幻水の作家な気分

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第一部  第七章 総大司教

帝都ラクーンに戻るとエラナはラルクと裏通りにある神殿に来ていた。
「そろそろお見えになる頃だと思っていました」
「久しぶりですねミレーラ」
「お腹の子は順調のようですね」
「気がついていたのですね」
「私に神皇の血が流れていることはご存知でしょう。かすかですが真実の目は持っていますよ。貴方のように未来を見定めることはできませんけれどね」
「元々、神皇が現在、魔皇が過去、法皇が未来を司っていますからね」
「どれだけその力が使えるかが血の濃さを意味しますからね」
「ある程度でも使える時点でかなり濃いですよ」
「確かに、私は一応ヴィズダム聖王家の血を引いていますからね」
「たしか今の聖王は貴方の兄君でしたね」
「そうですよ。貴女が良く知っているスティールは私の甥ですからね」
「知っていますよ。私は過去、現在、未来すべてを見通すことができますからね」
「で、私に用とはなんですか」
「1つは今月中に生まれる私の子エレナをお願いしたいこと、次期総大司教に関わることです」
「総大司教ですか、サリナ、あの書類を持った来なさい」
部屋に同席していたミレーラは娘のサリナにそう言う。
「どうぞ」
しばらくすると紙の束を持ってサリナが戻ってきてエラナに手渡した。
「これは・・・投票権を持つ全大司教のリストですか」
「それとそれぞれの大司教が持つ疑惑、汚職に関する証拠です」
「よくこれだけ調べましたね。私が調べさせたものにもここまでの情報はありませんでしたよ」
簡単に目を通すと、そのままラルクに手渡した。
「私に調査を依頼されたのは先の総大司教です。それに私が持つ諜報機関は帝国国家が持つ諜報機関より優秀ですからね。最も教会関係に限定しますけどね」
ここ裏通りにあるこの神殿はミレーラの以前にここの司祭の時代から孤児院を兼ねており帝国各地に数多くの司祭を出しており中には大司教の位にあるものもいる。
「なるほどね。教会内部のことは教会関係者ですか」
「そう言うことです。私にしてあげられるのはそこまでです。最低3人の大司教は失脚させれば、この神殿出身の大司教が誕生することになりますから」
「助かります。これで残るは中立派を説得することですね」
「中立派は自らの保身を考えているものが多いですからこちら側に投票すれば得になることを説明すれば良いだけですからね」
「そうではありますけど、アルウスが帝国の政治を司っている以上はかなり厳しいですね。こちら側で政治に強く関わっている者がすくないですからね」
ラルクはサリナが持ってきた書類を順に目を通している。
「気になるところでもありましたか」
ミレーラが尋ねる。
「まさかこの大司教がと思われる方の名前もありますね」
「そんなものですよ。その中からこちらに引き込めそうな者ははずしてアルウス側だけをピックアップするとどの程度ですか」
しばらく考え込みラルクは答える。
「そうですね。5人ぐらいはいますね。ですがこの時期にあからさまではありませんか」
「おそらくアルウスも何らかの方法でこちらの票を減らしに来るでしょうからそれを防ぐのも忘れてはいけませんよ」
「私の調べた情報とミレーラの情報があれば十分でしょう。私は他に考えてることがありますから後は任せますよ」
それだけ言うとエラナは神殿を後にした。

神殿を後にしたエラナは学院に来ていた。
「エラナ、ずいぶんと派手に動いているようですね」
話しかけてきたのはメリアだった。
「たいしたことをしたつもりはありませんよ。ですが、兵を率いて戦うのもいい経験ができてますけどね」
「やはりそちらを目指すのですか」
「公爵位は頂くつもりですしね。それに私は兵に多くの犠牲を出してでも勝利するのがすべて正しいとは思いませんからね」
「考え方は人それぞれですからどれが正しいかとはいえませんが、人の命を軽んじることは正しいとは思いませんけどね」
「で、セレナとティアラが調べていた資料を私も閲覧したいのですが」
「構わないけど、ある程度しかわかりませんよ」
「構いませんよ。読むのは得意ですから」
「そうでしたね。で、セレナとティアラはどうしたのです」
「セレナには票調査をやってもらってます。ティアラは少し材料集めに動いてもらってます」
「なるほどね」
「それで、総大司教の選挙ですがハーパリン大司教になるように票固めをお願いしていいですか」
「あの人なら幾度かお世話になっていますから構いませんが、貴女のことですからルキシード商会の力でアルウス派の資金源を経てとでも言うのでしょう」
「できればお願いしたいですね。資金の方はある程度は私のほうでどうにかします」
そう言いアルウス派の大司教が書かれた紙を手渡す。
「私もビジネスですから、一時的な出費はあるかもしれませんが、最終的に利益が出るようにしか動きませんから資金は必要ありませんよ」
ルキシード商会は、商会としては帝国第二位ではあるが保有する資産は帝国一位を誇る。
「お願いします」
「エラナ、ラスティーク導師には挨拶していきなさいよ」
「はい」
そう答え、エラナはラスティークの部屋を訪れた。
「失礼します」
「エラナか、状況はセレナとティアラからおおよそ聞いているが後戻りはできんぞ」
「わかっています」
「わざわざ、私を訪ねてきたということは何か許可でも欲しいのか」
「エラグラスの剣を作る必要がありますので、学院地下4階の使用許可をお願いします。それから地下5階以降への入場許可を頂きたく思います」
学院の地下にはさまざまな施設がある。地下1階は魔道実験場で模擬訓練を行うための場所であり、地下2階と3階は導師達の研究室がある。そして地下4階は歴代の最高導師が使用してきた研究室がいくつも残っている。
さらに地下5階以降は、特別な遺跡となっている。
「精錬室だけなら良かろう。それから地下5階以降は好きにするがいい。そなたには挑戦する資格はあるだろう。しかしこんな時期に地下遺跡に挑戦する必要もなかろう」
「地下50階からいける鉱脈があるそうですから」
「鉱脈とな、聞いたことが無いな」
「私もアルスターク家の古文書は私が持っていますから」
「なるほど、それでどんな鉱脈があるのだ」
「メタル銀の鉱脈ですよ。地下100階にはオリハルコン、地下200階にルヴァインの鉱脈があるそうですが」
「学院の地下にそのようなものが眠っているのか」
「今の私の実力では70階程度までいければいいでしょうね」
「そなたでも到達できないなら他の誰にも到達できぬだろうな」
「過去に120階まで到達した者がいるそうですけどね」
「120階だと」
「学院創設者であるエラナ・アルスターク様だそうです。古文書は彼女が遺跡に入った時に得た知識によって書かれています」
「しかし、そなたの力はすでに学院創設者であるエラナ・アルスターク様に匹敵していると思っておったのだがな」
「私の魔力が万全ではないこともありますが、魔道戦の実戦経験の差でしょうね。遺跡はそれを補うにはちょうどいいかもしれませんが」
「ある意味、修行の場ということか」
「そうなりますね。どちらにせよ私も今のままでは力不足を感じていますから」
「好きにするといい。用件はそれだけか」
「あとは総大司教の選挙のことですね」
「ハーパリン大司教は古い友人、協力するつもりでいる」
「ありがとうございます」
それだけ言うとエラナは部屋を後にした。
エラナは自室に戻り着替え、数日分の食料を準備するとそのまま学院地下に向かった。

準備を終えたエラナは、再びラスティーク師の部屋に戻りその部屋にある転移装置から地下に入った。
地下5階以降は人工的な洞窟ではあるが、全体的に特殊な魔力に覆われている。
「この魔力の感覚、法皇セレネイド様か。そうするとここは遺跡というわけですか」
しばらく進むと魔獣が姿を現した。
「なるほど、間違いなくここは神話時代につくられた遺跡のようですね」
そう言い、エラナは目の前の魔獣をいとも簡単に倒すが、彼女だからこそ簡単に倒せる相手だが並の導師級の実力者ではかろうじて倒せるレベルである。神話時代では雑魚レベルだっただろうが、この時代ではかなりの強敵でもある。
「キマイラですか。魔法を使うまでもありませんか」
そう言うと同時に一刀のもとに斬り捨てる。
その先地下10階までは出現する魔獣を一刀のもとに次々と斬り捨てていく。
そして11階に下りる階段の部屋でエラナは石版を見つけた。
「古代神聖語、やはり神話時代の遺跡であることは間違いなさそうですね。ですが、これと言って新しい知識というわけにはいきませんか」
だが最後の方でエラナの目が止まった。
「なるほど、今に伝わっているものでスペルが違うものがありますね。古代神聖魔法で力を引き出せないのはこれが理由のようですね」
スペルが違えば発音も意味も変化してしまう。時と場合によっては全く逆の意味となってしまうことすらある。古代神聖語の難しい点は15の母音と30の子音、それ以外の50の音で成り立つ。さらに聖母、神皇、法皇、魔皇ごとに方言というべき違いもある。
聖母古代神聖語が基本となる言語だが、それぞれの皇の力を引き出す場合は方言の方を使用する必要がある。
現代語では5の母音と15の子音しかない、魔法語、神聖語は10の母音と15の子音である。特殊なのが精霊語で30の母音と20の子音からなりたっており、古代神聖語以上に多くなっているが、精霊後は文法が簡単なので古代神聖語ほど習得は難しくは無い。古代神聖語は状況などによって変化する、活用形、語尾によって言葉そのものが変わってしまう。
現時点でエラナが理解し使えるのは、現代語・魔法語・古代魔法語・神聖語・精霊語・古代神聖語(全種)・エルフ語・古代竜語・現代竜語・レスティア帝国標準語・ドワーフ語・魔界語とかなりの数を使える。これ以外にもゴブリン語やコボルト語などをはじめとする魔物の言葉も理解している。
次にエラナが石版を見つけたのは21階に降りる階段の部屋だった。
「これも得に新しい知識が書かれているわけではありませんが、どうやらこの石版は人を見て内容が変化するようですね。昔見た古文書とかなり違うようですからね」
エラナがそう言ったと同時に石版の文字が変化し、同時にそこに一人の女性が立っていた。
「ここに人が来るのも久しぶりですね」
「何者?」
「私ですか、この地下迷宮の管理人のヴィエラ・セレネイドと申します」
「・・・セレネイド、やはりここは法王セレネイド様に関係があるのですね」
「いかにもここはセレネイド様が作られた迷宮、そして私はセレネイド様直属六神官の一人とでも言っておきましょうか」
「六神官・・・」
エラナは六神官の話は知っていた。それぞれの皇は2つの王と自らの力を行使できる6人の神官を生み出したと聞いている。その6人こそが今残る皇の血筋の原点といえる。
法王の血を引くエラナにとっては始祖にあたる。
「なるほど、我らが血統ですか。その感じからするとウェルドとキャナルの血統のようですが、それ以外にも混ざっているようですが」
「なるほど、いくつか謎が解けた気がしますよ」
「50階まで到達できたなら貴女が知りたい情報をある程度提供しましょう」
それだけいうとヴィエラは姿を消した。
「50階ですか、どちらにせよ50階には用がありますが、ここに六神官の一人がいるという事はそれだけの秘密がこの地下迷宮にはあるようですね」
そう言いエラナは先に進み半日ほどかけて50階に到着した。

「思ったより早かったですね」
50階で待っていたヴィエラはそう言う。
「あまり時間を浪費することもできませんからね」
「で、何を知りたいですか」
「では、今の私の全力で貴女とどれほどの力の差があるかを知りたいですね」
「それは私と戦ってみたいということですか」
「そうなりますね」
そういうとエラナは自らの杖を呼び出す。
「わかりました。ただし、命の保障まではしませんよ」
そう言いヴィエラも杖を呼び出し同時に結界を展開させる。
「構いませんよ」
「どこからでもどうぞ」
『紅蓮の炎母なる大地のその息吹よ我が敵を焼き尽くせ!』
エラナはあえて詠唱から術を発動させた。
「極魔熱閃(フレア)!」
「魔術で防御するまでもありませんよ」
そう言うとヴィエラは杖で術に触れただけでエラナの術を消滅させた。
「ならば、これならばづですか」
『四界の闇を統べる王混沌の王天を翔ける闇夜の星々
すべての心の源よ我が手に集いて我が命に従いて
我が敵を撃ち払え』
「魔龍烈閃砲(カオスティック・ブリザード)!」
エラナオリジナルの最高位の攻撃魔法である。
「なるほど、人の身としてはたいしたものですね」
そう言いつつもヴィエラは杖で触れただけで打ち消した。
「私の切り札なのですけどね」
「でしたら、本気で打ってきたらどうです。魔力を抑えたままの術が私に通用するとでも思っているのですか」
「これ以上はコントロールできませんから、ちゃんと防いでくださいよ」
そう言うとエラナは杖を手放した。
「媒介である杖を使わないというのですか」
基本的に魔道師は杖を媒介として力を引き出し増幅させるために杖を持つ。
「私の場合、杖はリミッターの役目で持っているだけですからね」
そう言い、両腕につけているブレスレットとイヤリングを外した。
「力を封印して私と戦おうとしていたのですか」
「強すぎてコントロールできないんですよ」
そう言い、エラナは右手に光のエネルギー、左手に闇のエネルギーを同時に呼び出す。「初めて見ますね、異なる力を同時に呼び出せるのですか」
エラナは光と闇をひとつに組み合わせると同時に異なる力が産み出される。だが、同時にエラナ両腕からきしむような音がする。
そしてそれが完全にひとつの形を成したとき、エラナの左腕は形を成していなかった。
「まさか、無・・・」
『無滅斬(ラグナロク)!』
エラナはそれを剣に変化させた。
「無の物質化・・・、ですが、そこまでですね。それを振るう力は残っていないでしょう」
『魔道武術最終奥義・無滅幻影剣舞!』
「ほぅ」
ヴィエラは感嘆しつつも姿を消してそれを回避する。
「それで回避したともりですか」
そう言うエラナもこれ以上は術を維持できなかった。
「なっ」
完全に回避したはずのヴィエラの右腕が切り落とされていた。
「無に距離は無意味です。異空間であろうと空間ごと切り裂くこともできますからね」
そう言いながらエラナは左腕を再生させる。
「なるほど」
そう言いヴィエラも右腕を再生させる。
「今は完全に制御できませんが、私の最後の切り札です。それでも本来の力の1割程度の力しか引き出せていないでしょうが」
「人の身では異端的な力ですね。しかし」
同時にヴィエラの力が開放される。
「・・・」
「これで一割程度ですよ。貴女の力を1とするなら私の力は100以上はありますからね」
「そこまでの差が・・・」
「謙遜することもありませんよ。人間が手にすることのできる力をはるかにしのぐ力を持っていますよ。ですが、さきほどのあれで本当に全力を出しているのですか」
そう言いヴィエラはエラナをじっくりと見る。
「全力ですよ。ほぼすべてのリミットを解除していますからね」
「そう言うレベルではありませんよ。私が感じる力ではまだあなたにはその10数倍の力があるはずなのですけどね。あ、なるほど、普通の人間は肉体が持つ力のほうが強いのですが貴女は魂そのものがもつ力が強大なのですね。回復系の力の強さもありますが、貴女の場合は魔法として蘇生させているわけではない。私が蘇生させるようにそれができるということは、並みの魔法も同じような感覚で使えるようになればそれだけの力を引き出せるということです」
「それでは肉体が耐え切れないのではないのですか」
「当然そうなるでしょうが、それはあなた自身が肉体的に強くなるしかないですが人のみではそれが限界なのかもしれませんが」
「そんな限界、いくらでも超えてみせるわ」
同時にエラナはさきほどまで放出していた魔力をはるかにしのぐ魔力を放出させる。
「なるほど」
同時にヴィエラは姿を消すと同時にエラナの腰に回し蹴りを喰らわせる。
「がぁっ・・・」
ヴィエラの一撃で腰の骨を粉々に砕かれ、痛みで声が出ない。さらにヴィエラは、エラナの右腕をつかむと力任せに腕を引きちぎる。
「早く再生していかないとここで死ぬことになりますよ」
同時にヴィエラの右腕がエラナの心臓を貫く。
エラナはピクリとも動かなくなるが次の瞬間、そこにあったエラナの体は燃え上がり消滅すると同時に別の場所から炎が燃え上がる。
「まったく人の体をもて遊んでくれますね」
炎の中から一糸まとわぬ姿でエラナは姿を表すが、炎が消えると同時に衣服も元に再生する。
「ふっ」
ヴィエラは再びエラナの腰めがけて回し蹴りをするが、エラナはそれを左腕で受け止める。
エラナは間合いを計ると同時に再び無を呼び出すが、今度は左腕が消滅することはなかった。
『光闇消滅(メガル・クラスト)!』
『法皇判決(ジャッジ)!』
ヴィエラはエラナの無を打ち消す。
「やはり想像したとおりでしたね。貴女は肉体を再生させるたびに強くなっていく。より強大な相手に肉体を破壊されると無意識にそれに対抗できるレベルまでに昇華しようとしていく。おそらく最初に私に仕掛けてきた時の数倍の力は使えるようになったでしょう。それでも私との実力差が埋まったとは思わないことです」
先ほどの攻撃ですらヴィエラはかなり手加減している。
「言われてみれば今までもそのような感じはありましたね。ですが、無の力はこの空間だけでしか使えないのでしょう」
「私の空間は創生の時代に近いですからね。現在の生命界の魔力では不可能でしょう。せめて私の2割程度の力は手に入れて頂かないとね。これ以上はお相手できませんが、100階まで来れるのでしたらその時にお相手しましょう」
「悪いけど今回は行くつもりはありません。この階が目的でしたからね」
「メタル銀ですか、好きにするといいでしょう」
それだけ言うとヴィエラは姿を消した。
「やれやれ」
そう言いエラナは先ほどはずしたブレスレットとイヤリングを身に着ける。
「力が上がった分、抑えきれなくなったわね」
そう言い新しい封環を取り出し数個耳につける。
その後、エラナはメタル銀の原石を見つけるとそのまま地上に戻った。

エラナが部屋に戻るとティアラが待っていた。
「もう戻っていたのですか」
「先ほど戻ったばかりです」
そう言いティアラは頼まれていたいくつかの品を机の上に置く。
「これで必要な材料はすべてそろいましたね」
そう言いメタル銀の原石を机の上に置いた。
「エラナ、また力をあげたようですね」
「学院地下迷宮に行ってきましたからね。あなたも行ってみるのもいいでしょう。得るものも多いはずですよ」
「とりあえずはやめておきますよ。余計なことをするとまた私を担いで次期最高導師と言い出されても困りますからね。これでも力を押さえ込むのも大変ですからね」
ティアラもエラナ同様に肉体より魂の力が上回っている。その状態で魂の力を確実に引き出しているのがセレナであるが、彼女は攻撃的な方法を得意としておらず封印の力だけに特化している。攻撃的な力を使うにはセレナは優しすぎる。
「さて、ティアラ貴女にも総大司教選に協力してほしいけど、貴女ならどう動きますか」
「説得は難しいでしょうから、票を減らすしかないでしょう。誰を殺してくればいいのですか」
「そちらは任せている2人がいますから必要ありません」
「あの2人ですか、そうすると貴女はあの2人をいずれ魔殺将と考えているのですね」
学院最高導師には直属の隠密部隊が存在する、最高導師の護衛を務める魔軍将と学院の禁忌を犯したものを始末する魔殺将がいる。現在の最高導師ラスティークにも存在することはエラナも知っているがその正体までは知らない。ラスティークの年齢からしてかなりの高齢か、すでにいなくなっている可能性も高い。おそらく必要な時にメリアがその役目を兼ねていると考えるべきだろう。
「あの2人なら申し分ないですからね。本当なら貴女にお任せしたいところですけどね」
「私が裏で動くには私の実力は知られすぎていますからね。エラナ、しかしエラグラスの剣をよみがえらせてしまって大丈夫なのですか。貴女に対する弱点になるのではないのですか」
「問題ありませよ。エラグラスを倒せる程度の力しか持ちませんから私には通用しません。もちろん、貴女にもね」
「まぁいいでしょう。エラグラス本体の行方は捜しておきますがレスティア帝国の生き残りについては始末してもかまいませんか」
「レイアームだけは泳がせておいてください。背後がいるでしょうからね。それにその背後はいくら私以外では相手は務まらないでしょうから」
「それはアルウスを含めてですか」
「アルウスは小物にすぎませんよ。その背後の組織の影でもつかみたいのですが、私にもそれを見定めることはできません」
「ほどほどにしておきますよ」
そう言うとティアラは部屋を出て行った。
「どうやらティアラは1つ目の壁は越えたようですね」
エラナが言う壁とは人間としての壁、エラナはヴィエラによって2つ目の壁を越えたばかりだが、ティアラが追いついてくるのも時間の問題だと思えた。ティアラに不足していたのは実戦経験だ。これだけ短い間に強力な相手と繰り返し戦ったことで、覚醒したといってもよい。

翌日、エラナは学院地下4階にある魔力炉にメタル銀を放り込むと部屋に戻り久しぶりに戻った机で事務処理を始めた。
「留守にしている間に結構たまっていますね」
そう言いつつ書類に目を通して順にサインしていく。
エラナの年齢的に学院の書類は少ないが、研究室のレポートや論文の数はかなりの数あった。次期最高導師にエラナがなれば学院の要職につけるかどうかはエラナの目に留まるかで決まってくるため、必死になるものも多い。
「これといったものはないわね」
半分ほど読み終えてそう呟いた。
ほとんどが自己を主張するために背伸びをしていることがわかるものばかりだった。
「失礼します」
部屋に入ってきたのはサイバーとアレンだった。
「何かありましたか」
「はい、エラグラスに関する資料が集まりましたのでお持ちしました」
「私たちなりにまとめてはみましたが、古い文字でわからない部分もありましたのでそのままお持ちした部分もあります」
そう言いアレンがその書を手渡す。
「レスティア帝国時代の魔法文字ですか」
そう言いながら書物に目を通す。
「なるほど、どうやらエラグラスを召還したのはこの書の著者であるセリア・フェラードのようですね」
「セリア・フェラードといえば、レスティア帝国最終皇帝の妹であった者ですね」
アレンがそう言う。
「そうですが、もともとは彼女の不老不死の研究のために召還されたもののようですね。しかも彼女はそれ以外にもいくつも召還しているようですが、その中でもエラグラスは中級レベルのもののようですね」
「あれで中級レベルですか」
「ただ実際に召還されたエラグラスは、セリアによって強化され今のエラグラスとは比べ物にならない力があるようです。ただセリアに対しては絶対服従の魔法がかけられているようですね」
「あれほどの魔獣を支配下におくほどの力を持った魔導師ですか」
「おそらく今の私では勝てないわね。おそらく不死の女王レティア・フェルナ疾い魄掬櫃垢襪曚匹領呂鮖っていたことになるわね」
「しかし、そうしますとレスティア帝国が滅びた理由が説明できなくなりませんか」
サイバーがそう言う。
「簡単なことです。セリアは自らの目的を達成させるためだけにレスティア帝国の力が必要なだけであって存続に価値を見出さなかっただけです。彼女が戦に出てきたのは彼女が不老の力を手にするためだけですから」
「人の生を喰らうということですか」
アレンがそう言う。
「おそらくね。魔界からの召還もおそらく彼女の力を手に入れるための手段に過ぎなかったのでしょう。ですからエラグラスに対する弱点からすべてこれには書いてあります。おそらくこれを読んだ王妃はエラグラスの剣を作り上げたのでしょう」
「しかし、無限の再生力と強力な魔法防御力を持つ相手をよく支配できましたね」
アレンが尋ねる。
「強力な魔法暴力はそれを上回る魔力を持てば、それほど問題はありません。逆に強力な魔法障壁は貫かれたときに予想以上に大きな被害を負うことにもなります。再生力の高さは肉体を上回る精神的な力があるということです。エラグラスの場合は、肉体が魔界と繋がっており常に魔界から魔力を補充し続けているからです。そこで重要になってくるのがメタル銀で作られた武器となるわけです。メタル銀はほとんどの魔法攻撃を防ぐ力があります。そのメタル銀の武器に精神破壊の力と魔力吸収の力を持たせたのがエラグラスの剣の正体です。いかに魔界から魔力を呼び込もうと呼び込む魂が破壊されては意味がありませんからね。一撃で倒せないとしても、再生に必要な魔力は決まっていますから、魔界から一度に吸い出すことのできる魔力を上回る攻撃を続ければ倒せます」
「なるほど、そうなるとその役目はベネラル様ですか」
「それをできるのはベネラル以外にはいないでしょう。魔道で倒す方法もありますが、私でもそれは使うことができません」
「エラナ様でも使えない術ですか」
「理由はいくつかありますが、1つは学院における禁呪であること、もう1つは発動させるのに途方もない魔力キャパシティーが必要になるということです」
「時空系の魔法ですか」
アレンはそう想定して言う。
「ご名答、私の空間形成で魔界との繋がりを切れればいいですがそれほど便利なものではありません。ただ時空魔法には完全に異なる空間に切り取ることは可能です。私の魔力で発動できないのですから禁呪として学院が封印する必要もないのでしょうが」
「もしかして発動させてみようとしたことがあるのですか」
「私のもともとの研究は古代史ですからね、過去に使われたほとんどの言語は理解していますよ。読めないから放置されている古い書物の中にすべて書かれていましたからね」
「確かに解析されていない書物は閲覧は特に禁止されていませんね」
「翻訳したレポートをラスティーク師に提出したらそのまま封印の書に入れられてしまいましたからね。私が研究を始めてから封印の書が1割ぐらい増えましたからね。ただそう言っても私はレポートの内容も読んだ古代の書もすべて記憶していますけどね」
エラナは一度読んだ書物なら一字一句まで記憶できる。ラスティーク師からは消して使うなと言われているが、エラナはそれは使ってはいないが、術式を組み立てなおして別の術を作り出して自分の物にしている。
「すごいですね。数冊程度なら記憶しているものもありますが、すべてですか」
「いくら覚えていても必要な時にすぐに思い出せないのでは意味はありませんからね。常に必要でないものは思い出すにも時間がかかりますから、本を見たほうが早いですよ。それによほど必要ないと思えばまったくある程度の断片以外覚えていません。それに学院には数万に及ぶ書がありますが、私が読んだことあるものは数千程度で1割もありませんからね。エラグラスも書で名前を覚えてた程度で、詳しいことなど何も覚えていませんでしたからね。おかげで苦労させられましたが」
「難しいものですね。ありがとうございます。いろいろと学ぶところもありました」
そう言いアレンは一礼すると部屋を出て行った。
アレンが出て行き残るレポートに目を通し終わると再び地下4階に戻ったエラナはその日のうちにエラグラスの剣を完成させた。

翌日、昨日魔力のほとんどを消耗して剣を作ったこともあり昼を過ぎても部屋を出てくることはなかった。
「エラナ、エラナ」
そう言い入ってきたのはメリアだった。
「何事です」
そう言いながら寝巻き姿のまま姿を現した。
「エラナ、何をしたのです。学院中の魔道装置が停止しています。魔力炉に何をしたのです。完全に枯れてしまっているではないですか」
「剣を鍛えるのに足らない魔力を魔力炉から借りただけですよ。それにしても慌てすぎですよ。魔力炉が枯れて魔道装置が使えない程度であわてるとは、魔道装置に頼りすぎるからこのようなことになるのです。予備の魔力炉を使えば最低限必要な装置だけは動かせるでしょう。自動階段、学院内の転移装置など頼らずに自分の足や自身の魔力で移動すれば済む話でしょう」
エラナが言うように学院内が広いこともあり移動を楽にするための魔道装置の数は多い。実際に必要な魔道装置は宝物庫の結界を維持する装置と学院警備システムぐらいである。
「それはそうですが、学院中から不満がラスティーク師の元に届いて大変なことになっているのですよ」
「まったく、面倒ですね」
そう言い学院内緊急放送用スピーカに手を触れる。
「何をするつもりです」
「私はエラナ・フレアです。楽をすることを覚えて自らを昇華できず文句だけ言いたいなら私が聞きます。2時間後に中庭で聞きましょう。衰えた足でも2時間あれば中庭にたどり着けるでしょう。以上」
エラナはスピーカを通して学院中にそう放送を流した。
「エラナ、なんてことを」
「私の研究室に所属するものには魔道装置の多用は禁じていますからね。それに私の名前は黙らせるには手っ取り早いでしょう」
実際、エラナはスピーカを通して放送を行ったがそれだけの芸当ができるものはそれほどいない。実際、ラスティークですらそんなまねはできない。
実際、エラナが2時間後に中庭に言った時には誰一人といなかった。離れてみている者、塔の上から見ている者もいたが、面と向かってエラナに意見しようとするものはいなかった。逆にエラナに味方するために学院にいるほとんどの研究室のメンバーは集まっていた。その数だけで2000人、学院内には1万人前後を誇る者がいるがその5分の1がエラナ支持派であることを見せ付ける結果となった。
この数日後には魔力炉は復活するが、魔道装置を利用して移動するものが少なからず減ったのは事実だった。
エラナも結局魔力回復に3日ほど必要とし、その間は部屋のベットの上で過ごすことが多かったが逐次入ってくる総大司教選挙の票勘定をしていた。
そして最後にレベル城地区の大司教が落石による街道封鎖から選挙に間に合わないという連絡が入ったことによってハーパリン大司教が当選がほぼ決まった。
そしてさらに7日、エラナの票勘定どおりにハーパリン大司教が当選した知らせが入った。
「もう少し抵抗してくると思ったのですが、まだ地盤が完全ではないのかもしれませんね」

結果を聞き届けるとエラナは、ベネラルのいる前線に戻った。
「戻ったかエラナ」
「新しい総大司教はハーパリン殿に決まりました。とりあえず当面の問題は解決したことになります。それからこれを」
そう言い剣を手渡す。
「これがエラグラスの剣か」
「ええ、ただ気をつけてく使ってください。元もとの剣よりかなり強力に作りましたから普通の人がその剣の残撃に触れただけで魂を打ち砕くことができます。必要な時までは使わないでください」
「恐ろしいものをつくりあげたな」
エラナが魔力炉を枯らせた理由が、元の性能以上のものを作ったことにある。ただこれは彼女が、元もとの製作者エラナ・アルスタークを越える刀匠であることを示すためでもある。
「あとは倒せるかどうかは貴方次第です。魔法防御では援護できますが、直接的な攻撃はその剣しかありません」
「どちらにせよ、一度リスタール城に戻らねばならんな」
「あのエラグラスは後でも構いません。問題は本体です。リスタール城にいるエラグラスは増殖できませんが、本体にはその力があります。あれだけの相手を倒すための剣ですからかなり無理している部分もありますから、そう何度もの戦いに耐えられないでしょう。それにそう何度も作れるような剣ではありませんからね」
「で、その本体のいる場所はわかっているのか」
「現在、噴火活動が続いている火口の中です。問題はどうやって取り出すかですが、それは敵も同じでしょうが」
「溶岩の中で封印の壷は大丈夫なのか」
「壷は特殊な魔法金属でできていますから、問題はありませんよ」
「だが、それならどうすることもできないのではないか」
「不可能ではありませんよ。溶岩程度の温度なら魔法障壁で覆われた状態ならば耐えられないことはありませんから。敵に場所さえ知られたらレスティア帝国の魔道師達です。取り出すこともできるでしょう。もしかしたら封印を解いていないだけで取り出している可能性もあります」
「そうすると相手の出方待ちということにならぬか」
「そうですね。敵の拠点がわかれば何らかの策をこうじることもできるのですけど」
「そのあたりは調べてきましたよ」
そう言い姿を現したのはティアラだった。
「どこです」
「リモール場西の山岳地区です。ここから南の地点といったほうが良いかもしれませんが、もともとレイアームが当時に所有していた砦の一つです」
「本来のレイアームが領土としていた場所ではないですね。すると末期に戦略拠点として使った場所ですか」
「おそらくは、砦の状態から見ますとおそらく一度も攻められたことのない砦だと思います。ですので、ある程度の武器などが残っているかと」
「どれだけの数の敵がいるかまではわかりませんか」
「中までは潜入してませんが外の見張りの数から考えると400名前後はいるでしょう」
「かなりの数ですね。それ以外の魔道生物を含めれば1万前後は覚悟していたほうがいいでしょうね」
「山岳地域となると騎士団は出せんな」
「騎士団はどちらにせよ役に立ちませんよ。各が違います。最低限でも黒騎士団の隊長クラス以上の実力がなければ無理でしょう」
「そうなるとここにいる黒騎士からは私とブラッサムとサーディン、あとクリスぐらいだぞ」
「ティアラ、悪いけど帝都に戻ってラルク、アレン、サイバー、セレナの4人を連れてきてください」
「わかりました」
そう言うとティアラは姿を消した。
「エラナ、ティアラに4人を連れてここまで転移できるのか」
ベネラルが尋ねる。ベネラルが最初に聞いた話ではティアラにそれだけの力はない。
「その為のセレナですと言いたい所ですが、ここ最近の実戦経験でかなり力をつけてきていますから、すでにそのぐらいの力はあるはずです」
「それだけの少数で対応しきれますか」
ラクレーナが尋ねる。
「ベネラル側が4人、それにレーナ、グランテール、私とティアラの連れに行った4人で12人といったところね」
「少なすぎはしないか」
「サンバス以外にここの兵の維持は任せられませんし、ここが手薄になってしまいます」
「エラナ、それではまだここの兵力が不足しますよ」
ラクレーナがそう言う。
「ラルクとセレナには残ってもらいますか」
「そうすると10人で1万を相手にしろということか」
ベネラルがそう言う。
「基本的にはそうなりますね。いざとなればあと2人いますし、この際紹介しておいても良いでしょう」
エラナがそう言うと、いつの間にか部屋に仮面をつけ鎧とマントをつけた二人が立っていた。
「お呼びですか」
一人は男、もう一人が女性であることは体格からわかる。
「二人の顔と名前を明かすわけにはいかないけど、私直属の隠密部隊とでも言っておきますよ。実力は保障しますよ」
「実力はおいおい見せることになるでしょう」
女性の方がそう言う。
「その気配だけで実力はわかる。剣技はエラナと同等かやや上か、魔力は俺にはわからんが、剣技だけなら2人がかりなら俺といい勝負ができるやもしれんな」
ベネラルはそう見た。
「魔道もSクラスの実力を持っていますよ」
「Sクラスだと、それだけの実力を持って無名なのか」
「表に出ないようにしていますからね。学院では準導師ですからね。まぁこれ以上はわかってしまいますから教えることはできませんが」
その時、ティアラはじめとする5人が姿を現した。
「早かったな」
ベネラルがそう言う。
「私に距離は関係ありませんから、必要なら1騎士団ぐらいならまとめて転移させてあげれますよ」
セレナがそう言う。
「ご苦労様」
「しかし、お姉さまがこの2人を呼んでいるのも珍しいですね。私を蚊帳の外にされるのはいつものとおりでしょうけど」
「ほかに留守を任せられる者がいませんからね。カリテとマルシェの2人と私の兵は残していきますから自由に使ってくれていいわ」
「まぁ、いつものことですからいいけど、たまには私も参加させてくださいよ」
「考えておくわ。だけど、ほかに後方を任せられる者がいたらね」
実力から考えればティアラでもよいが、政治的・戦略的に考えた場合はセレナの方が意味合いが大きい。駆け引きにおいてはセレナの方が優秀すぎる。
「で、少人数で戦う以上、何か策があるのか」
ベネラルが尋ねる。
「正面突破で乱戦に持ち込むしかないでしょう。魔道師は400名程度ですから私とエラナで引き受けれるでしょう」
ティアラがそう言う。
「どちらにせよレイアームとその側近さえ倒すのが目的です。それ以外は多少取り逃がすのは仕方がないでしょう。本格的な冬が来る前に決着をつけないと軍を撤退させる時間がなくなります。魔道生物に関しては術者の命令が変わらない限りほかの地域に移動する可能性はありませんから、殲滅に多少時間がかかるとしても殲滅はできるでしょう。Aクラス以下の魔道師は逃したとしても大きな脅威にはならないでしょうが、Mクラス以上は確実に倒しておく必要があります」
「私たちは魔道師中心でよろしいでしょうか」
仮面の男のほうがそう尋ねる。
「Mクラス以上を逃せば貴方たちの仕事が増えるだけですからね。自由に行動してくれれば構いませんよ」
「お姉さま、これを」
そう言いセレナが数枚の呪符を手渡す。
「結界用の札ですか」
「その6枚の札を魔方陣の形で使えば、1時間程度なら転移を妨害する結界は作れます。一応、2セット分お渡ししておきますから少しは助けになるでしょう」
封印系の術を得意とするセレナにとっては初歩的な結界陣である。
「それは助かるわ」
そう言いエラナは札を仮面の女性に手渡す。
「エラナ、決行の日はいつにしますか」
ティアラが尋ねる。
「早いほうがいいでしょうが今からでは夜になってしまいますから、明朝でしょうね」
「いいだろう。準備をすすめよう」

日がくれ夕食を終えた後、ベネラルはエラナの部屋を訪ねてきた。
「どうしたのですか」
エラナは食後の読書をしていた。
「エラナ、無理をしているのではないか」
「そんなことはありませんよ。少し魔力の封閑の数を増やしたので普段の魔力は落ちていますけどね」
「それならいいが、それでお前の隠密部隊の2人、レヴィアとジュネルではないのか。いかに顔と声を変えても気配だけは変えられんからな」
「それを気づけるのは貴方ぐらいですよ。セレナは真実を見抜く力がありますし、ティアラはあの2人とはもともと仲がいいですからね」
「それだけ知られていては仮面の意味はないかもしれんぞ」
「そうかもしれませんが、2人の正体はここだけの話にしておいてください」
「心配しなくても、誰にも言いはせんが、よく2人が承諾したな」
「フレア家は爵位こそ放棄してますけどフレア家当主の直系は私ですからね」
「なるほど、そなたの両親がいない以上はお前が当主となるな」
「基本的に当主の命令は絶対ですからね。実際は私は命令したわけではありませんが、二人が申し出てくれましたからね」
「なるほど、しかしフレア一門はよくこれだけの人材を輩出できるものだな」
「フレア家の血統の秘密は知っているでしょう」
「まぁな、だがアルスターク家本家より分家の方が血統が強いのも考えものだがな」
「そうかもしれませんが、私はこんな時代に生まれてきたことを光栄だと思っていますよ。これほど面白い時代もありませんからね」
「それは俺も感じていることだな。だからこそここまで強くなれたとも思うからな」
エラナもベネラルも競えあえる相手がいたからこそ強くなれたといっても過言ではない。もし、自身以外に力を持っているものがいなければ力をさらに伸ばす努力をしなかった可能性もある。
「しかし、あと少しで私もフレア公爵として一門を再生できます」
「そうだな。だが、ここでの戦の功績もあるし他に褒章を求めることもできるが、どうするつもりだ」
「さしあたって欲しいものはありませんけど、フレア公爵家再興の為の資金でも頂ければ良いかと思ってます」
「野望はあっても、そういった欲はないな」
「そうですか」
「今この砦に集まっている者がいればその気になれば全土を掌握することもできるだろう。俺とお前が組めば十分可能だと思うが」
「貴方が皇帝で私が王妃ですか、可能でしょうね。ガラバード帝国初代皇帝と王妃の実力と今の私たちの実力は五分かそれ以上、さらに当時はいなかっただろう人材がありますからね。ですが興味はありませんね、人の生き死にがどうのと言うつもりはありませんが、可能であることを達成してもなんの充実も得ることはできませんからね」
「なるほど、大きな障害物がなければ意味がないか」
「そう言うことです。この生命界すべてを支配というなら考えないこともないですけどね」
「この地を覆う結界をどうにかしない限りは無理だな。それにはまず人である限界を超えなければならんな」
「そこですよ、私が求めるのは人としての限界を超えたその先、確かに私も貴方も人としてはおそらく限界までの力はあるでしょうが、その先に行くには並大抵の努力ではいかないでしょう」
「レスティア帝国の置き土産か」
「おそらくエラグラスはその中でも下級レベルだと私は見ています。初代皇帝王妃エラスティーナが封印するしかできなかったものは数しれずいると聞いています。それを相手にするなら今以上の力は必要になるでしょう。それが叶うなら貴方の道楽に付き合ってもいいわよ」
「道楽で世界征服をするつもりはない。だが、今以上に強くなりたいとは思う。まだフォルク師には5本中1本ぐらいしか取れんからな」
「純粋な強さなら貴方の方が上ですよ。ただフォルク師の強さの秘密はその多彩の技と死線を潜り抜けてきた経験ですからね」
「確かにほぼ攻撃を読まれるな」
「さて、話が長くなってしまいましたね。私は明日に備えてそろそろ休むとします。派手な魔法戦になりそうですからね」
「そうだな、俺も休むとしよう」
そう言いベネラルは部屋を出て行った。
エラナもベネラルが出て行くと着替えるとそのままベットに入った。


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