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第一部  第六章 国境防衛

エラナがそれぞれのメンバーに軍勢を連れてくることを支持して半月、リスタール城には軍勢が徐々に集まりつつあった。
最初にリスタール城に着いたのが、ブラネスとサーディンが率いる黒騎士団5000騎、次にグランテール率いる重騎士団5000騎、ついでラルクが仮の神官騎士団長として神官騎士団2万5000騎の総勢3万5000騎が集まった。
一方でクリスが集めた傭兵100名、エラナの私設軍勢100名も呼び戻された。
また兵が集まると同時に帝都からベネラルに国境で叛乱軍鎮圧を命じる書状が届き、サンバスが正式に騎士団長となり1騎士団2万5000騎を率いて合流した。
「6万以上の軍勢となったな」
ベネラルはそうエラナに言う。
「これだけの軍勢になると指揮系統をきちんと整えないと混乱を生じますよ」
「確かにな。サンバスどう思う」
サンバスが正式に騎士団長となったことで、軍事的な権限はサンバスがベネラルに告ぐ次席となった。
「本陣はベネラル卿、2陣は私の騎士団が勤めましょう。3陣はラルク殿の神官騎士団でよいかとは思いますが、問題は本陣の陣営ですな」
「確かに、本陣は黒騎士団、重騎士団、傭兵隊、エラナの私設軍勢と混合部隊になるな。どちらにせよ全軍の参謀は必要になるな」
そう言いベネラルはエラナを見る。
「軍属でない私はその役割はできませんよ」
「黒騎士団の客将ということならかまわんだろう」
「それなら可能ですね。レーナと私の研究室のメンバーは私の指揮下で構いませんね」
「それは任せる。どのみち傭兵隊もお前の指揮下に入るからな」
「それは予定通りですから構いませんよ」
「そういえば、ティアラ、サイバー、アレンの3人ははずしたのか」
「3人には学院でセレナとともにエラグラスの調査をしてもらう必要がありますからね。こちらにすべてを投入してエラグラスを無視することはできないでしょう。それにあの4人は私の直接の指示以外は受ける必要がありませんから、自由に動くことができますからね」
「なるほどな。で、参謀長殿はどうされる」
「1週間でけりをつけます」
「な、なに1週間だと、どういう意味だ。国境まで行くだけでも1ヶ月、そこから陣をつくったり準備をするだけで1週間は必要になるぞ」
「私がこの半月、何の準備もしていなかったとでも思っているのですか。ここから国境まで6時間もあれば全軍移動できます」
「転移魔法陣ですか」
カリテがそう尋ねた。
「ここリスタール城の外と国境近くに魔法陣を作ってあります。私が魔法陣を完全に発動させ2箇所をつなぐのに3時間ほど必要になります。そこから全軍が魔法陣を通過するのに3時間もあれば十分でしょう」
「反則技だな」
あきれるようにベネラルがそう言う。
「魔法陣を開くために私が準備したマナブールス12個と陣を描くために使った魔力の糸にどれだけの費用がかかっているとでも思っているのですか」
「参考までに聞いておくがいくらかけた」
「おおよそ金貨10万枚ぐらいです」
「10万だと」
太守スラットが驚きの声をあげた。
普通の市民が年間に稼ぐ金額が金貨で24から30枚程度、帝都の一等地で大邸宅を建てたとしても金貨1万枚から2万枚で土地つきで買える。
「先に行っておきますが、この魔法陣は片道だけですから」
「それだけの費用をかけて片道だけの使い捨てなのか」
「そのとおりです。そこまで魔法は万能ではありませんよ。それに元々ただの転移魔法でここから国境まで一瞬に跳躍できる魔導師は私を含めてごくわずかです。それを全軍すべて飛ばそうとしているのですからね」
エラナが言うとおり転移魔法といってもどれだけの距離でも飛べるわけではない。通常跳躍できる距離は100キロ程度と言われている。リスタール城から国境までは900キロほどの距離があり跳躍できる距離ではない。
それだけの距離を確実に飛べる魔導師はエラナが知りえる魔導師では、エラナ本人を筆頭にセレナ、メリア・ルキシード、ティアラの4人だけであるが、あくまで一度は行ったことがあり場所をイメージできる場所か、行ったことがあり自身の印を残した場所に限られる。後者は主にイメージせずに飛べることもあり自宅に置いていることが多い。
「エラナ」
険しい表情でラクレーナがエラナを呼んだ。
「気がついていますよ。貴方に任せます」
「はい」
そう言うとラクレーナの姿が消えた。
「何かあったのか」
ベネラルが尋ねる。
「この部屋を盗聴している者がいます。今レーナが始末しに行きました。それだけです」
「城内はある程度だが魔法的な結界で魔法的制限があるのだぞ」
スラットがそう言う。
「城の魔法結界は外からの盗聴に関してはほぼ完全に防ぐでしょう。ですが城内であり、ある程度の力がある魔導師なら影響を受けません。もっとも私のようなクラスになると外からだろうと全くの無意味ですけれどね」
「ということはそれだけの魔導師がこの城内にいるということか」
ベネラルがそう言う。
「敵はレスティア帝国の魔導師ですよ。現在の帝国学院でもAクラス以上の導師しかいない彼らには何の意味をなしませんよ」
「Aクラス?」
スラットが尋ねる。
「昔から学院で使われているクラスです。ランクは全部でA,B,Cの3クラスで、Aクラスというのは一つの系統の魔術を極めた導師を示します。2系統を極めた場合はA2、3系統ならA3となります。4系統以上はマスタークラスとしてMクラスと呼んでます。そしてそのMクラスを圧倒し計り知れないものをSクラスとしています」
「なるほどな、そうするとお前はSクラスというわけか」
ベネラルがそう言う。
「そうなります。他にSクラスはセレナ、メリアです。ティアラは今回の件まではMクラスでしたが、Sクラスの実力を持っていると言っても良いでしょうね。あくまで魔導師としての力ですのでアレンがB8、サイバーはCXです」
「B8とCX?」
「簡単にいうと系統を極めてはいませんが、複数の系統を使いこなすという事です」
「終わりましたよ」
再びラクレーナが部屋に転移してくる。
「ご苦労様」
「犯人は内務局の局長室に放置してありますのでお願いします」
太守にそう言う。
「内務局だと」
「太守には申し訳ありませんが、内務局長が犯人です。もっとも本当に太守が知っている内務局長ではありませんが、本当の内務局長は既に亡くなっています」
「そうか」
「やはりレスティア帝国の魔導師でしたか」
エラナが尋ねる。
「間違いなくレスティア帝国の魔導師だと思いますが、諜報系の術者で戦いにはそれほど特化してはいませんでしたから、それほど苦労する相手ではありませんでした」
「それはそうでしょう、あなた自身Aクラスなのですから」
「えっ」
ブラッサムが反応した。
「レーナはよほど高位レベルの魔法でない限りほとんど使えますよ。特定の魔法に限ってはMクラス並の力は持っています」
「私の場合、魔法に対する対処と爆発的な攻撃力を得る為、あとは転移以外は使いませんよ。基本的な魔法も使えないことはありませんが、基本的な魔法で攻撃するより剣で戦った方がより効果を得られますから」
「さて、本題に入りますよ。転移の魔法陣を明日の早朝より儀式を開始しますので昼前には転移できるようになるはずです。カリテ、マルシェの2人は今日中に向こうへ転移しておいて下さい。これが人数分の転移呪符です」
そう言い二人に100枚の呪符を手渡す。
「畏まりました」
エラナが渡したのはセレナが作った特定の場所ならいかなる距離であろうと跳躍できる呪符であるが、数日の短期間でセレナが作れたのはその枚数だけであった。全軍分を作るには数ヶ月を有するため、エラナは魔法陣を作ったのである。
「レーナ、貴方も先行できますか」
「転移先のイメージを頂ければ単独で行けますが、消耗が大きすぎます。天馬で飛んでいった方が良いでしょう。3時間もあれば到着するでしょう」
「そこまで早くは飛べないでしょう」
「途中途中で短距離転移を使いますよ。直線距離でも700キロ以上はありますからね。もっとも純粋に飛んでも5時間までかかりませんけれどね」
通常の魔導師の飛行速度は時速50キロぐらい、それに対してラクレーナの天馬は時速150キロ程度の速度で飛ぶことができる。
「まぁ、良いでしょう。超高速飛行の方法はまた教えてあげましょう」
超高速飛行は飛行速度に術者の肉体が耐えられない為使い手は少ないが、風の結界を展開することで超高速飛行は可能となる。その速度は時速300キロをも超える。
「わかりました」
「全く距離を無視してくれるな」
「私個人だけならどれだけの距離があろうと関係ありませんよ。1時間で飛んで行けといえば飛んで行きますけどその時に地上にどれだけの被害が出るかは知りませんよ。速度を上げればあげただけ高度は低くなりますからね」
「とりあえず、明日だな」
「ええ」
「ならば、今日は皆ゆっくり休め明日から忙しくなる」
ベネラルが終了を告げた。

会議が終えるとカリテ、マルシェの2人は兵をまとめすぐに転移した。一方ラクレーナは天馬を呼び出すとそのまま飛び立った。
「エラナ」
部屋に二人だけになるとベネラルが声をかけてきた。
「なんです」
「いまだ気持ちは変わらんか」
「変わりませんよ。今のところは予定通りですからね」
「それで、俺が知っておかなくてはならないことはあるのか」
「そうですね。あの日から1ヶ月以上経っていますね」
「俺の子か」
「最初の1人目ですね。まだしばらくは大丈夫でしょうが、徐々に私も動きづらくなっていくでしょうね。お腹の子のことを考えると派手なことはできませんからね。ただ魔法で姿を偽っていきますから誰も気がつくことはできないでしょうが。そもそも普段からローブを着ていますから、そのままでも気がつかれはしないでしょうね」
「それはあるかも知れぬな」
「どうです。久しぶりに手合わせをしてみませんか。私が動けなくなる前に」
「よかろう」
ベネラルとエラナの二人は城の中庭に出た。
中庭では何人かの黒騎士達が剣の訓練をしている最中であった。
「やってるな、少し場所を借りるぞ」
そう言いベネラルは自身の剣を抜いた。練習に使う剣ではなく真剣である。
「少し持っていて下さい」
そう言いローブを脱ぎそこに立っていた黒騎士に手渡し、自らも真剣を抜く。
「いつでもいいぞ、来い」
そう言いベネラルが構える。
「わかりました」
そう言いエラナも構える。
「やはりその技でくるか」
ベネラルはエラナの構えを見て魔道剣術・閃光裂風剣舞であることを見抜く。
「私にとってはこれがすべてですからね」
同時にエラナが突進する。
ベネラルはその一撃をあたる瞬間、横に交わす。
「烈!」
エラナは同時に横薙ぎに切り替える。
「予測済みだ」
ベネラルはそれを剣の柄で受け止め、そのまま剣を返し振り下ろす。
「はっ!」
エラナは回避しきれないと判断すると自らの剣を捨てベネラルの一撃を素手で受け止める。
「白羽取りか。たいしたものだな」
だが、ベネラルとエラナの動きを見切れていたものはこの中庭にはいなかった。二人の攻防はたった数秒の出来事なのであるから、彼らの目にとまらないとしても不思議は無い。
「まったくここまで簡単に防がれるとは思いませんでしたよ」
「まだまだ負けるわけにはいかん。俺にはお前と違ってこれしかないのだからな」
そう言い、エラナの剣を拾うとエラナに投げてよこす。
「いいでしょう。これが正真正銘手加減なしの閃光裂風剣舞です」
先ほどよりさらに少し体を沈め、剣の位置が上に上がっていた。
「ならば俺もこれで答えよう」
ベネラルもエラナと同様の構えを取る。
「フォルク流槍術風技・閃光裂破ですか」
「同じ突進系の技、勝負だエラナ」
「いいでしょう」
同時に二人が動いた。観戦している黒騎士達には二人が消えたとしか思えなかった。
瞬間的に二人の剣は何度も交差するものの決め手にはならない。
『魔道剣術奥義・九頭龍裂破!』
これぞエラナのスピードを最大限に生かした同時に龍が九つ頭を持ったように同時に斬撃を打ち込むエラナの奥の手である。
『フォルク流剣技地技・岩盤障壁!』
ベネラルの足元から地面が持ち上がりエラナの攻撃をすべて受け止めるが、エラナの斬撃はそれを打ち砕くがベネラルには届かない。
「お前の魔道剣術はフォルク流の風技をベースとしている。風技は地技の前では無力に等しい」
「でしょうね。私にはあれ以上のスピードは出せませんからね」
「お前の主力が魔道である以上、それ以上は難しいだろうな。ラクレーナが今の技を使ってくるとするなら防げぬかもしれんな」
「ある程度私のアレンジがあるもののフォルク流にも存在する技を元にしたものです。使えるのでしょう」
「初めて見たが、使えんことはないな」
「ならば、レーナを相手にしても貴方が勝つでしょう。結局は突進技、最後は体格と力がものを言いますからね」
「ただラクレーナのスピードは風技の速度ではない。光技、彼女のならそこにたどり着くだろうな」
「今日はこのぐらいにしましょう。今回は剣のみ、放出系の術は使っていませんから」
「ついでに見せてくれるんだろう」
ベネラルはそう言い、中庭に立つ木を見る。
「良いでしょう。見せてあげますよ。本当の九頭龍裂破を」
そう言いエラナから9つの閃光が打ち出されると同時にエラナが突進し、その閃光に追いつくと同時に9つの斬撃を打ち込む。同時に木は跡形も無く消し飛んだ。
「なるほど9つの閃光と斬撃か」
「わざわざ避けられるように手加減したのです。出てきたらどうです」
「なるほど、我が僕では歯がたたぬはずだ」
そう言い魔物が姿を現した。
「ついに出てきましたね。エラグラス」
エラナはその魔物をそう呼んだ。
「こいつが、エラグラスか」
「ベネラル、下がっていてください、こいつに物理的な攻撃は一切通用しませんし、並みの魔法もね」
「その程度のことはわかっている。だが、俺が対抗しうる力を持たないとでも思ったか」
そう言いベネラルは剣を収め、同時に右手に光り輝く剣を産み出した。
「闘気剣」
エラナはベネラルのその剣を見てそう言う。
「なるほど、人間にしては面白い技を使うな」
そう言いエラグラスはベネラルの剣を素手で受け止める。
『四界の闇を統べる王混沌の王天を翔ける闇夜の星々
すべての心の源よ我が手に集いて我が命に従いて
我が敵を撃ち払え』
古代神聖語でエラナはすばやく詠唱を終えると同時に叫んだ。
「ベネラル、下がって!」
エラナに言われベネラルは後ろに飛んだ。
「魔龍烈閃砲(カオスティック・ブリザード)!」
光の閃光が打ち出され、エラグラスに着弾すると同時に大爆発と爆音を起こし城の外壁ごと破壊する。
「うわぁぁぁぁっ」
見ていた黒騎士の何人かは爆風で飛ばされる。
だが、エラナの表情は厳しいものだった。
「そんな、私の持てる最高位クラスの術を・・・」
爆煙の中からエラグラスは全くの無傷であらわれた。
「自身で独自に術を組み立てることのできるクリエーターか。人間としておくのはおしいな」
だがそう言うエラグラスの右手がぼとりと落ちた。
「ふっ」
ベネラルが笑みを浮かべる。
「ばかな・・・」
同時にエラグラスの体の数箇所から血が吹き出る。
「器用な、闘気剣をブーメランのようにして使うなんて」
ベネラルは後ろに飛ぶ瞬間に闘気剣をブーメランとしてエラグラスの右手を狙った。その時エラグラスは防御結界を展開させようとしていたが、ベネラルに右手を落とされ完全に結界が発動せずエラナの術を完全には防ぎきれなかった。
「うぉぉぉぉぉっ!」
ベネラルは先ほどとは違い大振りの剣を作り出した。
『フォルク流剣技火技奥義・爆砕天昇裂破!』
「小賢しい!」
エラグラスは剣を呼び出しベネラルの攻撃を受け止めようとする。
「法皇審判(ジャスティス)!」
エラグラスの注意がベネラルに向いた瞬間にエラナの術は完成した。
「ちっ」
エラグラスはあわてて防御壁を展開しようとするが、それはエラナの術に対してのものだった。
「最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
放ったのはラルクだった。
「ぐわわわわわわぁぁぁぁぁっ!」
完全に隙を疲れエラグラスはベネラル、エラナ、ラルク3人の攻撃をすべて同時に喰らうことになった。
「やったか」
ベネラルがそう言うが、ぼろぼろになりつつもエラグラスは立っていた。
「貴様ら、様子見のつもりだったがこの場で消し去ってくれるわ!」
同時にエラグラスから放たれる魔力が消えたかと思うと同時にエラグラスの傷が瞬時に復元され、同時にこれまでの数十倍の魔力が放たれる。
「なんという再生力・・・、なるほど、エラグラスの剣の正体がわかった気がするわ」
そう言いエラナは詠唱を始める。
「その術だけはなりません」
セレナが突如現れたかと思うと、同時にエラグラスを中心に6本の柱が打ち込まれる。柱にはそれぞれセレナの呪符がすでに貼られている。
「セレナ」
エラナは詠唱をそこで止めた。
「法皇結界陣!」
同時に魔法陣が現れ、光の柱となった。
「貴様、何を」
そう言いエラグラスがその壁に触れた瞬間、その手が焼ける。
「いつの間にそのような結界まで作れるようになっていたのです」
「お姉さま同様に私も法皇セレネイド様の力を借りた術は使えますよ。これはこの生命界と魔界との間にある境界結界を小規模の空間に展開させるものです。もっとも私の力ではこのレベルが限界ですが」
「なるほどね。で、封じてどうするつもりです」
「それは私が説明致します」
そう言い現れたのはティアラだった。
「ティアラ、いつの間に」
「エラナ様が今唱えようとした術でしたら倒せる可能性はありますが未完成の術では完全に倒すことはできません。やはり現時点で倒せる可能性があるのはエラグラスの剣だけです」
「どちらにせよ探せということね」
「そうなります。ただ、申し訳ありませんが、まだ位置を特定するには至っておりません」
「どちらにせよエラグラスはこの結果から脱出は不可能です。これは中からも外からも破壊できませんからね。解除するには私が死ぬことですが、死んでも1年ぐらいならなんとかなりますし、結界を再度維持させるぐらいならお姉さまでも可能でしょう。もっとも私がこの結果を維持するのが1年が限界ですが」
「その意味をわかって言っているのですか」
「わかっていますよ。結界を維持し続ければ私は1年後には死ぬことになることはわかっています。私はそれまでにお姉さまがエラグラスの剣を見つけ倒してくれると信じていますから」
「一人で請け負う必要は無いでしょう。私もその負を追えばさらに1年延びます」
「私も参加させてもらいますよ。そうすれば3年はもちますからね」
ティアラが名乗りでる。
「断っても無理やり参加するのでしょう。名案は名案ですからね。エラグラスを解放するには3年待つか、私達3人を倒して1年待つしかないのですからね」
エラナ、セレナ、ティアラの3人は剣を手にすると剣を交えた。
「命数結界契約!」
「貴様ら・・・」
同時にエラグラスを包んでいた結界が収縮しエラグラスは石像となり動かなくなる。

ベネラル達は城内に移動しエラナから説明を受けた。
「この結果は私達3人の命をかけた結界で、私達3人が生きている限りはいかなる方法でも解除不可能です。ただ私達も徐々に消耗していきますから、3年後には力尽きるでしょう」
「無茶をしおって、いまさら解除できぬのだろう」
「解除はできますよ。ただしその場でエラグラスが解放されます」
「それも困るな。だがお前達が狙われる危険は高すぎるだろう」
「でしょうが、私達3人を倒せる者がそれほどいるとも思えません。どちらにせよセレナとティアラにはまた学院に戻って調査を続けてもらいますから、危険は少ないと考えれましょう」
「お前が敵の標的になろうというのか」
「3人の中で私が一番戦闘に特化していますからね。ぞれに敵の主力はレスティア帝国の魔導師、その魔導師達がレスティア帝国最終皇帝である不死の女王を超える実力を持った私に喧嘩を売ってくるとも思えませんが」
そう言いレスティア帝国の皇帝の証である指輪を見せる。
「支配の指輪ですね、強制的な支配魔力で服従させる力も持っていましたね。ある程度の実力差が無ければ意味はありませんが、お姉さまが持つ以上、それに対抗できるものは数少ないでしょうね」
「どの程度まで支配できるんだ」
ベネラルが尋ねる。
「私と同格の貴方には全く無意味ですね。私より下と言ってもセレナやティアラにも効果はありませんがティアラが圧倒できるレベルの魔導師クラスなら支配できます。もっとも既に他の支配系魔法で支配されている場合は、その支配魔法を使っているものと私の力しだいですね。あと、エラグラスが産み出した生物や意思を持たない魔法生物、言葉の通じない相手にも無意味です。まぁとりあえず、レスティア帝国の魔術師達の半数は支配できると思います」
「なるほど、それでは手出しできるものは少ないな」
「使い方次第ではもっと強力なことはできますけどね」
「支配系魔法を指輪の力を使って増幅させるのですね」
セレナが答えた。
「もともとそうやって、王クラスまで支配してきていましたからね」
「その指輪の力でエラグラスを支配できないのか」
「できません。異世界から召還されたものにはすでに支配系の魔法が効いていますから多重の支配をかけることはできません。もし支配するならもともとの支配魔法を解除した後でさらに支配し直すことになりますが、儀式をもって召還する魔物の支配魔法を解くとなると低レベルな魔物ならともかくエラグラスクラスなら私も儀式を持ってでなければ解除できません。それに儀式の間、エラグラスがおとなしくしてくれるとは思えませんからね」
「なるほど」
「召還したものが教えてくれれば多少は簡単になるでしょうが、教えてはくれないでしょうからね」
「で、お前が詠唱を始めた術をセレナがあわててとめたが何をしようとした」
「知りたいですか」
エラナの問いにベネラルが頷く。
「対エラグラス用の完全消滅魔法です」
ティアラがそう言う。
「完全消滅魔法?」
「エラグラスの脅威はあの再生力、その再生ができないようにすれば倒せるわけです。その為にエラナ・アルスタークが組み立てた術です。もっとも彼女も組み立てただけで発動することすらできなかったようですが」
「その術には途方も無い魔力キャパシティーが必要になります。それに発動させたところで制御するだけでもかなりの力が必要になります。発動しても制御できなければ自身を飲み込みます」
ティアラが解説する。
「一度試しに1割程度の力で発動させたにも限らず、私の両腕の機能を半壊してくれましたからね」
「おそらく発動だけなら今のお姉さまでもできるでしょう。ですが、制御までは無理でしょう。今のままでは自己犠牲の自爆時魔法と変わりありませんよ。はっきり言って人間が制御できる術のレベルをはるかに超えています。それに混沌の力を暴走させれば、あたり数十キロにわたって消滅しますよ。まだ時空系魔法の方が安全なぐらいです」
「時空系魔法ですか。それもありましたね」
「時空系魔法、あまり聞かない話しだな」
「一般的な代表なものが転移魔法です。他にはエラナさんが使われるような空間形成などがありますが、転移魔法はある程度の魔導師であれば使えますが、空間を形成したりする大きく空間を歪ませるには途方も無い魔力キャパシティーが必要になりますが、術者が意識を失えば空間が消えるだけですから、大きな被害がでることはありません」
「ただそれが攻撃魔法としてつかうなら驚異的な力を発揮します。例えばこんなふうにね」
そう言いエラナは黒い球を産み出す。同時にその黒い球を中心に渦が発生し辺りのものを飲み込みはじめる。
「宿!・陽!・動!・飛空!!」
セレナが呪符から使い魔を呼び出すが、その使い魔がエラナが産み出した球に近づいた瞬間、瞬時に飲み込まれていった。
「密度、重力を無限大とする特異点を作り出し、空間そのものを歪ませ、それが元に戻ろうとする力がさらに働くけど、それを超える空間の歪みがあらゆるものを飲み込むこの小型ブラックホールとなるのです。もしこれを都市レベルの大きさで作り出せるとしたら世界を破壊することも可能でしょうね。当然術者が真っ先に飲み込まれますけどね」
そう言いながら、ブラックホールを消滅させる。
「かなり危険な術だな」
「一応学院の禁呪ですからね。私以外に使える者はいませんし、私とて先ほどのレベルを産み出すのが限界です。あれの本当の使い方はあらゆるものを飲み込みますから、相手がいかなる強大な術をつかってこようとそれを飲み込むことができます」
「さて、私達はそろそろ学院に戻ります」
セレナがそう言い立ち上がる。
「引き続き調査を任せるわ。なにかわかったことがあったら連絡をくださいよ」
「わかりました」
ティアラが答えた。
「では」
そう言いセレナとティアラは姿を消した。
「私も先に休ませてもらいますよ。詠唱して消費を抑えているといっても魔龍烈閃砲(カオスティック・ブリザード)は1日に3発が限界、それ以外にも高度な魔法ばかり使ったからかなり魔法力を消費してしましました。回復しておかないと明日の転移ができなくなってしまいますからね」
「そうか、ならばゆっくり休んでくれ。俺はまだ明日の準備をしなければならんからな」
それだけ言うとベネラルは部屋を出て行った。
「はぁぁぁぁっ」
ベネラルが出て行くとエラナは大きくため息をついた。
「気がつかれずにすんだようね」
「無謀ですね」
「メリア、あなたですか」
「結界の3分の1を引き受けた振りをして、半分以上引き受けるとはね」
「剣を見つけられなかった場合、最後の頼みはセレナですからね。最悪転生するだけの魔力は残してありますからね」
そう言い、ネックレスを取り出す。
「認めないと言ったらどうします」
「私を止められないのはわかっているでしょう」
「あなた自身は止められないでしょうが、3人のいずれかが倒れる前に私が結界は解除します。私にその力が無いとでも思っていますか」
「魔力中和結界陣ですか」
「まだまだ貴女に負けるつもりはありませんからね」
「いずれは超えて見せますよ」
「楽しみにしているわ」
そう言うとメリアはそのまま姿を消した。

翌日早朝よりエラナは転移魔法陣の為の準備を始めていた。
マナブルースがついた杖を6本、順に突き立て1本1本、発動させ6本が発動した時点で、それぞれの点を結び魔法陣を完成される。同時に、発動のための詠唱を始める。
その頃になると転移する軍勢の殆どは魔法陣の周りに集まっていた。
「我がエラナ・フォン・セレネイド・アルスターク・フレアの名においてここに回廊を開かん!」
同時に魔法陣は強い光を放つとそこに光の柱が出現した。
「さて、行きますよ。回廊が閉じる前に全員渡りきってください」
そう言うとエラナは一人先に回廊の中に消えた。
「全軍行くぞ。俺に続け!」
そう言いベネラルが次に回廊に入ると、黒騎士団はそれに続いた。
「よし、我らも行くぞ」
黒騎士団が全員が入ると次にラルクが神官騎士団に声をかけた。
次にグランテール率いる重騎士団、傭兵隊、最後にサンバス率いる騎士団が続いた。
転移した先ではすでに昨日のうちに専攻してきていたエラナの私設軍とラクレーナが陣を作り終えていた。
「ご苦労様、敵の様子はどうですか」
「まだこちらには気がついてはいないようですね。敵の注意はサーソス城の防衛騎士団に向いているようですから」
カリテがそう報告する。
「サーソスの騎士団はどの程度ですか」
「1万前後ですね。対して叛乱軍は10万前後はいると思われます」
これはマルシェが報告した。
「ではこちらの兵はすべて奇襲部隊に回せるのですね」
「6万の伏兵部隊ですか。勝利は確実でしょうね」
「そうでしょうが、油断して失敗しても困りますからね。2陣を左翼、3陣を右翼に配備します。本陣は正面からあたります。それぞれに準備を進めるように伝えてください」
「畏まりました」
カリテとマルシェはそう言うとそれぞれ、ラルク、サンバスの元に向かった。
「ベネラル、ラルク、サンバスが準備を終え次第出撃しますよ。準備を進めてください」
「わかった」
そう言いベネラルも支持を出すためにその場を後にした。
「帝国軍6万を率いる参謀長ですか」
ラクレーナがそう言う。
「しばらく派手な魔法が使えないでしょうから期待していますよ」
「必ずお守りしますよ」
2時間ほどした頃、ベネラルが準備を終えたことを伝えにやってきた。
「魔獣召還!」
エラナは自らの乗馬となる馬を呼び出し、すばやく騎乗する。
「騎乗!」
ブラッサムが合図を送ると、黒騎士全員が同時に騎乗した。
続くように傭兵隊とエラナの兵達、グランテールの重騎士団も騎乗した。
「全軍出撃!」
騎乗を見届けるとベネラルが進軍の合図を送る。

叛乱軍の陣までは馬を走らせて1時間ほどの距離、突撃できる距離までに近づくと総勢1万の軍勢が攻撃を開始した。
「黒騎士団、突撃せよ」
叛乱軍が討って出てきた為、先陣をきって突撃したのはベネラル率いる黒騎士団だった。
グランテール率いる重騎士団、エラナの軍勢は後方に待機している。
「三身一体」
ブラッサムがそう支持を出す。三身一体は黒騎士団が基本的な先鋒で3人一組となって戦う方法で、敵1人に対して3人であたることを基本としているため、確実に敵を討ち減らし味方の損害を減らすために行われる伝統的な戦法である。
ただ、ベネラルやブラッサム、サーディンのように個々の実力が突出したものは単騎で戦える為、単独で敵を相手にするが、基本的には戦況の把握をすることを求められる為、直接敵と剣を交えることは少ない。
後方で戦況を見ていたエラナはグランテールに進軍の合図を送る。
黒騎士団の戦法に対して、重騎士団は10人一組で直線状に並び進む。壁が進むように進む、敵が背後に周りこめないように戦うそれが重騎士団の戦い方である。
「レーナ」
エラナに呼ばれラクレーナも進軍した。
ラクレーナが率いる傭兵隊は普段は冒険者としてパーティを組んでいる者が多く。基本的には仲間だけで敵を倒していく。剣士、魔法使い、神官とバランスが取れており確実に一人ひとり倒していく。
「三種三様の戦い方ですね」
カリテがそれぞれの戦い方の違いを見てそう言う。
「傍観なさりますか」
マルシェが尋ねる。
「そろそろ時間ですし、戦況を把握しておくのが私の軍の役目です。両陣の軍勢に合図を送ってください」
エラナに言われカリテが魔法で上空に閃光を打ち上げる。
同時に2陣と3陣の両軍が左右からの攻撃を開始した。
これだけの帝国軍の軍勢が終結していると予測していない叛乱軍は完全に混乱していた。
「さて、少しぐらい私達も戦わせてもらいますか」
「他の騎士団ばかりに戦功をもっていかれるのも癪ですからね」
マルシェがそう言う。
同時にエラナが剣を手に突撃の合図を送る。
エラナの軍勢はエラナが直接剣を教えた者が殆ど、魔法である程度敵を混乱させ剣で敵を倒す。魔法で攻撃力を高めるなど戦い方はいろいろとあるが、魔法と剣を両立した戦い方が基本となる。
「お前まで出てきたのか」
エラナを見てベネラルがそう言う。ベネラルは剣こそ手にしているが、いまだ一人とも相手にした様子はない。
「彼らは初めての実戦ですからね。少し慣れてもらわないといけませんからね」
エラナの軍勢はこれまで訓練だけで、実際に戦場に出たことは無い。
「戦場の雰囲気を知るにはいい機会でしょう」
「なるほどな、これだけの勝ち戦だ。心配はいらぬだろう」
2時間ほどした頃には帝国軍の完全勝利となり、叛乱軍はほうぼうで逃げ出していた。
「陣を奪えればそれで十分です。余計な深追いはさせてはいけません」
「わかっている。ブラッサム」
ベネラルに呼ばれるとブラッサムは叛乱軍に降伏を呼びかける。
陣内で降伏を呼びかける声が大きくなるにつれ最後まで戦っていた叛乱軍も剣を捨て降伏する者、逃げ出すものとさまざまであったが、戦いはすぐに収まって行った。
完全に戦闘が終わったのはさらに1時間が過ぎたころだった。

叛乱軍の陣を占拠した帝国軍はその陣を新たな陣とし、昨日から作っていた陣は後方の防衛用としてラルク率いる神官騎士団に任された。
「損害の報告を聞こう」
天幕でベネラルがエラナに尋ねる。
「本陣では負傷者は300名ほどですが、死者はいないようです。2陣の騎士団では死者が24名、負傷者が1000名ほど、3陣の神官騎士団は死者が10名、負傷者は自身で傷を癒したようで負傷者なしと言っても良いでしょう」
「10万の軍勢相手にしては十分すぎるな。で、この後の予定はどうする」
「今日の相手はあくまで叛乱軍の先陣にすぎません。この先にいる本陣を撃ち破らなければならないでしょうが、無理にこちらに来たこともあり情報不足です。サーソス城軍から情報を得る必要があるでしょう」
「ならば、こちらから使者をいかせこちらに来させるか。あと、サーソス城軍の兵力は必要になるか」
「数が多くて困ることは無いでしょう。どちらにせよ叛乱軍の方がこちらの数よりはるかに多いのですから」
「わかった」
ベネラルは手紙を認めるとそれをサーディンに手渡した。
「こちらの要請を断るならそれでも構いません。協力的でない軍勢を加えても足手まといになるだけですから」
「わかりました」
サーディンはそう言うと天幕を後にした。
「いいのか」
「構いませんよ。勝つだけなら現在の兵力で十分です。戦線を拡大するには少ないですけれどね」
「しかし1週間で決着がつくのか」
「目的はこの先の敵の本陣を叩くことですからね。戦の決着だけなら2日あれば十分でしょう。その為にはのこる5日間でできる限りの情報を集めることです。もっともサーソス城軍が協力してくれるのであれば、背後の憂いはなくなりますから全兵力を投入できますから戦況は大きく変わるでしょうね」
「同じ帝国軍、敵に回る心配はなくとも、叛乱軍に背後にまわられたときに防衛してもらえるかどうかでもこちらの士気には大きく影響するからな。もっとも黒騎士団はいかなる状況でも士気に影響はでないだろうが、普通の騎士団ではそうもいかぬからな」
黒騎士団は常にいかなる状況でも戦えるように訓練を受けている。たとえ戦場で孤立しようと冷静に戦える精神力を持っている。
「どちらにしても事前策はうっておいて損はありませんから、準備は進めますけどね」
「任せよう。必要なものがあるならブラッサムなりクリスに言うといい」
「先に言っておきますよ。油壺を100、それから陣内に10箇所の見張り台を作らせて下さい」
「わかった」
エラナの指示で陣内に見張り台が築かれ、また陣の周りに堀をめぐらせた。
「篭城戦をするような準備ですね」
カリテがそう言う。
「堀を掘った土は外側に積み上げて壁としてください。それが終わったら、さらにその外にさらに深い堀を掘ってさらに高い土嚢を築くように伝えてください」
「完全な要塞ですね」
「おそらく今回だけではなく、以後も使うことになることになるでしょうから丁寧に作るように言ってください」
「ここを帝国国境防御線とするわけですね」
「そうなりますね」
「先の先を見据えた戦略ですか」
そう言ってきたのはサンバスだった。
「どうです。騎士達は不平を言ってませんか」
「私が言わせませんよ。運動不足の彼らにはもってこいの作業です。気にする必要はありませんよ」
「なるほど、後のことは任せていいですか。さすがに私も疲れが溜まっていますから、休ませてもらいたいので」
「お任せください」
サンバスの返事を聞き終えるとエラナは、天幕に戻っていった。
「ずいぶんと無理をなされているようですね」
「エラナさまは何でもご自身で済ませてしまう癖がありますからね。もう少し部下である私達を信用して任せてもらいたいぐらいです」
「エラナ殿は文武両道、しかもどちらも実力はトップレベルとなれば、自身よりすぐれた者は数少ないですからね」
「その点、サンバス殿はエラナさまの信を得られているようですね」
「信を得ているなどとは考えないようにしています。与えられた任務、それにすこしプラスしたことができれば私は十分だと思っていますからね」
「これ以上の出世は考えていないのですか」
「この年で騎士団長となれたのですからね。もっとも欲がないわけではありませんよ。ただ現時点では十分だということだけです。5年後、10年後を考えるならそれだけの地位は欲しいとは思いますが、自分の力以上の地位を有しようとは思いませんね」

叛乱軍来襲が伝えられたのは3日後のことだったが、すでに完全な砦が完成していた。
「叛乱軍の兵力はどの程度ですか」
エラナは調査に向かっていたラクレーナに尋ねた。
「上空から見た限りですが30万はいるでしょう」
「こちらの5倍ですか」
ブラッサムがそう言う。
「サーディンが先ほど戻ってきた。サーソス軍はあくまで現状の陣を防衛ラインとするそうだ」
ベネラルがそう伝える。
「それほど戦況に影響はありませんから構いません。グランテール殿」
「なんです」
「貴方の指揮下、重騎士団5000騎でこの砦、叛乱軍10万に攻められたとしてどの程度なら防衛できますか」
「最低でも1週間は防衛できます。それ以上は保障致しかねます」
「十分です。作戦を説明します。黒騎士団、傭兵隊、私の部隊、それから神官騎士団の半数が正面からあたります。サンバス殿の率いる騎士団は作戦ポイントにて待機し設置していただいた罠の発動と伏兵の方をお任せします」
「畏まりました」
サンバスはすでにエラナから作戦の説明を受け罠の設置からすべてを指示されている。
「正面からあたるのが2万程度か、こちらに他に伏兵があると思われないか」
ベネラルが尋ねる。
「先の戦いで逃げ戻ったものがいますがあの短時間でこちらの数を把握はできないでしょう。それにサンバス城軍が全く動いていない以上、叛乱軍の注意はあちらにも向いています。それにこちらが砦を作ったことで、敵兵からは砦の中を見ることはできません。さらに、こちらが叛乱軍にあたるのは最大限、砦に近づかせてから砦から出撃します。それによってこちらの数をある程度ごまかすことはできます」
「なるほど、その為の砦か。この陣を奪った時にあった弩はどの程度あるのか」
ベネラルはエラナの作戦を理解しつつ、そう尋ねた。
「弩ですか。1万前後あったと思いますよ」
「グランテール、砦の門が開門と同時に弩をいっせいに放つことはできるか」
「1人あたり2つの弩を放つぐらいはわけないでしょうが、弩は矢をたがえるのに時間がかかりますから、1度だけですよ」
「砦内の数をごまかすだけだ。気がつかれる前に我々が突撃する」
「ごまかすといっても知れていますが、やらないよりやったほうが、少しでも敵の数を減らせる可能性がりますからよろしいかと」
エラナも賛同するが、ベネラルも消して戦略・戦術に関してはかなりのものがあるが、エラナの前ではその才能もかすれてしまう。
「正面からあたる我々はとにかく派手に暴れればいいのか」
ベネラルが尋ねる。
「叛乱軍がひるんでもらえたほうが、あとの作戦はうまくいきやすいでしょうね」
「わかった、ブラッサム、サーディン、紡錘陣形を使うと伝えろ」
「わかりました」
黒騎士団が敵陣を突破し、敵陣を突破するための陣形であるが黒騎士団がこの陣形で突破できない敵はいないとまで言わしめる黒騎士団伝統的な戦いかたである。
「では、のこるものは黒騎士団が突破したあとに討ち漏らした敵を相手にさせてもらいましょう」
「我が黒騎士団の突撃の後にそれだけの敵が残ればいいがな」
「それならそれで私は楽ができますね」
「さて、行くか」
「ええ」
そう言い2人はそろって天幕を出た。
「出るぞ」
砦内に響く大きな声でベネラルが叫ぶと、クリスが既にベネラルの馬を連れてきていた。
「準備は整っております」
ベネラルはすばやく騎乗するとクリスから槍を受け取る。
「エラナ様」
カリテがエラナの愛馬を連れて声をかけた。
「我が軍のある初めての戦いです。気を引き締めていきますよ」
「はい」
「レーナ、貴方も思う存分戦ってくれていいわよ。ただやりすぎには気をつけてくださいよ」
「わかっています。指揮官としての役目は果たしますよ」

帝国軍、公国軍が対峙したのは昼すぎのことだった。
「ゆくぞ」
ベネラルは槍を構え自らの後ろに控える黒騎士達にそう言い、馬を進める。
ベネラルの前進と同時に黒騎士5000騎が続く。
公国軍30万の軍勢に5000の黒騎士だが、民兵では騎士の突撃を受け止めるのは難しく黒騎士団により切り開かれていくが、黒騎士団が公国軍の壁を貫くことは不可能に近い次第に黒騎士団の速度は遅くなり公国軍の中に孤立する形になる。
「そろそろ良いでしょう。私達も行きますよ」
エラナが率いる軍勢は200名、普通に考えれば戦況を変える数にはならない。
だがエラナ直属の100名は魔法剣士、さらに傭兵の中にも魔導師はいる。それら全員が同時に魔法を打ち込む。敵を混乱させるには十分な威力である。そしてその爆発は待機している部隊への合図としての役割も果たしていた。
まず突撃したのはエラナの軍勢の背後にまっていた神官騎士団、そしてサンバス率いる騎士団が左右から現れ攻撃を仕掛ける。
その頃にはエラナも敵陣の中で剣を交えていた。
「エラナ、前に出すぎですよ」
槍の一振りで敵兵4、5人を同時に斬り捨てながらラクレーナがそう言う。
「遅れを取るつもりもありませんし、ここまでやればあとはよほど指示を出す必要もありませんよ」
エラナも同じように数人を一振りで斬り捨てながら言う。
元来フォルク流剣術は1対1の戦いより1対多数で戦場で戦い生き延びる為の戦い方、このような乱戦でこそその進化を発揮する。
「貴方がこの程度の相手に遅れを取るとは思っておりませんよ。タイミングを逃しては余計な犠牲を払うだけでしょう」
「少し敵の抵抗が強いですか」
そう言い、槍を握る右手にすこし魔力を集めたと同時に公国軍の背後で爆発が起こった。
エラナがサンバスに命じて地中に埋めておいたものでエラナが右手にしている指輪に少し魔力を送り込むと爆発する仕組みになっている。いわば、爆発を自由にコントロールできる地雷のようなものである。
公国軍からすれば、誰もいない場所で突如起こった爆発、新たなる伏兵が現れたようにしか感じられない。爆発の規模は並みの魔導師が放つ魔法程度だが、それが時間差を置いて次々に爆発すれば混乱させることはできる。エラナはサンバスに戦場となる地域に2000個ほどの地雷を埋めさせていた。さらにエラナは2000個を戦場以外の叛乱軍が逃げるための背後にも埋めさせていた。
「まったくいろいろなことを考えますね」
「こうでもしないかぎり正面から戦って勝てる数ではありませんからね。といって私が広範囲攻撃魔法で敵を一層することもできますが、私は悪名が欲しいわけではありませんし、私の力をこのようなことに使うべきではありませんからね」
「強すぎるのも問題ですね」
ベネラル、エラナ、ラクレーナは既に人としてのレベルを超えた実力を持っている。普通の人間から見れば魔物や未知の生物と思われても仕方が無い。
「ですが、この世の中には上には上がいます。人がそれらに対抗できないと決め付けたくはありませんからね」
「確かにそれはありますね。人だから対抗できない相手がいるとは認めたくはありませんね」
「神々をも相手にするつもりですか」
ラクレーナは敵兵を相手にしつつそう尋ねる。
「神々ですか。私の望みを叶えるのに必要なら誰だろうと相手にするつもりですよ」
エラナも同じく敵兵を相手にしながら答えた。
「貴女がそのつもりならお付合いしますよ」
公国軍が敗走を開始したと同時にエラナはのこる地雷を発動させた。
「掃討戦に移る。ただし深追いはしすぎるなと伝えてください」
日が暮れるころにはほぼ帝国軍の勝利は確定していた。
「エラナ、日が暮れるこれ以上の追撃は必要なかろう」
ベネラルがエラナの元に戻ってきてそう言う。
「そうですね、引き上げの合図を送ってください」
この戦の結果はすぐに帝都に伝えられ、ベネラルの元に名参謀エラナ・フレアありと知らしめるものとなった。時間を稼ごうとしたアルウスの計画はエラナの名声を高めるためのものになってしまった。
事後処理もあったがエラナは結局1週間たらずで戦を終結させた。
公国軍としてもさらに軍を投入するという考えもあっただろうが、数倍の兵力をもっての大敗、政治上これ以上の兵の投入は民の反感を買うだけで戦略的意味を見出すことはできなかった。
「エラナ様」
ティアラは転移でエラナの前に突如現れた。
「わかりましたか」
「エラグラスの剣の製法が判明しました。ただし、その材料に問題があります」
「材料ですか」
「はい、剣はメタル銀である必要があります」
メタル銀は生命界で入手できるもので最高級の材料でありかなり高価なもであるが、手に入らないものではない。ただその金属を加工するには魔力を持って加工するしかないが、メタル銀そのものが魔力を吸収する性質があり加工するにはメタル銀が吸収できる以上の魔力を持って加工するしかない。
そして、その者が刀鍛冶であることが剣を作れる条件となるが初代皇帝王妃以降、加工できるだけの魔力を持ちえた刀鍛冶はいない。
「そのほかに必要なものは何です」
「問題となるものはそれだけでそれ以外は準備はできています」
「わかりました。いつでも作れるように準備を進めておいて下さい。私が作って見せますよ」
「エラナ様がですか」
「これでも刀匠として今の帝国で誰にも負けない自身はあります」
「ある一定以上の力を持った剣士、魔剣士にとってその力を完全に引き出せる武器が存在しなければ自身で作り出すしかありませんからね。私の場合はエラナがいましたけどね」
そうラクレーナが語る。
「真の達人はいかなる武器だろうと扱うというが、真に最大限に力を発揮できる武器は一つだけしか存在しないもの、剣士としての私の武器の姿は見えているけど、魔導師としての私の杖はいまだ見つかりませんけれどね」
「見つかりますよ貴女に相応しい杖が」
ラクレーナがそう言うと同時に部屋にセレナが転移してきた。
「セレナ、貴女が飛んでくるとは何かあったの」
「帝都ラクーン、大神殿の総大司教が亡くなられました」
「総大司教がですか・・・次の大司教の候補となるのは誰ですか」
「候補としては2名、ハーパリン公爵当主ジェランズ・ハーパリン殿と帝国宮廷司祭アルウスです。投票に参加できる大司教は40名と4つの神官騎士団の騎士団長、4つの教会騎士団の騎士団長、他にゲスト参加者として皇帝陛下と皇帝陛下に近し帝国公爵家10名、黒騎士団長、学院最高導師と5人の正導師の合計68名が投票権を持っていますが、現時点で学院正導師はメリアさん一人だけですから64名が投票権を持っていることになります」
「支持票はどうなっていますか」
「ジェランズ・ハーパリン殿を支持されているのが18名、アルウスを支持しているのが21名、中立派が9名、ゲスト参加者はここ200年投票をしていませんでしたので、参加されるかは不明ですがアルウス派の者もいますゆえ票数によっては参加される可能制は高いと思われます」
「その数はどれほどです」
「8名は間違いないと思いますので、アルウスの票は29名となり中立派がハーパリン殿を支持したとしても27名、過半数を得るには十分な数となります」
「そうなると残り投票権をもつ12名が鍵ですね。アルウスを総大司教にするわけにはいきませんね。投票までは1ヶ月あります。すぐに帝都に戻って対策をする必要がありますね」
「確定でこちらの票となるのは最高導師ラスティーク師、正導師メリア・ルキシード、黒騎士団長ブラネス・アルスターク様の3名です」
「不利な状況は変わらないわ。すぐに帝都に戻って票の調整をしてください」
「わかりました」
セレナはそう言うと転移した。同時にティアラも姿を消した。
「レーナ、ベネラルに緊急軍議を開催することを伝えてください」
「はい」

エラナの召集でラクレーナ、ベネラル、サンバス、ラルク、グランテールの6人が集められた。
「ベネラル、総大司教死去に伴う新たな総大司教の選定、負けるわけにはいかないわ」
エラナがそう話を切り出す。
「数票だが有効投票数を増やすことができる」
「どうするのですか」
「まずはお前の地位を確定させることが前提だな」
「私の地位ですか」
「今回の戦の戦果をもってすれば爵位を得ることはできよう。正導師の位もな」
「2つの票はもてませんからどちらか1つですけどね」
「それとラルクが投票資格者であることも忘れているだろう」
「そうでしたね。だけど私は増やすより減らした方がいいかと思っていますけどね」
「減らす、暗殺でもするつもりか」
「それも一つの手ですね。ただそれをすれば恐怖によってこちらに有利に働くでしょうが現時点でその方法は適切ではないでしょう」
「そうなると何らかの理由で逮捕なりすることか」
「1人か2人逮捕できれば十分でしょう。おそらくその時点でアルウスは身を引くでしょう。今の時点で無理をしてまで得る権力ではないですからね」
「なるほど、どうやって逮捕する。大司教となると基本的に帝国の法では裁けん、裁くとするなら国家反逆罪ぐらいだぞ」
「帝国の法でなく教会の法ならば別の罪も問えるでしょう」
「なるほど、それでラルクの権力か」
「教会騎士団は教会を外敵から守る為の軍、神官騎士団は教会と帝国を外敵から守ると同時に内なる敵から守る使命を持っていますからね」
「内なる腐敗から教会を守れということですね」
ラルクがそう言う。
「さしあたって大司教となれば私利私欲で財を築くことは罪になるでしょう。贈賄に関する証拠はここにあります」
そう言いエラナは数百枚の紙の束を出す。
「いつの間にそれだけの情報を調べた」
「私も教会内での地位はありますからね。それに私の命令しかきかない教会関係者もかなりいますからね」
「エラナ殿がそのような教職にあられたのですか」
「知らないのも当然でしょう。帝国における教会は帝都にある大神殿を中心とした教団だけだと思われていますが、少数ではあるけど他にも教団はありますからね。私はその教団で地位を得ているだけですからね」
「教会は別の教会の存在は基本的には認めてませんからね。そのために私にもそこは教えてもらえませんでしたからね」
「基本的に真に神として存在したのは神皇・法皇・魔皇の3神、それぞれの3神が産み出した6神が純粋な神とよばれる創造主、それら9つの創造主が産み出した種族が人間であったり妖精族、魔族などと呼ばれる種族です。ただそれ以外に216の神の空席を創造主は作り上げました、9つの産み出した種族が到達できる最終点としてね。ただそれ以外に149の神、そうして365神がすべての神です。信仰もその神の数だけ存在します。最も現時点でそれだけの神が存在しているわけではありませんからね」
「これから誕生する神々もあるということですね」
ラクレーナがそう付け加えた。
「そういうことです。帝都で信仰されている神は神皇の分家筋の1つでミラーレ神ですが、存在としては149神の1神、312番目の神です」
「我らの神の順位はそこまで低いのか」
ベネラルが尋ねる。
「上位の216神になれるのは創造神が産み出した種族が神の領域までに達する力を手に入れた場合のみ、それが人間だろうとその可能性はあります。ただそれとは別に信者の思いだけで生まれた神と216神に到達できなかった者が149神となるのです」
「ミラーレ神は人が想像した神なのか」
「実在した人物ですよ。元々は神皇を信仰していた総大司教でしたが戦乱の世においてその場に存在しない神よりそこにいる神に近いものを信じたことが始まりです」
「神殿に伝わる創世神話とはことなりますね」
ラルクがそう言う。
「私が仕えるのは創造主である法皇ですからね。地上の神を見守り裁きを与えるのが法皇の巫女である私の役目ですからね。神々について私が知らぬことはありませんよ。まぁ、私の地位に関してはこれまでにしてラルク、この先は貴方にかかっていますからね」
「わかりました」
「私は先に帝都に戻ります。ラルク、貴方一人ぐらいなら同時に転移することはできますよ」
「お願いします」
「後は任せますよ」
「わかった」

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