幻水の作家な気分

ホーム

〜神々の戦い〜
世界説明
歴史的な流れ

〜ルアージュ〜
世界説明
登場人物
第一部(完)
第二部(完)
第三部(3/?)
第四部(0/∞)
第五部(0/0)
第六部(0/0)
外伝(1)

〜PM〜
登場人物
外伝

自己紹介

掲示板

カウンター設置:2009.11.24
合計:027348
本日:0009 昨日:0016

sei_gensuiをフォローしましょう


Googleボットチェッカー
Yahoo!ボットチェッカー
MSNボットチェッカー

 
第一部  第四章 冥界からの訪問者

村が解放された翌日、エラナとティアラの指示で村人達を村の中心にある広場に集めた。
戦場になった村だが、山賊達の死体などは昨日の間に子爵軍によって片付けられていた。
村人に直接話をするのは最年長であり、平民の出自であるクリスが担当することになった。
「皆様に集まって頂いたのは、私達は今昔の戦の調査をしておりまして、400年ほど前にこの付近であった戦についての話をなにか知っていれば教えて頂けませんか」
クリスの質問に最初に立ち上がったのは村の村長だった。
「400年前の話かどうかわかりませんが、大きな戦があったとは聞いたことがあります。村の北の山を越えた丘が当時の戦場であったとは聞いております。ただその丘にはいまだ戦場で散った騎士様がさまよっているとかで村のものは誰も近寄らない場所があります」
「んんだ、その騎士様は動くものを見るなら襲ってくるってじいさまにきいた」
村人の一人がそう言う。
「うちのじいさまも言ってたな」
「ワシは若い頃一度いったが、そんな騎士様さまなぞおらんかったぞ」
「何十年前に来た冒険者だったかは、丘の方へ行ったきり戻らなかったじゃないか」
村人達は思うままに勝手に話を始める。
その話をされている端にエラナとティアラは立っていた。
「一致するのは丘、それと比較的多いのが彷徨う騎士ですね」
ティアラがそう言う。
「それは間違いないようですが、戦の詳細まではわかりませんね。ですが、軍がこの近くで駐在して戻ってこなかった話も多少ながらありますね」
「どうも当時おきた叛乱は一般的には口外されずに鎮圧していた感がありますね。軍が動く経路としては別の道で帝都に戻ることもできますし、それに何より現在でもそうだったように当時、その後も山賊達は多かったようですね。中には話が新しすぎる感もあります」
「数百にしろ数万もの軍隊だろうと軍隊には変わりありませんからね。もしその騎士がいるなら話ができると思いますか」
「存在するとして、おそらく死霊騎士(アンデット・ナイト)、話ができるとは思いません。ゴースト系なら話はできるかもしれませんが」
「無念から蘇った騎士ならそうかもしれませんね。ですがそれが、高位の騎士なら皇帝より授かった剣なり使命を達成しなければならない目的をもったゴーストなら話はできるかもしれませんが、動くものに対して襲い掛かってくるとなるとあまり知性は期待できませんね」
「どちらにせよ行ってみるしかないでしょう」
「そうですね」
「全員でいく必要はないとは思いますが、どうされますか」
ティアラはそう尋ねた。
「貴女が行かないことには話はできないでしょう。人選はあなたに任せますよ」
「ならば、サイバーとアレンを」
「念のためにレーナも連れて行きなさい。エラグラスの手下なりレスティア帝国の魔導師と遭遇しないともかぎりませんからね」
「わかりました。では、早速向かいましょう」
「念のためにこれを渡しておきます」
そう言い指輪を渡した。
「これは?」
「それに魔力をこめて念じれば私に伝わります。そうすれば、私はその指輪の魔力に対して移動することができます。いわば私を召還するためのものだと思ってください」

村人を集めてクリスが話をしている頃、ラルクは村のはずれに建てた天幕で傷ついた村人や兵士達の手当てに忙しかった。
「すまんな、こんな役目を押し付けて」
ベネラルがラルクに頭を下げる。
「神官騎士といえども、神官となんら変わりありません。傷ついた人を放っておくわけにはいきません。お気になさらぬよう」
「やってますね」
ティアラを送りだしたエラナが姿を現した。
「終わったのか」
「ある程度の場所はわかりましたので、ティアラとサイバー、アレン、レーナで調査に向かわせました」
「3人で大丈夫か」
「何かあれば私を呼び出せる指輪を渡しておきましたから大丈夫でしょう。ラルク、私も手伝いましょう」
しばらくエラナも傷の手当をしていると、サンバスが天幕へ入ってきた。
「ベネラル卿、別の問題が発生した」
「なんだ」
「山賊達があの数で村を占拠していたこともあって村人にはこれから次の収穫までの食料の余裕がありません。子爵軍が持ってきた食料もありますが、帰りの食料も考えなければなりませんゆえ、村に残せる食料は1週間程度です。畑は完全に荒らされていますゆえ、最低でも半年は食料を用意する必要があるでしょう」
「ここは子爵領、それはこの地の支配者である子爵家が準備するものでしょう」
エラナがそう指摘する。
「それが子爵軍の騎士によると、今回の件でほとんどの山賊を退治できたもののほかの村でも被害が多く子爵家ではそれだけの備蓄が無いそうです」
「そうなるとその上の支配者であるスラット太守か、リスタール城には常時、数年は篭城できる食料の備蓄があるはずだ」
「準備はできるでしょうが1週間以上はかかるでしょう」
「ベネラル、貴方はすぐに太守に手紙を書いてサーディンを使者に出してください。サンバス殿、子爵軍は100名程度を残してあとは帰還させてください。それで数日分は稼げるはずです。それからブラッサム、グランテールに狩猟でも構わないから食料調達を残った子爵軍と行うように指示してください。他に問題は」
「それだけです。すぐに指示を出します」
サンバスはエラナの指示を受け入れ天幕を出て行く。ベネラルもそれに続いた。
「さすがですね。あれだけの指示を瞬時にだせるとは」
ラルクが感嘆しそう言う。
「予測の範囲内ですが、思ってた以上に食料が残っていたということですね。全く無い可能性のほうを考えていましたから時間的余裕があるほうが救いです」
「なるほど、勉強になります」
「さぁ、まだ患者はたくさんいます。今日中に終わらせて彼らも働けるようにしましょう」

天幕を出たベネラルとサンバスは、すぐにエラナの指示通りに行動を開始した。
すべての指示を終えたサンバスはベネラルの元を尋ねていた。
「ご苦労だったな」
「いえ、しかしエラナ殿のあの時間でここまで完璧な指示をだせるとは感嘆しました。将来的に私が騎士団長となったら参謀として欲しいくらいですよ」
「それは困るな、エラナは前から黒騎士団の参謀にと思っているんでな」
「もしエラナ殿が黒騎士団の誘いを受けたら、黒騎士団は最強の騎士団となるでしょうな」
「エラナがその程度の地位で満足するとは思えんがな。次期最高導師と言われるエラナだ相応しいのは帝国宮廷魔術師だろうな」
「全騎士団の参謀長といったところですか」
「そうだな。エラナにはそれだけの才があると思っている。今の帝国を変えるにはエラナのような異端的な考えを持つものが必要だろう。政治のことはよくわからんが、政界でも十分に活躍できよう」
「政界にまで進出しようと思いますと、エラナ殿の学院導師としての地位でも構いませんが、政界は貴族中心、彼女にも爵位が必要となるでしょうな」
「今回の件が終わればエラナは貴族となる。しかも貴族の最高位である公爵だ」
「いきなり公爵ですか」
「お前も貴族の一員ならフレア公爵家の話は知っているだろう」
「フレア公爵家、エラナ殿のフレア一門はやはり」
「フレア公爵家の血を引いている、帝国王家アルスターク家としては隠さねばならない事実もあるがな」
「たしかフレア公爵家は当時の皇帝と妹君の間の間に生まれた子供、それがフレア家でしたね」
「そういうことだ、その為アルスターク家の血としてはフレア家のほうが濃い。エラナの並外れた力はその影響が大きいだろうな。エラナ以外にもフレア家のほとんどは魔術師だ。エラナの妹セレナも生まれもっての魔導師、エラナの叔父でブロウド・フレアも学院導師、その3人の子供も既に学院魔導師だと聞く。行方不明となっているエラナの両親も学院導師だったらしい」
「まさに魔導師の家系ですな」
「初代皇帝王妃が魔導師であったことを考えれば、アルスターク家からもかなりの魔導師が出ていいところだが魔導師より騎士のほうが多い」
「考え方によってはフレア家が帝位継承権をもつこともできると」
「公爵家は帝室直系で帝位を継承できない場合に帝位継承権をもつことになっているからな。最も陛下には長男ティタン殿、次男フォーラル殿、長女レネティアと3人のご子息がいる故、公爵家に帝位が移る可能性は低いだろうが」
「とはいえ、いくら陛下のご子息といえども成人されるまでは第一継承権になりません。現時点ではベネラル卿の父上ブラネス卿が第一帝位継承権をお持ちではないですか。第二継承権はベネラル卿あなたのはずです」
「確かにな、だがエラナがフレア公爵家当主となれば第三継承権はエラナになる」
「私は貴方が皇帝になられることが今の帝国を変えるには一番だと考えますね。王妃にエラナ殿、これで帝国は安泰でしょう」
「陛下のご子息が成人される前に私が結婚すれば、父の第一継承権は俺になるからな。だがエラナが首を縦に振ってくれんからな。噂になったことがあったが俺がエラナに求婚を申し込んだのは事実だからな」
「レスティア帝国はすべて女帝であり魔導師、いまだ人々の心には魔導師に対する恐怖はあります。おそらくそれを考えてのことでしょうね。すでに魔導師としては有名なエラナ殿ですから、帝国皇帝と学院最高導師は同等の地位であり別々の国家という扱いでしたから、もし皇帝と最高導師が結婚すれば別々の国家とはなりませんからね。帝国貴族達はおそらく公国と聖王国となのる叛乱軍を鎮圧し再び1つの帝国とすることを望むでしょうね」
「エラナが拒む理由はそこだな。戦場は全土に及び帝国建国当時のような争いの絶えない時代となるだろうな。おそらくエラナには全土を手に入れるだけの自信はあるだろう。だがそれによって命を落とすものは考えられない数になろう。だからと言って帝国貴族の不平を取り除くには戦をするしかなくなるだろう」
「エラナ殿は、自己を犠牲にしてもいかに被害を少なくすることを常に考えているように思えます。ただ自身に敵意を持つものには容赦が無いようですが」
「味方なら心強いが、敵にはしたくないな」
「で、そこまで考えているということは諦めるのですか」
「いや、今の俺にはエラナ以外には考えられん」
「もし本気でエラナ殿と結ばれたいのでしたら、今のすべての地位を捨てる覚悟も必要ですよ。ベネラル卿が一般市民としてエラナ殿に求婚されれば、彼女は首を縦に振ると思いますよ」
「それは考えなかったな。だが今のこの帝国を捨てて逃げることは俺にはできん」
「最後の手段は、貴方が独身で皇帝になったとしたら皇帝の権限で強制的にでも后にするしかありませんよ」

村の北の丘に向かったティアラ、サイバー、アレン、ラクレーナの4人は2時間ほどで到着していた。
「その死霊騎士が出ると言われる時間はいつごろですか」
サイバーが尋ねる。
「普通に考えれば夕刻から夜にかけてが普通ですね。ただ、村人の話では昼間でもその目撃情報があるようです」
「私は少し上空から探しましょう」
ラクレーナはそう言い、天馬に跨る。
「お願いします」
ティアラの言葉を聴きとげるとラクレーナは上空に舞い上がった。
4人の調査は数時間にわたったが、見つけ出せずに日暮れを迎えていた。
「上空から見た限りではかなり広い草原といった感じですね。細かく調査するとなるとかなりの時間が必要になると思います」
「どちらにせよ、夜の調査も行いたいですから、野営の準備をしましょう」
ティアラとラクレーナは火をおこし夕食の準備を、サイバーとアレンはテントを組み立てた。
「さて、食事の準備もできたことですしラクレーナさん達は先に食事をしていてください」
ティアラはそういい立ち上がった。
「どこへ」
「少し前からお待ち頂いているようですから」
「一人では危険です」
「私にしかどうすることもできない相手です」
同時にそれは姿を現した。しかしその体は透き通っていた。
「ゴースト」
サイバーがそう言った。
さらに数匹、ゴーストは姿を現した。
「私相手にゴーストとは甘く見られたものですね」
そう言い、死霊使いの杖を呼び出す。
『死を司り闇夜よ、我が声を聞き届けあるべき姿へ帰れ』
「死霊浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
同時にゴーストが瞬時に消え去る。
「神聖魔法」
アレンが驚きの声をあげた。
「一般的には最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)は神聖魔法と呼ばれていますが、元々は死霊魔術の最大奥義です。これが死霊魔術を極めたものの真の死霊浄化魔法(ホーリー・ブレス)です」
「なるほど、まさかとは思ったがこの時代にも使いこなせる術者がいたとはな」
声はどこからともなく聞こえた。
「姿は現さないつもりですか」
「ここはすばらしい場所だ」
同時に地面が持ち上がると何百もの死霊が現れた。
「何度呼び出そうと同じことです。死霊浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
「そうかな、死霊浄化魔法(ホーリー・ブレス)は死霊を呼び出すクリエイト系の術と違いかなりの魔法力を消耗する術、いつまで続けられるかな」
再び何百もの死霊がすがたをあらわす。
「私の魔法力を枯渇させるのが目的ですか。甘く見られたものですね。言ったでしょう死霊魔術を極めたと・・・死霊制御陣(アンデット・コントロール・フィールド)!」
ティアラを中心に魔法陣が広がると同時に死霊はティアラに敵意を向けていたそれを消した。
「他人が召還した死霊までコントロールを奪うそれまで使えるのか」
「貴方程度の死霊魔術で私を倒すことなどできませんよ」
「そうらしいな」
そう言うと、魔導師は姿を現した。
「さて、純粋な魔法勝負といきますか」
「いいだろう」
『闇に震える魂闇に凍える魂氷の虚ろなる刃よ我が力となりて静寂となせ』
「詠唱せねば発動できな魔導師に負けはせん、爆裂魔炎弾(カオスティック・フレイア)!」
「氷河烈陣(カオスティック・イレイザー)!」
炎と氷の術ぶつかると同時に昨日のように辺りを霧が包んだ。
「魔炎弾(カオス・フレイム)!」
だが同時にティアラは第二撃目を打ち込んだ。
「なに、魔法消去(マジック・イレイズ)!」
魔術師はあわててそを打ち消す。
「私がいつ詠唱しなければ魔法を発動できないとでも言いましたか、詠唱しているのは魔法力の消費を抑えるためだけです」

ティアラが魔導師と戦っている頃、ベネラル達他のものは天幕に集まり食事をしていた。
「何か大きな音が聞こえませんでしたか」
ブラッサムがそう言った。
「ティアラでしょう。おそらくレスティア帝国の魔導師が相手なのでしょう。ずいぶんと派手な魔法を使っていますね」
「大丈夫なのか」
ベネラルが尋ねた。
「心配ないでしょう。昨日現れた魔導師よりは強いようですが、その程度では本気で戦える場所があるならティアラの足元にも及びませんよ。ティアラは元々は純粋な攻撃系魔法の使い手ですからね。無詠唱からの発動速度は私より速いですからね。問題は持久戦となった場合は不利になりますけどね」
「純粋な魔導師ゆえ、体力的に長期戦に耐えられないと」
サンバスがそう言う。
「ええ、ただ相手も純粋な魔導師なら競り負けることもないでしょう」
エラナはティアラに渡した指輪からすべてが見えていた。
(予想以上ね、ティアラにこれだけの力があるとは思わなかったわね)

「すごい、ティアラさんにあれだけの力があったなんて」
ラクレーナが驚きの声をあげた。
「エラナさんの力が絶大すぎるためにそれに隠れてしまっていますが、ティアラも一流の魔導師ですからね」
サイバーはそうラクレーナに言う。
「極魔炎閃撃(フレイム・ヴォルド)!」
再びティアラは詠唱なしで術を発動させる。
「魔法消去(マジック・イレイズ)!」
「ブレイク!」
魔導師の消去魔法より早くティアラの火炎は分裂した。
「そんなばかな・・・」
ティアラの術を受けてまだ立っていたが、それが限界ともいえた。
「レスティア帝国の魔導師ということでしたからもう少し期待したのですが、その程度でしたか」
「ちっ」
魔導師は逃げ出そうと瞬間移動しようとしたがそれは発動しなかった。
「既にこの辺りでの移動はできませんよ、せめての情けです。私の持てる最高位の魔道で送って差し上げましょう。魔閃砲(キャノン)!」
ティアラの放った熱閃は瞬時に魔導師を蒸発させた。
「なんだ、今の術は」
アレンは知識だけではほとんどの魔術についての知識はあったが、全く知らない術であった。

「終わったようですね」
エラナがそう呟いた。
(しかし、まさか高位魔術まで使えるとはね)
「わかるのか」
ベネラルが尋ねた。
「かなりの距離がありますが、大気中の魔力の動きでおおよそのことはわかります。ただ、私達が欲しい情報はまだ手に入れてはいないようですが」
それだけ言うとエラナは立ち上がり天幕を出て行った。
「何のようです」
振り返らずエラナはそう言う。
「我らが主が貴殿に興味をお持ちなのでな」
「良いでしょう。それで貴方の主はどこに」
同時にエラナを包む空間が変化し、背後に魔導師が姿を現した。
「今汝の目の前に」
すぐにエラナの前にその男は現れた。
「レスティア帝国・北国が王レイアーム」
「次から次へと現れると思ったら北の国王でしたか。私はガラバード帝国・帝都学院導師エラナ・フレア、あなた方レスティア帝国を滅ぼしたエラナ・アルスタークの血を引くものです」
「なるほど、どうりで王族クラスの力を持っているはずだ。もう一人の魔導師もかなりの力を持っているみたいだな。私の部下の中でもかなり高位に位置したんだがな」
「あの程度でティアラの相手が務まるとでも思っていたのですか。私とほぼ同格の魔導師ですよ。で、私と直接戦いに来たわけではないでしょう。貴方の力ではティアラならともかく私には勝つことはできませんよ」
「貴様、黙って聞いておれば」
主を馬鹿にされ魔導師がそう怒鳴る。
「お前は黙っておれ」
「で、私と何の取引をしたいのです」
「余の配下となれ、望むなら王としてやってもよいぞ」
「それを、不死の女王レティア・フェルナ疾い認めるとは思えませんね。それに私より魔道で劣る貴方に従う理由はありません」
「貴様」
魔導師が再びエラナに怒鳴りかかる。
「命が欲しいなら少し黙っていてもらえますか」
そう言いエラナが睨み付けると、魔導師はその場で身動きが取れなくなってしまう。
「なるほど、余に汝の主であるか示せと」
「勝てる自信があるならどうぞ」
そう言い、これまで隠していた魔力を解放する。
「よかろう」
そう言いレイアームも魔力を解放した。
(さすがにレスティア帝国の王か、本気でやらなければ厳しいわね)
「ゆくぞ、極魔炎閃撃(フレイム・ヴォルド)!」
レイアームが炎の閃光を打ち込んでくる。
「くぅぅぅっ、はぁぁぁぁぁぁっ!」
エラナはそれを左手で受け止めると弾き飛ばした。
「ほう、あえて打ち消さず受け止め弾き飛ばしたか」
「私の力を見せるには一番の方法でしょう。次はこちらから行きますよ」
そう言い、エラナは詠唱を始めた。
『四界の闇を統べる王混沌の王天を翔ける闇夜の星々
すべての心の源よ我が手に集いて我が命に従いて
我が敵を撃ち払え!』
その術の詠唱は長い、だが複言詠唱とし古代魔道語とすることでエラナは瞬時に詠唱を完成させた。同時にエラナを途方も無い魔力が包み込んだ。
「なんだその術は・・・」
「異空間に私を招待していただいて助かりましたよ、この術だけはあまりにも破壊力が高すぎるのですよ。これが私が知識の推移を結集して完成させたうみだした術です。もう少し私に魔力があればもう少しコンパクトにできるのでしょうが、今は私でも完全にコントロールすることはできませんが、貴方を冥土に送るにはもったいないきもしますが、消えてください。魔龍烈閃砲(カオスティック・ブリザード)!」
エラナの手から放たれると同時に異空間ごとそれは打ち砕き、現実世界にとてつもない爆音を響かせた。
「何事だ」
爆音を聞いて天幕からベネラル達が出てくる。
「逃げられましたか」
(異空間の一部を切り離して脱出するとは器用な。だけど私の方もしばらく使い物になりませんね)
エラナの右腕は黒く焼け焦げていた。
「何があった」
力を使い果たして倒れそうになったところをベネラルが受け止め尋ねた。
「敵の大将と思われる人に招待されましてね、少し相手をしただけです」
そう言い、なんとか自力で立つ。
「酷い傷、私が治療しましょう」
ラルクがそう言いながら、治癒魔法を唱える。
「無駄ですよ、治癒魔法で治る傷ではありませんよ。魔法に対する代償です、治るものなら自分で治しています」
「しかし」
「この右手では不便でしかたありませんね。ベネラル、その貴方の剣で私の右腕を切り捨ててちょうだい」
「なんだと」
「私のこの腕は二度と治ることはありません。使えない腕など必要ありません」
「しかし」
「もういい、魔風斬(ウィンディー・クロー)!」
エラナは左手を右肩にそえると術を発動させたと同時にエラナの右腕は切断された。
「なっ」
「くぅっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
エラナは顔をしかめる。肩から大量の血が噴出していたが、血はすぐに止まったかと思うと瞬時にエラナの腕は本来の姿で再生された。
「はぁ、はぁ、はぁっ」
かなり大きく息を乱していた。
「すごい、身体の一部を蘇生させる神聖魔法があるとは聞いていましたが、儀式なしでしかも瞬間的に再生させるなんて」
ラルクがそう呟いた。
「先に休ませてもらいます」
それだけ言うとエラナは自らの天幕の方へふらつきながらも歩いていった。
「あそこまでエラナが感情を高ぶらせているのは久しぶりにみるな」

一人天幕に戻ったエラナは、そのまま横になった。何とか天幕まで戻ってきたものの、もはや体を動かす力も残っていなかった。
「まったく体の自由がきかないわね。あそこでレイアームを倒せなかったとなると同じ手はもう使えないわね」
高速詠唱ができるとはいえ、次は詠唱をする時間すら許してはくれないだろう。そう思いながらエラナは気を失って眠りについた。
完全に眠りにつきしばらくすると、不思議な夢を見た。
『私の血を引くとはいえ、すでに私の予測をはるかに超えていますね』
『誰?』
そう尋ねた。
声の主は声こそすれど姿は見えなかった。
『私は貴女の中に眠り、貴女の力の礎となっているものですよ』
そう言い、エラナの前に姿を現した。
『まさか、貴女様は』
『私はセレネイド、法皇といった方がいいですか』
『法皇セレネイド様・・・』
『貴女が限界以上の力を使った為に眠っていた私の封印が解けたのでしょう。最も私自身ほとんど力もありませんが、貴女よりは力はあるとは思いますが』
『それを言いにきたのですか』
『ネックレスとマントで封印してある力を使えばあれほどの傷を負わずにすんだでしょうに』
『1つは封印を説いた状態で術を発動してどれほどの威力がでるか想像できなかった。2つめは封印を解いたとしてもコントロールできる自信がなかっただけです』
『なるほど、ある意味正しい選択ですね。あの詠唱では完璧とはいえませんからね。あと少し発音を間違えていたらとんでもないことになっていたでしょうね。右腕だけですんだのですからね』
『やはりそうでしたか、あまりにも資料が少なすぎてわからないことが多いのですよね』
『古代魔法語は私にもわかりませんが、私の時代の言葉はわかるのでしょう』
『古代神聖語ですか。完全というわけではありませんが、会話をするぐらいならです。詠唱をするには母音と子音の数が多すぎます』
『しかしそれで貴女が抱えている問題のほとんどは解決できるはずですよ。同時に私の力を使った術も完成することでしょう。今のままでは本来の力の3割程度でしか発動できていないのですからね』
『あれで、3割ですか』
『当然です。法皇審判(ジャスティス)を完全に使いこなせば、あなたが倒そうとしているエラグラス程度簡単に滅ぼせます。私の血を引く以上あの程度で満足してもらっては困ります。もし本当に極めたいなら私の分身体を見つけなさい。最もその分身体と私の意識は別のものですから、どのような答えを出すかはわかりませんが』
『貴女の分身体に認められるだけの力を手に入れよ、ならばそれ以上の力を与えてくれるということですか』
『そう言うことになりますね。楽しみにしていますよ。完全でないにしろ、私もより完全な姿で蘇れる可能性があるのですからね』
それだけ言うとセレネイドはエラナの意識の中から消えた。エラナはそこで目を覚ました。
目を覚ましたが、まだ夜中ではあった。
「言いたいだけ言ってくれましたね」
エラナはそこで、自らの血で汚れたローブのままで眠っていたことに気がつきローブを脱ぎ寝具に着替えなおした。
そこでエラナはそこに見慣れない本が数冊あることに気がついた。
「これは・・・」
エラナは1冊の本を手に取り本を開ける。
「神話時代の書物と魔道書ですか」

ラクレーナはちょうど真夜中となる12時ごろ見張りに立っていた。
「ティアラさんですか、あれだけの魔法を使ったあとですから休んでいた方がいいのではないのですか」
ラクレーナは振り向かずにそうティアラにそう言った。
「心配いりませんよ。あれでもかなり力を抑えていましたからね。私もエラナ同様にある程度魔力を封じているのですよ」
「エラナが貴女にこちらを任せるだけはありますね。あの人の性格なら自分で調査しようとしているでしょうからよほど信頼されているのですね」
「エラナは人を信用しても信頼はしませんよ。信頼しているのは妹のセレナとベネラル卿、それに義姉妹の契りを交えた貴女ぐらいだと思いますよ」
「私がエラナと義姉妹の誓いを交わしたことは知っていたのですか」
「エラナは貴女をレーナと呼んでました。それに貴女のエラナに対する称呼を聞いていれば判断がつきます。洞察力でエラナに遅れを取るつもりはありませんから」
「自信があるのですね」
「当然です。自身の信念の強さ、エラナが取り立てているのはなんらかその信念を持っているものだけですよ。実際の実力は関係ありませんよ」
「信念ですか。エラナには信念以上に強い意思を感じます。だからこそ私の義姉上に相応しいと思いました。だからこそ私はエラナをそこへ導いて見せます。たとえ誰に何と言われようと」
「エラナは生き急いでいる気を受けなくもありません。魔導師としても剣客としても既に一流と呼ばれてもさらにその上を見ています」
「一つの結果で満足しない、それがエラナの成長の早さでしょう。ですが私は剣客としてエラナに負けるつもりはありません」
「エラナが貴女を認めたはずですね。ここだけの話ですが、私も次期最高導師という話もあるのです。私自身の意思ではありませんが、私はその前に学院を出るつもりでいます」
「なぜです」
「学院最高導師争いをした者が学院に残れば、ささいなことで学院が分裂する危険が出てきます。だから通例は敗れたものは学院を去るのが通例です。だからこそ技とエラナの研究室に入ることによってエラナの派閥に所属することにしたのです。同一派閥内からは二人の候補は生まれませんからね。ただ一度名前があがった私がいてはエラナもやりにくいでしょうからね。だから結婚でもして引退を考えています」
「お相手はおられるのですか」
「まだ誰もいませんよ。ですが、いい方がいれば考えてもいいと思っています。学院関係者以外ですが」
そう言ったティアラは表情が険しいものにかわった。
「いますね」
ラクレーナも厳しい表情でそう言う。
「それもかなりの数ですね。少なく見ても数千、1万近いかもしれませんね」
「サイバーさんとアレンさんを起こした方がよさそうですね」
そう言いラクレーナがサイバーとアレンを起こしにいく。
(これだけの数を率いれるとなるとかなりの実力者と見て良いですね・・・)
「なに、この恐ろしいほどの魔力・・・」
「敵襲か」
アレンがすばやく剣を手に出てくる。
「かなりの数ですね。これはいったん引いたほうがいいのではありませんか」
「1体、とてつもない魔力を持った者がいます。おそらくそれが敵の親玉でしょう」
ティアラがそう言うと同時にそれは目の前に姿を現した。
「こんなところに生きた人間がいましたか」
「まったく気配を感じなかった・・・」
ラクレーナはそう呟く。
「死霊の王・・・」
そう言いティアラは死霊の杖を手にした。
「懐かしいものを持っていますね。我が傑作品を」
「まさか、不死の女王・・・」
ティアラが手にする杖は、不死の女王ことレティア・フェルナ疾い作り上げた杖であることには気がついていた。
「我が杖を扱えるということは、汝も死霊使いか。そう警戒する必要は無い。争うつもりはない」
不死の女王はそう言う。
「ならばなぜレスティア帝国の帝都に眠るあなたがここに」
「この辺りで我が臣下のものが力を使っているのを感じたましたが、すぐに消えてしまったようだったので様子を見にきただけでしたが、すばらしい場所ゆえ、我が居城に連れ帰るだけだ」
「数万の兵が争い、数万の死者が眠る地ですからね」
「その様子からすると我が臣下を倒したのは汝ですね」
「もしそうだとしたら」
ティアラは自らが倒したと宣言した。
「500年以上も経過したこの時代にそれだけの魔導師がまだいたとはね。どうです、私の元へ来れば死霊魔術のすべてを教えますよ」
「お断りします。これ以上、死霊魔術を追求するつもりはありません。私が死霊魔術を収めたのは死霊を浄化するためです」
「なるほど、私に敵対するものということですね。今日の所は引きますが、次にあったときは命のないものと思うがいいでしょう」
それだけ言うと不死の女王は姿を消した。同時にティアラはその場に座り込んでしまった。
「大丈夫ですか」
ラクレーナが尋ねる。
「全く動けなかった・・・、力の次元が違いすぎます」
「次元が違うどころではないですよ:
サイバーがそう言う。彼も完全に動けずにいた。
「確かにすさまじい力ですが、今は戦えないにしても到達できなレベルだとは思いませんでした」
そう言ったのはラクレーナだった。
「一度エラナに見せ付けられたことがありました。圧倒的すぎるほどの実力差、そのときと同じ恐怖でした」
サイバーがそう言う。
「どちらにせよ、ここでの調査は終了ですね。おそらく私達が探したい死霊騎士も一緒に連れて行かれたでしょう。もし追うなら不死の女王を相手になることになるでしょうからね」
「そうですね。後はエラナの判断に任せた方がよいでしょうね」
アレンがそう言う。
「日が昇りしだい、村に戻りましょう」
「わかりました」

翌朝、エラナは天幕から出て村のはずれで瞑想していた。
「なにかありましたか」
瞑想したまま、自らの背後に立った者にそう言う。
「もう大丈夫なのか」
そう声をかけたのはベネラルだった。
「何の問題もありませんよ。そろそろティアラ達が戻ってきますね」
「良い結果を持ってきてくれるといいがな」
「おそらく良い結果ではないでしょう」
1時間後、ティアラ達は村に戻ってきた。同時に全員が集まっての話し合いがはじまった。
「結論から申しますと、何もわかりません。探していた死霊騎士ごと奪われてしまいました」
「奪われた?」
サンバスが尋ねた。
「まさかあんなところに出現するとは思いもしませんでした」
「どういうことだ」
ベネラルが尋ねる。
「ある程度見てましたから私が説明しますよ」
そうエラナが切り出す。
「見ておられたのですか」
ティアラが尋ねた。
「貴女に渡した指輪、私を呼ぶだけのものだとでも思っていたのですか。それは私の目も兼ねているのですよ。で、不死の女王レティア・フェルナ疾ぁ▲謄アラ達では荷が重過ぎるわね」
「レスティア帝国の最終皇帝ですか」
サンバスがそう言う。
「そう言ったほうがいいかもしれませんね。とりあえず今回の目的の直接な敵ではなさそうですから、ほうておいても良いでしょう。ただ、私達が求めていた情報を持っているなら行く必要はでてきますが」
「後回しにするということですね」
クリスがそう言う。
「そういうことです。もし行くなら私一人で行きます。大勢でいってどうにかできる相手でもありませんし、なにより戦う上で私も誰かをかばいながら戦う余裕はないと思いますから」
「それはその時になってからだ。ここで議論してもしかたあるまい」
ベネラルが賛同しないことは間違いないが、ここでの口論を避けた。それはラクレーナも同じであった。彼女もついていくつもりでいた。
「どうされます。村の食料が届くまでにはまだ日数がありますが」
サンバスが尋ねる。
「時間が惜しいな。といってサーディンを使いに出したばかりだ」
「どちらにせよ、一度リスタール城に戻ることには変わりありません。途中で合流できるでしょう。次の場所はリスタール城の南のカスターム城です」
「カスターム城ですか、ここからだと2週間ぐらいかかりますね」
サンバスがすばやく時間を計算する。
「2週間、ここで時間を費やせば到着は3週間後になる。できることなら先行したいな」
「だがここはどうする」
グランテールが尋ねた。
「敵は俺らを敵とみなしているだけで、俺達が動けばおってくるだろう。村に危害が加わる心配はない」
「少し私とティアラは別行動をさせてもらうわ」
「パーティ内に魔導師がいなくなるが大丈夫か」
「今から私がリクイド城に戻って、セレナを連れてきます」
「セレナさんをですか」
ティアラがそう言う。
「セレナなら私の変わりを十分に果たせるでしょう。エラグラスにとって最も相手にしたくない相手でしょうから、手出しはしてこないでしょう」
「そういえば、セレナさんは封印術を最も得意とされていましたね」
「セレナの封印はただの封印ではありません。浄化封印、封印されたら最後どんな相手だろうと徐々に浄化されていきます。何百年を必要とするでしょうが、封印から消滅させることができます。最も途中で封印を破られると力を失っているとはいえ復活してくるのでできれば封印は最後の手段にしたいですが」
「いいだろう、任せよう」
「では、すぐにでもセレナを連れてきます」
そう言いエラナはその場から姿を消した。
「エラナから何か聞いているのか」
ベネラルはティアラに尋ねた。
「私は何も聞いておりません。ですが、いいことだとは思いませんが」
「エラナに私も同行してもいいですか」
ラクレーナが尋ねる。
「お前ならエラナも拒まんか。いいだろう、エラナのことは任せる」
しばらくするとエラナが再び姿を現した。
「早かったですね」
クリスがそう言う。
「全く事情も説明なしにいきなり来いですからね。お姉さまの強引なところはいつものことですが」
セレナはそう答える。
「ならば私が何を求めているのかもわかっているでしょう」
「私の力が必要なら何でもしますよ。ただのんびりしてたら私が決着を付けてしまいますよ」
そう言い、数十枚の呪符を広げる。
「機会がるなら構わないわよ。どうせ、ほとんど調査済みなのでしょう」
「調べるには十分な時間でしたからね。必要でしたら見せましょうか」
「お前が自信があるなら、あえて見る必要はありません。任せますティアラ、行きますよ」
「わかりました」
ティアラが頷くと、エラナはティアラを連れて転移した。
「待って下さい。エラナ」
ラクレーナはそう言うとその場から姿を消した。
「転移した」
アレンが驚く。
「今のは間違いなく転移魔法です。どこで覚えたのはわかりませんが、完璧なものです。どこの魔導師ですか」
セレナが評価を下さす。
「彼女は剣士です。剣王フォルクの現時点で最後の弟子です」
サンバスが答えた。
「そうですか、導師級の魔力を持っているような感じがしましたけれど」
「フェルドの妹だ。竜騎士、天馬騎士を輩出してきた名家だが、かなり高位の魔導師も何人も出ている。その実力を持っていても不思議ではない」
ベネラルがそう言う。
「とりあえず、ベネラル卿、これからの行動を説明して頂けませんか。お姉さまからは卿と行動するようにとしか聞いておりません」
「わかった」
ベネラルは簡単にセレナにこれからの行動を説明した。
「わかりました。とりあえず私はお姉さまの代わりを務めればよいということですね。ただ私はお姉さまほど器用ではありませんから自らの力を押さえ込んでまで戦うつもりはありませんから」
それだけ言うとセレナは天幕を出ようとする。
「セレナ」
ベネラルが呼び止める。
「それから私に護衛は必要ありませんから」
そう言い、呪符を剣に変える。
「使えるのか」
「お姉さまの魔道剣術の開発に誰が付き合っていたと思いますか。なんならお相手しますよ」
「なるほど、面白そうだな」
そう言いベネラルが立ち上がる。

ベネラルとセレナは天幕の外で対峙した。
「剣を手にするのは久しぶりですね」
そう言いセレナは、剣を構える。
「確かにエラナの構えと同じだな」
そう言いベネラルも剣を構える。
「行きます」
同時にセレナの姿が消えたと同時に剣戟が響く。
「エラナほどのスピードでないにしろ、いい一撃だ」
「手加減したといえこうも簡単に受け止められるとは思いませんでした。お姉さまが高く評価されているだけのことはありますね」
そう言い、間合いを計り、呪符を取り出すと天に掲げる。
「雷!」
発動と同時にセレナの剣に雷が落ちる。
「雷光剣、お姉さまは魔力を使って肉体的な能力を高める戦い方を得意としますが、私はこの魔力と剣の融合させ同時に放つことができます」
「俺の技をヒントにしたのか。だが俺には通用せんぞ」
そう言い、ベネラルは剣を構えると剣先に闘気を集中させる。
「おおっ、あれは、ベネラル様が得意とされる闘爆裂剣」
クリスがそう言うが、闘気を具現化し剣に宿らせる芸当はベネラルクラスの闘気を持って始めてできる大技である。
「行きます」
同時にセレナが突っ込むと同時に剣に宿した雷を放つ。
「はぁぁぁっ!」
それに対して、ベネラルは闘爆裂剣をぶつける。同時に二つの技がぶつかり爆発を起こす。
『魔道剣術二刀流・十字剣!』
いつの間にか剣を両手にしたセレナがベネラルの背後から切り込んでいた。
「甘い、うぉぉぉぉぉっ!」
それをベネラルは受け止めると力だけで押し返した。セレナはそのまま上空高く飛ばされる。
『魔道剣術・閃光裂風剣舞・雷!』
上空で向きを変えると同時に片手剣に持ち替え、空を蹴り、さらに落下速度を加え突進してくる。
ベネラルはそれに対して、自らの足元に闘爆裂剣を打ち込みその爆風で回避した。
「さすがはベネラル卿、ここまで完全に防がれるとは思いませんでした」
そう言いセレナは剣を消した。
「いい腕をしている。魔導師にしておくのは惜しいな」
ベネラルはそう言うが、息一つ乱した様子はない。
「俺より強いかもしれないな」
ブラッサムがそうサンバスにもらす。
「私も自信ありませんね」
「負けるとは思いませんが、私よりさらに1つ年下だとはとても思えませんね」
12歳のラルクに対してセレナは11歳、子供の1年は大人の1年の差とは大きく違う。
「そうだな、お前達二人がかりなら俺を本気にできるかもしれんな」
ベネラルの実力がこのメンバーの中では突出しすぎている。
「私は剣で名をあげるつもりはありませんから」
「クリス、すぐに準備してくれ、昼には出立する」
「わかりました」

ベネラル達の元から転移したエラナとティアラは近くの丘にいた。
「何をされるのですか」
ティアラが尋ねる。
「その前に、よくわかりましたね」
そこにラクレーナが立っていた。
「どこにいようと貴女の位置は把握できます」
「しかし、転移魔法なんてどこで覚えたの」
「もともと戦いで敵の不意をうつのに覚えたものです。これだけの距離は初めて飛びましたが。一応他の簡単な魔法程度なら使えないことはありませんが、普通の魔術師と大差ありませんが。覚えたのは貴女がフォルク師のところに残していった魔道の基礎の本からです」
「師が娘のために欲しいと言ったので差し上げたものね。だけどあれだけでよく理解できましたね」
「古い文字はほとんど読めますからね」
「まぁ、良いでしょう。気が向いたらもう少し教えてあげましょう」
「できれば治癒系を教えていただきたいですね」
「覚えておくわ、で目的だけど不死の女王に会いに行こうと思いましてね」
「不死の女王にですか」
「そう、ただ会うだけなら一人でも良かったのですが、死霊軍団まで相手にしておれませんからね。倒さなくても動きを封じてもらうだけでいいんですが」
「一人で闘うつもりだったのですか」
「私以外に闘えるものはいないでしょう」
「それならばセレナさんの方がよかったのではないですか」
ティアラがそう指摘する。
「封印系の術者を連れて行っては話し合いにならないでしょう。それに私がいない間にベネラル達が襲撃を受けたとして対抗できる者がいなくては困るでしょう。そう考えた結果、こういう人選になりました。レーナが追ってくるのは予想外でしたが」
「貴女を守ると約束しましたから、どこへでもついて行きますよ」
「駄目だといっても追ってくるでしょう。一応、話合いの予定であると言っておきます」
「わかりました」
エラナは今度はティアラとラクレーナの3人で転移した。

昼過ぎベネラル達の姿は馬上にあったが、今回はエラナとティアラがいない為、馬車には御者であるクリスだけで、ラクレーナが乗っていた馬にセレナが乗っていた。
「乗れるのか」
ベネラルが尋ねた。
「乗れますよ。お姉さまが馬に乗れないのは隠しても隠し切れない魔力が原因ですからね。それで馬がおびえてしまうからです。私もそれだけの魔力はありますが、お姉さまの魔力は攻撃的ですからね」
「なるほどな」
「さて、行きますか」
クリスがそう言うとベネラルは無言のまま頷く。

第一部 メニュー

1990-2013 ©seiryu gensui
1995-2013 ©Minstrel Rapsodoz
2008-2013 ©Rapsodoz System Support