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プリンセス・メール  外伝 第二話 神の休息

穏やかな春の風の吹く昼下がり、村の家々から火の手が上がった。
家の外へあわてて逃げだした村人を弓矢が襲う。
森の方から、少し小柄で白い神官着を着た一人の髪の長い少女がかけ込んでくる。
村の神殿の司祭だった。
そこで少女が見たのは、見るも無惨な村人達の姿だった。
すでに、少女以外の村人で生きている者はいなかった。
人口五〇人足らずだった村を、二〇〇人近い山賊が取り囲んでいた。
山賊は、この地方では有名な山賊隊で一〇〇〇人近いグループであり、彼らに滅ぼされた村や町は少なくない。
山賊達は、略奪を初めている。
少女を見つけた山賊は、自分の楽しみにと少女に向かってきた。
司祭など、治癒術のみと思ってであろうが、それが間違いだった、少女は四つの宝石を手にすると、
「クレアール!」
少女の術と共に、手を放れた宝石は姿を変え四体のゴーレムとなる。
少女は、司祭であると同時に魔術師でもあった。
「グラナティス、アメテュストス、コラッリオン、アダマース、我が命に従え!」
四体のゴーレムは、四方に散り山賊どもに襲いかかる。
少女に数人の山賊が、四方から少女に襲いかかる。
少女が魔術師と知っての上である。魔術師ならば、接近戦に持ち込めば勝てると考えてであるが、
「ぎゃ〜〜!」
二人の山賊が悲鳴を上げ、一人は体中からすべての血を噴き出し、もう一人はあっというまにミイラと化す。
そのとき後ろから攻撃しようとした二人も、一人は体中の間接をあらぬ方向へねじ曲げ砕け散り、もう一人は体が膨れ上がり大きな音をたて爆発する。
四人の血が辺りを赤く染める」少女の服にも、赤い斑点が付いている。
少女に襲いかかろうとしていた者のいく人かが、仲間の殺られるのを見て逃げ出す者がいる。
一方で、襲いかかった者は先の四人と同じ運命をたどった。
少女はさらに四つの宝石を取り出し、さらに四体のゴーレムを呼び出す。
「スマラグドス、マルガリーテース、ルビニ、サルドニック、逃すな!」
四体のゴーレムは、逃げだした山賊達の行く手を防ぐ。
そして、ある者はゴーレムに殴られ頭がもぎちぎれ、またある者は、少女の魔力でミンチと化した。

数刻の後、二〇〇人近い山賊どもはすべて原形をとどめぬ形となり、大地を赤く染めた。
少女の白い司祭着も、すでに真っ赤に染まっていた。
残るは、この隊の指揮官で盗賊隊の幹部の男だけだった。
「た、頼む、助けてくれ・・・」
すでに戦意を失い、腰まで抜かしている。
「さて、どうしてくれようか、村の人々を殺した罪は償ってもらおうかな」
少女は、片手に炎を生み出すとその男にけしかけた。炎は、男を包み込みさっと消える。
男は、炎に熱さすら感じなかったが、炎が消えたとき静かな風が皮膚に触れたとき、「ぎゃぁぁぁ〜〜。い、痛い体中が・・・」
よく見れば男の皮膚はなく、赤い肉がさらけ出されているが、しだいに赤い肉は白く変化を始め、腐り出す。
「特別に生かしといてやるよ、ただしゾンビとしてだがな」
少女は、ゴーレム達を宝石に戻すと、「ゾンビだから生かしたとは言え無いけど、ありがたく思いなよ、私が情けをかけるなんて珍しいんだからさ、しかも不死にまでして上げるなんてね」
少女は、そう言うと唯一燃えなかく残った神殿へ入って行った。
同時にゾンビ男は村から逃げ出しその姿は無かった。
神殿に入ると、少女は血に染まった司祭着を脱ぎ捨て奥の浴室へ向かった。
服を脱ぐと、少女の白い肌が現れる。手足も細く先ほどまで山賊と戦っていたなどとは思えない。
浴室にはいると、静かに肩から水をかぶり、
「ここも、私が静かに暮らせる地ではなかったようね。これが私の運命なのか、それとも・・・」
少女はゆっくりと浴槽へ白く細い足を入れ、中の方へ歩いて行く。
「これまでに、私の周りで多くの人々が消えていった・・・どこへ行っても同じ・・・みんな私を信じてくれた人々なのに・・・ときには山奥に住んでた事もあった、でも知らないところでも人々が死んで逝くのを見捨てる事などできなかった・・・」
少女は、仰向けになり水面に浮かぶ。
「私のこの力は、すでに人間の領域ではない、神の領域となっている・・・、だからこそ、力を偽ってきた並みの人間のように、その方が静かに人間達と暮らせると思った。偽っても限度がある、先ほどの攻撃ですら本来の一割にも満たないもの・・・」
少女の周りの水面が揺れ、少女の体は中に浮かび上がる。
「たしかに、多くの人々が周りで死んで逝ったが、それ以上に多くの人々を救ってきたけど・・・すべての人々を救えずにいる」
少女の表情はきびしいものに変わっていた。
「何度も同じ事を呟いてきた・・・しょせん一人でできる事などしれている・・・たしかにその通りだけど・・・これ以上はやめよう、悲しくなるだけだから・・・」
宙に浮いていた少女の身体が、ザブンと浴槽に落ちる。

日は暮れ、外はいつしか降りだした雨が豪雨と変わっていた。
豪雨は激しく、あっという間に村は水浸しとなった。
他の家々より高く作られている神殿の一階部分へも水は流れ込んでいた。
少女は、二階の自室で薄いピンクがかったドレスを着て外を眺めていた。
村を覆う水は、部屋の明かりを受け赤く見えたが、すぐにわからなくなってしまった。
村の中心に、少女が作った村人の墓も水の下に沈んでしまっている。
「この世の汚れも、雨が流してくれればいいのにね・・・」
そうぼそりと呟きベットの上に寝そべった。
「この村に来る前は、旅の司祭としていろいろな地を回っていたけれど、たまたま立ち寄ったこの村で、一人の子供の病気を治したのがきっかけでこの村に住む事になったけど、それがちょうど半年前・・・そろそろ旅に出ようかと思っていた矢先に・・・こんな結末はもう見たくなかった」
少女の目に涙が滲んでいる。
「いつも、旅に出たきっかけは同じ・・・」
そのまま、目を閉じると静かに眠りにはった。
外ではまだ、激しく雨が降り続いている。

少女が目を覚ましたのは、翌日の朝だった。雨はすでに上がり水も引いていた。
ドレスのまま寝たため多少のしわができたいたが、少女の手がそっとその部分に触れると、しわはすっと消えていった。
少女は、部屋を出て一階へと下りて行った。壁の真ん中辺りまで水が出たらしく、白い壁が黒く汚れている。
少女が神殿の扉を開けると朝日が少女に降り注いだ。
空には虹がかかっている。
神殿の回りには、木の枝などが散らばっているが、大地に血の色はなく元の大地の姿がある。
同時に村の周りを一〇〇〇人近い山賊が取り囲んでいた。
「おやおや、お早い事で」
山賊の中に、昨日のゾンビの姿はなかった。ゾンビが呼んだのは間違いないが・・・その姿はなかった。
少女は、ゆっくりと山賊の首領に向かって歩き出す。
雑魚たちが、弓を引くが首領がそれを止め、数人の部下を引き連れ少女の方へ近ずいて行く。
「ほう、お前か。昨日は部下どもが世話になったようだな」
そいつは馬上から少女を見おろして言う。
「・・・その台詞は聞きあきたよ。どいつもこいつも同じ事しかいわないね、そう言う台詞は私よりあんたが強いときにいいな、クズの使って言い台詞じゃないよ」
首領を睨みつけながら言う。
「言ってくれるな、名前ぐらい聞いといてやろう」
声が震えている、少女の台詞、態度は戦いなれたもので、その実力を示している。その実力を感じとっていたが負ける気はしていなかった。
「死ぬ奴に言う気はない」
首領は、自らがゆっくり後退すると部下達に攻撃命令を出した。
「やっちまえ〜〜!」
山賊達が一斉に襲いかかる。まず、弓が放たれるが少女に当たる事はない。
「ふ、私が戦う事もないわね。クレアール!」
少女の手より八つの宝石が散り、ゴーレムと化し攻撃を始める。
「あの小娘、エンチャンターか。しかも同時に八体も・・」
首領がそう言う、それを聞いた少女は、「残念ね、もう四体いるわよ」
さらに四つの宝石から四体のゴーレムが生まれてくる。
「サピロス、オパリオス、トパンス、カライス、お前達の力を見せてやりなさい」
新しい四体のゴーレムも、他のゴーレムと同じように雑魚に攻撃を仕掛ける。

しばらくすると一二体のゴーレムの前に山賊どもは次々と殺され半数近くになっていた。
「言っとくけど、私のゴーレムは知性は高いけれど手加減するように作ってないからね。早く逃げたほうがいいわよ」
少女の言うとおり、ゴーレムは少女の命令を的確に行うが、攻撃に手加減などされていない、一発で相手を打ち砕いてゆく。
しかも、彼らの動きは速い。
そのとき、首領の元へ一人の男がやってきてなにやら首領に告げる。
「お、来たか」
首領の表情がやわらぎ、同時に少女に向けて火球が飛ぶ。
しかし、火球は少女に触れる寸前でかき消される。
「魔法使いがいるのか」
少女がぼそりと呟いた。
「我が魔法隊をなめるなよ」
首領の言った通り、魔法使いが二〇人ばかりいる。
魔法使いは、数が増えるほどその力は増す。
二〇人となればちょっとした国の王宮仕えの魔法使いの数と変わらない。
「ゴーレム一二体を操り、シールドを張る魔力、認めてやるがその状態で我々を我々の攻撃を防げるかな」
一人の魔法使いがそう言うが、相手が普通ならそうかもしれないが、現に今の少女が行っていることは人間の中にもまれにいる。
「御託はいい、殺してやるからかかっていらっしゃい」
少女の言葉に、反応して魔法使い達は同時に魔力球を打ち出す。
「無駄なことを」
少女がぼそりと呟くと少女の周りで大爆発をおこす。

「や、殺ったか」
首領がそう呟くが、ゴーレム達が動きを止めてはいなかった。
この手のゴーレムは術者がいなくなれば元の姿に戻るか、動きを止める。
「真面目にやる気もおこんないね。まぁ、私もそう暇じゃないんで終わらせてもらうよ」
彼らが勘違いをしているとすれば、ゴーレムもシールドの制御も少女が無意識下で行っていたことだろう。
少女の指先から魔力弾が打ち出され、魔法使い達を一瞬で消し飛ばし辺りの大地、森までも吹き飛ばす。
「針で刺すつもりで打ったんだけどねえ、余分なものまで壊してしまたわね」
かなり大きなクレーターがそこに残っている。そして、今の一撃で山賊達の士気は完全になくなり一斉に逃げだした。
そして次の瞬間には、無数の石像が立っていた。
残るは、首領一人のみだった。
少女は、首領の目の前で石像を砕くとさきほどのクレーターをそのがれきで埋める。
ゴーレム達も一斉に少女の元へ宝石となって戻る。
「ごくろうさま」
少女は宝石達にそう言うと、首領を睨みつけている。
「お、おのれ」
その叫びと同時に、一体の馬に乗った男の石像があった。
「これで全部終わりね。もう少し遊べるとうれしかったけど。まぁ、人間ごときが神である私に喧嘩を売って勝てる方がおかしいけどね」
そう言い残すと、何事もなかったように神殿へ入って行く。

昼過ぎ、少女は荷物をまとめると神殿の扉を閉め辺りをゆっくりと眺める。
「しばらくすれば誰かがこの村を見つけるだろうな、再び村が興るか、消えるかは時のみがしるもの、私には関係のないことね」
神殿に背を向け、ゆっくり歩出す。
「あ、そうだ、もう一つ残っていたわね」
何やら念じるがすぐに終わる。
「これで全員始末できたわね、さて今度はどこへ行こうかしら、まだ時は私を必要とはしていないようだけど・・・もうしばらくかな、ちょっと寄り道でもしていこうかな」
少女の身体は、ふわりと浮かび上がると大空の中へとけ込んでいった。
少女の術であのゾンビは地に帰っただろう。

そして、少女は一つの険しい岩山の山頂にいた。
そこから見たのは、攻め落とされた城の姿だった。
城の名、国の名はプラム。
「伯父様・・・」
ぼそりとそう呟くその少女の目に一匹の白い鳥が目に入る。
最も美しい鳥として伝えられるが、無限の魔力と知性を有し、体長が一〇mをも越える、幻の鳥インフェニット、その姿だった。
目の前のインフェニットは五mほどの大きさだがその美しさは、幻の鳥そのもの日の光が反射し、さらに美しく見せる。
「我が義妹ミーナ、またいずれ・・・もう始まっているのだから・・・」
少女の顔から笑みがこぼれる。
インフェニットは、少女に気がついたのか城の上空をしばらくの間回った後、少女の頭上を飛び抜け南の空へ飛び去った。
同時に少女の姿もかき消された。

少女の名は知られていないが、一部地域では神としてあがめられ、またある地域ではその力ゆえ魔神として恐れられている。
この後、この少女と思われる伝説が生まれているが、少女そのものについては残されてはいない。
少女が表舞台へ現れることなく、あくまで影から世界の平和を望んでいたのは間違いはない。
だが、すべては謎である。

少女の立っていたその岩山には、まだ少し少女の面影が残っている。
ささやかな春の風は、すべてを知っているかのように吹き荒れていた。

(終わり)


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