幻水の作家な気分

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第一部  第二章 駆け引き

リスタール城、帝都ラクーンの西に位置する帝国最高の城塞都市であり、その歴史は帝都ラクーンより古くそれ以前に帝都であったリクイド城も守る帝国最終防衛ラインといってもよい。
帝都最終防衛ラインであるリスタール城には、常時2騎士団が常駐し、城内の一角には黒騎士団の騎士館も置かれている。
城を囲むように、黒騎士団騎士館・学院リスタール城分室・神殿、人口も帝都ラクーンの半数もないだが30万人の人々が暮らす大都市である。
エラナとラクレーナはそのリスタール城が南に位置する図書館へ来ていた。
「帝国学院導師エラナ・フレアと申します。特別室の書の閲覧をお願いしたい」
そう言い、学院導師の証であるローブの紋章を見せる。
「少々お待ちください。館長を呼んでまいります」
受付の女性はそう言い、館長を呼びに奥へ入っていった。
「学院導師の位というのはかなりの影響力があるものなのですね」
「魔道学院とはいうけど、実際は魔道だけでなく賢者や政治、経済、戦略・戦術を含めた学びの場ですからね。帝国王家、貴族、政界、軍部までに影響力はあります。最高導師となると皇帝と同等の権力をもつといってもいいですからね」
帝都において学院は帝国にありながら、一種の独立した国家といってもよく、学院も独立した独自の自警団を持ち学院の収益には帝国の税金は一切かからないし、逆に帝国が学院にかなりの資金を援助している状態である。
学院はその見返りとして優秀な人物を数多く排出し、帝国の軍部・政界に送り出している。
現在帝国にはまったく席を置いていないエラナであるが、次期最高導師の呼び名のあるエラナの名はある程度学院にかかわりのあるものならば知らぬものはいない。
「これはエラナ様、我が図書館に貴女をお迎えでき感激であります。私が館内をご案内致します」
初老のその館長は現れると自らの半分も生きていないエラナにそう言う。
館長に案内され、特別室へ案内されるとエラナとラクレーナはそれぞれ書棚を探し始める。
本を探しはじめ30分ぐらいしたころラクレーナが1冊の本を手にしてエラナに見せる。
「探しているのはこれですか」
言われエラナは書に目を通す。
『帝国暦3年、皇帝王妃エラナ・アルスターク5万の騎士団を率い、レスティア帝国残党軍討伐に伴い、帝都リクイド城より出立しリスタール城に作戦司令室を置きレスティア帝国残党軍に対し、2万の騎士団で当たるものの敵将1人に苦戦し半数近い犠牲を出し撤退せし。
敵将が1人は人にあらず、剣技にすぐれた将をも圧倒し、魔道においては王妃と互角に渡り合う。その敵将の名はエラグラス』
「エラグラスはどうやらレスティア帝国の魔導師が召還した魔獣の1匹のようですね」
ラクレーナがそう言う。
「ただ、いくらレスティア帝国の魔法は現在より優れていたといってもレスティア帝国にも今の私クラスの魔導師は王族クラスだと聞いたことがあります。ですが、私もいくつかの召還系の魔法は使えますが高位の召還魔法となるとよほどの魔力キャパシティーがあるか、それに伴う対価を支払う必要があります」
「エラナ以上の高位魔術師が召還したということですか」
「それはないでしょう。召還系は得意なほうでないだけで、純粋に攻撃魔法だけでならレスティア帝国時代の魔導師相手でも勝つ自信はありますよ」
「その様子ですとこのエラグラスを一人でも倒せると」
「ベネラル達には言わないでくださいね。ベネラルが倒さなければ意味がありませんからね。いざとなればこれの力を使ってでも倒しますけれど」
そう言い、服の中に隠していたネックレスを見せる。
「それの宝石はマナブルースですか」
ラクレーナも見るのは初めてだが最高級の宝石、話だけは聞いたことがあった。
「そうよ、10年かけて私の魔力を少しずつ溜め込んできました。もう少しで完成します。完成すれば持ち主の生命エネルギーを力に変え魔法の力を数倍、数十倍に高めることができます。私の最後の切り札です」
エラナがエラグラスを倒す自信があるのはこの石の力があるからだ。
「命までかけると」
「必要ならばね。最もこれは杖の一部分とするつもりですけれどね。もう一つ私の血と魔力を栄養に育てた木があります。それで杖を作れば私だけの最高の杖が完成します。で、いい加減出てきたらどうですか」
「気がつかれていないとでも思っていましたか」
ラクレーナが壁に向かって剣を抜き突きつける。
「人間にしては勘がいいな」
「それだけ邪気を帯びた殺気をだしてれば気がつかないわけがないでしょう」
「エラグラス様のことを調査するものを監視しろとのことだが、気づかれたならばしかたあるまい。消えてもらおう」
「時空を裂きあらべらず空間を形成せよ!」
エラナの詠唱が完成するといままでいた書棚のならぶ特別室とはことなり何もない空間だけの場所が広がる。
「ほう、人間ごときにこんな芸当ができるのか」
「そんなことはどうでもいい、すぐにでも消えてもらおう」
エラナは既に魔力を右手に集中させていた。
「空間を維持しながらのその魔力で俺を倒す気か」
その者が言うとおり空間を維持しながら、戦うのはかなり厳しい。
「ならば受けてみるがいい、法皇審判(ジャスティス)!」
「ちっ」
エラナのあまりにも高レベル慌てて回避する。
「回避した方向がわるかったですね」
ラクレーナは先ほどエラナに買ってもらった刀を鞘に収める。
「なんだ・・・と・・・」
首が静かに落ちた。
「全く見えなかった・・・」
エラナはそう呟き、結界を解く。
「大丈夫ですか、さすがに無茶がすぎますよ。魔力も本調子ではなさそうですし」
「そこまで見抜かれてましたか。魔法陣なしでの大人数での転移魔法を今日は2度も使っていますからね。そのために貴女にその刀をあげたのですから」
「回避する方向が予測しやすかったですから、確実にしとめることができましたが、すべて予測の上、いやすべて知ったうえでやってますね」
「そこまで見抜くとはたいしたものですよ。今日ここにエラグラスの手下がいることはわかっていましたよ。すべてを知った上でここへ来ました」
「私は貴女にこの剣を捧げます。貴女は私が守ります」
刀を手にラクレーナはそう宣言する。
「期待していますよ」

エラナ達が図書館に行っている頃、ベネラルは太守スラットの元を尋ねていた。
「ベネラル卿、久しぶりだな」
太守スラットは元々重騎士団長を勤めておりベネラルも何度か戦場で一緒になったことがあった。いくつかの功績でスラットはその防衛の卓越さからリクイド城の太守となっていた。
「半年ぶりぐらいですね」
「そなたもかなり出世したと聞いたが、こんなところへ一人でどうした」
「詳しくはお話できませんが、極秘の任務で動いておりまして城内の書物の閲覧の許可を頂きたくて参りました」
「なるほど、クリスは一緒ではないのか」
「城下のほうで宿を探させております」
「ふむ、他に誰が一緒におるのだ」
「魔導師として学院導師のエラナ、司祭としてハーパリン公爵家のラルク、あとはフォルク師より新しい弟子を取ったとのことだったので、その者を連れてきております」
「豪勢なメンバーだな。学院導師エラナ・フレアというだけでも知らぬものがおらぬほどだが、その力魔道だけでなく、神聖魔法も扱い、武においては剣王フォルクの弟子であるそうだな」
「剣においても一騎士団長になるぐらいの実力は持っていますね」
「それにしてもハーパリン公爵家のラルクか、噂は聞いているが剣においても神聖魔法においてもかなり優れているらしいな」
「まだ直接その剣技を見たわけではありませんが、かなりの実力を持っているのはたしかですね」
「そこにフォルク師が認めた新たな弟子か。ラルクもそうだが、一度会ってみたいものだな。どうだベネラル卿、私が城内にそなた達を招待したら迷惑となるか」
「それは助かります。ならば、まだクリスは宿を探していると思いますゆえ、呼んでまいります」
「夜の食事までには戻ってくるがよい」
城を出るとベネラルはクリスを探して城下へ出たが、馬車と馬を連れているゆえ発見するにはそれほど時間がかからなかった。「5人と馬4頭と馬車までとなるとなかなかあいてないもんですね」
「太守が我々を城内に招待してくれるそうだ」
「よろしいのですか、この任務は極秘なのでは」
「私もエラナも比較的顔と名前を知られている。逆にこそこそ動きまわる方が怪しまれるだろう」
「たしかに、それは一利ありますね。では、私は待ち合わせ場所で皆を待ってあとから城へ向かいます。ベネラル様、馬と馬車をお願いしてよろしいですか」
「構わんよ。城の門番にはお前が来ることを伝えておく」
「わかりました。では頼むぞ」

神殿に向かったラルクは神殿で歓迎を受けていた。
「ハーパリン大司教のご子息様をお迎えできるとは」
神殿の大司祭はそうラルクを迎える。
「まだまだ私は若輩の身であり、修行中の身です」
「真なる神聖魔法の使い手であるものが減りつつある今、貴方のような方は今や貴重な存在ですからな」
大司祭が言うとおり、純粋に神の力を借りて神聖魔法を使える者が減ってきている。その為、魔道学院がそれに近い魔法を神殿に伝授している現実もある。神聖魔法が実際に使えてもかろうじて回復魔法が使えるだけという者がほとんどである。
ラルクにとっては物心ついた頃には神の声を聞くことができ、特別な気はしない。
「今日は神殿にある書を拝見させて頂きたくて参りました。ご許可を頂けないでしょうか」
「それは構いませんよ。ただ、古い神聖語で書かれた書物が多い故、読めるものも少なくなっており読みたいと言われたのは貴方が数年ぶりぐらいですよ」
文字も現代に至るまでに難しい文字は省略され別の文字へと変わってきて時代の流れとともに全く異なった文字へと変化してしまい読めるものも少なくなってきた。
「数年ぶりですか、以前こられたのはどのような方でしたか」
「エラナ殿ですよ、今や学院導師として有名になられた」
「エラナ殿がですか、神聖魔法も使われるとは聞きましたが古代神聖語まで読めるとは思いませんでした」
「確かそのときは神話時代の書物を中心に調べてみえたようでしたけど」
「神話時代ですか」
「神話時代の書物となるとさらに古い古代神聖語ですから読もうにも何の資料も残っていない状態ですからね」
「とりあえず私が読みたい書はガラバード帝国建国前後の書物なのですが」
「それでしたら、書物庫の2列目の棚がその時代のものになりますね」
「夕方までですが、少し見せてもらいます」
そう言いラルクは書物庫へ向かった。

図書館の特別室でエラナはラクレーナが倒したエラグラスの手下の首を拾い上げる。
「どうするつもりです」
「実際、書物は最初からどうでもよかったのですよ。敵の正体を知るにはその敵の手下から聞き出せばいい。ですが、生きて捉えようと主のことは話さないでしょう。ですが、いかなる生物も記憶はすべてこの頭の中にあります。そして私はそれを本のページをめくるように見ることができるのですよ」
そう言いエラナは自らの剣でその頭を叩き割り、その血が床に落ちるそれをじっくり見つめる。
「そんなことが」
「なるほど、それがエラグラスですか。なるほど私の存在を感知できたのかわかりましたよ」
「どういうことですか」
「エラグラスは自らの手足と動く手下を直接産み出す力を持っています。同時にその手下が見たり聞いたこ情報を共有することができるようです」
「では、この魔物を私達が倒したことも」
「それは大丈夫です。知覚や記憶を共有できるといっても先ほどのことは私が創り出した別空間でのこと、そこまでは力は及ばないようですから」
「しかし、いずれは気がつかれますね」
「逆にそこまでエラグラスの目を気にしてこちらがこそこそ動く必要はないということです。逆にこちらへ誘い出したほうが好都合でしょう」
「しかし、それで確実に倒せますか」
「それはわからないわ。能力のすべてがわかったわけではありませんからね。だからといって私が常に空間形成を使うわけにはいきませんからね。今の私では消費する魔力が大きすぎます。一日一度がおそらく限界でしょう」
「しかし、それほど高度の術でしか対応できないとなると今後、一度に何匹か来た時はどうされるのですか」
「ほとんどの高位魔法はまだ研究段階で完全なものではありませんからね。未完成ゆえに力のコントロールができずに一気に魔力を消費してしまうのです。完成すれば今の半分以下の魔力でコントロールできるはずなんですけれどね」
「連戦は厳しいと」
「確かにそれはあります。ですけど、できるだけコントロールしようと思うなら時間がかかりますが、詠唱する時間があればまだ魔力の消費を抑えれるとは思います」
「私にその時間を稼げと」
ラクレーナに言われエラナは頷く。
「期待してますよ」
「わかりました。私がその時間を稼ぎ、貴女を守りましょう」
ラクレーナはそう宣言すると、エラナはいずこからかグラスを差し出す。
「受けてくれますか」
「喜んで」
ラクレーナはグラスを受け取ると、エラナはそれに酒を満たし、自らも酒の入ったグラスを手にする。
二人はグラスであわせ鳴らすと同時にそれを飲み干した。
「レーナ、これで私達は義姉妹、ともに力を合わせがんばりましょう」
「はい、お姉様」
「そう呼ばれるのも気持ち悪いわ。エラナでいいわよ」
「そうですね」

夕刻、日が暮れる頃エラナとラクレーナが待ち合わせ場所に着いた頃にはクリスとラルクは既に待っていた。
「ベネラルはどうしましたか」
エラナが尋ねる。
「ベネラル様は先に城で待っておられます。太守が私達を招待していただけるとのことです」
「ここの太守はスラット卿でしたね」
「そうです」
「直接の面識はありませんけど、スラット卿なら信用はできるでしょうけど、余計な話はしないほうがいいでしょう。太守の性格からすれば、知れば援助を申し出てくるでしょうが、巻き込んで太守に害が及ぶのは好ましくはありませんからね。かなり兵略にもすぐれた人とのことですし、何かあって巻き込んでは今後の帝国にとっても不利益になるでしょう」
「そうですね。今回の事件は私達だけで極秘裏に解決する必要がありますからね。とりあえず、城へ向かいましょう。あまり長く待たせるのもどうかと思います」
「そうですね」
クリス、ラルク、エラナ、ラクレーナの4人はそのまま城へと向かった。
「ベネラル卿の従者クリスです」
「ベネラル卿からお話は伺っております。ご案内致します」
門番はそう言うと4人を案内した。
「来たか、私がリスタール城の太守スラットだ」
「帝都ラクーン学院最高導師ラスティークが弟子、帝国学院導師エラナ・フレアと申します」
まずエラナが名乗りをあげた。
「ハーパリン公爵家が嫡子、帝国神官騎士団所属神官騎士ラルク・ハーパリンと申します」
続いてラルクが名乗る。
「剣王フォルクが弟子で、ラクレーナ・アルシードと申します」
「ご無沙汰しております。ベネラル卿の従者クリスです」
「先ほどベネラルから話だけは聞いていたが、こう自己紹介されるとかなり豪華なメンバーだな」
「まだ私達は若輩の身、太守ほどの功績をあげたわけでもありません。ご招待いただけるだけでも感激です」
エラナは招待の礼を述べる。
「なにを言う、未来の帝国を背負っていくそなた達だ。招待できるだけでもうれしい限りだ」
「ありがとうございます」
「今日は簡単ながら宴席をもうけさせてもらう。それまでには時間がまだある。ベネラル卿、皆を部屋に案内してあげるといい」
「はい」
ベネラル達に与えられた部屋はかなり大きな客間で、リビングと個別の部屋が5つもあるような部屋だった。
「どうしたエラナ、かなり疲れているようだが」
「考えることが多すぎるだけですよ。あらゆる状況を考えておくのが私の役目ですからね」
魔力の消費で疲れているのは事実だが、襲撃を受けたことをまだベネラルに話すつもりはなかった。
「そうか、まぁ、今日の晩餐ぐらいはゆっくりして気分転換にするといい」
「そうですね。では私は先に湯浴でもさせてもらいましょう。汚れた格好では失礼にあたるでしょうから」
「そうだな、ならば先にエラナとラクレーナが済ませてくるがいい。俺達はその後でいい」
「では、先に行きましょうか」
ラクレーナにそう声をかける。
「はい」
「太守が夜のために部屋に服を準備してあると言っていた。好きなのを選ぶといいとな」
「わかりました」
30分ぐらいして湯浴から戻ってきたエラナとラクレーナは全く別人となっていた。エラナは魔導師ということもあり普段からローブと剣士としての動きやすい格好でドレスを着ることがないが、エラナの美貌はかなりのものである。長い金髪と純白のドレスに宝飾品を身に付けた彼女は貴族の令嬢といってもよかった。
ベネラルも初めてみるエラナの姿に言葉を失っていた。
一方ラクレーナも薄い空色のドレスを着て出てきた。
「私にはどうもしっくりこないですね」
「よくお似合いですよ」
クリスがそう言う。
「俺達も行くとするか」
「そうですね」

宴席に現れたベネラルは貴族としての正装、ラルクは儀式用の神官着姿、クリスは従者としては控えめな姿であるが落ち着いた服装で現れた。
逆にエラナとラクレーナは貴族の令嬢を思わせ出席したいるほかの騎士や貴族の注目の的だった。
「目立ってますね」
ラクレーナが小声でそうエラナにいう。
会場に他の女性がいないわけではない。大勢の貴族の夫人やら息女の姿もある。
宴席はベネラルとラルクを歓迎するもので、貴族でないエラナ、ラクレーナ、クリスは紹介されることはなかったが、エラナとラクレーナに声をかけてくる貴族や騎士の数は多かった。
「貴族でもない私が声をかけて頂けるだけで十分な幸せなことです」
エラナのやり方をみてラクレーナもそう受け流していく。
「えらく人気があるな」
ベネラルがそう声をかけてきた。
「くつろぐどころか逆に疲れるわね」
部屋の隅で二人は話を始めた。
「それはすまないことをした」
「私の本当の身分を知っていてからかいたいのですか」
「そんなつもりはない。俺が自分のものにしたいと思わせたのだからな」
ベネラルはそう言うと、いきなりエラナの口付けを奪った。
「ベネラル・・・」
「俺は本気だ。父上もエラナなら反対はしないだろう」
「以前から私をそう見ていたことは気がついていました。ですが、私にはそれに答えることはできません。この体だけでよければお答えはできましょうが、婚儀を結ぶことはできません」
「どうして」
「私にはどうしてもやり遂げたいことがあります。できることなら私も貴方の気持ちに答えたいとは思います。ですが、私のもう一つの力は知っているでしょう」
「星見か」
「私は私が見た未来を変えたいと思う。だけどその為には貴方と婚儀を結ぶことはできない」
「何を見たんだ」
「・・・終末・・・、その終末の引き金になるのが私と貴方の子供だとしたらどうします」
「そんな未来があろうと、そんなことにはさせん」
「そう言うと思いましたよ。だからこそ貴方とは結ばれてはならない。だけど、私は生まれてくるはずの子供の誕生だけはさせてあげたい。おそらく私は星見としての最大の禁忌を侵すことになる。それを知った上で貴方はその力を貸してくれますか」
「俺達が婚儀を結んでなお、それを変えることはできないのか」
「できれば私もそうしたい、だけどそれは幾度も星を見てもできないこと、だから私は力を求める。私達の子が、終末・・・破壊神として目覚めるなら私はそれを止めてみせる。だから力が欲しい誰にも負けることのない力が」
「わかった俺もお前にかけてみよう」
そう言うとベネラルはエラナの肩に手を回す。
二人はひっそりと宴席会場から姿を消した。
「今日の主役は今日最高の勝利者となったようだな」
スラットは出て行く二人を見かけそう呟いた。
だがこのときこの宴席会場に招かざる客がいたことにエラナは気がつかず出て行った。魔力の消費もあったが、エラナに対する人の感情がそれを感知するには難しかった。
一方、ラルクやラクレーナも皆からの人気は高かったがエラナほどではない。ただ相手の独特な気配は実際に相手したものにしか感じることができないほど微妙なもの、気がついたのはラクレーナだけであった。
「気がつかれていないと思っていましたか」
相手の背に刀の柄を押し付け、声を押し殺してそう呟く。刀は城へ来る前にエラナがラクレーナだけがいつでも呼び出せるように魔力を与えてくれていたため、ラクレーナはそれを呼び出した。
「完全に気配を消していたつもりなのだがな」
「人であらざるその気配、一度覚えたその気配、見逃しはしないわ」
ラクレーナの刀はほかの人々からは死角となり見えない。
「なるほど、お前がセカンドを殺した奴か」
「だとしたら、外でお相手しましょう」
「断る」
そう言うと、跳躍しまだ料理の残っているテーブルの上に乗る。そして、その手には既に剣が握られている。
「穏便にすませたかったのですけれどね」
そう言いラクレーナは刀を抜く。
「何事だ」
騎士の一人がそう叫ぶ。
「はっ!」
ラクレーナは一気に跳躍すると、その敵に向かい刀を振り下ろす。
「遅いな」
ラクレーナの攻撃をいとも簡単に回避するとまた別のテーブルの上におりる。会場はすでにパニック状態となっていたが、何人かの騎士は剣を手に取り囲んでいた。
「手出し無用」
テーブルを中心にラクレーナが円を描く。
「あれは剣舞」
ラクレーナの動きを見てラルクがそう言う。
『フォルク流剣術風技奥義・回転剣舞!』
普通の人から見ればラクレーナの動きは目にも止まらぬ速さであるが、ラルクにはその動きが森で見たラクレーナに比べれば半分以下のスピードであることはわかった。
「その程度のスピードで我を捕らえることはできん」
「邪悪なるものよ立ち去れ、最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)!」
解き放ったのはラルクだった。
「ほう、そんなのができる者もいたのか」
ラルクの術も軽々かわしそれはそう言った。
「ラルクさん、その者は私が倒します」
「しかし」
ラクレーナはラルクの静止を聞かず再び切り込むが、軽々と受け止められてしまう。続けて何度も斬りつけるがすべて受け止められてしまう。
「動きづらくていけないわね」
そう言うとラクレーナはドレスの長いスカートの左右を縦に破る。
「それでどうにかなるのか」
「ならば、そのまま消えてください、フォルク流剣術風技秘奥義・閃光裂風剣舞!」
瞬間だった。手にした腕ごとラクレーナが切り落としたのは。
「がぁぁぁっ!」
それは、人の姿から魔物の姿へと変化をはじめた。
「完全に狙ったつもりだったんですけどね。次は確実に貴方の首を貰います」
再び同じ構えに入る。
「あれが、フォルク流剣術最速の秘奥義、閃光裂風剣舞です。瞬間的に最高速に加速する脚力から繰り出すあの技はおおよそ人の目にはとまりません」
クリスがラルクにそう解説する。
「だからこそ足の自由がきかないドレスではその力を生かしきれなかったのですね」
「先ほどのでもまだ最速には遠いでしょう」
「はぁぁぁぁぁっ!」
ラクレーナは一気に跳躍した。
「なっ」
先ほどと違い今度はラルクの目にも何も映らなかった。
「別名、千手の剣、同じ技を以外は防御も回避も不可能です」
そう言いラクレーナは刀を鞘に納める。
「・・・・」
ラクレーナが指を鳴らすと細切れとなりそれは崩れ落ちた。
「人間ごときにと言いたいところだが、雑兵程度では相手にはならぬわけか」
「あれで雑兵か」
ラルクが尋ねる。
「手ごたえがなさすぎましたからね。もっともあれで全力だと思ってももらいたくないですけどね」
ラクレーナはそう宣言する。
「小娘がよく吼えるな」
「試してみますか、正真正銘の閃光裂風剣舞を」
再び刀を抜くと、先ほどより少し腰を低く下ろす。
「レーナ、後は私達がかわりますよ」
エラナとベネラルはそれぞれ魔導師と黒騎士の正装に着替えて現れた。エラナはベネラルと一緒に席を抜け出したのは戦いやすいように着替えてくるためだった。
「エラナ」
「その刀では貴方の本気の一撃に耐えられませんよ」
「どいていろエラナ、俺が行く」
そう言いベネラルが剣をぬくと斬りかかる。
「ふん」
そう言いベネラルの剣を受け止める。
「俺の剣を受け止められたのは久しぶりだな。だがいつまで続けられるかな」
そう言い数度斬り付ける。
「くぅっ」
そして、何度目か魔物の剣をベネラルが弾き飛ばす。
「さぁ、受け止めてくれる剣はもうないぞ」
「ほざけ!」
そういい、ベネラルに向かって炎を解き放つ。
「小ざかしい!」
ベネラルはそれを剣圧だけ吹き飛ばす。
「遊びすぎよベネラル」
同時にエラナの攻撃が入る。
『魔道武術・聖拳煉獄衝!』
「がぁぁぁっ」
「最強攻撃浄化魔法(ホーリー・ブレス)の力を拳に乗せて撃ち込んだのか」
ラルクはすぐに技の正体に気がつきそう呟く。
「人間ごときに、この俺が」
「相手が悪かったな」
ベネラルの剣が魔物を真っ二つに斬り落とした。
「ベネラルの剣を受け止めれると思った時点で勝ち目はないわね。フォルク流剣術において最も豪剣とされる火技の使い手ですからね」
フォルク流は地水風火の4系統からなり、その下に剣や斧、槍などの各種系統が存在する。地は防御系に特化し、水は自由自在の多元変化、風はスピード重視、火は力に頼ったものだ。
「スラット太守、申し訳ありません。せっかくご招待いただいたこの席をこのような形になってしまい」
「構わんよ、フォルク流の剣技、そうそう見れるものではないからな」
「ありがとうございます」
「皆のもの今日はこれでお開きだ、またの機会だ」

宴会場を後にしたベネラルとエラナは平民の服に着替えると町の宿に来ていた。
「疲れていたのではなかったのか」
「貴方が私の目的の為に力を貸す代償、先に延ばしても仕方ないでしょう」
「しかし、君は誰にでもそうしていくつもりなのか」
「そのつもりはないわ、貴方が望むなら貴方だけのものにしてくれても構わないわ。私にそれを拒む理由もありませんからね。今なら貴方が初めてなのですから」
「わかった、だが俺も強くなる君を守れるぐらいな」
そう言い、ベネラルはエラナは抱き寄せると唇を奪い、ベットに倒れこんだ。

翌日からエラナとラクレーナはリスタール城内にある図書室にこもっていた。
一方ベネラルとラルクと中庭で剣の鍛錬をしていた。
「ベネラル様、リクイド城に使いを出しブラッサムとサーディンにこちらに来るように伝えました」
「だが、あいつらで昨日の奴らと対等に戦えるか」
「二人がかりなら私より強いですよ。どんな状況があるかわからない以上はある程度の人数で行動するべきでしょう」
「それはあるかもしれんな。だが二人を加えても7人か。そう言う意味ならもう少し欲しいところだな」
「そうですね、ですがこれ以上黒騎士団から人員を募るのも目立ちすぎますね。他の騎士団から何名か選んではいかがですか」
クリスがそう提案する。
「他の騎士団か、その上である程度信用がおけるものである必要はあるな」
「ある程度人選を選んでみました。まず重騎士団のグランテール」
「グランテールか、奴なら信用できるし実力も十分だな」
「次にアルト侯爵家のサンバス殿」
「アルト家の当主であり、すでに騎士団の副団長だぞ」
「位ではまだベネラル様が上位ですから、召集に応じる義務はありますよ」
「わかった、交渉は任せる。他には」
「何人か候補はいますが、学院関係者でもありますから、私からは交渉は難しいでしょう」
「そうなるとエラナに頼らざるをえんな」
「ええ、候補は2人、一人はサイバー・ブラウス殿、学院魔導師ではありますがかなり武に優れているとのことです。二人目はアレン・ブランド殿、ブランド伯爵家・嫡男ではありますが現在は学院魔導師です。彼もかなりの武に優れているとのことです」
「二人とも魔法より剣を得意としているのか」
「あまり詳しくはわかりませんが、エラナ殿なら知っているかと」
「ラルク、すまないがエラナを呼んできてくれ、図書室にいるはずだ」
「わかりました」
そう言うとラルクはエラナ達のいる図書室の方へ向かった。
「あとできれば純粋な導師クラスの魔導師がもう一人欲しいところですけど、学院内部のことゆえそれ以上はわかりません」
「どちらにせよ、続きはエラナが来てからだ」
しばらく待っているとラルクがエラナを連れて戻ってきた。
「何か問題でもありましたか」
「忙しいところすまんな。学院のサイバー・ブラウスとアレン・ブランドを知っているか」
「知っていますよ。私のつくる研究室のメンバーですよ」
導師クラスになると自らの研究のために同格の導師を含め、魔導師達を募って研究をするために研究室を開くことがある。まだ若い導師ということもありエラナを快く思わないものも多いが、エラナを指示するものも多くいる。次期最高導師を目指すものにとっては自らの研究室にどれだけの者を集められるかが重要となる。学院内の派閥といってもよい。
「そうするとエラナ派の人物ということか」
「私はまだ派閥といわれても困るんですけれどね。ラスティーク師の言いつけである以上は従うしかありませんからね。で、その二人をどうしたいのですか」
「我々のメンバーに迎えたい。昨日の襲撃のこともあるが、街道を旅するゆえ山賊や盗賊団と遭遇しないとも限らない。いらぬ争いを減らすためにもある程度まとまった人数でと考えての上だ」
「なるほどね。二人なら私が呼び出せばすぐにも来るでしょう」
「それから、できるならもう一人導師級の魔導師はいないか。状況によっては二手に分かれる可能性もある」
「導師級の魔導師ですか。候補は何人かいますが、まずティアラ、私の研究室のメンバーです。商家の生まれで、3年ほど前に学院に入っていますがもうじき導師になれるはずです。他にもいないでもありませんが、この旅をするには若すぎますからね」
「若さか、確かにこのメンバー自体が若すぎるかもしれんな」
この時代、16歳で成人と認められる。そう考えた場合、ベネラルは16歳とぎりぎり成人として認められるが、エラナは15歳、風格から認められないともいえないが、ラクレーナとラルクは実力こそ突出しているが12、13歳では成人とは認められない。クリスが最高齢ではあるが29歳、だがベネラルの従者であり身分は低い。
「実力重視で集めましたからね」
今の帝国で若い世代に突出した実力を数多く現れてきている。
「だからといって、ある程度の年齢となると何らかの公務についていますからね。私も魔道においてはまだメリアさんには一度も勝てたことがありませんからね」
エラナは学院でも突出した実力を持っているが、メリアはあらゆる魔術を完全に無効化する力があり、彼女は相手の魔力を自らの力に変えることもできる。純粋な魔道対決では無敵ともいえる。その中でエラナが生み出したのが魔道剣術や魔道武術といった魔法と物理攻撃の一体化した戦い方である。
「とりあえず、その3人を呼んでくれるか」
「ラスティーク師には理の手紙をしたためましょう」
そう言って紙を取り出すと、簡単に書いた。
『魔導師サイバー・ブラウス
魔導師アレン・ブランド
準導師ティアラ
上記、3名借り受けます。

学院導師エラナ・フレア』
書き終えるとそれをクリスに手渡す。
「ずいぶんと簡単ですね」
「導師には下位の者を必要に応じて徴集する権利がありますからね。私の研究室に所属する以上はそれを拒否することはできませんからね」
学院には軍隊と同じように厳しい戒律がある。その為に、どの研究室にも所属しないものもいればどの導師にも弟子入りしないものもいる。使える研究室や閲覧できる書物の制限を受けるが、基礎学は学院に所属する以上は学べるのでそこから自ら研究を行い過去には最高導師につぐナンバー2にまで登りつめた者もいた。
サイバーとアレンはどの導師にも弟子入りしていないが、二人はエラナが次の最高導師たりうると考えた上で研究室にいる。そしてエラナの魔道と物理攻撃の一体化の為の手助けとなっている。
「クリス、おそらく全員帝都にいるだろう。10日でいけるか」
「努力はしてみますが、あまり期待はしないでくださいよ」
「クリス、もし何か困ったことがあったらティアラに相談するといいでしょう。私と同様に戦略・戦術を選考していますから何らかのヒントはくれるでしょう。もし必要なら彼女に代弁させてもいいでしょう。話術・交渉術は最も彼女の得意とするところです」
「わかりました」
クリスはそう言うとそのまま出立した。
「申し上げます。人数がそこまで増えますと回復の力を使える者をあと1名は呼ばれた方がいいかと」
ラルクが進言する。
「それなら心配いりまえんよ、神聖魔法ではありませんが、傷の回復程度ならティアラもできますよ。それに必要なら妹に作らせた回復用の護符がかなりあります。できれば人であるほうがいいかと思いますが、信用できてそれなりの実力があることが前提ですからね。まぁどうしてもというならいないことはありませんけど、彼女は神殿を離れることができませんからね」
「どこかの神殿の司祭なのですか」
「帝都ラクーンの裏通りにある寂れた神殿ですけれどね」
「そのようなところに高位の司祭がいるとは聞いたことがありませんが」
「帝都の大神殿とはかかわりがないですからね。どちらかというと保養施設といってもいいですけれどね」
「ミレーラのことか」
ベネラルが思い出したようにそう言う。
「彼女なら、かなり高位の神聖魔法まで使うことができますからね。ただ彼女がいなければ子供達は生きていくことができませんからね。いかなることでも神殿は離れないでしょう。子供の中には自身の娘もいるのですからね」
「たしかサリナだったな。すでにある程度の神聖魔法は使えると言ってたな」
「司祭級の力は持っていますけど、まだ7歳ですよ」
「さすがに戦場に連れて行くわけにはいかんな」
「しかし、こう考えると神聖魔法の使い手はここまで減ってしまっているのですね」
ラルクがそう言う。
「もともと神聖魔法と呼ばれるのは、創生の神である神皇・魔皇・法皇の3神の力を借りた魔法ですからね。しかもそれはそれぞれの神が創り出した種族の血筋を引いている必要がありますからね。だから現在信仰されている神は人が想像した神ですから、実際には存在しない神なのですからね」
「神殿ではそれは言わないほうがいいでしょう」
「でしょうね。どちらにせよ存在しない神の力は借りられないということです。だからこそ、その代用となっているのが学院が研究している魔法なのです。私が使うような魔法は大気中の魔力と自身が持つ魔力を組み合わせて使う力、それを攻撃などに使うものを魔導師、回復などに力を使うのが神官と呼び、都合上神聖魔法と呼んでるだけですから」
「難しいもんだな。そういうことは現時点で本当の神聖魔法を使えるのはいずれかの創造主の血を引いているのか」
そう言い、ベネラルはラルクとエラナを見た。
「ラルクの場合は神皇の血を引いているようですけれどね」
「神皇様のことは私も父上から聞いております。ところでエラナさんはいずれの神の血を引かれているのですか」
「私の場合は、法皇セレネイド様の血筋ですよ。多少他の神の血も混ざっているみたいですけれど」
「私と同じ神皇様の血も引いておられるのですか」
「まだ力を借りて使うほどではありませんけどね。実際のところ、おおよその歴代の王家はその血筋で構成されているみたいですけれどね」
「どういうことです」
「かって存在したレスティア帝国は魔皇の血筋です。現在の帝国王家は法皇様の血筋、帝国としては認めてませんが、聖王国の王家は神皇の血筋です」
「ちょっとまってくださいよ。エラナさんが法皇の血筋、帝国王家も法皇の血筋となると何らかの関係が・・・初代皇帝王妃がエラナ・アルスターク・・・もしかしてエラナさんも帝国王家の血筋を引いているのですか」
ラルクが今までの話でそう結論を出した。
「貴族としての身分を捨てて平民までに身分を落としてはいますけどね。聞いたことありませんか、ハーパリン公爵領にかって隣接してあった公爵領があったと」
「えっと、確かフレア公爵家・・・では、エラナさんはそのフレア公爵家の」
「フレア公爵家は曽祖父1代限り、順当についでいれば私がフレア公爵家の4代目の当主ということです」
「では、エラナさんは今回の件が終われば公爵位を」
「そのつもりではいます。遅かれ早かれ政治に関わることになるでしょうから、その為にはそれ相応の身分が必要となりますからね」
「陛下自身はいつでもエラナを公爵にして、手元におきたいようだがな」
「実際公式に面会したのは8年前の1度だけですけれどね。私的に直接陛下の部屋に行くことがありますから、近衛騎士の方なんかには覚えられてしまいましたけれどね」
「そのうち半分ぐらいは学院からの密使として行っているだろう」
「一応、不定期ですけど陛下のご息女レネティア様の教育係でもありますからね。それにセレナが同じ年でもあるから陛下が私やセレナを出入りさせることに誰も不審はもっていませんからね」
「そうか、セレナが同じ年となればそうかもしれんな。貴族でなくても学院導師となれば身分的にはそう引けはとらないからな」
下級貴族が帝国内で役職につこうとするとき学院で学び導師位を手にすることが最も早く出世することができる。中にはそうして公爵家から令嬢と結婚したものもいれば、公爵家の養子として迎えられた者もいる。
百年ほど前には下級の貧乏貴族の嫡男であったものが、学院で導師となり宰相までのぼりつめ、爵位も侯爵までとした者もいた。もちろん平民から貴族となったものも数多くいる。
「さて、私はそろそろ図書室へ戻るわ。レーナが待っていますからね」
そう言うとエラナは図書室へ戻っていった。

図書室へ戻るとラクレーナは、テーブルに何冊も書物を並べ待っていた。
「どうやら、他の方を待つことになったみたいですね」
「よくわかったわね」
図書室の窓からさきほどエラナがいた中庭は見ることができるが、それほど大きな声で会話していたわけではない。それに図書室は5階にある。
「目と耳には自信があります。それに読唇術も一応つかえます」
「他にもいろいろ覚えてそうね」
「天馬に乗って戦うことを考えると仲間との連絡をとるには覚えないとこまりますからね」
「なるほどね、確かに上空ではまともな会話はできないわね」
「さて、私も少し体を動かしてきます。さすがに1日中ここにいるのは厳しいですから」
「行って来なさい、私はここでこうしているほうが落ち着きますから」
「では、行ってきます」
そう言いラクレーナは窓から飛び降りる。
「レーナ、ここ5階ですよ」
エラナが静止する間もなくラクレーナは飛び出していた。
ラクレーナは飛び出ると同時に体から気を放出し、ゆっくりとした速度で降りていく。
「放出系の気まで使えるのですか。そうか、レーナのあの瞬間的な加速はこの為ね。私は魔力を放出して加速を得てますが、気でも同じような使い方ができるものなのですね。まったく驚かせてくれますね。ですが、どんな成長をしていくのかも楽しみですね」
「さてと」
エラナは図書室の奥に入ると棚の一部を探り出し、何かを見つけるとそれを動かした。
同時に図書室の奥の壁の奥に通路が現れた。
エラナはその通路を奥へと進んでいきその奥にある扉の前にたどり着いた。
「あの書物は嘘をいってなかったわね」
そう言い、魔法で扉の鍵を開ける。
その部屋には小さな個室となっており、書棚と机があり誰かの部屋であった感じがした。
「間違いないわ、これこそ初代皇帝王妃エラナ・アルスタークの魔道書のオリジナル」
そう言い、書物に目をとおす。
「さすが学院の創設者、失われて久しいのすべてがわかるわ。なるほど、私の魔道の組み立て方はほとんどあっているようですけど、微妙な違いがありますね。だけどこれで完成するわ、ん、これは・・・」
エラナはそのページをゆっくりと読み始めた。
それはエラグラスを封印したあとにエラナ・アルスタークが開発を進めていた術が示してあった。エラグラスにはほとんどの魔法を防ぐ力があり、並みの魔法ならば軽々と打ち返してくる。ならば、それ以上の攻撃力を持った魔法を使うしかないが、それは人間の身で使えるものではない。だがエラナ・アルスタークはその魔術の開発には成功した、だがあまりの強大な魔法すぎ人間では発動することすらできなかった。
「複言詠唱ですか、可能ではあるけどこの詠唱は長すぎるわね。まてよ、古代魔道語なら今より母音が多い分、発音も倍近い数かあるから詠唱も半分以下にできるかもしれませんね。試してみる価値はありますね」
そう言うとエラナはその場から姿を消した。
次にエラナが姿を現したのは城から少し離れた平原だった。
「∈£ыξёфбдюжпηящаα∇∀сπψ鵝
エラナが詠唱を始めると彼女を中心に魔法陣が展開される。
(魔法陣を展開させるだけでこれだけの魔力が・・・)
「∫≡имреъБΘψвξψεаω∬кэκΓΞψ・・・」
そこで詠唱が中断した。
「私の魔力キャパシティをもってもここまでしかできないなんて・・・やはり人間には使いこなせない力なのか・・・いや、まだ試すべきものがある。」
そう言い、ネックレスを取り出す。
「杖を完成させる必要があるようですね」

3日後、サーディンとブラッサムの二人がリスタール城に到着した。
さらに5日後、グランテールとサンバスが到着、さらに翌日、学院からサイバー、アレン、ティアラを連れてクリスが帰還した。
「全員揃ったな」
リスタール城の客間に集まりベネラルがそう言った。
「初対面の方もおられるでしょうから、それぞれ自己紹介をされたほうがよいでしょう」
クリスが提案する。
「そうだな」
「ガラバード帝国・帝都ラクーン学院導師エラナ・フレアです」
まずエラナが名乗った。
「同じく学院魔導師サイバー・ブラウスです」
サイバーは魔導師というより軽装の戦士というべき姿だった。
「アレン・ブランドです」
彼もサイバーと同じく軽装の戦士というべき姿だった。
「学院準導師ティアラです」
ティアラの姿は導師のローブを身につけまさに魔導師とわかる姿だった。
「第一神官騎士団・部隊長ラルク・ハーパリンです」
今日のラルクは神官騎士としての鎧ではなく、司祭としての正装であった。
「重騎士団・部隊長グランテールだ」
かなりの体格でまさに重騎士といえる威厳があった。
「第3騎士団副団長サンバス・アルトです」
一行の中では唯一の指揮官クラスである彼はかなり落ち着いた感じがする。
「今回の任務で貴殿達の指揮をとるベネラル・アルスタークだ」
「ベネラル卿の副官サーディン」
「同じくブラッサム」
「ベネラル卿の従者を勤めますクリスです」
「剣王フォルク師の弟子でラクレーナ・アルシードと申します」
彼女だけが唯一、学院にも帝国にも直接関係がない。
以上12名が、これから仲間となる面々だった。
「エラナ、今回の任務について説明してくれるか」
「わかりました。まず私達の任務の目的は魔獣エラグラスを倒すことです」
「エラグラスですか、何か古い書物で見た覚えがありますが、確か初代皇帝王妃であり学院創設者であるエラナ・アルスターク様が封印されたという魔物のことでしょうか」
ティアラがそう尋ねる。
「そのエラグラスです。ただわかって欲しいのはその当時最高位であったエラナ・アルスタークさんが倒したのでなく封印した点です」
「当時、魔道を極めた魔導師でも倒すことはかなわなかったということは、かなりの魔道の力を持っているということですね」
サンバスがそう言う。
「彼女は純粋な魔導師で当時はほかに戦える剣士もいなかったこともありますが、並はんかな攻撃は無意味だと思ったほうがいいでしょう。そこを考慮し、剣と魔法において突出した貴方達を集めたということです」
「会うのは初めてにしろ確かに一度は名を聞いたことがるものばかりだな」
グランテールは皆を見回しそう言う。
「既に私達が動いていることはエラグラスはわかっています。特に直接エラグラスの配下と直接戦った私、ベネラル、ラクレーナ、ラルクのことは伝わっていると考えて間違いないでしょう。これまで倒したエラグラスの配下は4匹ですが、エラグラスは自らの手足となる配下を産み出す力があるようですからたいした痛手でもないでしょうが」
「4匹だと、この前の宴席のときの2匹だけではないのか」
ベネラルが尋ねる。
「1匹はハーパリン公爵家の館で偵察していたものを私が倒してます。もう1匹はここリスタール城で私をつけてきたものを図書室の特別室で私とラクレーナで倒しています」
「それでは貴女は既に敵にマークされているということですか」
ティアラが尋ねる。
「気がついているでしょう。その為にわざわざ私が使える最高位の魔法まで使って見せたのですからね。おそらく私がエラグラスを封印したエラナ・アルスタークと互角かそれ以上の力をもっているとね。これでも攻撃魔法系なら彼女を越えている自信はありますからね」
「貴女がそこまで話をするのははじめて聞きますね。学院ではまったく無言の人かと思ってました」
サイバーがそう言う。
「必要がないからですよ。学院で話をするとなれば、それは討議です。勝てるとわかっている相手とやり合っても面白くありませんからね。それに研究室での講義で無駄話する必要もないでしょう」
「なるほど、やはり私は貴女を選んで正解だったようです」
サイバーのそれは学院内派閥としてエラナを選び指示することの宣言でもあった。
「確かにそうですね。退屈はしそうになさそうですし」
アレンも宣言した。
「で、エラナなんで俺に教えてくれなった」
「その必要がないから、エラグラスを倒すのはベネラル、貴方である必要があります。ですが、エラグラスが命を狙う相手は私でよいということです」
「それを認めろというのか」
「私と1対1で勝負して勝てる自信があるならいつでもお相手しますよ。私がフォルク流剣技風技の使い手であることはわかっているでしょう」
ベネラルの豪の剣では、風の剣には勝てない。だが風の剣では地の防御を打ち破ることはできない。だがエラナには魔道を組み合わせた魔道剣術がある。
「ベネラル卿、エラナはこの剣にかけても私が守ります」
ラクレーナがそう宣言する。
「フォルク流剣技風技の使い手を2人も敵に回したくはないな」
「で、これからどうするのだ。話から察するに倒すだけならこれだけの人数はいらぬとみたが」
グランテールが尋ねる。
「察しがいいですね。手に入れなければならないものがあります。エラグラスの剣、エラナ・アルスタークが鍛えたエラグラスを倒すための剣です。帝国王家にあったものですが、5代皇帝の時代に剣をさすかった者がいたのですが、戦場で討ち死にし剣もそれと同時に消えてしまいました。それを探し出すのが目的です」
「300年以上前の話ですね」
サンバスがそう言う。
「そのぐらいですね」
ティアラが答えた。
「確かその当時の戦で剣を授かった可能性があるとしたら、当時の黒騎士団長ぐらいではないですか」
サンバスはそう想像する。
「私もそれは考えていました。それでここで図書室などで戦の記録を探していたのです」
「その時代となるとちょうど彼らが聖王国と呼ぶ国が独立戦争を起こした頃ではないですか」
アレンがそう言う。
「ただその当時はそれ以外にも各地で反乱は多くおきていますからね。それに軍の最高指揮官が戦死した話は数多くありますよ。当時の帝国には突出した実力者の話はあまり聞きませんし」
ティアラが答える。
「順番にしらべて行くしかないでしょうね。もしそのときの相手が現在の聖王国の関係の戦だとしたら、もしかしたら剣は聖王国にある可能背も否定できなくなりますからね」
エラナがそう言う。
「聖王国か、いざとなったらスティールに協力を頼むしかないな」
エラナを見て、ベネラルがそう言う。
「スティールですか、彼なら協力はしてくれるでしょうし、聖王国内で彼の協力を得られれば調査も楽にいくでしょうね」
「聖王国の神殿関係の方ですか」
ラルクが尋ねた。
「現在の聖王の嫡子、いわば次期聖王といったほうがいいだろうな」
「よくそのような人と知り合われてますね」
サイバーがそう言う。
「俺と同じく剣王フォルクの弟子だからな」
「ベネラルの豪の剣をとめられるとしたらスティールぐらいでしょうね」
「あいつとの決着はまだ付けてないな」
「フェルドもいるでしょう」
「フェルド、私の兄上ですか」
ラクレーナがそう言う。
「そうか、ラクレーナの兄だったな」
「生き別れたのですから、一度も会ったことはありませんけれどね」
「どちらにせよ、当時の戦地を順にまわるしか無いでしょう」
「そうだな、我々にはあまりにも情報が少なすぎるからな」
「さしあたっての候補は見つかっているのですか」
サイバーが尋ねた。
「すでに5箇所ぐらいは見つけてあります。1つ目はここリスタール城からもそれほど遠くありませんからまずそこへ行くのがいいかと思います」
「よし、早速準備を進めよう。何日ぐらいかかる」
「往復で5日もあればいいでしょう。途中村もありますから2日分程度の食料を持っていけばなんとかなるでしょう」
「明朝出立する。各自準備を進めてくれ」

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