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第一部  第三章 レスティア帝国の影

会議室を出たエラナをラクレーナが呼び止めた。
「エラナ、隠しても私が気がつかないとでも思いましたか」
そう言い、ラクレーナはエラナのローブの袖をまくり上げると、エラナの腕には包帯が巻かれていた。
「貴方自身の回復魔法で回復できなくても、ラルクさんに頼めば回復できるでしょう」
「ラルクでも無理よ、魔界の魔力を呼び出した逆凪のダメージなのですからね。強大すぎる力にはそれ相応のしっぺ返しがあります。力を使う上での代償ですからね。こればかりは時間をかけて直すしかないのですよ。それに、回復魔法においても私はラルクを上まっているのですからね」
「あらゆる魔法の力では貴女をこえるものがいないと」
「ラルクには審判(ジャスティス)を使いこなすほどの力はまだありませんからね。いずれ使うことはできるでしょうが、今の彼では力不足です。魔道を極めた私ですら完全には使いこなせていないのですからね。それから剣においても私はベネラルやレーナ、貴女にも勝つ自信はありますよ。師であるフォルク師にもね」
「私もそうそう貴女に遅れをとるつもりまありませんよ」
「確かに、レーナ、貴女のスピードは私の想像以上です。本気の貴女を私は捉えることはできないでしょう。ですが、貴女の一撃には破壊力がありません。同じ技なら瞬間的な爆発力がある私の技のほうがはるかにうわまるのです。だからこそ、貴女にその刀をあげたのですよ。貴女のスピードを持てばその力を最大限に発揮できますからね。相手を一撃でしとめる必殺技は必要になるでしょう」
「わかりました。ですが、少しは私も頼りにしてください」
「ありがとう」
そう言い、エラナは立ち去っていった。
「不器用なやつだ」
隠れて聞いていたベネラルがそう言う。
「ベネラルさん」
「ラクレーナ、エラナのことは任せる。だが、エラナの言うことにも一理ある。俺もエラナに勝つ自信はないが負けることもしないだろう。俺の戦い方は鎧を着てでの戦い方だ。エラナの剣では俺の鎧を砕くことはできん。だからと言って勝てぬではすまないからな。いざとなれば奥の手を使わざるをえないだろうからな」
「奥の手ですか」
「遠距離の相手をできるのは魔法だけではない。それはフォルク師にも教わっただろう。それだけ言えば俺の奥の手は想像がつくだろう」
「おおよそは」
「少し剣を交えてみないか。少し体がなまっているんでな」
「ぜひ」

ベネラルとラクレーナはそのまま、地下の訓練場に来ていた。
「真剣と違って軽いかもしれんが、これでやろうか」
そう言いベネラルは木剣をラクレーナに渡す。
「いかなる武器でも使いこなせ、それがフォルク流の理ですからね」
「よし、打って来い」
「ならば、フォルク流剣術風技秘奥義・閃光裂風剣舞!」
ラクレーナは得意とするその技を打ち出す。
「フォルク流剣術風技秘奥義・閃光裂風剣舞!」
だが、同時にベネラルも繰り出してきた。
そして、その攻防のすべてをベネラルは防ぎきりラクレーナは後ろへと吹き飛ばされた。
「俺は基本的には鎧を着た戦い方になる。風技は鎧を着ていては使えんが、一応4大剣術は一応極めているからな。これがエラナが言ったようにぶつかり合いでは力がすべてだ、突進術は自身の体重が攻撃力に変わる。お前の閃光裂風剣舞では俺には勝てん。だがどういわれようとどんな技でも返し技の1つや2つはある」
「行きます」
ラクレーナは再び閃光裂風剣舞の構えを取る。
「無駄だ」
再びベネラルはそれを閃光裂風剣舞で打ち返す。
「閃光裂風剣舞!」
返された閃光裂風剣舞に対して、ラクレーナは2撃目を打ち込む。
2撃目のそれはベネラルの技と自信の技とを完全に打ち消した。
「2連撃か、考えたな。俺には真似ができんが、だがそれでも2撃で俺の1撃と同じだ威力ということだ」
「真剣なら打ち勝つ自信はできました」
ラクレーナの手の中で木剣が砕け散った。
「技に剣が耐えられなかったか」
「確かに力の差は大きいかもしれませんが、私は力技相手に負けるつもりはありません。スピードだけならあれでも半分以下なんですから」
そう言い、身に着けていた肩当とマントをはずす。
「修行用のマントか」
「私の場合は修行もありますが、それだけでなくあまりのスピードゆえに、私自身の体が壊れないように普段は力を抑えておく必要があるのです。宴席の時、最後に私が閃光裂風剣舞を放とうとするのをエラナはとめてくれました。ドレスでの動きにくさ以外に私の力を押さえつけるものがないのに、ベネラルさん、動かないでください」
そう言いラクレーナは閃光裂風剣舞の構えをとると同時に彼女はベネラルの背後に立っていた。
「なっ、追いきれなかった・・・」
「それで7割ぐらいです。同時におそらくエラナが出せるスピードの限界だと思います。ただ決定的な違いはあの人は自らが傷つくことに一切のためらいを持たない。だからと言って命を粗末に考えているわけでもありません。死を恐れない以上にあの人が生きようと願う気持ちはそれを上まっています」
「エラナは目的の為には手段を選ばん。人にどう見られたいなどという考えはない。だが目的のために権力が必要ならそれを手にいれようとするだろうな」
「私の障害となるなら誰であろうと排除しますよ」
いつのまにか訓練所の入り口に立っていた。
「いつからそこにいた」
「私が手段を選ばないというところからですかね。しかし、その状態でよくレーナと互角に戦えましたね」
「お前の拘束錠か、確かに動きにくいが戦えないことはないからな」
「レーナ、貴女もよほどのことがないかぎりマントははずさないようにしなさい。マントをつけたままで先ほどの動きができるようになれるようにね。それから私の力は貴方達が思っている以上の力はありますよ。ただ私が制御できるかどうかはわかりませんけどね」
同時に室内で何かがぶつかるような音がした。
「何の音だ」
「私に直接的な刺客が意味ないと考え、亜空間干渉の攻撃をするという考えは私には通用しませんよ」
エラナがそう言うと、魔物が1匹現れた。
「まさか人間にこの攻撃を防げるとは思わなかったぞ」
「時空系魔術を使えということはその防ぎ方をしっていると思わなかったのですか。知識がなければ全く防ぐこともできませんが」
同時にエラナと魔物の二人が姿を消したと同時に何かがぶつかる音が続けて響く。
「たいしたものだ。我が主が言うことにもなっとくできる」
再び姿を現し魔物はそう言う。
「今までの雑魚とは違いますね。私の攻撃をすべて防ぐとはね」
「あんな下級戦士と一緒にしてもらっては困るな。まぁいい、決着はいずれ付けさせてもらおう」
それだけ言うと魔物は姿を消した。
「エラナ」
厳しい表情をするエラナを見てベネラルが声をかける。
「万全の状態でないとはいえ私の攻撃を防ぐとはね。幸いあちらも本気ではなかったようだけどね」
「これからあんな力を持った相手が来るのですか」
ラクレーナが尋ねる。
「心配しなくても私以外に空間干渉の攻撃は仕掛けては来ないでしょう。人間を食料程度にしか考えない彼らにとって人間相手にあの攻撃をするのは食料以上の敵とした場合だけです。いかに強いといっても物理攻撃しか攻撃手段を持たない相手は何があろうと食料レベルなんですよ。彼らが創り出された生物であるゆえにそれを認めることが創造者が絶対であることを否定することになるからです。私の場合はエラグラスが私を敵と認めたからです」
「それでは貴女が望んだ状態に」
「そうね、最初の目的は果たせたことになりますね。それに私がエラグラスを封印したエラナ・アルスタークと同様に封印する力を持っている力を感じとったのでしょうね。奴らの想像通りに実際にその封印術は使えないことありませんからね。最もどれくらいの期間封印できるかというと私の力では数年程度でしょうけどね」
「封印してもいずれ復活する可能性があるなら倒したほうがいいというのが貴女の考えですね」
「たとえ100年封印できるとしても、この時代には影響はないでしょうけど、結局100年後の私達の子孫がまた戦わなければならないのですからね。実際今回の件もそうですが、500年前にエラナ・アルスタークが倒せなかった相手を押し付けられたようなものですからね」
「たしかに」
「エラナ・アルスタークが封印したというものはエラグラスだけではありませんからね。おそらくこれからの時代、その封印がいくつも解かれるでしょうね。ですが、500年の間完全に封印する彼女の魔道技術もたいしたものですが」
「だが、もしそれを倒す者がいない時代だと思うとぞっとするな」
「彼女も若干ながら星見の力は持っていたと聞いていますから、この時代ならと考えてのことでしょうね。こちらとしては迷惑なんですけれどもね」
「全くだな」
「だからと言って無視することもできませんからね。私のための礎となってもらいますよ」
「ふん、俺も負けはせん。派手に暴れてみせるさ」
「さて、私は明日の準備がありますから先に失礼しますよ」
そう言いエラナは訓練場を出て行った。
「私達も準備をしたほうがよいですね」
「そうだな」

翌朝、それぞれ準備を終え12人は集まった。
ベネラル、サーディン、ブラッサムは黒騎士の鎧を身につけ、ラルクは神官騎士の鎧、グランテールは重騎士の鎧、サンバスも騎士としての鎧と各騎士団の正装であった。
エラナとティアラは学院導師のローブ、サイバー・アレン・ラクレーナ・クリスの4人は軽戦士風のいでたちであった。
ベネラルら騎士達とサイバー・アレン・ラクレーナの9人は馬にまたがり、エラナとティアラの2人は馬車に乗りクリスが御者を勤めた。
「行くぞ」
ベネラルが合図をすると一行は進み始めた。
「エラナさんその杖、学院から与えられた導師の杖とは違いますね」
進み始めてしばらくしてティアラはそう尋ねた。
「これですか、以前レスティア帝国時代の遺跡調査をしていたときに手に入れたものです。魔竜の杖と言うらしく竜退治用に開発されたものらしいです。導師の杖よりは魔力増幅力が高いので今回持って来ました。そう言う貴女も変わった杖ですね」
「これですか、私の家に昔から伝わるもので、馬上でも魔法が使いやすいように杖を短くしたものらしいです」
「少し見せてもらえますか」
そう言い、エラナはティアラから杖を受け取るとじっくり眺めると、そこに刻まれた名前を見つけた。
「スティーナですか。あの人はこんなものまでつくっていたのですね」
「知っているのですか。この方が書かれた魔道書は学院にも何冊かあるようですが」
「エラスティーナ・フォン・セレネイド・レシード・アルスターク、エラナ・アルスタークがその杖の製作者ですよ。彼女のエラナは略称であって、本名はエラスティーナです。略式と違ってスティーナを取って彼女は非公式な魔道書や魔道具を残したのですよ」
「なぜ、そのようなことをして名前を隠されたのでしょう」
「おそらく何かの鍵の意味でしょうね。隠したい何かがあったのかもしれませんが、そればかりは本人にでも聞かないかぎりわからないでしょうね」
「エラナ」
馬上からベネラルが声をかけてきた。
「どうしました」
「剣戟の音がした。近くで何者かが戦っている」
「かなりの数の人の気配がありますね。この辺りで山賊や盗賊が出没するという話は聞いたことがあります。もし誰かが襲われているのかもしれません。必要なら助ける必要はあるでしょう」
「うむ」
ベネラルを先頭に一行は音がした方向へ向かった。
「ん、あの旗印ライレア子爵の紋章ですね」
サンバスがそう言う。
「相手は山賊のようですが、どうも敗走しているのは子爵軍のようですね」
状況を見てブラッサムがそう言う。
「この辺りは子爵の領地、山賊退治に出て待ち伏せを受けたようですね。どうします」
エラナはベネラルに尋ねる。
「このままほうておけば全滅する可能性もある。無視するわけにはいくまい」
「ですが、山賊といえども見る限り200はいますよ。こちらは12名、負けるとはいいませんが、子爵軍を完全に救うことはできませんよ」
「何もせずに見ているだけというわけにも行くまい、ゆくぞ」
そう言いベネラルが突撃する。それにブラッサム、サーディン、クリスが続く。
「無視はできんな」
そう言いグランテールも突撃する。
「困った方達だ。私も人のことはいえぬか」
そう言いながらも、サンバスが続く。
「魔獣召還!」
エラナは自らの馬を呼び出すとそれにまたがり続いた。
「やれやれ、サンバス、アレン行きましょう」
ティアラが二人に声をかけると頷き、3人が向かう。
「ラルク」
ラクレーナが呼ぶとラルクは頷きラクレーナに続いた。
「黒騎士がベネラル・アルスターク、義により加勢いたす」
先頭のベネラルはそう名乗りを上げた。
ベネラルの名乗りに山賊達はベネラルを見た。黒騎士の名は山賊達の動きを止めるには十分だった。山賊であろうと黒騎士の強さはよく知っている。
同時に上空から追いついたエラナは馬上から飛び降り、山賊達の真ん中に舞い降りると両手に手にした剣で二人を斬り捨てる。
「ベネラル、指揮官を雑魚は引き受けます」
そう言いつつもさらに二人を斬り捨てる。
「一人先行しすぎですよ」
エラナに追いついたラクレーナが馬上から槍で一人を突き刺す。
「少しは私達の分も残してくださいよ」
ティアラら、学院メンバー3名も追いついてきた。
サイバー、アレンは魔導師とは思えないほど華麗な剣の捌きで数人を次々と斬り捨てて行く。
「火球(ファイア・ボール)!」
ティアラが魔法を唱えるとそれを上空に打ち出した。
「ショット!」
同時に火球は数十に分裂すると山賊達の後方に着弾し数名が焼けど程度のダメージを受けたようだが倒されたものはいない。こちら側に魔導師がいる威嚇ではあるが山賊達を混乱させるには十分である。
「学院組に負けらんな」
サンバスはグランテールにそう言う。
「こちらも派手に行くか」
同時にグランテールは手にした大型の斧がついた槍で3人を同時に斬り捨てるが、その力のため肉片が飛び散る。
「派手すぎる」
サンバスはそう言い、数人を槍で同時に突き刺し投げ捨てた。
「実力差があるのがわかっていて大人げないですよ」
クリスは手にしたメイスで山賊の頭を叩き割りそう言う。
「ベネラル卿の従者にしておくのはもったいないな」
クリスの動きをみてサンバスが言う。
「子爵、なるほど敗走の理由はこれか」
ベネラルは一人豪華な鎧に身に着けた男が弓に喉を貫かれ絶命しているのを見つけた。
「指揮官を失った軍はもろいですからね」
ブラッサムがそれを見てそう言う。
「一撃で射抜いていますね。山賊にもいい腕をした者がいますね」
サーディンが感嘆したように言う。
「私相手に矢とはね」
エラナは飛んできた矢を剣先で受け止める。
「魔力矢(マジック・アロー)!」
ティアラがエラナに矢を打ってきた相手を的確に射抜く。
「そこにいるは敵の首領か」
ベネラルは山賊の首領を見つけると、それを防ごうとする山賊達を軽々蹴散らしつつベネラルの攻撃を受け止めようとしたその剣ごと胴体を真っ二つにした。
首領を失った山賊達はもろかった逃げ出すものもおり、30分もしない頃には子爵軍とベネラル達が立っているだけであった。
だが子爵軍のほとんどは怪我をしているものがほとんどで軍としては成り立っていなかった。
「ありがとうございます。おかげで全滅せずにすみました」
子爵軍の副将であった男がベネラルに礼を言う。
「ラルク、傷の酷いものだけでもいい、見てやってくれ」
「畏まりました」
ティアラ、サイバー、アレンの3人は既に傷の手当をしてまわっていた。
「で、この山賊達はこれですべてか」
「いえ、まだ他にもいるようですが複数の山賊団が結集しておりどの程度の数がおるのかさえわかりません」
「情報源になりそうなものまですべて殺してしまったのはやりすぎでしたね」
数名の捕虜を尋問していたエラナがそう言う。
「尋問などお前のすることでもなかろう」
「私の魔力で怪我人を治療してもいいけど、過剰な治癒は死に至らしめる可能性がありますからね。で、ベネラル、このまま山賊退治を続けるのですか。それとも旅を急ぎますか」
「ほうておくわけにもいくまい」
「山賊達がまた出てくるまで待つのですか、私達にそれだけの時間の余裕はありませんよ」
「わかっている。だがな」
「上策はリスタール城のスラット太守に書状で知らせるがよいでしょう。もっともこちらが向かう目的地に近づけばあちらから出てくる可能性も否定はできませんが」
「スラット太守に知らせる必要はあるだろう。だが、この辺りの情報はこちらで入手しておく必要もあろう」
「いいでしょう。知りたいのなら調べますが、見ていてあまり気持ちのいいものではありませんよ」
そう言いエラナはベネラルが倒した首領の元へ行く。
「何をするんだ」
ベネラルが尋ねるが、エラナは魔力で首領の上半身を浮かびあがらせるとその頭を真っ二つに切り裂いた。
「困ったことになりましたね。奴らはこれから私達が向かう村を占拠しそこに集まっているようですね。8つの山賊団で総勢で2000名といったところですね」
「なんだと」
「エラナは死人だろうと、人の記憶が存在する頭さえ無事ならそこに流れる血から読み取ることができます。それは偽りの無い真実です」
ラクレーナがベネラル達だけに聞こえるようにそう言う。
「私には黙秘は何の意味もありませんからね。生きていれば直接心の中をのぞくくらいはできますが、死んでいてはこの方法しかありませんからね」
「まったく、学院が禁じている禁呪をそうも簡単に使うなんて」
あきれるようにティアラが言う。
「貴女も禁呪の幾つかは使えるのでしょう」
「貴女が使ったその術は使えませんけれどね」
「どちらにせよ、山賊退治は必要ですね。2000名の山賊だけなら私達だけでもどうにかなるかもしれませんが、村人を救い出す必要がありますから、ある程度の兵は必要になるわね」
「子爵軍はどの程度残っている」
ベネラルは副将にそう尋ねる。
「ここでの生き残りと、城に100名ほどの騎士ですべてです」
「200ですか、子爵にはご子息は」
「今年10歳になる嫡子はおりますが」
「この場合、ベネラルの名で兵を徴集するに問題はないですか」
エラナはサンバスに尋ねる。
「黒騎士は他の騎士団で部隊長レベルの権限があります。ベネラル卿は黒騎士団の副団長レベルですから、他の騎士団の騎士団長かそれ以上の権限は有していることになります」
「ベネラル、彼らを招集してください。それから各騎士が持つ兵士達もすべて、そうすれば700名程度の数は集まるはずです。作戦指揮は私が取ります。いいですね」
「よかろう。ブラッサム、クリス、すぐに子爵の城へ行き私の名で騎士とその従属の兵をここへ連れてきてくれ」
「畏まりました」
そう言うとブラッサムとクリスは子爵の城へ向かった。
「ティアラ」
エラナはティアラを呼び、少しはなれた場所へ連れてきた。
「なんです」
「少し兵が足らないわ、少し協力してもらいたいの」
「私にあれを使えというのですか」
「私が使ってもいいけど、兵を指揮しながらは難しいですからね。貴女には後方からの奇襲を担当してもらいます。護衛にサイバーとアレンは連れて行ってくださいね」
「仕方ありませんね。貴女のことだから断っても導師としての権限で強要するでしょう」
「無駄に言い争いたくはありませんからね。ただこの奇襲はベネラルには黙っていてくださいね」
「わかりました」
「そうティアラ、この杖は貴女にあげましょう。役に立つでしょう」
そう言い、手にしていた別の杖を呼び出すとそれをティアラに投げてよこした。
「よくこんな危険な杖を隠し持っていましたね」
「私の亜空間には誰も干渉できませんからね」
「ありがたく使わせてもらいます」

半日後、ブラッサムとクリスは騎士をはじめ700名近い兵を率いて戻ってきた。
「ベネラル卿、お待たせしました」
「ご苦労、で、エラナ作戦はどうする」
ベネラルが尋ねる。
「軍は4つに分けます。一つは本陣としてベネラル、貴方が率いてください。クリスとラルクは本陣に、第2軍はサンバス殿で副将としてサーディン殿、第3軍はグランテール殿で副将はブラッサム殿とします。残る第4軍は私が遊撃部隊として私が率います。サイバー、アレン、ラクレーナ、ティアラは私とともに来てください」
それだけ言うとエラナは一枚の地図を取り出す。
「それが村とその周辺の地図か」
「村の後方は山ですから、3方向から攻め込みます。南の正面は第1軍、西を第2軍、東に第3軍、第4軍は状況を見て援護に入ります」
「元から数の上で不利だが、それをさらに分けて大丈夫か」
「村に入ってしまえば、建物があり一度に戦える数には限界があります。平原では不利です。一気に村まで攻め込んでください」
「無謀な作戦だが、それ以外に方法は思いつかないな」
サンバスが承諾した。
「このまま進めば警戒されます。各部隊別々に村へ向かってください。攻撃のタイミングは2日後に私がのろしを上げます」
「わかった」
「では、各隊現地で」
2日後の午前中には、それぞれの部隊は村の周りに配置されていた。だがエラナの部隊第4軍にティアラ、サイバー、アレンの姿は無く。エラナとラクレーナの2人だけであった。
「兵力の不足をそのような方法で解決しましたか」
「気がついていたの」
「ティアラさんが持っていたみかけないあの杖、あれが答えですね」
「村人の犠牲を少なくするにはそれしか方法が思いつきませんでしたからね。もう数日あれば、兵を整えることもできるでしょうが、私はこれ以上最善の策は思いつかなかったわ」
「私は観戦させてもらいます」
昼ごろエラナはのろしをあげた。同時に3方向からの攻撃がはじまったが、実際には4方向からの攻撃であった。
北の門から来たのは2日前にベネラル達によって殺された山賊達であった。
「まったくどうやって私が死霊魔術を使えることを」
ティアラはそう呟きながらも、エラナから貰った死霊使いの杖でゾンビ達を動かす。
「意外な一面をみさせてもらいましたね」
アレンがそうティアラに言う。
「学院には内緒ですよ」
「私達も立派な共犯者ですからね。言えませんよ」
サイバーがそう言う。
「やはり正面が厚いですね。我が第4軍は南門に向かう」
エラナが合図すると、第4軍はエラナを先頭にベネラルの第1軍の元へ向かう。
「エラナ」
合流してきたエラナを見つけベネラルはそう呼んだ。
「ここは貴方に任せますよ」
そう言うと、馬を飛び上がらせ山賊どもの先頭の部隊を飛び越えると村の奥へ一人突撃する。
「全く無茶を」
そう言い、ラクレーナがいつの間にか呼び寄せた天馬でエラナを追った。
「やはりここにいたわね」
「貴様か」
山賊の首領の一人がエラナを見つけ姿を変えた。リスタール城地下訓練場で姿を現したエラグラスの手下だった。
「魔閃砲(キャノン)!」
魔物がエラナめがけ打ち込んできた。
「魔法消去(マジック・イレイズ)!」
瞬時に魔法を打ち消すと、エラナは相手の懐に入り、剣を抜く。
「あの構えは閃光裂風剣舞、だけどあの間合いでは威力は発揮できないのでは」
上空からエラナを見つけたラクレーナがそう言う。
「閃光裂風剣舞・零!」
「ちっ」
魔物は亜空間に逃げ込みそれを回避した。
「すごい、魔力を足から噴出することによって突進技に必要な間合いを解決するなんて」
「人間にしては面白い芸を見せてくれるな」
「今ので本気で打ったとでも思っているのですか。今ので2割程度ですよ」
そう言い再び閃光裂風剣舞の構えを取る。
「ハッタリではなさそうだな」
エラナの言葉の真意に気がついたのかそう言う。
「エラナの体調は万全ではないけど、全く実力差がありすぎますね」
そう言うとラクレーナは魔物めがけて手にしていた槍を投げつけた。その槍はすさまじいスピードでその魔物の胸を貫いた。
「レーナ」
「貴方が手を下すまでないでしょう。面白いものを見せてもらいました」
そう言い、ラクレーナは舞い降りると槍を一気に引き抜いた。同時に魔物はコマ切れになった。

村の北側から入ったティアラ達は山賊達を大いに混乱させていた。
「これだけ混乱させれば十分でしょう。残るは後始末ですね」
「私達も協力しますよ」
サイバーが申し出る。
「たぶん必要ないと思いますよ」
そう言うとティアラは詠唱を始める。
『すべてを焼き払う混沌の炎よ、我が力となりて破壊の炎となせ!』
ティアラの周りに無数の火球が出現する。
「サイバーふせろ」
アレンがティアラの術の正体に気がつきそう言う。
「魔炎弾(カオス・フレイム)!」
とてつもない爆音とともに辺り一面が一瞬にして蒸発した。連れてきたゾンビ、山賊達、村の家屋の一部までが消え去った。
「噂には聞いたことがあったがなんという術だ」
「発動させるに膨大な魔力キャパシティーが必要なゆえに失われたロストマジックですからね。エラナのように詠唱なしでの発動は厳しいですけどね」
「500年以上経過し、過去のような魔導師は残っていないと聞いていたが、奴らをあっさりと倒すだけはあるな」
そいつは、ティアラの放った炎の中から現れた。
「その紋章、レスティア帝国の魔導師ですね」
「いかにも」
『すべての力の源よ混沌なる無限の炎、我が力となりて破滅の炎となせ』
ティアラは既に詠唱を始めていた。
「えっ」
アレンはその術を知っていた。先ほどの魔炎弾(カオス・フレイム)とは比べ物にならない大技である。
『闇に震える魂闇に凍える魂氷の虚ろなる刃よ、我が力となりて静寂となせ』
「爆裂魔炎弾(カオスティック・フレイア)!」
ティアラが放つと同時にレスティア帝国の魔導師も発動させた。
「氷河烈陣(カオスティック・イレイザー)!」
炎と氷、二つがぶつかりあった瞬間、とてつもない水蒸気爆発はおきた。
「私のとっておきだったんですけれどね」
「ティアラ、少し派手にやりすぎですよ」
エラグラスの手下をラクレーナが倒してしまったため、爆発を聞き姿を現した。
「エラナ」
「代わりましょうか」
そう言いエラナが少し魔力を解放するとさきほどの水蒸気爆発で霧のような状態になっていた視界が一気にひらけた。
「もう一人いたのか」
「光栄に思うといいですよ、今の時代、最高位である私と相手できるのですから」
そう言い火球を一つ呼び出した。
「魔炎弾(カオス・フレイム)を防ぐ私に通用するとでも思っているのか」
同時にその男をかするように飛ばされた火球が男の背後で大爆発をおこした。
「あれが火球(ファイア・ボール)・・・」
エラナが放った火球のその威力はティアラが放った魔炎弾(カオス・フレイム)の威力をはるかに超えていた。
「レスティア帝国にも私ほどの魔導師はそれほどいなかったでしょう」
「くっ・・・王族クラスだと・・・話が違う・・・」
男の体が振るえ出してくるのがわかった。
「次は命中させますよ」
そう言いエラナは再び火球を出現させた。
「王族クラスなど相手にできるか」
そう叫ぶと瞬間移動で消えた。
「逃げましたか、まぁいいでしょう」
「私も魔導師としてはかなりの自信はあったのですが、貴女はさらにその先に行ってしまっていますね」
ティアラは目の前で実力の差を見せ付けられそう言った。
「貴女はすでに最高導師ラスティーク師と同等かそれ以上の力を持っていますよ。ただ私は古代神話時代からの魔導師の家系、物心ついた頃にはすでに魔法が使えていましたからね。魔法と触れた時間の差です。学院に入門してから5年足らずで今の実力を手にしたのですからもう少し自信を持ちなさい」
ティアラが学院に入門したとき、すでにエラナは導師であった。
「はい」
「どんなことでもそうですが、実力なり権力でもその位置に満足した時点でそれ以上、上にあがることはできませんよ。私はさらに上を目指します」
それだけ言うとエラナは村の中へ入っていった。
「言われるとおりかもしれませんね。あきらめたらそれまでですからね」
アレンがそうティアラに声をかける。
「そのとおりですね。私達も行きましょう」
「うむ」
サイバーが同意する。

南の正門から攻め込んだベネラルは、かなりの抵抗があったものの陣の中央と後方で爆発があってからは圧倒し始めていた。
「エラナめ、策を弄したはいいが結局は力押しではないか」
「ですが、寄せ集めの兵です。統率の取れた行動は難しいでしょう」
クリスが進言する。
「確かにそうだがな」
「村の中から、エラグラスの手下と思われる者の闇の気配を感じました。おそらくそれが原因かと思います」
ラルクが進言した。
「なんだと」
「既に気配は感じませんゆえ、既に倒したものとは思いますが」
「だがあれほどの爆発をおこして村に被害を出していなければいいが」
「出ていないと考えるのは難しいでしょうな。だがそうしなければならない相手がいたという考え方もあります。むげにエラナ殿を攻めるのもどうかと思いますが」
「まぁいい、後でエラナに確認すればよいことだ。今は村を開放することを優先させる」
実際ベネラル達の実力が突出しすぎ12人だけの力で制圧したといわれてもよいほどではあった。子爵軍の騎士もその従属する兵士達もそれほど訓練を受けているとはいえなかった。それを考えると黒騎士団は常に精進を続けている。形だけの子爵軍の騎士とは比べ物にならない。
日が暮れる頃には山賊達は降伏し、戦は終わったが思ってた以上に子爵軍の犠牲者が多かった。
「どの程度の被害だ」
ベネラルが尋ねる。
「およそ半数を失ったといってもよいですね」
ティアラが報告した。
「最初から期待はしていませんでしたけど、まさかここまで役に立たないとはね」
エラナがそう言う。
「まだ我が黒騎士団管轄の騎兵隊の方が強いですね」
サーディンがそう言う。
「役に立つたたないの論議をしても仕方あるまい。でエラナ、村に被害を出してまで使わなければならなかった魔法、何があった」
「申し訳ありません。それは私の魔法です。敵を混乱させるのには良いと思いましたが、少し威力を落とすべきでしたが、まさかそれを防げる魔導師がいるとは思いませんでしたが」
ティアラはそう誤るが、それでも倒せない相手がいたことは伝えた。
「威力から察するに並みの魔法ではないと思いましたが」
そう言ったのはラルクだった。
「ティアラが使ったのは魔炎弾(カオス・フレイム)、並みの魔導師では使えないロストマジックです。使える魔導師は数えるほどしかいないでしょう」
エラナが答えた。
「だが、そんな魔法を防いだとなるとかなりの実力者だろう」
「500年前にはかなりの数の魔導師は使えた魔術ですからね。防ぐためのロストマジックがあったも不思議ではないでしょう。最もそれ以上の魔法を扱う実力者ではありましたが」
「500年前、レスティア帝国時代か。だが、そうなると学院関係者・・・まさか、レスティア帝国の魔導師とでもいうのか」
「そのとおりです。実力はティアラと同等か少し劣るくらいですね。私が手を下さなくてもよかったかもしれませんが、さらに村に被害が出そうでしたからね」
「殺したのか」
「逃げていきましたよ。私との圧倒的な実力差を感じてね」
「1回目以上の2回目の爆発は貴女ですね」
クリスがエラナにそう言う。
「ある程度のアレンジはありますけど、ただの火球(ファイア・ボール)よ、本気で打ちましたけどね」
「しかし、そうなると敵はレスティア帝国の魔導師ということにならぬか」
「レスティア帝国崩壊時に多くの魔導師が隠れた地下で眠りについたという話を聞いたことがあります。特に最終皇帝である不死の女王レティア・フェルナ疾い箸箸發北欧蠅砲弔い針眛鎧佞録百はいるといわれています」
ティアラが解説した。
「おそらく1000名近い魔導師がまだ眠っているでしょう。今回目覚めた魔導師が何人かはわかりませんが、エラグラスを蘇らせたのは彼らでしょう」
「それでは他の場所に眠った魔導師を蘇らせたら」
ブラネスが不安そうな表情で言う。
「その心配は無いでしょう。どこに眠っているのがわかるならこれまでにかなりのその施設は破壊された報告があがっているはず。彼らも自らが眠る場所を知らせるものを残したりはしないでしょう。これまでにも偶発的に目覚めたものもいるでしょうが、何の報告もないとすると、大規模な施設は数少ないということでしょう。大規模ほど安定した施設のはずおそらくこの時代に目覚めるようになっていたのでしょう。新たな国がおき腐敗するには十分な時間ですからね」
「なるほど、確かに今の帝国は腐敗してきているな」
「ただ言えるのは、不死の女王ではないという事です。もしそうなら駒の不足に山賊達を使うはずがありませんからね。彼女ならおそらく死者を使います」
「死霊魔術ですね」
ラルクがそう言う。
「学院にも死霊魔術の魔道書は一部残っていますが、研究を禁じられていますからね。ただわかるのは不死の女王なら何千、何万という死者を蘇らせることも可能です。エラナ・アルスタークが残した戦記にもその記述は残っていますから」
「言えるのはエラグラスを元々呼び出した魔導師がいるということだな」
「そのエラグラスというものもともとどこから来たのだ」
グランテールが尋ねた。
「そのあたりは全く解っていないのです。魔界の住人なのか、産み出された生物なのかも」
ティアラが答える。
「ただあの時代、魔界から魔物を召還したという記録は残っています。たしかその魔導師はセリア・フェラード、不死の女王レティア・フェルナ疾い遼紊世辰燭呂困任后そしてセリアも不死の力を持ったという話もあります」
「レスティア帝国最後の大魔導師、2人も生きているのですね」
ティアラがそう言う。
「2人だけとは限りませんけどね。帝国末期には不死の研究がかなり進んでいたと言われていますからね。そして彼らは今もレスティア帝国の復刻を考えているのですからね」
「彼らはそれが可能だと考えているのでしょうか」
サーディンが尋ねた。
「可能と考えるのではないですか。皇帝である不死の女王が生きているなら」
アレンが答えた。
「ただ不死の女王が帝国復国を考えているなら既に行動はおこしているでしょう」
サイバーがそう言う。
「もし気になるなら本人に確かめるべきでしょうね」
エラナがそう言う。
「どこにいるのかもわからない相手に尋ねようがないではないですか」
サンバスが反論するように言う。
「そんなことはありませんよ。おおよその場所はわかっています。リクイド城の西、当時帝都があった場所にいると思いますよ」
エラナが答えた。
「今もレスティア帝国の帝都にいると」
ベネラルが尋ねる。
「ええ、言っておきますが私が戦って負けるつもりはありませんが、勝てる自信はありませんよ」
「現代の最高位の魔導師と呼ばれるお前でも勝てぬのか」
さらにベネラルが尋ねた。
「肉体という枷を持っていない相手ですからね。持久戦になれば不利ですからね。不死の王が持つ不死の土を見つけ出せなければ滅ぼすことはできませんからね」
「本当は土の位置もわかっているのでしょう」
ティアラがそう言う。
「わかっているわよ。ただ土を浄化させると同時にさらに危険な別の者が復活する可能性がありますが」
「どういうことです」
サンバスが尋ねた。
「魔皇クライシストの直属の軍を率いていた者が眠っている場所です。神話時代では軍の将軍クラスといっても現代では途方も無い化け物ですよ」
「そういえば、古い文献に力を数字化したものがありましたね」
ラルクが記憶を引っ張りだしそう言う。
「あったわね。確かエラナ・アルスタークが自信の力を100と考えたときの値でね。たしか彼女は不死の女王を84としていたわね。これから私達が倒そうとしているエラグラスで22です。参考までに今の私で計算すると32程度です」
「お前の実力で32程度なのか」
ベネラルは驚きを隠しきれずかなり大きな声で尋ねる。
「全魔力を解放すれば61ぐらいは出せると思います。で、先ほどのクライシストの配下ですが231、とても勝てる相手ではありません」
「ちょっと待って下さい。エラグラスの実力が22だとすると100の力を持ったエラナ・アルスタークが倒せなかったとはどういうことです」
サーディンが尋ねる。
「エラグラスの特殊能力のせいです。その特殊能力に対抗するのに剣が必要なのです。数値自体は魔力の強さだけを元に計算されていますから、それに肉体的な攻撃力を加えれば差は大きく変わってきますからね」
「なるほど、剣と魔法ではその基準も変わるからな」
「それから魔道においては得意とする系統によっても違いますからね。私が不死の女王とでも戦える可能性があるのは私が神聖魔法が使えるからだけです。ただ、現時点で不死の女王は関係ありませんから話から除外しましょう」
「そうだな」
「数字的な話が出たついでに尋ねたいが、その蘇って我らの敵となるレスティア帝国の魔導師の実力はどの程度なのだ」
これまで沈黙していたグランテールが尋ねた。
「そうですね、私が倒した相手で20程度でしょう。ティアラで18程度はあるはずですよ」
「エラナ、貴女は先ほど自分の力を32と言われましたが、あの魔導師は貴女を王族クラスと言ってましたが」
ティアラが尋ねた。
「あの時使ったのは見た目こそ火球(ファイア・ボール)ですが、私のアレンジで魔炎弾(カオス・フレイム)を1点に集中させたものです。いくら私でも貴女の魔炎弾(カオス・フレイム)を超える爆発を火球(ファイア・ボール)でおこすことはできません」
「そんな使い方があったとは、時間のあるときで構いません。ご教授願えますか」
「後で、私の魔道書を貸しいてあげるわ。どちらにせよレスティア帝国の魔導師は私かティアラでなくては相手は難しいでしょう。ただエラグラスの配下は魔法的より物理的な力のほうが高いですから、そちらをベネラル達に任せることになるでしょう」
「だが、城の地下であった奴のような特殊攻撃はどうすればいい。お前は仕掛けてくる可能性は低いといったが、対処方法があれば知りたい」
「攻撃に入るときに発生する殺気を読み取る以外に難しいでしょう。後は大気中の魔力の歪みから見切るしかありません。攻撃を仕掛けることは不可能だと思ってください。時空系魔術が扱えることがその最大の対処方法ですが、私以外に使うことはできないでしょう。時空系魔術は発動させるだけでとほうもない魔力キャパシティーが必要になります。ただその力を持ったものが私相手に無意味だったことを考えるならその力に特化した魔物は産み出さないでしょう。他の基本的な肉体能力がかなり低くなってしまいますからね」
「今後は物理攻撃に特化した者を送りこんでくると」
「魔道で考えればレスティア帝国の魔導師の方が強いですからね」
「しかし、貴女の実力は逃げた魔導師から伝わっているでしょう。そして王族クラスの魔導師がいることも」
「伝わっていませんよ。奴に付けた私の追跡装置ごと消滅しましたから」
「いつの間に」
「最初の私の攻撃を見て驚いている間に、部分的な空間跳躍でね。敵のアジトを見つけようと思ったのですが、瞬間移動したものを捉える魔導師がいるようですね。おそらく私と同じ時空系魔術の使い手がいます。おそらくそれが今回の首謀者でしょう」
「とりあえず、目の前の問題を片付けた方がいいだろう。まず本来の目的地であったこの村での調査がある。それから子爵軍のこと、あとは村の今後だ」
ベネラルが本来の議題に戻した。
「子爵家に関しては、嫡子がいる以上は関与する必要が無いでしょう。村に関しても子爵家の領土ですから私達が口出しするのも問題があるでしょう」
エラナが答える。
「ですが嫡子はまだ10歳だろう、復興をできるとは思えませんぞ」
サンバスがそう意見を述べる。
「年齢を考えれば、いずれかの貴族の後見人を必要とするな」
ベネラルは頷きそう言う。
「順当にいけば、リスタール城のスラット太守が後見人でしょうね」
それにサンバスが答えた。
「ならば、ここの中では爵位が一番高いのはサンバス殿が決定する権利がありますから、サンバス殿の名前でスラット太守に書状をお願いできますか」
ベネラルがそう頼む。
「わかりました。書状は私が認めましょう」
「村の調査は私とティアラで進めます。その間にベネラル達である程度復興に協力すると云うことでどうです」
エラナがそう提案した。
「そうだな、どちらにせよ明日からだ。今日はゆっくり休むとしよう」
ベネラルの言葉が話し合いの終了となった。

その日、ベネラル達は村の外で陣を築き、子爵軍とともに野営することとなった。
エラナ、ティアラ、ラクレーナの3人の女性陣だけ別途に天幕が築かれた。
「先ほどの話ですが、貴女はエラナ・アルスタークを超える魔導師との噂が高いですが、先ほどの数値だけでは貴女とエラナ・アルスタークの間にはかなりの差があるということになりますが」
ラクレーナが尋ねた。
「あの数値は純粋な魔法攻撃力を示したものですからね。魔法詠唱による増幅なんかは計算されていませんからね。魔力そのものではエラナ・アルスタークが上でしょう。逆に魔法を使うための魔法力、一度に放出できる魔法力は私が圧倒的に上回ります。それからエラナ・アルスタークが得意とする系統は封印系と魔力付与系です。私は純粋な攻撃系魔法が得意ですがそれ以外にも時空系、魔力付与系、治癒系、魔力物質化などほとんどの系統を使うことができます」
「特定の系統を極めたものとエラナさんのような万能型との違いですね」
ティアラがそう付け加える。
「万能型と言っても苦手な系統がありますけどね」
「苦手なものですか」
「封印系や召還系も使えますが、妹セレナと比べれば私の封印など足元にも及ばないわ。死霊系に関してもティアラの方が私よりうまく使えますからね」
「死霊系は今回だけにしてくださいよ。あれだけのことをすると魔法力の消費も馬鹿になりませんから」
「その割にはその後で魔炎弾(カオス・フレイム)、爆裂魔炎弾(カオスティック・フレイア)の大技を2連発とはたいしたものですよ」
「死霊のコントロールを杖で行っていたからです。ですが、あと1発爆裂魔炎弾(カオスティック・フレイア)が打てればいい程度でしたけれども」
「やはり貴女は既に導師級の力を持っていますよ。今回の件が終わったらラスティーク師に私が推薦状を書いてあげますよ」
「ありがとうございます」
準導師と導師では学院内での権限も学院で使える施設の制限も大きく違う。また学院から貰える講師としての給与も倍近い差がある。
「そうそう、忘れないうちに渡しておくわ」
そう言いエラナはティアラに魔道書を手渡した。
「ありがとうございます」
ティアラが受け取ったエラナの魔道書は並みの導師が持つ魔道所の数倍の厚さがあった。
「それだけ極めれれば、レスティア帝国の魔導師に遅れをとることはなくなるでしょう」
「わかりました」
「エラナいるか」
話をしているとベネラルの声が聞こえた。
「私はここです。どうしました」
「少し話がある。来てくれぬか」
「わかりました」
エラナは天幕を出るとベネラルと姿を消した。

エラナとベネラルは陣を出て村のはずれまで出てきていた。
「夕刻の話だが、あそこまで数値的に説明して皆の不安をあおる必要はあったのか」
「どちらにせよ、レスティア帝国の魔導師は私かティアラでなければ相手はできませんよ。それにあれは魔法的な話だけで剣でなら帝国建国当時ですら貴方達ほどの実力者はそうはいなかったはずよ」
「どちらにせよ、あの程度の話で逃げ出すなら今後が心配だがな」
「はっきり言ってしまえばエラグラスはどうでもいいのです。剣がすぐに見つからなければ探す間だけ封印しておくぐらいはできますから」
「なるほど、厄介なのはレスティア帝国の魔導師か」
「ええ、エラグラスに関わった魔導師ということは彼らが得意な魔道は召還系ということになります。もし仮に彼らが別の魔物を呼び出す可能性があることは否定できません」
「なるほど」
「彼らが制御できない相手でもいいとしたら、魔界の住人ですら呼び出せないとも限りません」
「魔族か」
「下級程度ならいいですが、上級クラスになったら私と同等クラスの魔力を持っている相手です。高位になったらどうすることもできませんよ」
「だが、高位の魔族が呼び出された話は聞いたことがないな」
「当然です。私達が住む生命界と魔界の間には結界があって簡単に出ることができないようになっています。光の力だろうと闇の力だろうとさえぎってしまう結界ですけれどね。一部の例外がありますが」
「どういうことだ」
「結界を作り上げたのが法皇セレネイドであるということです。セレネイドの眷属だけはその影響を受けないということです。そして魔族の中にも法皇の眷属との混血が存在するということもわかっています」
「もしそんな者がでてきたら」
「人間が相手にできるレベルではありませんよ。ただ法皇の眷属は基本的には温厚な魔族が多いそうらしいですし、何より他の魔族に比べてもかなり知性が高いそうです。もっとも実際に魔界へ行って確かめたわけではありませんが」
「確かめようはないな。そうだ、それから魔導師というのはどれぐらい生きられるのだ」
「それには、人の老化について説明しなければなりませんが、その話はそのうち話ましょう。記録に残っている最長で200年程度です。レスティア帝国の魔導師達はこの500年仮死状態だったので生きていたと判断はできませんよ。それから寿命は受け継いでいる神々の眷属の血によってもかなり差がでます。また輪廻転生の秘術があると聞いたこともあります」
「使えるのか」
「かなり大掛かりな儀式を必要とするらしいですが、方法さえわかれば使えるかもしれませんね。ただ術者だけに影響を及ぼす術ですから他人を転生させることは不可能です。神々が使う分には知りませんが」
「まわりぐどいが使えるんだな」
「ええ、使えますよ。私自信が転生するだけですが。言っておきますが私は過去の誰かから転生してきたわけではありませんから」
「まぁいい、あと調査は何日程度予定している。他の4箇所もあるからな」
「必要なら数時間もあれば終わりますよ。村人すべてを集めて昔の伝承話の話題をしてくれれば私とティアラで導き出すことができますよ」
「心の中を読み取るというやつか」
「村人全員となるとかなり疲れそうですけどね」
「やり方は任せる。それからティアラだが、並みの魔導師ではないのだろう」
「貴女には隠せないでしょう。平民の生まれではありますが、法皇と冥王の血を引いているようですね。本人も気がついていないようですが、彼女に私が与えた杖ですが冥王七武器の複製品、私が使いこなせなかった杖を彼女は使いこなしました。死霊魔術においては私以上の使い手ですよ」
「死霊魔術だと」
「死者を蘇らせる力です。もっとも彼女はできることなら使いたく無いようですし、強要したくもありません。ただ数百の死霊を同時にコントロールできる魔力キャパシティーはたいしたものです。私以外に使えないと思っていた魔炎弾(カオス・フレイム)、爆裂魔炎弾(カオスティック・フレイア)を完全に発動して見せてくれましたからね。もっとも私のように詠唱なしで発動させる力まではありませんけどね」
「なるほど」
「彼女も私と同じ時代に生まれてこなければ学院最高導師になれる器はあるでしょうね。今の学院では、メリア、私、セレナと既に3人もいますからね。それに現時点ではそうではありませんが、将来的にみれば私の従姉妹でスィーティア、私の弟弟子ベネル・ロイエンスターなど私の研究室のメンバーばかりですがかなりの才能を持っていますから」
「俺はどちらかといえば面白い時代に生まれたと思っているんだがな」
ベネラルも時代が時代なら最高レベルの剣客であるが、師である剣王フォルク、兄弟弟子でスティール、フェルド、エラナ、ラクレーナと実力者ばかりである。
「確かに面白い時代ですね。ですが私の目的が変わるわけではありませんけどね」
「協力は惜しまん。だが、俺の望みもまだ変わらん」
そう言いベネラルはエラナを引き寄せると口付けをした。
「言ったでしょう。貴方が望むならいつでも好きにしてくれて構わないと」
「俺としては体だけでなく、その心まで欲しいんだがな」
「それだけは譲れません。いずれ私の変わりに貴方に相応しい者があらわれますから」
「気長に待つとするか」
そう言いベネラルは立ち去っていった。
「貴方が嫌いなわけでない。むしろ愛おしいですがこれを抑えきらなければ・・・破壊神にさせるわけにはいかない」
そう呟くと、村のはずれにある川に向かって歩き出した。

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