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第一部  第五章 策謀

エラナ、ラクレーナ、ティアラの3人はレスティア帝国が帝都があった場所、現在のリクイド城の西の森の中にあった。
かっては栄華を誇ったレスティア帝国の帝都も現在は瓦礫だけが残る廃墟と化していた。
「これが8代、約300年間に渡ってプロミスト半島を支配したレスティア帝国の帝都ですか」
ティアラがそう感想を洩らす。
「プロミスト半島全土を統一した国家としては、もっとも長く続いた国家ですけどね。現在のガラバード帝国も一度は統一しましたが、90年間しか統治できませんでしたからね。ただ国家としては500年の長きにわたって存続していますけれどね」
「国家としての長寿といえなくはありませんね。ですが、この今の三国時代もすでに300年続いているのですからね」
ティアラがそう言う。
「ヴィズダム聖王国が独立宣言したのが帝国暦102年、ファーマ公国が建国されたのが帝国暦205年ですからそのぐらいは経ちますね」
「他の細かい国家を含めれば、まだいくつもありますけどね」
「どこへ行くのです」
ラクレーナが尋ねる。
「不死の女王レティア・フェルナ疾いいる場所ですが、おそらく城内でしょうが、途中で向こうから来てくれるでしょう」
エラナ達はそのまま城の方へ向かって歩みだす。
しばらくすると不死の女王が支配する死霊達が姿を現した。
それは数匹ではない。数千、数万といった数だった。
「まったく溜め込んだものですね」
関心したかのようにティアラが言う。
「出てきてもらうにはここで少し暴れた方がいいですね。二人とも不死の女王が出てくるまでいきますよ」
エラナはそう言う。
「わかりました」
ティアラはそう頷き詠唱を始め、ラクレーナは剣を抜いた。
『すべての力の源よ混沌なる無限の炎我が力となりて破滅の炎となせ』
「爆裂魔炎弾(カオスティック・フレイア)!」
ティアラの一撃であたりの建物ごと数百匹の死霊が消し飛ぶ。
「派手ですね、最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
エラナが使うのはティアラと違い、通常神聖魔法と呼ばれるものだ。だが、それもエラナが使えば瞬時に死霊数百を消し去る力がある。
『フォルク流槍術風技・閃光裂風!』
剣を一度振るうだけで、10メートル以上はなれた死霊数十匹が斬り捨てられる。
ラクレーナの剣にはエラナの魔法がかかられていることもあるが、ある程度魔法が使える彼女は技に魔力を乗せている。
『フォルク流槍術風技・閃光裂風・烈波!』
それを瞬時に何十振りを行う。それだけでエラナやティアラが数百を瞬時に消し去るようにラクレーナも倒していく。
「二人とも、ちょっと派手に行くわよ」
エラナがそう叫ぶ。
『闇夜を照らし出す光大いなる母なる大地
優しき流れし水荒れ狂う風
大地の怒れし炎すべての力の源よ
我が力となりて我と汝の力持ちて
不浄なる者どもを打ち払え!』
「精霊語・・・それに神聖語、まさか、これは・・・」
ティアラは術の正体に気がついた。
「これが神聖魔法と精霊魔法を極めたものだけが使える秘術です。聖魔精霊浄化(ホーリー・エレメンタル)!」
一瞬小さな閃光が死霊たちの中央に放たれたと思った同時にその一点を中心に爆音とともにすさまじい光のエネルギーが爆発する。
普段詠唱を省略するエラナが放つ術、威力は計り知れない。今の一撃で数千匹が消し飛んだ。
「これほどの術だったとは」
「魔法の原点のほとんどは精霊の力を借りた精霊魔法ですからね。私達魔導師が使う魔術も結局は精霊の力を強制的に呼び出しているだけで精霊魔法と変わりはありません。もっとも精霊魔法は精霊の協力を得る分、威力そのものはかなり強力ですが精霊がいる場所でしか使えない欠点はあります。この術も強制的に従わせますが神聖魔法という神の力を使って従わせますから精霊のもつ本来の力を完全に引き出すことができます。しかも多数の精霊の力、高位魔術に匹敵する力があります。そういえば、ティアラもいくつか使えるようですね」
「高位魔術のことですか」
「そうよ、私が昨日の戦いを見ていなかったとでも思いましたか」
「やはり、そちらの襲撃と同時だったので見られてないものだと思ってました」
そう言いながらまだ指にはめたままの指輪を見せる。
「そういうことです。さて、次が来ますよ」
『死を司り闇夜よ、我が声を聞き届けあるべき姿へ帰れ』
「死霊浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
ティアラが打ち放つが、それが死霊に届く前にそれは打ち消された。
「やっと出てきてくれましたね」
「私の死霊たちをこれ以上消すのはやめてもらいましょうか」
不死の女王レティア・フェルナ疾い任△辰拭
「私は、エラナ・フォン・セレネイド・アルスターク・フレア、私と話合いを持つ気はありませんか」
「そこの2人は昨日のいたものだな。なるほど、そなたが2人の主か。かなりの実力の持ち主のようだな。少しぐらいなら話を聞いてやろう」
「何点かありますが、まずは貴女の配下であった北王レイアームのことです」
「奴が今目覚めていることには知っているが、何を聞きたい」
「ならばレイアームの目的も知っているのですね」
「元々かなりの野心家、想像はつく」
「自らが皇帝になったあかつきには私を王にすると言ってきましたから、私より力の弱いものに従うつもりがないと、実力の差を見せて差し上げましたが」
「ほう、あれでも私の血族を除けばトップクラスの実力者ではあったのですがね。さすがは我が帝国を滅ぼしたアルスターク家の末裔だな。まぁ、私には国家などいまさらどうでもよいですけど」
「ならば、私が彼らをどうしようと構わないのですね」
「もはや興味はない。私に敵対しないかぎりはな」
「わかりました。つぎの質問です。貴女が昨日連れて行った死霊の中に私が欲しい情報を持ったものがいます。それを譲っていただけませんか」
「死霊の1体ぐらいといいたいところだが、ずいぶんと私の死霊を傷つけてくれましたからね。私と戦って私を満足させることができたら考えても構いませんよ」
「いいでしょう。ティアラ、レーナ下がって」
エラナに言われるままにティアラとラクレーナは少し下がる。
「言っておくが力を隠したまま戦えると思わないことね。それに貴女の体調が万全でないにしても手加減はしませんよ」
「お見通しですか。良いでしょう全力で行きましょう」
そう言いエラナはローブを脱ぎ捨て、ネックレスをはずすとラクレーナに投げて渡す。同時にこれまで押さえ込まれていたエラナの魔力が放出される。
「ほう」
レティアはエラナの魔力を見て感嘆する。
「まだこれだけではありませんよ」
そう言い、今度は耳に付けていたイヤリングもはずす。
「まだありましたか」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
同時に大地が大きく震えると同時にエラナを中心に魔力の柱が立つ。
「あれがエラナさんの本当の力・・・」
ティアラは圧倒的なほどの魔力を見せ付けられ言葉を失う。
「すばらしい、これほどの魔力何百年ぶりでしょう」
そう言いレティアも魔力を解放した。
「行きます。極魔熱閃(フレア)!」
並みの魔法ではない。高位魔術と呼ばれる術をエラナは放つ。
「魔力沈静(イレイザー)!」
レティアが放つも通常の打ち消し魔法ではない。これもまた高位魔術である。
「さすがですね」
「今度はこちらから行きますよ。極魔爆破(ボム)!」
「法皇魔法壁(シールド)!」
高位魔術ではない。法皇セレネイドの力を借りた神聖魔法である。
「絶対防御魔法ですか」
「高位魔法クラスでもお互いに何の意味はなさないようですね」
「わかっている術ならそれを防ぐ手立てはお互いに知り尽くしていますからね」
「ならば、互いが知らないそれぞれのオリジナル魔法の勝負ですね」
「いいでしょう」
エラナ、レティア同時に詠唱に入る。
『四界の闇を統べる王混沌の王天を翔ける闇夜の星々
すべての心の源よ我が手に集いて我が命に従いて
我が敵を撃ち払え』
エラナが唱えるのはレイアーム相手に使った術だが、今回は神聖語での詠唱、そして完全に魔力を解放しての詠唱である。
『死を司り闇夜混沌の王闇に震える魂
すべての心の源よ我が手に集いて我が命に従いて
我が敵を撃ち払え』
レティアの詠唱もエラナに似た詠唱だがこちらは古代魔法語での複言詠唱であるが、似たような術でもあった。
「魔龍烈閃砲(カオスティック・ブリザード)!」
「闇龍烈閃嵐(カオスティック・ストーム)!」
それぞれ独自のオリジナルの術だが効果・威力はほぼ同じといえた。
「伏せて」
ラクレーナにティアラが叫ぶ。
二人が伏せると同時にぶつかり合った二つのエネルギーが大爆発を起こす。
爆発の威力はすさまじく瓦礫だらけだった帝都跡の大地を大きくえぐりとった。
「私のとっておきだったのですが、それと全く同等の力を操れるとはたいしたものです」
「私もこれは元々貴女と戦ったときに倒すために考えていたのですけどね」
「全くの互角ですね」
伏せたままでティアラがラクレーナにそう言う。
「ですが、時間的な長期戦になれば肉体を持つエラナの方が不利になるでしょう」
「そうでもないですよ。不死の王といえども力を使えば何らかの方法で補充するしかありませんから」
「私の負けのようですね」
レティアが負けを宣言した。
「負けを認められるのですか」
「これ以上続ければ、私の帝都が無くなってしまいそうですからね。それに貴女の体調が万全でない以上、万全であれば私が勝てる道理はありませんからね」
「正直なところ、これ以上は私も厳しいですね。普段封印してあるこの力、少しもてあましていますから」
そう言いエラナは先ほどはずしたイヤリングを着け、ラクレーナからネックレスとローブを受け取る。
「欲しいと言っていた死霊は連れて行くが言い。余はしばらく眠りにつかせてもらおう。ついでに私を超えた証にこれを持っていくがいい」
そう言いレティアはエラナにレスティア帝国の紋章が入った指輪を渡した。
「これは?」
「レスティア帝国の皇帝とは魔道において最高位であることを示す地位、そしてその指輪は魔道において最高位であるものだけが着けることのできる指輪だ。レイアームに見せ付けてやるがいい」
「感謝します。死霊魔術を極めし不死の女王レティア」
「行くがいい、この帝都は私の眠りとともに結界の中に消える。さらばだ魔道の王よ」
そう言うとレティアの姿が書き消えた。
「ティアラ死霊は見つけて、帰りますよ」
ティアラとラクレーナの二人にそう言う。ティアラはすぐに目的の死霊を見つけ一行は帝都から出た。
一行が帝都から出ると同時に帝都があった場所には森が広がるだけでそこにあった帝都は姿を消した。

村を出立したベネラル達の旅は順調なもので、襲撃も無く翌日の昼ごろにはリスタール城につけると思われた。
「全く順調だな」
ベネラルがそう言う。
「ベネラル卿、何かあって欲しかったのですか」
サンバスが尋ねた。
「そんなことはないが、気が抜けた感じがしなくもない」
「襲ってこない理由は幾つかあると思います。1つは敵の王と思われる者がお姉さまに敗れて逃げ帰っているなら、その配下が私達を相手にしようとは思わないでしょう。もう1つは私が展開している結界のせいで私達を他の人は認識することはできませんからね」
「結界、それをずっと展開し続けているのか」
「ベネラル卿、私は呪符師です。この程度の結界を展開しておくぐらい造作もありません」
(どうやらお姉さまは目的を達成されたようですね。しかしすべての封印をとくとあそこまで力が変わるのですね)
そう考えながらセレナは自らの耳にあるイヤリングを触っていた。彼女の耳にあるイヤリングもエラナ同様に魔力を封印しており、彼女のローブも同じものである。違いといえば、魔力を溜め込むネックレスをしていないことぐらいである。
「セレナさん、空間を歪ませていますね」
アレンがこっそりとセレナに尋ねる。
「さすがに気がつきましたか。時間をどうにかすることはできませんが、距離を短縮させることぐらいはできます」
「エラナさんもできるのですか」
「できるでしょうけど、呪符で発動させる分、私の方が容易に使いこなせるだけです。お姉さまでは常時魔力を放出し続けなければなりませんからね」
「なるほど」
「高位魔術で時空系の術、簡単に使えるものではありません。敵に使ってくる者がいる可能性は低いですから」
アレンの心配を見抜きそう言う。
「もし敵がこのような手段でこちらに近づいてくると考えていましたので」
「エラグラスの配下までは知りませんよ。ですが、同じ力を持った相手には不意打ちはできませんから」
翌日の昼過ぎ一行はリスタール城に到着したが、ベネラル達には2日かけて旅したつもりだったが、実際には1日しか経過していなかった。
その為、村へ向かう準備を終えたばかりのサーディンと合流することができた。
「もうこちらへ戻ってこられたのですね」
「ああ、村に滞在している意味がなくなったからな。次の目的地に向かうことにした」
「なるほど、エラナ殿とティアラ殿、それにラクレーナ殿の姿が無いようですが」
「3人は別行動している。変わりにセレナが来てくれた」
「お久しぶりです。サーディン殿」
セレナはエラナと一緒にリクイド城へ行っていた為、サーディンとも何度も会っている。
「元気そうで何よりです」
サーディンとセレナでは年齢が大きく違うが、身分で言えば黒騎士団の中隊長と学院導師ではセレナのほうが上になる。
実際、ベネラルを含めた一行、低年齢であるほど身分が高いともいえる。
「そこにおるのはセレナか」
スラット太守がセレナを見つけ声をかけてきた。
「お久しぶりです」
「元気そうだな。しかし、そなたまで借り出されたか」
「お姉さまの代理です。お姉さまが戻ってくれるまでです」
「なるほど、そなた以外には難しい役目だな」
幼いながらセレナと太守の身分的な立場に違いはないが、気心のしれた中でもあるため、身分的を気にした付合いはしていない。
「そうだセレナ、陛下のご子息フォーラル殿がちょうど見えているぞ」
「フォーラル様がですか」
「うむ、城の客間の方に見えられるぞ」
「失礼して、お会いしてまいります」
そう言いセレナはスラットに頭をさげ城へ向かった。
「フォーラル殿とセレナは顔見知りだったのか」
ベネラルが太守に尋ねる。
「殿下とセレナとは年齢もほぼ同じですからね。話相手にはちょうどいいのでしょう。帝都ではよく城内で会われているようです」
「なるほど、だがそれだけだとは思わんな」
「と言われますと」
「二人ともまだ子供といえども、男と女だ。セレナはうれしそうに向かっていった」
「なるほど、否定する要素はありませんな」
「もしそうなれば、エラナがフレア公爵となれば、フレア家は名実とともにアルスターク家とは縁戚となる」
「それでベネラル卿はエラナ殿にこだわっているのですな」
「家柄まで気にはせん。だが俺のエラナに対する気持ちに偽りは無い」
「またすぐに出立するのか」
「フォーラル殿が来ているなら無視して先に行くわけにもいくまい。今晩はまたご厄介になる」
「わかりました。先日はあのような事件になってしまいましたが、今夜もフォーラル殿を迎えての式典がある。ご出席願いますよ」
「わかった。皆にも伝えよう」

夜の宴席までベネラル達は先日と同じ部屋で休んでいた。
しばらくしたころ、部屋にエラナを含めた3人が転移してきた。
「ベネラル、少し面倒なことがおきました」
「どうした」
「幾つかありますので順に話すけど、エラグラスの剣の位置はおおよそわかりました」
そう言い、エラナは別行動をして不死の女王と会ったことやその不死の女王に連れ去られた死霊騎士を取り返したことも告げた。
「まさか不死の女王と戦ったのか」
「彼女を満足させることが死霊騎士を引き渡す条件でしたからね。で、その死霊騎士でしたがエラグラスの剣を当時の陛下からお預かりしたのは間違いありません。ただその剣の行き先まではわかりませんでした。彼が死霊になったのはその剣を陛下に返さなくてはという無念からです」
「剣を探す手がかりが消えたということか」
「そう言うことです。ですが、剣については製作したときの情報を手に入れれば探知魔法で探せないことはありませんので調査はそちらの方向性に変わるでしょう」
「なるほど、で他に困った問題というのはなんだ」
「すでに私達は何度か襲撃を受けていますが、いくらなんでも多すぎるとは思いませんか」
「確かに、それに行く先々で必ずトラブルが起きているな」
「そう言われてみればそうですね。最初にリクイド城を出てハーパリン公爵領に向かうときからそのような感じがありますね」
クリスがそう言う。
「今回の役目は極秘裏との話でしたが、最初から敵には私達のことは伝わっていたのではないかということです」
「帝国内部に内通者がいるということですね」
サンバスがそう言う。
「そう言うことです。ベネラル、今回のこの任務について知っているのは帝国内部でどのくらいいますか」
「我が父と陛下、それに宮廷魔術師殿、司祭殿に大臣クラスぐらいですね」
「帝国最高執行部のメンバーですね。エラグラスの復活についての報告をしてきたのは誰ですか」
「確か宮廷魔術師のレインハート殿だったはず」
「あの人が探知系の力に長けてると聞いたことはありませんね。そもそも私やセレナが気がついていなかったのですからね。それに現時点でもエラグラスの位置を特定できないのですから」
「レスティア帝国の魔導師達が復活させただけでは話は繋がらぬか」
「もし復活させたのがそうだとしても、私達の行動をここまで知っているとは思えませんし、普段は私もその手の魔法で探知されないように魔力をかなり押さえ込んでいるのです。それを見つけれるとなると私と同格かそれ以上の魔力を持っていることになります。可能性があったのはレスティア帝国最終皇帝レティアでしたが、彼女は今回の件には無関係です。そうなると魔法で探知できる可能性のある魔導師は他にいません」
「それで内通者か。なるほどな」
「サンバス殿」
エラナはサンバスの方を向く。
「なんです」
「帝都城内に出入りできる者で信用のおける者はどこくらいいますか」
「城内のほとんどはアルウス派の者が多いですからね。そうだ、レネス公爵なら」
「代々帝国内務尚書を勤めてるレネス公爵か、あの方なら信用できるな」
ベネラルも賛同した。
「いいでしょう、サンバス殿、明日帝都に発ってもらえませんか」
「わかりました。しばらく私に御用がないようならしばらくレネス公爵の元で私も調査いたしますが」
「そうですね。私達もほとんどここから動かないでしょうからそれがいいかもしれません。アレン、サイバーの2人も二人も連れて行って構いません。二人とも諜報活動をするなら役にたつでしょう」
「わかりました」
「ティアラ、貴女は学院に戻ってエラグラスの剣について調べてください。その剣に関しての書物の閲覧ができるようにラスティーク師への手紙は私が認めます」
「わかりました」
「ラルク、貴方は一度公爵領に戻って猊下に神官騎士団を派遣できる手配をしてもらえるように頼んでください」
「神官騎士団をですか。どの程度の数ですか」
「できれば1騎士団まるごと欲しいわね」
「わかりました、父上を説得してみます」
「必要なら私かベネラルの手紙を準備しますが」
「父上なら理解してくれると思います」
「ベネラル、黒騎士団はどの程度連れてこれますか」
「俺独自の権限なら2割程度なら俺の指揮下だ」
「5000騎ですか、黒騎士と神官騎士団あわせて3万もあれば十分でしょう」
「私の重騎士団も5000騎でよければ連れてこれるぞ」
グランテールがそう申し出る。
「多いすぎて困る理由はありません。そちらはお願いします」
「戦争でも始めるつもりか」
ベネラルがそう言う。
「その可能性が高いです。中途半端な騎士団を押し付けられるよりその方が都合が良いですからね」
「なるほど、俺達に別の任務を与えることによって妨害してくるか」
「そういうことです」
しばらくすると扉が開きセレナが戻ってきた。
「フォーラル殿は元気でしたか」
「ええ、久しぶりにお話できてよろこんでもらえたようです」
「明日にはフォーラル殿は帝都に戻るでしょうから、セレナとラクレーナで帝都までフォーラル殿と同行してください。私が言いたいことはわかりますね」
「はい」
「クリス、貴方は街へ言って傭兵を100名程度で構いませんから集めておいてください」
「費用はどうされます」
「騎士団からいくらか出せますか」
そうベネラルに尋ねる。
「100名程度なら構わんだろう。だが傭兵100名程度で役に立つのか」
「遊撃部隊です。指揮は私かレーナがすることになるでしょう。私をはじめレーナ、学院メンバーは正規の軍人ではありませんからね」
「確かにそうだが、お前なら今すぐにでも正式に黒騎士団の参謀長にでもなれるのだぞ」
「軍属になると身動きが取りにくいですから遠慮しておきます」
「正式な軍を率いるのは、領土を持ってからにしたいのだな」
「そう言うことです」

翌日、ベネラル、エラナの2人を残してそれぞれ目的の地へ旅立った。
サーディン、ブラッサムは黒騎士団を連れてくる為にリクイド城へ、サンバス、アレン、サイバー、セレナ、ラクレーナ、グランテールの6人はフォーラル王子と一緒に帝都ラクーンへ、ラルクはリクイド城まではサーディンらと同行した。
ティアラだけは転移魔法で一足先に学院に戻った。
クリスはリスタール城下に傭兵を集めに向かった。
「エラナ、俺達に与えられる新たな任務を何だと見ているんだ」
ベネラルは部屋でくつろぐエラナにそう尋ねる。
「そうですね。いくつか候補は考えています」
そう言いエラナは飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置く。
「お前の集めようとしている兵の数からしてかなり厳しいものだろうな」
「叛乱軍相手の可能性はありますね。あとは近隣の山賊団の退治ですが、おそらく前者でしょう」
「聖王国とは100年前に結んだ国交回復同盟があるからよほど心配はないとは思うが、公国とは一切の同盟関係もないし帝国としては認めていないからな」
「それでも毎年小さな小競り合いは続いていますからね」
「だが基本的には防衛という名目だけだ。進軍して公国の領土を侵略すれば大きな戦になる」
「でしょうね。だからこそ進軍しろと言ってくるでしょう」
「国家規模でいけば、公国は我が帝国の3倍だぞ」
「人口でいけば3倍あります。兵力にいたっては5倍以上ですからね」
「うむ、それだけの兵力差があっての進軍は考えられん」
「無謀ですね。聖王国ほどではありませんが帝国は主に山岳と森が多いですから防衛には適していますが、公国領はほとんどが平原ですから攻め落としたとしてもそれ以後の防衛が難しいですからね。もっとも兵の質には違いがありますけどね。帝国が騎士団を中心とした職業軍人に対して公国は徴兵制度でほとんどは一般市民、職業軍人は1割程度ですからね。だからと言って個々の力があっても数の差はどうすることもできませんからね」
「うむ、いくら我が黒騎士団が強いといっても数十倍の相手から弓で攻撃されてはどうすることもできんからな」
「実際はそこへ魔導師が加わりますから、もう少し有利になりますけどね」
「そういえば、公国は魔導師を認めていなかったな」
「私のような魔導師がいけば迫害対象ですからね。場合によっては賞金をかけられることもありますからね」
「魔道が使えるだけで犯罪者か」
「魔道イコール悪という考え方がありますからね」
「しかし、もし進軍しろといわれたらどうする。膠着状態となって無駄に時間を費やすわけにはいかんぞ」
「最低1戦して勝利を収める必要はあるでしょうね。その場合、それ以上の進軍を要求されるかその前線の防衛を指示してくるでしょうね」
「どうするつもりだ」
「大規模兵団での進軍はほぼありえないでしょう。もしそれを指示するなら騎士団長レベルの地位を持っていなければ指揮できないことになっています。貴方は黒騎士団部隊長ですが、地位的には他の騎士団長レベルの権限がありますが、2騎士団程度なら許されるでしょうが、大規模となると貴方が黒騎士団長である必要が出てきますからね」
「確かにな。それにお前も軍属ではないか」
「私は帝都議会の決定に従う必要はありませんからね。私が唯一従わなければならないのはラスティーク師だけですからね」
「皇帝陛下が最高導師に協力要請をしてできるか」
「そう言うことです。まぁ、いざとなったら影武者という手段もあります」
「影武者か」
「ええ、貴方の代わりはサイバーができるでしょう。私の代わりはティアラかセレナにやらせれば問題ないでしょう。学院メンバーは私の支持は絶対ですから」
「お前以外に従う必要はないか」
「そう言うことです。私の研究室にいる以上は私の許可なくして動かすことはできませんからね。それがたとえ最高導師といえども直接の指示は出せません」
「軍の組織によくにているな」
「学院からどれだけの軍略家がでていると思っているのです。それに学院も1つの国家と同じなのですから」

フォーラル王子と近衛騎士20名、サンバスら6名の一行はリスタール城を後にし街道を進んだ。街道といえども山賊や盗賊が出るという報告もかなりあるが、近衛騎士団が抱える旗は帝国王室の旗、軍として近衛騎士団が出撃することは皆無だが彼らも黒騎士団と同等の実力者がそろっていることは山賊や盗賊でもよく知っている。少人数といえども下手に敵に回せばかなりの痛手を負うことになる。
彼らもわざわざ痛手を負ってまでは襲ってはこない。あくまで狙うは弱者である。
さらに今回は学院の紋章が入ったローブを来たものが3人もいるのである。見るものが見ればセレナが導師であることはすぐにわかる。
さらに一行の中にただ一人重武装であるグランテールがいる。軽装の山賊や盗賊とは正反対の重騎士、彼らの武器では傷をつけることすらできない。
だが彼らの前に現れたのは黒い法衣を身に付けた闇の騎士団だった。
「闇騎士団と言ったところですか」
セレナがそう呟く。同時に彼らは剣を抜いた。
「殿下をまもれ」
サンバスがそう叫ぶ。
「はっ!」
ラクレーナが槍を手に突進した。
「アレン、行くぞ」
サイバーはアレンに声をかけ突っ込んだ。
セレナがそう呼んだ闇騎士は100名前後、数の上では倍以上、しかも闇騎士団が実力者ばかりであった。
だが、ラクレーナ、アレン、サイバーの実力はまったくレベルが違う。かろうじて攻撃を受け止める者もいるがほぼ一太刀で倒されていく。
「この程度の実力で私達を相手にできるとでも思っていましたか」
ラクレーナの実力は一行の中でも軍をぬいている。大人と子供以上の実力差があるといっても良い。
だからといって、100名をすべてがすべて3人で防ぎきれることもなく、半数以上は後方のセレナ達の下へ向かっていく。
「私がすんなりと通すとでも思いましたか」
セレナを無視して通り抜けようとした3人の闇騎士の首が落ちた。そのセレナの手には鞭が握られていた。
同時にセレナの背後には無数の草の蔦が現れ壁となる。
「精霊魔法」
サンバスがセレナの術をそう判断した。
「精霊魔法はまた力の根源を異なる為、使い手を選ぶと聞いてましたが」
グランテールがそう言う。
「精霊魔法は精霊の力を借りるものと、精霊を支配し強制的に行使するものがるといいます。おそらく彼女の場合は後者でしょうが、上級精霊を支配できるとなると彼女の実力は上級精霊以上ということになりますね」
サンバスはそうセレナの力を分析した。
半数をラクレーナ達4人に打ち倒された闇騎士は撤退していった。
「強いですね」
セレナを見ながら、ラクレーナはアレンにそう言う。
「エラナさんと常に修行や訓練を続けてきたそうですからね。先日のベネラル卿との手合わせでもかなりの時間戦えておりましたからね。私も負けるとはいいませんがすんなり勝たせてはもらえないでしょう」
「何度か剣の手合わせはしましたが、私と1時間以上も続けらる体力もありますね」
サイバーがそう言う。
アレン、サイバーの実力もかなりの実力者であり、彼らもまた魔道剣術の使い手でもある。
「闇騎士、すでこれだけの実力者の軍団を育てあげていましたか」
セレナはそう呟く。
「ご存知なのですか」
アレンが尋ねる。
「帝国宮廷司祭アルウスの直属の騎士団です。侯爵位と自身の教会を持っていますから騎士団の創設と保持はできますからね」
領土を持つ貴族は基本的に私設騎士団の所持を認められており、有事の際には帝国軍の正規軍として戦うことになっている。同時にその時に本陣を守る近衛騎士団の役割を果たす貴族にとっては最後の砦となる。
ただ貴族の階級によって保有できる騎士の数に限界はあり、通常は数千程度で1騎士団を結成できるほどは保持していない。騎士団維持には莫大な金がかかり、それらは国の補助を受けられるわけではない。その為数は爵位に比例してくる。
公爵・侯爵になると1騎士団を保持しているものもいるが、通例は半騎士団までである。現時点で1騎士団を保持している貴族はハーパリン公爵領の神官騎士団、アルスターク王家でもあるがベネラルの父ブラネスは太守として1騎士団、それ以外に1騎士団を保持している。他にも太守クラスは最低でも1騎士団は保持している。
またサンバスのアルト侯爵家は半騎士団、アレンのブランド伯爵家は4000騎を保持している。
「しかし、闇騎士をアルウスが動かしたとなると彼の犯行はすぐに明らかになります。そんな愚考をしてくるでしょうか」
サンバスがそう言う。
「私達が加わっていることが計算外だったのでしょう。私達がいなければ成功していたでしょう。大人数で襲えば目立ちますが少人数なら山賊か盗賊にやられたで説明がつきますから」
「なるほど、ですが失敗したことでこれが明るみになることを恐れてまた何か仕掛けてはきませんか」
「それは無いでしょう闇騎士団という呼称はありませんからね。表面上は通常の神官騎士団と同じで装備も同じものです。いくらでもやりようはあります。私の方も闇騎士団がアルウス直属の騎士団である証拠があるわけではありません」
「しかし今後もフォーラル殿下が狙われる可能性は否定できませんな」
「ブラネス卿の元で保護を受けるべきかもしれませんね。騎士叙勲を早めてもらうがいいかと思います」
「リクイド城にいるならアルウスも手出しはできないか」
「リクイド城は無関係の者が簡単に入り込める場所ではありませんし、黒騎士団を敵に回すほどの戦力はまだ整っていないでしょう」
「リクイド城は黒騎士団を含めて3騎士団7万5000騎、領土内にはハーパリン公爵領もありますから、10万以上の騎士がいるわけですからね」
「今後、それにお姉さまが爵位を得ればその騎士団も加わりますからね。その為の貴方達の役割は大きいですからね」
アレンとサイバーにそう言う。
「わかっております。魔法騎士団の礎は私達が築きます」

一足先に学院に戻ったティアラは最高導師ラスティークの元を尋ねていた。
「エラナ様から書状を預かってまいりました」
そう言い、書状を手渡す。
「なるほど、宝物庫への立ち入りか」
「はい、剣を探索するにはそれ以外の方法はありません」
そう言い、ティアラはこれまでの事情をすべて話した。
「エラナのやつは不死の女王まで相手にしたのか」
「エラナにはもともとそれだけの実力はありますからね。ですが、そろそろ私でもエラナに勝てないかもしれませんね」
同席していたエラナの姉弟子であるメリアがそう言う。
エラナが学院内での魔道勝負で唯一勝利を治めていないのがこのメリアである。魔道そのものの力はエラナが上回るが、魔道に対する絶対防御を持つメリアにエラナの魔道は一切通用しない。
「メリアさんを意識してのことでしょうか。エラナ様は古代神聖語での詠唱をされていました」
「エラナが詠唱ですか。しかも古代神聖語となると通常の古代魔法語の半分以下での詠唱時間、本気で手に負えなくなりそうですね」
「とりあえず事情はわかった。宝物庫への立ち入りは許可する。ただし、メリアの同席のもととする」
「ありがとうございます」
そう言いティアラは退出していった。
「メリア、エラナが不死の女王と戦って勝ったというならエラナはレスティア帝国の皇帝の証である指輪を持っているだろうな」
「間違いなく持っているでしょう。その指輪こそ魔道の頂点に立つものの証ですからね」
「エラナがどう出てくると思う」
「最高導師の地位のことですか」
「うむ、すぐには求めては来ないでしょう。まだ今のエラナにとって最高導師の地位は行動の制限を受けますから求めてこないでしょう」
「なるほどな」
「もしエラナがその地位につくとすれば帝国内部でのある程度の地位を手に入れてからでしょう。今エラナが考えているのは公爵としての帝国貴族としての地位でしょうから」
「地盤固めか」
「ああ見えて彼女はかなり慎重派ですからね。民衆からの支持、それを第一と考えているでしょう」
「変革者となるには必要だな」
「ええ」

リクイド城に向かったラルク、ブラッサム、サーディンの3人も山賊の襲撃を受けていた。
「我々相手に山賊とは甘く見られたものだな」
ブラッサムは山賊の一人を斬り捨てそう言う。
「全くだ」
「だからと言って油断して怪我をしても仕方ありません」
二人の会話にラルクがそう言う。
「確かにな、油断大敵とはよく言ったもんだ」
ブラッサム、サーディンもベネラルの実力の前では目立つこともないが、彼らは黒騎士団の中でも上位に位置する実力者である。またラルクも神官騎士としてはすでにトップレベル、ブラッサム、サーディンの二人よりも実力はかなり上になる。
その時ラルクめがけて1本の弓が飛んでくるが、それをラルクは剣で叩き落とす。
「はっ!」
同時に振った剣は、その弓を放った30メートル以上離れた山賊を斬り捨てた。彼ほどの実力者になると剣を振るう剣圧だけでも凶器となる。
30分も経つころには立っているのは3人だけであった。
「我々が黒騎士であることをわかっていて襲ってくるとはな」
ブラッサムがそう言う。
ラルクは神官騎士としての装備、ブラッサム達も黒騎士としての装備、3人が騎士であることを見間違える山賊はいない。並みの騎士ならば100名近い山賊に襲われればやられるかもしれんが、黒騎士の強さは子供ですら知っている。
「ある程度の報酬でも約束されていたのだろうな」
「ですが、あれほど逃げ腰で戦っては強制されて戦っているのはばればれですね」
ラルクがそう言う。
「わかっていて手加減はしていなかったな」
「このようなところで殺られるわけにはいきませんからね」
「だが、この死体の山をどうする。これだけの数を街道に放っておくわけにはいくまい」
「この先に村がある。そこの兵達にやらせよう。こんなところで死体の片付けをしている時間は無い」
「そうですね。先を急ぎましょう」
ラルクがそう言う。
3人は夕方に村に着くと兵士達に街道の死体を片付けるように指示を出した。だが兵士達も3人で100人近い山賊を相手にしたとは思っていなかった。

リスタール城に残ったエラナは、時間のほとんどをベットの上で過ごしている時間が多かった。
「すこし魔力を派手に使いすぎましたから、一晩程度休んでも回復しきりませんからね」
ベットで横になりながらそうベネラルに言う。
「あまり無理はするな。少しは俺にも戦わせろ」
「心配しなくてもエラグラスは貴方に倒させてあげますよ。どうせしばらくは私の魔力は必要なくなるでしょう。しばらく頭脳戦でしょうからね」
「少し退屈な気もするがな」
「心理戦ってのもかなり面白いものですよ」
「それはお前に任せる。俺は他にも考えなくてはならない問題もあるからな」
「適材適所、それぞれに合った役目を果たすのが良いでしょう」
「そうだな」
そうしていると部屋の扉をノックされた。
「どうぞ」
エラナが返事をする。
「失礼致します」
入ってきたのは若い騎士だった。
「何かあったのか」
「太守がお呼びです」
「わかった。すぐ行くと伝えてくれ」
「はっ」
会釈すると若い騎士が出て行く。
「どう見る」
「おそらく、帝都に向かったメンバーが襲撃を受けたという話でしょう」
「予測済みか」
「だからこそ、セレナだけでなくレーナ、サイバー、アレンを行かせたのです」
「確かにそうだが、こうも早く襲撃されるとはな」
「あちらも時間が無いのでしょう。おそらくリクイド城へ向かった3人も襲撃は受けているでしょうが、3人だけですから報告はかなり後になるでしょうね」
「あの3人の実力ならよほど心配はいらんとは思うが、危険を承知でいかせたのか」
「ある程度の危険は考えての上です。リクイド城に向かった3人が襲撃を受けたとしても山賊レベルまででしょう。それに対して帝都に向かったメンバーには敵の主力が来るでしょうから」
「敵の主力か」
「背後にいるのはおそらくアルウス、闇騎士でしょうね」
「闇騎士、聞いたことがないな」
「ヴィズダム聖王国の聖騎士団と同じように、魔法の使える騎士団です。その実力は聖騎士や黒騎士と同等と考えた方がいいでしょう」
「そんなもの達が・・・」
「だからこそあの6人を行かせたのです。6人とも実力はずば抜けていますからね。レーナやセレナは実際に貴方が剣を交えてますからよくわかっているでしょうが、アレン、サイバーもセレナと互角に戦う力は持っています。サンバスは戦略や戦術を得意としていますが、剣の腕は確かです。グランテールも貴方と同等の力を持っていることは承知のうえでしょう」
「確かにな。ラクレーナとセレナは剣を交えたしサンバスやグランテールとも剣は交えたことはある。4人については心配してはいない。だが、アレンやサイバーもそれだけの実力を持っているとはな」
「アレンとサイバーは私と同様に魔道剣術の使い手です。それが何を意味するかはわかるでしょう」
「セレナと同様にお前と剣を交えてきた者か」
「そう言うことです。さて、これ以上太守を待たせるわけにはいかないでしょう」
「そうだな」

スラット太守に呼ばれ太守の私室に向かったベネラルとエラナは想像していたとおり帝都に向かった一行が襲撃を受けたことを告げた。
「損害は何も無かったでしょう」
「確かにそうだが、これで最後とも思えん。1軍を送ろうと思う」
「大規模な兵団はいらぬ疑いを産み奴らの思う壺です。だからと言って全く送らないのも疑いをかけられる可能性があります。兵力を調整する必要はあるでしょう」
エラナはそう言う。
「どの程度の兵力が相応しいと思う」
スラット太守が尋ねる。
「100名から150名程度でしょう」
「たったそれだけの兵か」
「指揮官はどうするんだ」
ベネラルが尋ねた。
「それはすでに考えてあります。今このリスタール城には私の研究室のメンバーが何人か来ていますゆえその中から選びます」
「軍属でないものに兵を指揮させることはできんぞ」
「私は学院導師ですよ。ほとんどの導師は所有していませんが、学院導師であり研究室を開いている導師ならば私兵団を持つこともできるのですよ」
「そういえば、お前の研究室にはどの程度の魔導師がいるんだ」
ベネラルが尋ねる。
「2000名程度はいますよ。その中でも剣に突出したものだけを集めたグループがあります」
「まさかそのグループがここへ来ているのか」
「そのとおりです。本来アレンとサイバーもそのメンバーです。最終的には私の騎士団にまでするつもりのものです。魔法騎士団、それが呼称です」
「魔法騎士団、あの伝説の騎士団を復活させようというのか」
「ええ、現時点で100名ほど集まっております」
「お前の軍をまるまる送りこむわけか」
「そう言うことです。私が直接育てあげた軍団ですからね。普通の騎士より圧倒的に強いですよ」
同時に二人の鎧を見につけた騎士が部屋に入ってきた。
「エラナ様、準備は整っております」
「いつでも出撃可能です」
「カリテ、マルシェ、ご苦労です。セレナ、アレン、サイバーは私の研究室のメンバー、そこへ私の軍勢を向かわせたとしても何の問題もないでしょう」
「よかろう」
スラットがそう言うとエラナはカリテ、マルシェの方に振り向き頷く。
「行って参ります」
そう言うと2人は一礼し部屋を出て行った。
「よくあれだけの実力者を集めたな。剣の腕ならサーディン、ブラッサムと十分に戦えるぐらいの実力は持っているな」
「たいしたものだ。あれだけの人材をよく集めたものだ」
「まだポケットにいくつか隠しているだろうがな」
「否定はしませんよ。ですが、魔道や剣の腕が立つものはここまでですよ。あとは政治、戦略、戦術家などの知識を持ったものです。あとは諜報部隊もありますけれどね」
「あらゆることを想定しているのだな」
「後手に回っていいことはありませんからね。先手、先手を打っておく必要がありますからね」
「策士だな」
スラットがそう呟く。

翌日、学院の旗を掲げたカリテ、マルシェが率いる100名の軍勢が合流した。
「お前たちまで駆り出されたか」
サイバーが2人にそう言う。
「学院を敵に回そうとする者はいないでしょうから、つまらない任務です」
カリテがそう答える。
「確かにな」
学院を敵に回した場合の末路は山賊や盗賊の間では有名で、学院関係者を襲っただけで壊滅させられた山賊や盗賊は数知れない。かって帝国貴族で学院を敵に回し数千の魔導師と学院保有の数万の軍勢で領地に攻め込まれ、その時の宰相・大臣まで巻き込み帝都が戦場になるところで、皇帝自ら和解に乗り出し原因を作った帝国貴族数人の首を差し出すことで学院の兵を引かせたことがある。
現時点の学院でも有事の際には、学院関係者1万人、その直轄兵力1万、学院出身帝国軍族・文官・貴族などが集まれば10万近い軍勢が集まる。
「だからと言って油断していらぬ被害を出すはおろかなことです」
セレナが忠告する。
「わかっております」
その一方、帝都にはすでに情報が伝わっていた。
「学院の軍勢がフォーラル殿下を保護したそうだ」
「学院の正式な軍か」
「いいえ、学院導師エラナ・フレアが所有する私設軍勢だそうです」
「帝国建国の王妃エラナ・アルスターク様の再来といわれるあの魔導師か」
エラナのことは帝国内でも有名で、学院最年少魔術師、最年少導師などこれまでの学院の記録を数々と塗り替えた。学院入院が6歳の時で、それから1ヶ月で魔術師、1年半で現在の導師にまでなっている。
また妹のセレナもエラナに連れられ学院に来たのが2歳、特別に学院で生活することの許可を受けたもののエラナ同様に生まれながらの魔導師で、正式に学院魔術師として認められたのはエラナと同様の6歳、導師まではエラナより時間がかかっているものの9歳で導師となっている。
本来学院へ入院できる年齢は6歳以上ではあるが、まず基本的な学力を身につける為に6年の学業生活を終了しなければならない。その上で専門分野を選択し3年間の修行及び学業が始まる。合計9年間を終え試験に合格した後に魔術師として認められる。だがそれだけでは社会的に学院卒業者としては認められず、そこからさらに3年をもって正魔術師になることができる。
正魔術師になるとそれからは導師が開いている研究室に入り学ぶことになる。そこで認められて準導師となれる。ただ準導師になると同時に学院の講師を務めることができるようになり学院から給与が与えられ、自分専用の研究施設を持つことができるようになる。その後、導師クラス3名の推薦か、最高導師による推薦をもって導師に就任することができる。
学院の課程で実力があれば飛び級は認められていることもあり、エラナは最初の9年を1ヶ月でクリアしたのである。なおかつセレナも同じ年齢で就任しているのである。
帝国文官には学院出身者が多い、2人のことが噂にならないわけがない。
学院魔術師として皇帝に謁見したのが6歳、この時ベネラルと初めて会っているのだがそのベネラルと帝都均衡で暴れだした魔物の群れを二人だけで壊滅させたことも有名な話である。

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