急ぐ理由もないため7日かけて帝都へ到着した。
帝都に戻ると、ベネラルを筆頭にエラナ、ラルク、サンバス、グランテールの5人は戦勝の報告に謁見の間に入った。
エラナにとっては幼いころに師ラスティークに連れられての謁見以来のことだった。
「ベネラル、叛乱軍討伐ご苦労であった」
皇帝はそうベネラルに声をかけた。
「あらかたの叛乱軍は討伐致しましたが、来年にはまた兵を集めてくる可能性はあります。予断はまだ許されないかと思います」
「なるほど、今はゆっくりと休むがいい」
「ありがとうございます」
「皇帝陛下、10年ぶりのご挨拶となることをお許しください。学院導師エラナ・フレアです」
そう言いエラナはベネラルの横に進み出て膝をついた。
「エラナか、ずいぶんと立派になったのう。聞けば、今回の叛乱軍討伐の作戦指揮はそなたがとったとのことだが」
「陛下の兵を私が勝手に指揮したこと失った兵もございます。勝利を得たとはいえ、申し訳なく思い、お詫び申し上げます」
エラナはそう言い頭を下げた。
「兵を失ったのは少ない兵力で対処させた余の責任もある。気にすることはない。むしろこれだけの兵を無事に連れ帰ってくれたことに礼を申そう」
「ありがたきお言葉、感謝いたします」
「さて、エラナよ。余から受け取ってもらいたいものがある」
皇帝がそう言うと、文官の一人が進み出て1本の錫と書をエラナに手渡す。
「これは、公爵家の」
「フレア家の当主がそなたであることは間違いなかろう。フレア公爵家は本日を持って再建させるものとする。よいな」
「お受けいたします」
皇帝はエラナの返答に頷くと話を続け、ベネラル達の他の者に対する褒章を発表した。
1時間後、フレア公爵家当主としてエラナは公爵としてドレスに着替え再び謁見した。普段、ローブ姿で容姿を気にしないエラナだが貴族として正装すれば美しいほどの美貌、それに貴族としての気品と風格は持っている。
ベネラルも改めてエラナを見て見とれていた。見とれたのはベネラルだけでなく多くの若い貴族達もそうだった。
その日はエラナのフレア公爵家復活を祝った宴がもようされ、学院や大神殿、財界からも多くのゲストが招かれた。
その中には学院最高導師ラスティーク、総大司教ジェランズ・ハーパリン、ルキシード商会からはメリア・ルキシードなど早々たるメンバーが集まった。ティアラも準導師から導師に昇格して宴の席に姿を出した。
ただこの宴の席で皇帝よりとてつもない発表がされた。
エラナをベネラルに告ぐ第四位の皇位相続権を有することだった。女性が皇位継承権を有することは始めてのことだったがフレア公爵家がアルスターク家の分家として新しく定められている皇位継承順位をつけると当主を対象とするとだけあり男女の区別はない。直系は男子との規約はあるが、分家や爵位を継承するのに男女の区別はない。
もっとも皇帝には2人の男子がおりエラナが皇帝を継承することはほぼ考えられない状況である。

第一部 メニュー

1990-2013 ©seiryu gensui
1995-2013 ©Minstrel Rapsodoz
2008-2013 ©Rapsodoz System Support